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次の日の夕刻。
リアは一人、図書室にいた。もともと本は好きだったが、最近はずいぶんとご無沙汰だったため、本を借りに来ていた。恋をすると、女は心の余裕を失ってしまうものなのだろうか。そんなことをリアは頭の隅で考えた。
図書室には、数えるほどの人数しかいない。場所が場所だけに、ひっそりと静まり返っている。リアが本棚と本棚の間で本を物色していると、こちらに向かってくる足音が聞こえた。自然とそこに目を向ける。本棚の影から姿をあらわしたのは、アビーだった。
とっさに名を呼びそうになったが、リアは口を閉じ、視線を逸らした。昨日はずいぶんと挑発的なことを言ってしまったという自覚はあった。アビーの性格からして、自分とはもう、目も合わせたくないだろう。そう思ったから。
すぐに何処かに行くだろう。そう考えていたリアの元に、アビーがゆっくりと近付いてくる気配がした。ここの本棚に用があるのかと、リアがアビーに背を向け、この場所を譲ろうとしたとき。
アビーがカバンからなにかを取り出すのを目の端で捉えた。それがなにかを理解したとき、リアはぞっとし、顔面蒼白になった。
それは、剥き出しの短刀だった。アビーが父親の部屋から無断で持ち出したものだ。アビーがその切っ先をリアに向けたまま、小さく口を開いた。
「……私のお兄様を返して」
リアは血の気の引いた顔で、後退りしていく。
「……返すもなにも、わたしとモーガン様はもう婚約者でもなんでも……っ」
「──返して!!」
アビーが短刀を振り下ろす。張り上げられた声に反応した図書室にいる生徒たちが一斉にリアたちがいる方向に目を向ける。本棚の間からリアが飛び出す。追いかけるように、短刀を振り上げたアビーが出てきた。
悲鳴があがる。腰を抜かす者や、図書室から慌てて飛び出す者がいたが、アビーの狙いは一人だ。他の者には目を向けず、リアだけを追いかける。不幸なことに、図書室にいたのは女子生徒のみで、アビーの鬼のような形相に震えあがるばかりで、リアを助ける余裕のある者はいない。
リアが図書室から飛び出す。誰か。誰か助けて。恐怖に震えながら必死に足を動かす。廊下の開け放たれた窓から、外を見る。学園の出入口に向かう複数の人の中。見覚えのある一人の背中を見つけたとき、リアはその人物の名を力の限り叫んでいた。
「──レナルド様っ!!」
リアは一人、図書室にいた。もともと本は好きだったが、最近はずいぶんとご無沙汰だったため、本を借りに来ていた。恋をすると、女は心の余裕を失ってしまうものなのだろうか。そんなことをリアは頭の隅で考えた。
図書室には、数えるほどの人数しかいない。場所が場所だけに、ひっそりと静まり返っている。リアが本棚と本棚の間で本を物色していると、こちらに向かってくる足音が聞こえた。自然とそこに目を向ける。本棚の影から姿をあらわしたのは、アビーだった。
とっさに名を呼びそうになったが、リアは口を閉じ、視線を逸らした。昨日はずいぶんと挑発的なことを言ってしまったという自覚はあった。アビーの性格からして、自分とはもう、目も合わせたくないだろう。そう思ったから。
すぐに何処かに行くだろう。そう考えていたリアの元に、アビーがゆっくりと近付いてくる気配がした。ここの本棚に用があるのかと、リアがアビーに背を向け、この場所を譲ろうとしたとき。
アビーがカバンからなにかを取り出すのを目の端で捉えた。それがなにかを理解したとき、リアはぞっとし、顔面蒼白になった。
それは、剥き出しの短刀だった。アビーが父親の部屋から無断で持ち出したものだ。アビーがその切っ先をリアに向けたまま、小さく口を開いた。
「……私のお兄様を返して」
リアは血の気の引いた顔で、後退りしていく。
「……返すもなにも、わたしとモーガン様はもう婚約者でもなんでも……っ」
「──返して!!」
アビーが短刀を振り下ろす。張り上げられた声に反応した図書室にいる生徒たちが一斉にリアたちがいる方向に目を向ける。本棚の間からリアが飛び出す。追いかけるように、短刀を振り上げたアビーが出てきた。
悲鳴があがる。腰を抜かす者や、図書室から慌てて飛び出す者がいたが、アビーの狙いは一人だ。他の者には目を向けず、リアだけを追いかける。不幸なことに、図書室にいたのは女子生徒のみで、アビーの鬼のような形相に震えあがるばかりで、リアを助ける余裕のある者はいない。
リアが図書室から飛び出す。誰か。誰か助けて。恐怖に震えながら必死に足を動かす。廊下の開け放たれた窓から、外を見る。学園の出入口に向かう複数の人の中。見覚えのある一人の背中を見つけたとき、リアはその人物の名を力の限り叫んでいた。
「──レナルド様っ!!」
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