溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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「──誰だ! 邪魔を……ぐはっっ!!」

 ふっと掴まれた首から両手がはなれたかと思うと、ミックの荒声と共に、ガッという鈍い音がほとんど同時に耳に響いてきた。何が起きたか確かめる前に、気道に空気が急激に流れ込んできたため、フィオナはゲホゲホと咳込んだ。

 頭がぐわんぐわんと痛み、何も思考が働かない。涙がボロボロとこぼれる。

「──フィオナ!」

 名を呼ばれる。不快なミックのものではない。顔をあげて、確かめたい。確かめたいのに、咳が止まらない。うつ向く視界の中。こちらに駆け寄り、膝をつく人物の腕が見えた。すがり付くように、力の入らない指でその腕の服の裾を掴む。

「……あ……ゲホッ……ゲホッ」

「大丈夫だ。無理に話さなくていい」

 優しく響いた声色に、フィオナの心が少し落ち着いていく。息を整えつつ、ゆっくりと顔をあげた。そこには、心配そうにこちらを見つめる、真っ青な顔をしたニールがいた。

「……ど、して……こんな、早く……」

 質問の意図を察したニールが、フィオナの背をさすりながら答える。

「昨日、お前が言っていただろう。朝も図書室で勉強をしていると。特に用もないし、人に教えるのはわたしの復習にもなる。そう思って──」

 ぴくっ。
 ニールが言葉を切り、顔を横に向けた。そこには、顔だけ横に向け、うつ伏せに倒れたミックがいた。

「……うっ……」

 気を失っているミックが、小さくうなる。目を覚ました様子はない。だが、ミックの存在に気付いたフィオナは「……っ!」と、声にならない悲鳴をあげた。

「大丈夫。大丈夫だ」

 ふわっ。
 ニールが優しく、フィオナの身体を両腕で包んだ。大丈夫だと。何度も繰り返す。

 ひどく心地いい声と体温。匂いに、フィオナの強張った全身から力が抜けていく。


 ──わたし、このまま終わりたい。


 その願いを最後に、フィオナの意識はそこで途切れた。



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