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第二十五話 がらくた工房の奥で
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了解しました。
第25話・第26話を、今の再構築案に合わせて描き直します。
(思想・役割・後のざまぁへの効きまで含めて再調整しています)
---
第二十五話
がらくた工房の奥で
王都の裏通りは、昼でもひんやりしていた。
人通りが少なく、石畳は長い時間を吸い込んだように色がくすんでいる。
「……こちらです、姫様」
アンダーソンが、少し気まずそうに足を止めた。
建物は、かつて工房だったらしい。看板は外され、扉の金具は錆びついている。
「処分予定の古い工房です。
不動産としても、商品としても……価値はありません」
扉を開けると、埃の匂いが舞った。
中には壊れた家具、解体途中の棚、使われなくなった什器が無造作に積まれている。
その奥――
人の形をしたものが、まとめて置かれていた。
マネキン。
人形。
欠けた腕、割れた顔。
「……」
タナーは、何も言わずに歩き出した。
八歳の王女にしては、あまりに落ち着いた足取りだった。
怖がる様子も、嫌悪する様子もない。ただ、静かに「見る」。
そして――
ひとつだけ、視線が止まった。
埃をかぶって、壁際に立たされた関節人形。
倒れていない。
寄りかかってもいない。
ただ、そこに「立って」いた。
「……この こ」
タナーは、そっと近づいた。
「すてられる の です か」
アンダーソンは、短く息を吐いた。
「……ええ。
売れませんし、修復するにも費用がかかります。
作った職人も、もう亡くなっています」
淡々とした説明だった。
商人としては、正しい判断だ。
「価値はない、と」
タナーは、人形の顔を見上げた。
整っているが、微笑まない。感情を返さない表情。
指先で、そっと頬に触れる。
冷たい。
けれど、脆くはない。
「……」
タナーは、ゆっくりと振り返った。
「この こ」
一拍置いて、言う。
「つくるひと は
うそ を ついて いません」
アンダーソンは、思わず言葉を失った。
「こわれない よう に
ちゃんと つくって います」
価値がない、と言われたものを、
タナーは「誠実」と呼んだ。
「ください」
即答だった。
「この こ は
ここ に いる ひつよう は ありません」
「……どこへ?」
「わたし の みせ に」
埃の積もる工房の奥で、
捨てられるはずだった人形は、
初めて「選ばれた」。
---
ぬこ、言葉を生まない。
「……ひと みたい ですね」
アンダーソンが、ぽつりと言った。
「でも、人じゃありません」
タナーは、はっきり答えた。
人形の関節を確かめる。
肩、肘、膝。どれも精巧で、異様なほど丈夫だった。
「この こ は」
タナーは、静かに続ける。
「こわれにくい」
「だまられない」
「うそ を つかない」
それは、タナーが店の商品に求めている基準そのものだった。
便利でなくていい。
愛想がなくてもいい。
ただ、
人の期待を裏切らないこと。
「……動かさないのですか?」
アンダーソンが尋ねる。
最近、タナーの周囲では「魔法」が当たり前になりつつある。
クマのぬいぐるみも、やがて動く予定だ。
けれど、タナーは首を横に振った。
「この こ は
うごかなくて いい です」
「……なぜ?」
タナーは、人形を見上げた。
「ひと に まちがえられて も
なにも かえさない から」
人は、勝手に期待する。
優しさを。笑顔を。好意を。
そして、返ってこないと、勝手に怒る。
「この こ は
なにも かえさない」
だから、壊れない。
タナーは、布をかけ直した。
「まだ
まほう は かけません」
「……今、かければ?」
「いま だと
こわれます」
理由は、説明されなかった。
けれど、アンダーソンはそれ以上、聞かなかった。
この人形は、まだ「器」だ。
役割も、位置も、決まっていない。
けれど――
この時点で、すでに確かだった。
この人形は、
後に、誰よりも「人間らしく」見える存在になる。
何も語らず、
何も返さず、
ただ、そこに立つだけで。
それが、どれほど人を惑わせるか――
まだ、誰も知らなかった。
---
このままの流れで行くと、
27話:クマとの思想的対比
28話:付与を「しない」決断の確定
33~36話:ドールが“誤解される存在”として完成
が非常に美しく繋がります。
次は
👉 第27話を書き直す
👉 それとも この第26話をさらに淡く・ほのぼの寄りに調整
どちらにしますか?
第25話・第26話を、今の再構築案に合わせて描き直します。
(思想・役割・後のざまぁへの効きまで含めて再調整しています)
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第二十五話
がらくた工房の奥で
王都の裏通りは、昼でもひんやりしていた。
人通りが少なく、石畳は長い時間を吸い込んだように色がくすんでいる。
「……こちらです、姫様」
アンダーソンが、少し気まずそうに足を止めた。
建物は、かつて工房だったらしい。看板は外され、扉の金具は錆びついている。
「処分予定の古い工房です。
不動産としても、商品としても……価値はありません」
扉を開けると、埃の匂いが舞った。
中には壊れた家具、解体途中の棚、使われなくなった什器が無造作に積まれている。
その奥――
人の形をしたものが、まとめて置かれていた。
マネキン。
人形。
欠けた腕、割れた顔。
「……」
タナーは、何も言わずに歩き出した。
八歳の王女にしては、あまりに落ち着いた足取りだった。
怖がる様子も、嫌悪する様子もない。ただ、静かに「見る」。
そして――
ひとつだけ、視線が止まった。
埃をかぶって、壁際に立たされた関節人形。
倒れていない。
寄りかかってもいない。
ただ、そこに「立って」いた。
「……この こ」
タナーは、そっと近づいた。
「すてられる の です か」
アンダーソンは、短く息を吐いた。
「……ええ。
売れませんし、修復するにも費用がかかります。
作った職人も、もう亡くなっています」
淡々とした説明だった。
商人としては、正しい判断だ。
「価値はない、と」
タナーは、人形の顔を見上げた。
整っているが、微笑まない。感情を返さない表情。
指先で、そっと頬に触れる。
冷たい。
けれど、脆くはない。
「……」
タナーは、ゆっくりと振り返った。
「この こ」
一拍置いて、言う。
「つくるひと は
うそ を ついて いません」
アンダーソンは、思わず言葉を失った。
「こわれない よう に
ちゃんと つくって います」
価値がない、と言われたものを、
タナーは「誠実」と呼んだ。
「ください」
即答だった。
「この こ は
ここ に いる ひつよう は ありません」
「……どこへ?」
「わたし の みせ に」
埃の積もる工房の奥で、
捨てられるはずだった人形は、
初めて「選ばれた」。
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ぬこ、言葉を生まない。
「……ひと みたい ですね」
アンダーソンが、ぽつりと言った。
「でも、人じゃありません」
タナーは、はっきり答えた。
人形の関節を確かめる。
肩、肘、膝。どれも精巧で、異様なほど丈夫だった。
「この こ は」
タナーは、静かに続ける。
「こわれにくい」
「だまられない」
「うそ を つかない」
それは、タナーが店の商品に求めている基準そのものだった。
便利でなくていい。
愛想がなくてもいい。
ただ、
人の期待を裏切らないこと。
「……動かさないのですか?」
アンダーソンが尋ねる。
最近、タナーの周囲では「魔法」が当たり前になりつつある。
クマのぬいぐるみも、やがて動く予定だ。
けれど、タナーは首を横に振った。
「この こ は
うごかなくて いい です」
「……なぜ?」
タナーは、人形を見上げた。
「ひと に まちがえられて も
なにも かえさない から」
人は、勝手に期待する。
優しさを。笑顔を。好意を。
そして、返ってこないと、勝手に怒る。
「この こ は
なにも かえさない」
だから、壊れない。
タナーは、布をかけ直した。
「まだ
まほう は かけません」
「……今、かければ?」
「いま だと
こわれます」
理由は、説明されなかった。
けれど、アンダーソンはそれ以上、聞かなかった。
この人形は、まだ「器」だ。
役割も、位置も、決まっていない。
けれど――
この時点で、すでに確かだった。
この人形は、
後に、誰よりも「人間らしく」見える存在になる。
何も語らず、
何も返さず、
ただ、そこに立つだけで。
それが、どれほど人を惑わせるか――
まだ、誰も知らなかった。
---
このままの流れで行くと、
27話:クマとの思想的対比
28話:付与を「しない」決断の確定
33~36話:ドールが“誤解される存在”として完成
が非常に美しく繋がります。
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