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「お兄様、お兄様!」
モーガンの教室へと駆けてきたアビーは、モーガンに抱きついた。モーガンが「どうした?」と冷静に、静かに問いかける。前なら、必死に事情を聞いてきてくれたのに。哀しく思いながらも、アビーは早口にまくし立てた。早く伝えたい。その思いが強かったから。
「私、男子生徒の方に身体を強く押されて、倒れそうになったのです。本当に危なかったんですよ。それなのにリア様が、ひどいことを言ったのです」
「……なんて?」
「それは言いがかりだって被害者である私を叱ったのです。そのうえ私を見下し、かわいそうな子などと嘲笑ったんですよ?!」
アビーは想像した。モーガンが怒り、その男子生徒とリアを怒鳴りにいくのを期待した。でも、モーガンは怒るどころか深くため息をついただけだった。
「……アビー。もうそろそろ、私に頼るのは止めなさい」
「?! ど、どうしてそんなことを言うのですか!」
思ってもみないことを言われ、アビーが混乱する。ボロボロと涙をこぼす。
「君がそうなってしまった一番の原因は、私にある。君の言うことをなんでも信じてしまった私のね。本当にすまないと思っている」
「……違います、お兄様……私、謝罪なんて聞きたくはありません……ただ、私はっ」
モーガンはすがるアビーの腕をそっと自身から放した。
「しばらくは、互いに距離を置こう。きっと、その方がいい」
アビーが目を見開く。大好きな兄の声が、遠くから響いた気がした。
それからすぐに、逃げるようにアビーは屋敷に戻った。両親共に屋敷にはいなくて、早退したことを咎める者は誰もなく、アビーは寝台に伏せながらずっと泣いていた。
どうして。どうしてこんなことになってしまったのか。アビーは世界で、たった一人になってしまったような気がしていた。
誰のせい?
そんなのわかっている。
憎い。あの女が憎い。
アビーは強くシーツを握っていたが、ふとなにかを思いついたように、力を抜いた。そしてふらりと立ち上がったかと思うと、主のいない父親の部屋へと向かった。
モーガンの教室へと駆けてきたアビーは、モーガンに抱きついた。モーガンが「どうした?」と冷静に、静かに問いかける。前なら、必死に事情を聞いてきてくれたのに。哀しく思いながらも、アビーは早口にまくし立てた。早く伝えたい。その思いが強かったから。
「私、男子生徒の方に身体を強く押されて、倒れそうになったのです。本当に危なかったんですよ。それなのにリア様が、ひどいことを言ったのです」
「……なんて?」
「それは言いがかりだって被害者である私を叱ったのです。そのうえ私を見下し、かわいそうな子などと嘲笑ったんですよ?!」
アビーは想像した。モーガンが怒り、その男子生徒とリアを怒鳴りにいくのを期待した。でも、モーガンは怒るどころか深くため息をついただけだった。
「……アビー。もうそろそろ、私に頼るのは止めなさい」
「?! ど、どうしてそんなことを言うのですか!」
思ってもみないことを言われ、アビーが混乱する。ボロボロと涙をこぼす。
「君がそうなってしまった一番の原因は、私にある。君の言うことをなんでも信じてしまった私のね。本当にすまないと思っている」
「……違います、お兄様……私、謝罪なんて聞きたくはありません……ただ、私はっ」
モーガンはすがるアビーの腕をそっと自身から放した。
「しばらくは、互いに距離を置こう。きっと、その方がいい」
アビーが目を見開く。大好きな兄の声が、遠くから響いた気がした。
それからすぐに、逃げるようにアビーは屋敷に戻った。両親共に屋敷にはいなくて、早退したことを咎める者は誰もなく、アビーは寝台に伏せながらずっと泣いていた。
どうして。どうしてこんなことになってしまったのか。アビーは世界で、たった一人になってしまったような気がしていた。
誰のせい?
そんなのわかっている。
憎い。あの女が憎い。
アビーは強くシーツを握っていたが、ふとなにかを思いついたように、力を抜いた。そしてふらりと立ち上がったかと思うと、主のいない父親の部屋へと向かった。
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