スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

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イベント前の練習

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(柳沢 望)


 思いっきり演奏すると気持ちが良い。
 一見単調なスルドの演奏も、集中して鳴らし続ければじんわり汗もかく。


『エンサイオ』はダンサーと合同で行う練習だ。激しく踊るダンサーに合わせて、練習場内の空調は低めに設定されていたにもかかわらず、いつの間にか水分が失われている感覚に気が付いた。

 
 最近、慣れない男女の関係性だの恋愛だののあれやこれやで脳と精神が疲れていたのかもしれない。
 頭を空にして意識を音に委ねて、指揮者の『ヂレトール』のサインに集中している時間は、とても気持ちが良くて心地良かった。

 
(人間関係って、こじれてすらいないのに難しいからな。わたしには難易度が高すぎる)

 
 我に返ったわたしは、また現実に、直近の悩みというか話題というか問題に、思考が引き戻されてしまう。

 
(打楽器くらい単純で分かりやすければいいのに)
 そして、単純で分かりやすいものの方が、実は奥が深いのではないかと思う。
 裏を返せば、ごちゃごちゃと面倒くさいものって、意外と深みはないんじゃないかなぁとも。

 
 なんで休憩の方が、脳が疲れることを考えてしまうのか。
 思いながらスポーツドリンクを口に含む。乾いた身体の内部から水分が染み込むように染み渡っていくような感覚があった。
 失われた水分と塩分に加え、糖分も摂れるのはありがたい。
 
 
 気が付けば私がパレードで演奏するデビューイベントは週末に控えていた。
 浅草サンバカーニバルは約一㎞弱のパレードイベントだから、今回のイベントを浅草の前哨戦としてとらえているメンバーも多い。
 パレートイベントは大抵打楽器隊の演奏だけで行うが、このイベントは手押しで移動できるPA機材用の台車を組んでいて、バンド隊もパレードに帯同し、歌唱付きのパレードとなる。曲は浅草で使用するものをアレンジし、歌詞もこのイベント向けに編んだ特別仕様。
 
 
 と言うと聞こえがいいが、チームとしては浅草サンバカーニバルの練習を兼ねているという本音もある。
 厳密に言えば、『ヂスフィーレ』(テーマ・ストーリー)は浅草サンバカーニバルにての披露目が原則となるため、『サンバ・ヂ・エンヘード』(曲・歌詞)や『ファンタジア』(衣装)などは浅草までは公に披露しないことになっている。
 とはいえ練習機会が限られていることもあり、新興の時間管理のチェックなども兼ねて、パレードイベントを実地訓練の場とさせてもらうことにしていた。
 尚、浅草サンバカーニバル用の衣装は身に着けず、大きい山車の『アレゴリア』も、小さい山車の『アブリアーラ』も出さない。

 山車を含めた隊列でのパレードの練習や、衣装を身に着けての練習は、別途『ゲネ』と呼んでいる練習日二日ほどを設けている。
 浅草サンバカーニバルは外部や一般の参加者も募っているため、全員が参加するのは難しいが、なるべくこのどちらかに出て、本番の感覚を身に着けてもらう運用だ。大きな山車を含めての野外パレードの練習はできる場所が限られている。
『ソルエス』は市内に物流拠点を持つ会社が、拠点の一部を使用させてくれていて本番と同等の環境で練習できる機会に恵まれていた。
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