【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

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番外編 もう一つの不器用な恋 ~リシェリエ&アレンディス~

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『アレン様!』
『リシェリエ?』
『今日も遊びに来ちゃった!』
『はぁ……また、君は……』
『いいじゃない!  さ、今日も一緒に遊びましょ!』

  ラモニーグ公爵家の娘である私、リシェリエと婚約者のアレンディス殿下は幼い頃からの付き合いでいわゆる幼馴染。
  小さな頃はお父様にくっついて一緒に王宮に行くたびに私はアレンディス殿下と遊んで仲良く過ごしていた。

  ──王子と公爵令嬢という関係。
  魔力判定を終えた私が希少な闇属性だった事。魔力量も多かった事。

  それらも踏まえて私は当然のようにアレンディス殿下の婚約者に選ばれた。

  あの時は本当に嬉しかった。
  私はアレンディス殿下……アレン様の事がずっとずっと好きだったから。


  (だけど───)


  アレン様が、私を避け始めたのはが、原因だったと今でも私は思っている───


『リシェリエ!  リシェリエ、大丈夫!?  誰か!  早く……リシェリエが!!』

  いったい自分の身に何が起きたのか分からず、ただひたすら身体の痛みに耐えていた私に聞こえて来たのはアレン様の泣きじゃくる声。

『アレン……さま』

  私は弱々しい声でしか返せない。

『ごめん、僕のせいでリシェリエが!!』
『私……は、大丈夫……アレンさま、のせいじゃ……ない』
『違う!  僕のせいだ』

  駄目だわ。アレン様は気が動転している。きっと私の言葉なんて届かない。

『アレン……』
『リシェリエ!  しっかりしてくれ!?』

  泣きじゃくるアレン様の顔を見ながらそのまま私は意識を失った───


  あの日、まだ子供だった私達。
  アレン……アレンディス殿下の魔力が、初めて暴走したあの日。

  一緒に遊んでいた私はそれに巻き込まれて大怪我を負った。
  幸い、すぐに駆け付けた大人に治癒の魔術をかけてもらった事もあり、後遺症も何も残らなかったのだけど。

  けれど、この事件は私と殿下の関係をすっかり変えてしまった────



『え?  会えないの?』
『はい。殿下は今日も勉強があるのです。申し訳ないですが、リシェリエ様が訪ねて来てもお断りするように、と言われております』
『そう……』

  あの日からアレン様は私と遊ぶ事をしなくなった。
  勉強が……と言っているけれど何となく言い訳にしか聞こえない。

  更に、魔力制御を掛けられたアレン様はとても生きづらそうにしていて、溌剌としていた笑顔も、その頃から全然見せなくなっていった。

  (アレン様……)

  私はそれを黙って見ているだけ。何も出来ない。婚約者なのにアレン様の事を遠くから見つめるだけの虚しい日々。

  (私は無力だわ……)

  まともに口を聞く事がなくなったまま、無駄に時だけが過ぎていき、やがて私はアレン様への想いだけをどんどん拗らせていった。

  ──前々から言ってますけれど!  殿下に馴れ馴れしく近付かないように!  良いですわね!?

  この言葉はフィーリーさんだけでは無く、果たして何人に向けて口にしたかしら。
  アレン様が少しでも令嬢に笑いかけているだけで私は嫉妬した。

  (私にはもう笑ってくれないのに!  ずるいわ!)

  今の私にあるのはただ“婚約者”という立場のみ。いつか別の女性が現れてアレン様の心を攫っていってしまう……そんな日が訪れる事を私はひたすら怯えていた。

  だから、ピンク色の彼女とアレン様がどんどん仲良くなっていく様子を見ているのは私にはただただ辛かった。



*****



「リシェリエ?  もう一度言ってくれ?」
「ですから、私は殿下との婚約は解消も破棄もしません!」
「なっ!」

  お父様が私の言葉に驚いている。

「何を言っているんだ!  お前はここ何年も殿下から不遇の扱いを受けて来て、今回もいくら魅了の力に掛かっていたとはいえ、公衆の面前で暴言を吐かれているのだろう?」
「そうですわね」
「それに、お前はあのピンク色の頭の女にも狙われた!  それは殿下の婚約者だったせいだろう?」
「そうですわね」
「生命の危機だったんだぞ!?」

  (心配かけた事は申し訳なく思っているわ、お父様……)

  でも、アレン様との婚約が無くなるのは嫌!
  私は絶対に首を縦には振らないわ。

  騒動は全て終わったけれどアレン様は今、謹慎を受けている。
  魔力制御のせいもあったとはいえ、王族なのにあっさり魅了の影響を受けてしまった事、許可を得ずに魔力制御をルシアン様に解かせて“魔力封じ”のスキルを使った事。
  アレン様はそんな事ばかり責められている。

  (あのピンク色の力は強力だったし、魔力封じはどうしてもあの場で必要な事だったのに!)

  それでも、頭の固い人達はなかなか納得しない。
  私のお父様もアレン様との婚約解消を勧めて来た。

「リシェリエ!」
「嫌なものは嫌です。私は絶対に婚約解消はしません!!」
「何故だ?」
「───好きだからです!  アレン様……の事が私は昔から大好きなのです!」
「リシェリエ……」
「他の誰でもない私が、これからのアレン様を支えたいのです!!」


  私はお父様に向かってそう叫んでいた。
  


*****



「本当に申し訳なかった」
  
  結局、色々心配したけれど、アレン様は大きな処分を受ける事もなく、無事に謹慎は解けた。私との婚約も解消という話は聞いていない。

  その日、アレン様は私を含めた3人に謝罪をしてくれた。
  けれど、謝罪はその後、フィーリーさんのとんでもない力の話になってしまい、私とアレン様の関係は有耶無耶になったままだと気付いた私はフィーリーさんとルシアン様から離れて殿下に二人きりで話があります、と伝えた。

「……殿下」
「リシェリエ? 話とは?」
「話は話でしてよ。ダメでしたか?」
「そんな事は無いけれど……それに僕も君に……」

  そう言いながらもアレン様はスっと私から目を逸らす。
 
  (あぁ、まただわ)

  この方は魅了されていてもされていなくても私を避けようとする。
  何だかムカムカしてきたわ!

「殿下……いえ、アレン様!」
「え?」

  私はアレン様に近付いて彼の両頬に手を添えてグイッと私の方を向かせる。

「私を見て下さい!」
「リシェリエ……」
「……アレン様はあの日から私の目を見てくれなくなりました!」
「!!」

  “あの日”という言葉にアレン様がビクッと反応をする。

「私はずっとそれが寂しくて、悲しくて……」
「リシェ……リエ……」
「アレン様は悪くないのに。私はただ巻き込まれただけなのに!」

  泣きたくなんかないのに勝手に涙が溢れて来る。
  視界が滲んでしまってアレン様の顔がよく見えない。

「どうして避けたの?  どうして遊んでくれなくなったの?」
「リシェリエ……すまなかった……本当に……すまなかった……」

  アレン様はポロポロと涙を流す私の目元をそっと拭う。

「……怖かったんだ」
「アレン様……?」
「あの日、怪我をして倒れて意識を失ったリシェリエの姿が僕は今も忘れられない」

  そう話すアレン様の身体が震えている。

「僕の力……土の力があの日、リシェリエを深く傷付けた……いくら魔力制御されても、もし、それが解けてしまったら?  また暴発したら?  その時、僕のそばにリシェリエがいたら、また酷い目に合うかもしれない」
「アレン様……」
「そう思ったらリシェリエとどう接したらいいのか分からなくなって……分からないまま時だけが過ぎていった……」

  (なんて事。私と同じような事を言っているわ……)

  もうこれは、グズグズ泣いている場合ではないわね。
  私も自分で涙を拭ってアレン様と向き合う。

「アレン様!」
「……リシェリエ?」
「私達はお互い未熟でしたわ。ダメダメのダメダメです」
「え?」

  アレン様が驚いた顔をしている。

「アレン様は勝手に怖がって、私から離れればいいなんて一人で結論を出して、私も私でアレン様にぶつかる勇気が無くて……」
「リシェリエ……すまない」

  再び俯くアレン様。
  違う!  私はそんな顔をさせたかったんじゃないのよ!

「好きですわ、アレン様」
「!?」
「あなたの事がずっとずっと私は好きなのです。ですから、私はこの先何があってもあなたのそばを離れたりはしませんわ!」

  アレン様の目が大きく見開かれる。

「リシェリエが僕を……?  だから、君はこんな事になったのに僕との婚約を……」
「そうですわ!  解消も破棄もしてあげません!  諦めてくださいませ」

  アレン様の顔が泣きそうになった。

「…………う」
「何ですの?  よく聞こえませ……」

  そう私が聞き返そうとした時、フワッとあたたかい温もりに包まれた。

「アレン……様!?」
「ありがとう……リシェリエ……本当に君は……」

  アレン様は声と身体が震えていてその先は言葉にならなかった。
  それでも、アレン様と話が出来て向き合えただけで私は嬉しいと思った。





「こら、フィーリー!」
「もう!  ルシアン、しつこいわよ!?」

  今日も相変わらずフィーリーさんとルシアン様は楽しそうにじゃれ合っている。

  (いいわねぇ……どうせ、この後はイチャイチャになるのよー……)

  なんて思って微笑ましく見ていたらやっぱり二人はどんどん甘い雰囲気になっていく。
  そんな私の元へアレン様がやって来た。

「リシェリエ?  何を見てる?  あぁ、あの二人。今日はもうイチャイチャしているな」
「今日も仲良しよ…………ちょっと羨ましい……わ」
「リシェリエ?」

  私が変な事を呟いたせいでアレン様が不思議そうな顔を向けてくる。
  私は慌てて首を横に振る。

「な、何でもなくてよ……別に二人が羨ましいなんて言ってなー……」
「…………リシェリエ。ずっと君に言わなくちゃと思っていた事があるんだけど」
「何ですの?」

  そう口にしたアレン様の顔がほんのり赤い。何かしら?

「うん、僕はー……」



  ───私がずっとずっと聞きたかった言葉がようやく聞けたのは、このすぐ後の事でした。



✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


お待たせしました。
チラチラとリクエストのありました、リシェリエ様の話です。

リシェリエ様がひたすら一途だな、と。
主人公カップルはとりあえず、喧嘩しながらイチャイチャしている模様。
どちらのカップルもこの先は仲良くやっていってくれると思います!

お読み下さりありがとうございました!

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感想 131

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みんなの感想(131件)

こなみつ
2022.06.16 こなみつ
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ひより
2022.05.16 ひより
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みりあむ
2022.05.12 みりあむ
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