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23. 騒動の後で
しおりを挟む「エリィ様が意味不明な事ばかり言っている?」
「らしいぞ」
──パーティの後。
学院は長期休暇に入ったものの、事件の諸々の処理をしていた私達は休みなのにほぼ毎日顔を合わせている。
「自分はこの世界の主人公で中心となる存在」
「……え」
「アレンディスも俺も皆、私の事を好きになるはずなのに」
「えぇ?」
「なのに、上手くいかなかったばかりか知らない事もたくさん起きた」
「は?」
エリィ様は何を言っているの?
「しかも、更におかしな事を言っていたらしいぞ」
「もっと?」
「本来の私は魅了の力を授かるはずでは無かった。でも、ある日力に目覚めたの。これは神様がくれた私へのプレゼント! 有効利用しなくちゃと思った。だから、私は皆にかけて回ったのよ……だとさ」
その意味不明な考えに背筋がゾクッとした。
拘束後に鑑定した結果、やはり魅了のスキル持ちだったと判明したとは聞いたけれど……
「ちなみに、魅了の力は絡んで来て面倒だった人達にも黙らせる為に使ってみたとも証言しているらしい」
(それって、リシェリエ様の取り巻きで、殿下の側近の婚約者の人達の事よね……)
「あと、俺達が推理したように、やはりリシェリエ嬢の浄化の力の事は知っていたみたいだ」
「それはどこで知ったのかしら……」
「他にも色々問い詰めているんだが、全部、私が主人公だからって理由で全然、話にならないと」
それは、もう不気味としか言えない。
「あと、ずっと嘆いてるのがフィーリーの事だそうだ」
「私?」
「あんな女は知らない。ずっとおかしいと思っていた、何者なのよ! だとさ」
「……」
私の方こそあなたは何者なのかと問いたい。
「本人は泣いて嫌がっているが、当然、学院は退学。マドリガル男爵家からも縁を切られて魔力も永遠に封じられた上で修道院に入れられるそうだ」
「……見事にしでかした事が自分に返って来たわね」
「本当にな。貴重な光の使い手なのにって声もあったそうだが、あれの更生は厳しいという結論になったそうだ」
ルシアンが頷きながらそう言った。
「アレンディス殿下は?」
魅了にかかってしまいリシェリエ様に暴言を吐いたアレンディス殿下。
目が覚めた後、事態を収束させる為とは言え、魔力封じのスキルを使った事はやはり罪に問われてしまったのかしら?
「謹慎してる」
「事が事だけに意見は真っ二つ」
「あぁ……」
(悪い事にならなければ良いのだけど)
「はっ! そうよ。ルシアンは? あなたは平気なの?」
「俺?」
「だって殿下の魔力制御を解いたのルシアンでしょ?」
私の言葉にルシアンがあっ……という顔をした。
あのタイミングで……私の無効化の力が解除された時にそんな事が出来る人なんてルシアンだけだもの。
「分かってたのか」
「他にいないでしょ?」
ルシアンはバツが悪そうな顔をしながら言う。
「俺は大丈夫。特にその事の追求はされていない」
「そう……」
私はホッと安堵した。
「まぁ、アレンディスはリシェリエ嬢が庇っているから多分大丈夫だとは思う」
「え?」
「婚約は破棄するべきという意見に、リシェリエ嬢は絶対に首を縦に振らなかったらしいしな」
「リシェリエ様……」
私にお小言を言いに来ていた時からそうだったけれど、本当に彼女は真っ直ぐな人だと思った。
(確かにリシェリエ様がいれば何でも大丈夫な気がする!)
*****
「本当に申し訳なかった」
今、私とルシアンとリシェリエ様の前で謹慎明けのアレンディス殿下が頭を下げている。
王宮に呼ばれたので何事かと思って来てみれば……
「……頭を上げてくださいな。アレンディス殿下」
「っ! だが!!」
リシェリエ様がそう言ったけれど、殿下は頭を上げる事はせずただ言葉を詰まらせた。
「リシェリエ。僕は魅了の力に取り込まれて、君に酷い暴言を吐いた。それだけでなく君が酷い目に合っている事も知らなかった」
「……」
「そしてそれを助けてくれたのがルシアンとフィーリー嬢、君達だとも聞いた。特にフィーリー嬢、君の属性に助けられたと」
「え?」
「……本当に申し訳なかった。そしてありがとう。心から感謝している」
殿下は私達に感謝の意を示してくれているけど、私には気になる事が1つ。
「あの、アレンディス殿下? 私の属性の事はどなたから聞いたのでしょうか?」
私が、光と闇の力でリシェリエ様を助けた事、私は公にはしていない。
無効化のスキルに関してはあの後、説明はさせて貰ったけれど。
なのに、どうして殿下が知っているの?
「……ラモニーグ公爵からだ」
「お父様が!!」
リシェリエ様が目を丸くして驚いている。
「公爵を責めないでくれ。僕が無理矢理聞き出した」
「だからと言って……! フィーリーさんの秘密を……」
「……僕はリシェリエの身に起きた事も、そして助けてくれた人の事もちゃんと知るべきだと思った。だから公爵も話してくれたんだと思う」
ふぅ、と私はため息をつく。
「アレンディス殿下。私の力の事は公にしないでいただけますか?」
「……? どうしてだ? 貴重な光と闇の使い手なのに」
殿下がそう言いたくなる気持ちは分かる。
特に貴重な光の使い手だったエリィ様を失ったのだからそう思うのも当然──……
「私の属性は昨日今日発現したものではありません。私は自分の属性をずっと隠して生きてきました。それは煩わされたくないからです。それに……私の属性は光と闇ではありません」
「──? どういう意味だ?」
殿下が怪訝そうな顔をする。
「いいのか? フィーリー」
ルシアンが真剣な顔で私に問う。属性を明かす事を心配しているのだろう。
「良くは無いけど、隠せる気がしない」
「……そうか」
そこまで言うとルシアンはそれ以上は口を噤んだ。私の意思を尊重しくれるみたいだ。有り難い。
「……殿下、私の属性は光と闇だけではありません。私は──全て全部の属性を使えるのです」
「「!?」」
私の説明に殿下とリシェリエ様がカチンと固まった。
「…………」
「…………」
2人は暫く固まったままだったけど、ようやくアレンディス殿下が口を開いた。
「……全てって、全属性!? そんな事が有り得るのか……? 聞いた事がないぞ!?」
「フィーリーは嘘をついていない。俺がこの目で確認した」
ルシアンが口添えに殿下は頷くしかない。
一方のリシェリエ様は未だにポカンとした顔をしている。
「あえてスキルを使って属性を隠していました。黙っていて申し訳ございません」
「無効化……そうか。あ、あぁ、それは……そうだろう……」
私が頭を下げると、アレンディス殿下も私という存在の危険性を察知したのか神妙な顔をしている。
それだけ、私は異端だという事。
「しかし、それではフィーリー嬢、君はこの先どうするつもりなんだ?」
「…………」
アレンディス殿下のその疑問は最もで。
だけど、私自身が未来の行く末を決められないでいるので、何と答えたら良いのか分からない。
「フィーリーの力はこれ以上は絶対に公にはしないし、力を使わせる様な事も俺がさせない。フィーリーの事は俺が守ると決めている。だから、アレンディス。お前もこの事は口外禁止だ」
私が戸惑っている横でルシアンが淡々と言い放った。
「ルシアン?」
ルシアンの発言にアレンディス殿下は驚いている。
私も戸惑う。側にいろ、とは言われたけれど私はまだ返事をしていないのに──
「ルシアン? そんな殿下の前で宣言してしまっては」
後戻り出来なくなってしまうのに。
「前にも言っただろ? お前を守れるのは俺だけだと」
「それはそうだけど、私は」
「いいから、お前はこれからも俺の隣に居ればいい」
ルシアンが私の腕を引っ張るとそのまま、私を抱き込んだ。
(ひぇぇええ!?)
リシェリエ様の「きゃ!」って、照れた声も聞こえる。
「ル、ルシアン!?」
「ルシアン、まさかお前──」
「あぁ」
混乱する私の横で、アレンディス殿下が何かに気付いたかのような声を上げる。
そして2人の中では話が通じ合ったようだ。
(いったい何なの!?)
「……簡単にはいかないぞ?」
「分かってる。だからこそアレンディス。お前に打ち明けた」
「そういう事か。ちゃっかりしている」
「リシェリエ嬢は、すでに誓ってくれているからな。そこにお前が揃えばかなり心強いと言えるだろうよ」
ルシアンと殿下は二人で盛り上がりを見せている。
一方の私には何の話かさっぱり分からないのだけど。
「フィーリーさん」
「リシェリエ様?」
やっと放心状態から立ち直ったと思われるリシェリエ様が私に声をかけてきた。
そして真剣な面持ちで言った。
「私も口外しないと誓いますわ。あなたは私の恩人ですもの」
「あ、りがとうございます……!」
「それにしても、只者では無いと思ってましたけど、まさか全属性だとは驚きました」
「黙っていて申し訳ございません」
「いいのよ、言えない気持ちも分かるから。私だって希少な闇属性として注目を浴びてきましたもの」
そう言ってリシェリエ様は優しく微笑んだ。
希少な属性の持ち主は、国からも魔術協会からも気にされる存在だ。リシェリエ様もきっと様々な気苦労があったに違いない。
「ルシアン様にも誓いましたけど、私は、私とラモニーグ公爵家は今後、あなたとルシアン様の味方です……もちろん殿下も。それを忘れないでくださいな」
「え? はい……」
誓いとか味方とか本当に何の話なのか教えて欲しい。
────私がこの時のやり取りや、言葉の意味を知るのはもう少し先の事になる。
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