178 / 190
#178 サユリがいない事の影響 その2
しおりを挟む
サユリが部屋に篭ってしまっても、日常は続く。
食堂は昼の営業を終え、そして夜の営業に突入。
サユリが傍にいない事以外は、これまでと何も変わらない。
壱は体調を崩す事も無く、表向きは平穏に日々が淡々と過ぎて行く。
それも3日も立つ頃には、ほんの僅かではあるが、村人から不満が上がる様になる。
「もう3日になるのに、まだサユリさんは帰って来ないの?」
「やっぱりサユリさんがいないと寂しいわねぇ」
「俺ぁ酒飲みながらサユリさん撫でんのが毎日の楽しみなんだよなー」
クレームと言う程では無い。多少の差異はあれど村のみんなは善人なので、世間話程度にそんな台詞が零れるだけだ。
そして壱もみんなの意見には同意なので、「そうですね」と、しかし理由を知っているので苦笑するしか無い。
今サユリは食事も摂らずひとりで、いや、1匹で頑張っているのだ。
茂造にサユリの食事の事を聞いたら、必要無い、寧ろ邪魔になると言われたのだ。
やはり壱に出来る事は、この村とサユリの無事を願うしか無いのだった。
5日目の朝、壱はすっかりとサユリロスに陥っていた。そう長くは無いとは言え、常に一緒にいた弊害だろうか。
それでも朝食は食べなくてはならない。
壱は水を張った鍋に昆布を入れ、材料を取りに厨房へ。
お腹は空いているし味噌は食べたいのに、いまいち作る気が起こらない。だが茂造に作ってもらうのも申し訳無い。
と言う訳で、今日は手抜きをさせて貰おう。じいちゃんごめん。
冷蔵庫から豚肉と卵、棚から玉ねぎと人参を出し、裏庭から玉ねぎの苗を刈り取って、上に戻る。
まずは米を炊く。強火に掛けて。
玉ねぎは薄切り、人参は銀杏切りに。玉ねぎの苗は小口切りにし、豚肉はスライスしてから一口大に。
米の鍋が沸いたので、弱火に落としておく。
次に鰹節を削る。引き削りももうすっかりと慣れたものだ。
昆布を入れた鍋を火に掛け、沸く寸前に昆布を引き上げる。そこに削った鰹節を入れ、火を止める。
取り出した昆布は適当に角切りにしておく。鰹節も沈んだので、出来上がった出汁を別の鍋に移し、鰹節が残された鍋に昆布を戻す。
出汁の鍋を火に掛け、沸いたら豚肉を入れる。灰汁が出たら丁寧に取って。そこに玉ねぎと人参を追加して、煮ていく。
さて、米の鍋からチリチリとした音がしてきた。炊き上がった様だ。火を止めて解し、蓋をして蒸らす。
その間に洗い物をしてしまおう。少し気持ちが沈んでいても、手際は変わらない壱である。料理をする事が癒しになっているのかも知れない。そう思えば少し楽しくなって来た気がする。
蒸らした米を出汁の鍋に入れ、コトコトと煮込んで行く。
お次は昆布と鰹節。水少量と砂糖と赤味噌を加えて煮詰めて行く。
さて、そろそろ茂造が起きて来る頃だろうか。壱はボウルに卵を割り入れ、解す。仕上げは茂造が朝の支度をしている時にしよう。
するとそのタイミングで茂造がキッチンに顔を覗かせた。
「おはようの。今朝もありがとうの」
「おはようじいちゃん。もうすぐ出来るからね」
壱は仕上げの為に卵のボウルを手にしようとして振り返ると、それを取り損ねてしまう。中身が零れなかったのは幸いだった。
「おはようカピ」
茂造の足元にはサユリの姿が。眠そうに欠伸をひとつ。
「サユリー!」
壱は嬉しくなって破顔し、サユリの元へと駆け寄った。
食堂は昼の営業を終え、そして夜の営業に突入。
サユリが傍にいない事以外は、これまでと何も変わらない。
壱は体調を崩す事も無く、表向きは平穏に日々が淡々と過ぎて行く。
それも3日も立つ頃には、ほんの僅かではあるが、村人から不満が上がる様になる。
「もう3日になるのに、まだサユリさんは帰って来ないの?」
「やっぱりサユリさんがいないと寂しいわねぇ」
「俺ぁ酒飲みながらサユリさん撫でんのが毎日の楽しみなんだよなー」
クレームと言う程では無い。多少の差異はあれど村のみんなは善人なので、世間話程度にそんな台詞が零れるだけだ。
そして壱もみんなの意見には同意なので、「そうですね」と、しかし理由を知っているので苦笑するしか無い。
今サユリは食事も摂らずひとりで、いや、1匹で頑張っているのだ。
茂造にサユリの食事の事を聞いたら、必要無い、寧ろ邪魔になると言われたのだ。
やはり壱に出来る事は、この村とサユリの無事を願うしか無いのだった。
5日目の朝、壱はすっかりとサユリロスに陥っていた。そう長くは無いとは言え、常に一緒にいた弊害だろうか。
それでも朝食は食べなくてはならない。
壱は水を張った鍋に昆布を入れ、材料を取りに厨房へ。
お腹は空いているし味噌は食べたいのに、いまいち作る気が起こらない。だが茂造に作ってもらうのも申し訳無い。
と言う訳で、今日は手抜きをさせて貰おう。じいちゃんごめん。
冷蔵庫から豚肉と卵、棚から玉ねぎと人参を出し、裏庭から玉ねぎの苗を刈り取って、上に戻る。
まずは米を炊く。強火に掛けて。
玉ねぎは薄切り、人参は銀杏切りに。玉ねぎの苗は小口切りにし、豚肉はスライスしてから一口大に。
米の鍋が沸いたので、弱火に落としておく。
次に鰹節を削る。引き削りももうすっかりと慣れたものだ。
昆布を入れた鍋を火に掛け、沸く寸前に昆布を引き上げる。そこに削った鰹節を入れ、火を止める。
取り出した昆布は適当に角切りにしておく。鰹節も沈んだので、出来上がった出汁を別の鍋に移し、鰹節が残された鍋に昆布を戻す。
出汁の鍋を火に掛け、沸いたら豚肉を入れる。灰汁が出たら丁寧に取って。そこに玉ねぎと人参を追加して、煮ていく。
さて、米の鍋からチリチリとした音がしてきた。炊き上がった様だ。火を止めて解し、蓋をして蒸らす。
その間に洗い物をしてしまおう。少し気持ちが沈んでいても、手際は変わらない壱である。料理をする事が癒しになっているのかも知れない。そう思えば少し楽しくなって来た気がする。
蒸らした米を出汁の鍋に入れ、コトコトと煮込んで行く。
お次は昆布と鰹節。水少量と砂糖と赤味噌を加えて煮詰めて行く。
さて、そろそろ茂造が起きて来る頃だろうか。壱はボウルに卵を割り入れ、解す。仕上げは茂造が朝の支度をしている時にしよう。
するとそのタイミングで茂造がキッチンに顔を覗かせた。
「おはようの。今朝もありがとうの」
「おはようじいちゃん。もうすぐ出来るからね」
壱は仕上げの為に卵のボウルを手にしようとして振り返ると、それを取り損ねてしまう。中身が零れなかったのは幸いだった。
「おはようカピ」
茂造の足元にはサユリの姿が。眠そうに欠伸をひとつ。
「サユリー!」
壱は嬉しくなって破顔し、サユリの元へと駆け寄った。
11
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる