【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea

文字の大きさ
38 / 50

37.

しおりを挟む


『僕じゃない!  僕はソフィアを殺してなんかいない!!』

  マッフィー・ミスフリン侯爵子息はロディオの問いかけに対して大きく取り乱した。
  その狼狽える様子は、まさに自分が犯人ですと、名乗っているようなもの。
  会場中からも冷たい視線がマッフィーへと向けられていた。

『マッフィー……俺はずっとお前の無実を信じていたよ。だが……』
『本当だロディオ!  僕では無い。僕はソフィアを、ソフィアの事を愛し』
『愛してなどいなかったんだろう?  マッフィー』
『っ!』

  ロディオのその言葉にマッフィー・ミスフリン侯爵子息は固まった。
  そんな、マッフィーに向かってロディオは悲しげな様子で言う。

『何をどう調べてもソフィア・イッフェンバルド男爵令嬢殺害の犯人はお前しかいない……そして、仲睦まじいと思われていた婚約者への想いも嘘だったんだろう?』
『な、何故、嘘だと……』

  マッフィー・ミスフリン侯爵子息の声は震えていた。

『ソフィア・イッフェンバルド男爵令嬢は薄々感じていたのだろうな。お前の囁く愛の言葉が嘘ばかりなのだと』
『な、何だと……?』

  驚くマッフィーの目の前でロディオはある1冊のノートを見せた。

『何だそれは?』
『ソフィア・イッフェンバルド男爵令嬢……彼女は、日記を残していた』
『日記だと!?』

  マッフィー・ミスフリン侯爵子息の顔が一気に青くなり、身体も先程より震えている。

『男爵に頼み込んでね、貸して貰ったよ。ここに綴られているのは愛する人との結婚を控えた心躍る令嬢の日記などでは無かった』
『……チッ、ソフィアの奴……』
『俺もリンジーに会って初めて恋というものを知ってようやく気付いたよ。マッフィー。お前の婚約者に対する態度に愛情なんてものは一切無かったのだと!』


───……


  小説の中のヒーロー……ロディオ様はとても、辛そうな顔でマッフィーを断罪していく。

  (断罪シーンより前に犯人がマッフィーなのかも、と結論に至ってしまって苦悩するロディオ様を慰めるヒロインとのシーンはうっとりしたものだけど)

  小説とは違って私は死んでないけれど、このパーティーでロディオ様はマッフィーの野郎の罪を追求するつもりなのかしら?

  (だとしても、もう私の知っている小説の話はめちゃくちゃだわ……)

  登場人物だけが同じで全然、別のストーリーなってしまったみたいに感じる。
  これ作者、影で泣いてるんじゃないかしら?

  (だって、私の日記も、改めて振り返って見るとロディオ様とのふにふに記録と化してるし)

  なんて事を思っていたら、ロディオ様が真剣顔で私にそう告げる。

「ソフィア。全てが片付いたら君に大事な話がある」
「大事な話、ですか?」

  フニフニ……

  ロディオ様、かなり真剣な表情なのにふにふには止めない。
  それにしても、全てが片付いたら?
  やっぱり、契約終了についての話……かしら。
  もし、このパーティーでマッフィーの野郎を処罰出来たら、半年待たずとも契約終了してもきっと問題は無いものね……

  婚約解消……
  ロディオ様の本当の幸せ……

  (……嫌だ!  やっぱり寂しい)

  フニフニフニフニ……

「……ソフィア?  その顔は」 
「顔?  お化粧が崩れてしまってます?  “ロディオ様にたくさん触られても負けないお化粧にする”って張り切ってくれていたのに!」
「……すごい張り切りようだね」

  フニフニフニフニフニフニ……

「ロディオ様が、ところ構わず触りまくるからですよ」
「あはは!」

  ……もう!  笑い事では無いのに!
  でも、そんな風に笑ってくれると胸が暖かくて……ずっとこんな風に過ごせたら、と願ってしまう。

  (ふにふにばっかりされても、ロディオ様と過ごす時間が楽しい……そう思ってるから)

  フニフニフニフニフニフニフニフニフニ……

「ふにふにばっかりする人は、こうです!」

  ふにふに……

「……はぁぁ、この可愛い手付きがたまらない……」
「ロディオ様?   何て?」
「……いや、俺のよ……ソフィアは最高だな、と」
「……ありがとうございます?」

  ふにふにふに……

  こうして、エレペン伯爵家に着くまでの間、私たちは互いにふにふにしながら過ごした。




「ソフィア、手を」
「はい」

  伯爵家に着いて馬車を降りると、ロディオ様が当たり前のように手を出して、私も当たり前のようにその手を取る。
  こうする事がもう、自然な関係になっているのだと実感した。

「……はぁぁ、ソフィア。いいか?  何があっても他のヤツにその頬を触らせるなよ?」

  エスコートされながら歩いていると、ロディオ様がため息と共にそんなことを言う。

「…………初対面で女性の頬を触ってくるのはロディオ様くらいかと思いますよ?」
「ははは、まだ、ソフィアはそのほっぺたの魅力が分かってないな?」
「……一生、分かる気がしません」

  そう答えたら、ロディオ様の足がピタリと止まる。

「ロディオ様?」
「ソフィア……それなら、俺が一生かけて教えてあげよう!」
「え……?」

  また、からかってる?  そう思って顔を上げると思いの外、真剣な顔をしたロディオ様の瞳と目が合う。

  ドキンッ! 
  私の胸が大きく高鳴るのと同時にお父様の言葉が頭の中に甦る。

  ──ソフィアもいくら、ロディオ殿の事を好きだからと言っても、もう少し拒んでくれ……

  (好き……)

  私、ロディオ様の事が…………好き?
  物語……小説の中の登場人物のヒーローとしてではなく、今、私の目の前にいるこの人、ロディオ・ワイデント侯爵子息であるこの人の事が……私は。

  ボンッ!
  頬に熱が集まって一気に赤くなった。何これ……恥ずかしい……

「……っ! ソ、ソフィアさん……!?」
「…………?」

  すると、何故か今度は目の前でロディオ様が狼狽える。

「そ、その顔はダメです。お、俺の紙よりも薄っぺらい理性が、た、旅に出てしまいます……」
「はい?  意味が分かりません」
「……えっとですね……今すぐこの場でその麗しのほっぺた以外の所にも、手とこの唇でふにふにしたくな……」
「!?」

  (だ、ダメぇぇぇ!!)

「そ、そういうのは、ひ、人前では駄目です! ……あっ!」

  (これでは、人前以外ならいいよって意味にな……る?)

「あぁ、つまり二人きりの時なら構わない、と?」
「~~~!!」

  (やっばり、そんな意味に取られたぁぁぁ)

  ロディオ様は、うっとりした顔でなんて事を言うのだ!

 (ダメだわ……へんた……ゲフンゲフン、と思うのに……やっぱり拒めない)



  その理由はロディオ様の事が──……



  あぁ、こんな大事なパーティーの前に自分の気持ちに気付くなんて。

  (もう!  私のバカっ!)

「ははは、俺のよ……ソフィアは可愛いなぁ、さ、行こう」
「………………ハイ」

  赤くなった顔を必死に抑えながら私はロディオ様と共に会場に入った。


  ──だけど。


  そんな私達の様子を影から、睨むような目付きで見ていた人がいた事に私は気付いていなかった。
  
しおりを挟む
感想 544

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~

夏芽空
恋愛
両親から虐げられている伯爵令嬢のアリシア。 ある日、父から契約結婚をしろと言い渡される。 嫁ぎ先は、病死してしまった姉が嫁ぐ予定の公爵家だった。 早い話が、姉の代わりに嫁いでこい、とそういうことだ。 結婚相手のルシルは、人格に難があるともっぱらの噂。 他人に対してどこまでも厳しく、これまでに心を壊された人間が大勢いるとか。 赤い血が通っているとは思えない冷酷非道なその所業から、青血閣下、という悪名がついている。 そんな恐ろしい相手と契約結婚することになってしまったアリシア。 でも実際の彼は、聞いていた噂とは全然違う優しい人物だった。

【完結】あなたからの愛は望みません ~お願いしたのは契約結婚のはずでした~

Rohdea
恋愛
──この結婚は私からお願いした期間限定の契約結婚だったはずなのに!! ある日、伯爵令嬢のユイフェは1年だけの契約結婚を持ちかける。 その相手は、常に多くの令嬢から狙われ続けていた公爵令息ジョシュア。 「私と1年だけ結婚して? 愛は要らないから!」 「──は?」 この申し出はとある理由があっての事。 だから、私はあなたからの愛は要らないし、望まない。 だけど、どうしても1年だけ彼に肩書きだけでも自分の夫となって欲しかった。 (冷遇してくれても構わないわ!) しかし、そんなユイフェを待っていた結婚生活は……まさかの甘々!? これは演技? 本気? どっちなの!? ジョシュアに翻弄される事になるユイフェ…… ユイフェの目的とは? ジョシュアの思惑とは? そして、そんなすっかり誰も入り込めないラブラブ夫婦(?) な結婚生活を送っていた二人の前に邪魔者が───

【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました

Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに! かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、 男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。 痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。 そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。 「見つけた! 僕の花嫁!」 「僕の運命の人はあなただ!」 ──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。 こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。 すっかりアイリーンの生活は一変する。 しかし、運命は複雑。 ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。 ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。 そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手…… 本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を─── ※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)

【完結】続・転生したら悪役令嬢になったようですが、肝心のストーリーが分かりません!! ~聖女がやって来た!~

Rohdea
恋愛
★転生したら悪役令嬢になったようですが、肝心のストーリーが分かりません!!★ の続編となります。 紆余曲折を経て、お互いの気持ちを確かめ合った悪役令嬢?のキャロラインと婚約者のシュナイダー殿下。 二人は変わらず仲睦まじく過ごしていた。 しかし、そんなある日…… 隣国で『真実の愛に目覚めた!』と、どこかで一度は聞いたようなセリフで、 自国の王子に婚約破棄され追放されてしまった“聖女”がやってくる事になり、キャロラインの心は揺れる。 相変わらず肝心のストーリーは分からないけれど、 この世界の本当のヒロインは“ピンク髪のあの女”ではなく……聖女だった!? やっぱり自分……キャロラインは“悪役令嬢”なのかもと再び思い込む──…… そして、そんなキャロラインの前に何故か聖女に婚約破棄したバカ王子まで現れ───!?

【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。 その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。 そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた── ──はずだった。 目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた! しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。 そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。 もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは? その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー…… 4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。 そして時戻りに隠された秘密とは……

処理中です...