6 / 439
第一部:第一章 夢への第一歩
(二)友と①
しおりを挟む
(二)
筆記試験の次は体力試験となっていた。
短距離走、腕立て、重量引きなどが行われた。
ラーソルバールは、短距離走で全体の三番目と、順調な滑り出しをしたが、腕立てはなんとか基準五十回クリア、重量引きは全体の丁度真ん中程度と筋力的にはそこそこ、という結果に終わった。
「中々厳しいね」
シェラが大粒の汗を額に浮かべ戻ってきた。
「どうだった?」
「ダメダメ。短距離走は真ん中より上、腕立てはクリアしたけど、重量引きは中の下くらいかも」
腕で大きくバツを作り、苦笑いで答えると、つられるように、ラーソルバールも苦笑いで返した。そして、二人で合わせたようにため息をついた。
「お昼を食べて、心機一転。頑張ろうか!」
拳を握りしめ、気合いを入れる。
「食欲があるだけ、体力も気力も残ってるってことだよね」
ため息をついたのもどこへやら、シェラの顔にも笑顔が戻った。
運動の後の食事も、試験のひとつと言われている。
運動によって食欲が減退するようならマイナス。そもそも少食であれば、騎士としての体作りや、成長に支障が出ると考えられている。
貴族の箱入達には、体力試験は中々きついものらしく、音を上げる確率が高い。そこで耐えても、食事を終えるまでに脱落する者も少なくない。
今年も昼前までに、一割程が試験から去ることになった。
覚悟はしていても、体がついてこないという事を、身をもって実感したに違いない。
受験者達の昼食は、騎士学校の食堂で提供されることになっており、個人が用意するのではない。
貴族による、華美な食事の持ち込み規制や、食事が用意出来ない者達を、救済する事を目的としている。皆が平等に食事を摂ることで、試験に影響が出ないように、という配慮が根本にある。
また、入学後も皆が平等に同様の食事を摂ることになる、という事前告知のような意味合いも有る。
盛り付け量は個人の申告で増量できるようになっており、育ち盛りの胃袋を満たすのに十分な量を確保している。 見た目は華美ではないが、宮廷料理人に学んでいるというだけあり、味の方はかなり良いと評判である。
「このパン美味しい! 外がカリカリで、中がしっとりしてて、バターの良い香り」
噂に違わぬ食事の出来に、ラーソルバールはやや興奮気味に感想を述べた。
「家で作れないかな」
「うちには大きな竃がないからなぁ。シェラの家にはあるの?」
「うちの窯も、そんなに大きくないな」
同世代の女の子と、何気ない会話をするものも楽しい。近所に年の近い女の子が居ないため、こういう機会は初等学校以来だった。
筆記試験の次は体力試験となっていた。
短距離走、腕立て、重量引きなどが行われた。
ラーソルバールは、短距離走で全体の三番目と、順調な滑り出しをしたが、腕立てはなんとか基準五十回クリア、重量引きは全体の丁度真ん中程度と筋力的にはそこそこ、という結果に終わった。
「中々厳しいね」
シェラが大粒の汗を額に浮かべ戻ってきた。
「どうだった?」
「ダメダメ。短距離走は真ん中より上、腕立てはクリアしたけど、重量引きは中の下くらいかも」
腕で大きくバツを作り、苦笑いで答えると、つられるように、ラーソルバールも苦笑いで返した。そして、二人で合わせたようにため息をついた。
「お昼を食べて、心機一転。頑張ろうか!」
拳を握りしめ、気合いを入れる。
「食欲があるだけ、体力も気力も残ってるってことだよね」
ため息をついたのもどこへやら、シェラの顔にも笑顔が戻った。
運動の後の食事も、試験のひとつと言われている。
運動によって食欲が減退するようならマイナス。そもそも少食であれば、騎士としての体作りや、成長に支障が出ると考えられている。
貴族の箱入達には、体力試験は中々きついものらしく、音を上げる確率が高い。そこで耐えても、食事を終えるまでに脱落する者も少なくない。
今年も昼前までに、一割程が試験から去ることになった。
覚悟はしていても、体がついてこないという事を、身をもって実感したに違いない。
受験者達の昼食は、騎士学校の食堂で提供されることになっており、個人が用意するのではない。
貴族による、華美な食事の持ち込み規制や、食事が用意出来ない者達を、救済する事を目的としている。皆が平等に食事を摂ることで、試験に影響が出ないように、という配慮が根本にある。
また、入学後も皆が平等に同様の食事を摂ることになる、という事前告知のような意味合いも有る。
盛り付け量は個人の申告で増量できるようになっており、育ち盛りの胃袋を満たすのに十分な量を確保している。 見た目は華美ではないが、宮廷料理人に学んでいるというだけあり、味の方はかなり良いと評判である。
「このパン美味しい! 外がカリカリで、中がしっとりしてて、バターの良い香り」
噂に違わぬ食事の出来に、ラーソルバールはやや興奮気味に感想を述べた。
「家で作れないかな」
「うちには大きな竃がないからなぁ。シェラの家にはあるの?」
「うちの窯も、そんなに大きくないな」
同世代の女の子と、何気ない会話をするものも楽しい。近所に年の近い女の子が居ないため、こういう機会は初等学校以来だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました
菱沼あゆ
ファンタジー
妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。
残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。
何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。
後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。
(小説家になろうでも掲載しています)
王子よ、貴方が責任取りなさい
天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」
王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。
それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。
だけど、私の答えは……
皆さんに知ってほしい。
今代の聖女がどんな人物なのか。
それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる