婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾

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第二十六話 ひとみたいで、ひとじゃない はとの とけいを つくる ひ

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第二十六話 ひとみたいで、ひとじゃない
 人形は、店の奥の部屋に運ばれた。
 掃除をして、埃を落とし、布をかける。
 それだけで、見た目はずいぶん落ち着いた。
 それでも――
 美しい、とは言えなかった。
 可愛い、とも違う。
 目は開いているのに、何も映していない。
 唇は整っているのに、言葉を生まない。
「……ひと みたい ですね」
 アンダーソンが、ぽつりと言った。
「でも、人じゃありません」
 タナーは、はっきり答えた。
 人形の関節を確かめる。
 肩、肘、膝。どれも精巧で、異様なほど丈夫だった。
「この こ は」
 タナーは、静かに続ける。
「こわれにくい」
「だまられない」
「うそ を つかない」
 それは、タナーが店の商品に求めている基準そのものだった。
 便利でなくていい。
 愛想がなくてもいい。
 ただ、
 人の期待を裏切らないこと。
「……動かさないのですか?」
 アンダーソンが尋ねる。
 最近、タナーの周囲では「魔法」が当たり前になりつつある。
 クマのぬいぐるみも、やがて動く予定だ。
 けれど、タナーは首を横に振った。
「この こ は
 うごかなくて いい です」
「……なぜ?」
 タナーは、人形を見上げた。
「ひと に まちがえられて も
 なにも かえさない から」
 人は、勝手に期待する。
 優しさを。笑顔を。好意を。
 そして、返ってこないと、勝手に怒る。
「この こ は
 なにも かえさない」
 だから、壊れない。
 タナーは、布をかけ直した。
「まだ
 まほう は かけません」
「……今、かければ?」
「いま だと
 こわれます」
 理由は、説明されなかった。
 けれど、アンダーソンはそれ以上、聞かなかった。
 この人形は、まだ「器」だ。
 役割も、位置も、決まっていない。
 けれど――
 この時点で、すでに確かだった。
 この人形は、
 後に、誰よりも「人間らしく」見える存在になる。
 何も語らず、
 何も返さず、
 ただ、そこに立つだけで。
 それが、どれほど人を惑わせるか――
 まだ、誰も知らなかった。
このままの流れで行くと、
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