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24. 未来の大魔術師様のお嫁さん
しおりを挟む「フィーリー。大事な話がある」
「ルシアン?」
殿下達との話を終えて二人っきりになると、ルシアンが私を抱きしめたまま真面目な顔と声でそう言った。
(そ、そう言えば何で私は抱きしめられているの!?)
意識し始めたら恥ずかしさが止まらない。
自分の頬が火照っているのが分かる。
「あ、さっきの側にいろって話? そ、それなら私は──」
「なぁ、フィーリー。俺は欲しいものがあるんだ」
「?」
突然何の話かしら?
「そ、それは私にあげられる物?」
「そうだな」
「なぁに? 高い物は買えないわよ?」
「物じゃない。俺が欲しいのは───……」
そう言いながら、ルシアンは一度ギュッと私を抱きしめた後、少し身体を離したと思ったら顔を近づけて来た。
(………………え!?)
チュッ
私の額に暖かいものが触れたのが分かった。
「!?!?」
「ははは、その顔が見たかった」
「はぁ!?」
動揺している私を見ながら、ルシアンが満足そうに頷く。
それよりも今のは……キス? キスだよね??
「欲しいものがあるって言っただろ? それを貰ったんだよ」
「意味が分からないわよっ!!」
「……本当に? お前は本当に分からないのか?」
「え?」
そう言って私の顔を見つめるルシアンの顔はとても真剣だ。
私の心臓がドクンッと大きく跳ねた。
(だって……だって!)
そっとルシアンの手が私の頬に触れる。また、私の心臓が大きく跳ねる。
「フィーリー」
ルシアンの声が甘い。これは絶対に私の気のせいではない。
「ずっと気がかりだった後ろ盾も手に入れた。ラモニーグ公爵家と王家のアレンディス。これなら誰にも文句を言わせない」
「な、何の……文句?」
私がおそるおそる聞き返すと、ルシアンはフッと小さく笑った。
「フィーリーを未来の大魔術師の嫁にする事だよ」
「………………え?」
未来の大魔術師の嫁?
未来の大魔術師ってルシアンの事よね?
嫁? 嫁って何?
(どういう事!?)
脳内パニックで全然理解が追い付かない!
私の目がぐるぐると泳ぐ。
「……本当に鈍いなぁ、そんな所も可愛いけど」
「かっ!?」
今、可愛いって言った!?
おかしい!
ルシアンがルシアンじゃない!!
───チュッ
そんな、混乱の最中にもう一度、ルシアンが私の額にキスを落とす。
「ちょっ! ルシア……」
「────好きだよ、フィーリー」
「!?」
────スキダヨ?
「俺はずっとフィーリーの事が好きだった」
「……?」
「初めは、子供だったから……俺の地位を脅かすとんでもない奴……そう思ってた」
「……」
「でも、気付いたら好きになってたよ。こういうのって理屈じゃないよな」
ルシアンが、顔を真っ赤にしながらそう口にする。
(これは何? 夢……? 私は夢でも見ているの?)
心臓がバクバクいって、今にも飛び出してしまいそう。
「俺がフィーリーを守りたいと言ったのは、フィーリーの事が好きだからだ」
「ルシ……」
「もう、あんなミスは起こさない。必ずフィーリーを守るよ。だから……」
ルシアンはそこで一旦言葉を切る。
そして、キュッと引き締めた顔で言う。
「来年、学院を卒業したら、俺と結婚してくれ」
「…………っ!」
前にずっと側にいろ。一生守る。
そう言われた時、プロポーズみたいだって勘違いした。
誤解させるような事を言うものだからルシアンは言葉選びが下手くそだって!
(勘違いでは無かった?)
あれは……あの言葉は……本当に私を好きで───?
リシェリエ様やアレンディス殿下と話してた誓いとやらの話は、私を……私と結婚する為の後ろ盾───?
ボンッ!
一瞬で私の顔が真っ赤になる。
「フィーリー?」
顔を真っ赤にして涙目になった私の顔をルシアンが覗き込んで来る。
「ルルルルルルシアン……」
「新しい呼ばれ方だな、実に斬新だ」
「ババババババカ!」
「ははは、分かってるよ、フィーリー」
そう言って微笑むルシアンの顔はカッコよくて、またその声が優しくて甘くて……胸がキュンとする。
「フィーリーは鈍いからな。まずは俺の気持ちを知って男として意識してもらって、それから……」
「好き!」
「そうそう、それで一年くらいかけて俺の事を好きになってもら…………ん?」
ルシアンが果て? と首を傾げる。
「私も……好きよ。ルシアンの事が好きなの!」
「…………」
「ずっとルシアンの隣には私がいたいの!」
私はそう言ってギューっとルシアンに抱き着く。
「フィ、フィ、フィ、フィーリー!?」
「好きよ、ルシアン」
「っっっ!!」
ルシアンの顔も一瞬で真っ赤になった。
そして、涙目になりながら叫ぶ。
「う、嘘だ!」
「……は? 何でよ?」
「げ、激にぶのフィーリーだぞ? こ、これは何かの罠、そ、そうだ、これは友達としての好き……」
「~~~!」
どうやら、鈍感らしい私が悪いとは言え、まさか信じて貰えないとは!
「ルシアン!」
「は、はい!?」
チュッ!
私は軽く怒鳴った後、自分の顔をそっと近付けてルシアンの頬にそっとキスをする。
ルシアンは目を丸くして私の顔をまじまじと見つめてくる。
「…………フィーリー?」
「と、友達には……こんな事しないわよ?」
「っ!」
「す、好きな人のル、ルシアンだから、するんだから!」
「!」
私が顔を真っ赤にしながらそう伝えると、ルシアンの片方の手がそっと私の頬に触れる。
(擽ったい……)
「フィーリー……」
小さく私の名前を呟いたルシアンの顔が近づいて来る。
「……フィーリー、好きだよ。俺の嫁に……」
「っ! な、なってあげるわよ! ルシアンみたいな型破りの、み、未来の大魔術師様の嫁なんて……わ、私しか務まらないもの!!」
「ははは、違いない」
「……」
「愛してるよ、フィーリー……」
「!!」
その言葉と共に私達の唇がそっと重なった────
───こうして、腐れ縁でライバル(?)だった私達の関係をガラッと変える事になった“ピンク色頭の魅了事件”は幕を閉じた。
そして…………
「こら、フィーリー! 手を抜くな! 真面目にやれ!」
「失礼ね! 私は真面目にやってます!」
「どこがだー!」
今日も私とルシアンは傍から見たらどうでもよさそうな事で言い争いをしている。
「……相変わらずルシアンは、キャンキャン吠える子犬みたいだなぁ」
「フィーリーさんは、飼い主かしら?」
「そんな所だな」
アレンディス殿下とリシェリエ様はそんな光景にすっかり慣れてしまったのか、私達を呆れた目で見ていた。
「でも、凄いわよね、ルシアン様。侯爵家も魔術師協会も本当に黙らせてしまったんだから。愛の力ね!」
「まぁ、散々、僕達の名前は利用したみたいだけどね」
「誓ったかいがあったじゃない。役に立てて良かったわ!」
「そうだけどね……未来の大魔術師夫妻は賑やかだなぁ」
なんて会話を二人がしている事を知らない私は、キャンキャン追いかけて来る子犬ルシアンに向かって言う。
「ルシアン、大好きよ」
「……うっ!」
私がこう言うと顔を真っ赤にしてくれるルシアンが好き!
でも、やりすぎると……
「…………フィーリー。覚悟しろ?」
「あ……」
グイッと腕を掴まれたと思ったらあっという間にルシアンの顔が近付いてくる。
(!! 皆が見てるのに!!)
───チュッ
(あぁぁぁ、またーー!)
こうして、私への愛情表現を隠す事ををやめた、未来の大魔術師様は、今日も元気に私を困らせて来ます!
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
これで、完結です!
ここまでお読み下さりありがとうございました!
ラスト2話を一度に更新したのは完全に私の都合です。
(明日は忙しくて、予約投稿だと完結表示に出来ないので……)
この話は珍しくファンタジーっぽく、魔法とか出してみましたが難しいですね……
ちなみに感想返信でも書いたのですが、この話、元々は今から1年以上前、まだ投稿を開始する前に個人で楽しむ為だけに書いていた話から引っ張って来たものです。
保存データによると書いた時期は初投稿作の「私を裏切った~」の次あたり。
公開するにあたってかなり書き直しましたが話の大筋とか人物描写はそのままでしたので、ピンクとか、縦ロールとか言ってる辺り当時の私も今の私も変わらないですね。
楽しんで貰えていたなら良いのですが。
イチャイチャの少なさとリシェリエ様の行く末がちょっと心残りなので番外編書けたらいいなぁと思いつつ……
ここまでお付き合いありがとうございました!
毎度の事ながら新作も開始しています。
『契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません』
今回書けなかった分、イチャイチャ書きたいなぁって思って書き始めたのですが、
変な設定入れたせいでちょっとどうなるかは未定……
こんな私ですが、これからものんびりやって行こうと思います。
よければこれからも、お付き合い下さい!
ありがとうございました!
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