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#51 手打ちうどんを海老出汁の味噌汁で。その1
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夜営業に向けての仕込みは続く。壱は昨日カリルに教えてもらったトマトソースを最初からひとりで作る。コンソメを漉すのもひとりでした。
今日は海老と貝があるので、カリルは大忙しである。基本、生食の食材を扱うのにも、調理師免許が必要だとの事。姿まるまるの鶏を捌き、魚を卸し、海老の下処理をし、帆立貝を開く。
他の貝類は壱が担当した。こちらは火を通すので、壱でも出来る。あさりと蛤だった。
入荷されてすぐに塩水に浸し砂出しはさせているので、殻を擦り合わせながら丁寧に洗う。
カリルに言われた通りに調理する。フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて、弱火に掛ける。仄かに香ばしさが立ってきたら貝を入れて、さっと炒め、白ワインを入れる。
軽くアルコールが飛んだら蓋をして蒸す。
数分後に蓋を取ると、コクと甘みのある香りの湯気が上がる。貝も全部綺麗に開いていた。
火を止め、貝を全てバットに開けて冷ます。貝の出汁が染み出している蒸し汁は、網目の細かいザルで漉して、ボウルに入れておく。
貝が手で触れる程度に冷めたら、身を貝殻から外し、蒸し汁に入れて行く。身を乾燥させない為である。
これはカルパッチョに使う。帆立の貝柱と海老とともに、魚に合わせて盛る。
海老と貝が入る日は、特に注文が多いのだと言う。やはり週に1度しか食べられないとなると、人気も上がるのだろう。
ちなみに帆立貝の貝柱以外の食べられる部分は、バターソテーして夜の賄いになるのだそうだ。これは嬉しい。従業員の特権と言うやつだ。
調理台をあらためて見ると、カリルが下処理した海老の頭や殻がボウルにまとめられている。壱はそれを見て、ふと思い付いた。
「じいちゃん、海老の頭と殻、どうすんの?」
「捨てておるがの?」
肉料理の仕込みをしている茂造が応える。
「じゃあ貰って良い? あ、中力粉も少し」
「おや、また何か思い付いたかの? 構わんぞい」
「ありがとう。カリル、海老の頭と殻、これで全部?」
カリルはせっせと魚を卸している。
「そーだよ。何? 何か出来んの?」
「んー……多分大丈夫だと思うんだけど、まだお試しだからさ。巧く出来たら、またみんなにも食べて貰うよ」
「おう! 楽しみにしてんぜ!」
また後でレシピを調べなければ。旨く出来れば良いのだが。
さて翌朝。壱はまた1時間早く起きる。若干睡眠不足を心配したが、まだまだ若いからか元気だ。
うん、ここは睡眠時間と手間を惜しんではいけない。
壱は厨房に降りて冷蔵庫を開くと、昨日の海老の頭と殻が入ったボウル、そして味噌の木桶、棚から中力粉の袋を取り出し、2階のキッチンに戻る。
まずはボウルに中力粉を入れ、作った加塩水を入れながら練って行く。やがて纏まると、全身の力を入れて押して行く。
本来なら踏んでコシを出したいところだが、この世界にはビニールやナイロンなどの袋が無いので難しい。流石に素足では踏みたく無いので、肩と腕の力に頼る。
滑らかに丸くなると、乾燥しない様に濡らした布を被せ、寝かせて置く。
次に鍋を出し、中火に掛ける。充分に熱くなったところで、よく洗った海老の頭と殻を入れ、木べらで乾煎りする。
次第に水分が飛び、焦げ目が付いて来て、香ばしい匂いがしてくる。すっかりと炒まったところで水をひたひたに入れる。
少し火を強めてやると、すぐに沸く。灰汁は殆ど出ない。木べらで殻などを押し潰しながら煮込んで行く。頭からは味噌も出る。これは絶対に美味しくなる筈だ。既に炒めて火は通っているので、臭みも無い筈だ。
日本酒があれば臭み消しにもっと良かったのだろうが、無いのだから仕方が無い。そう言えばこの村で作られるアルコールは全て醸造酒だった。米が育てば日本酒も作れるのでは無いだろうか。
食用の米と日本酒用の米は違うものだと聞いた記憶もあるので、また夜にでも調べてみよう。ああ、調べたい事がまた出来た。
そろそろ良いだろうか。スプーンで掬って味見をしてみる。かなり濃い海老の出汁が出ていた。これは凄い。臭みも無い。旨い。
これに味噌を溶けばどれだけ旨味が増すと言うのか。期待値鰻登り。
海老の出汁をザルで漉す。ザルに残った頭や殻を木べらで押し付け、更に旨味を絞り出して行く。
鍋の中には濃厚な海老の出汁が出来上がっていた。壱は鼻を鳴らし、次の作業に取り掛かる。
まずは、やや大きめの鍋に湯を沸かして。
休ませた小麦の種に打ち粉をして、綿棒で伸ばして行く。慣れない手付きだが、できる限り均等に。
どうにか伸ばせると、折り畳んで行く。そして厚みと同じ幅に、丁寧にゆっくりと切って行く。
包丁にはある程度慣れているし、物を切るのもそれなりに出来る。だがきちんと厳密に、と思うとかなり慎重になった。
まるで息を詰める様に包丁を動かし、切り終わった頃には大きく息を吐いた。
今日は海老と貝があるので、カリルは大忙しである。基本、生食の食材を扱うのにも、調理師免許が必要だとの事。姿まるまるの鶏を捌き、魚を卸し、海老の下処理をし、帆立貝を開く。
他の貝類は壱が担当した。こちらは火を通すので、壱でも出来る。あさりと蛤だった。
入荷されてすぐに塩水に浸し砂出しはさせているので、殻を擦り合わせながら丁寧に洗う。
カリルに言われた通りに調理する。フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて、弱火に掛ける。仄かに香ばしさが立ってきたら貝を入れて、さっと炒め、白ワインを入れる。
軽くアルコールが飛んだら蓋をして蒸す。
数分後に蓋を取ると、コクと甘みのある香りの湯気が上がる。貝も全部綺麗に開いていた。
火を止め、貝を全てバットに開けて冷ます。貝の出汁が染み出している蒸し汁は、網目の細かいザルで漉して、ボウルに入れておく。
貝が手で触れる程度に冷めたら、身を貝殻から外し、蒸し汁に入れて行く。身を乾燥させない為である。
これはカルパッチョに使う。帆立の貝柱と海老とともに、魚に合わせて盛る。
海老と貝が入る日は、特に注文が多いのだと言う。やはり週に1度しか食べられないとなると、人気も上がるのだろう。
ちなみに帆立貝の貝柱以外の食べられる部分は、バターソテーして夜の賄いになるのだそうだ。これは嬉しい。従業員の特権と言うやつだ。
調理台をあらためて見ると、カリルが下処理した海老の頭や殻がボウルにまとめられている。壱はそれを見て、ふと思い付いた。
「じいちゃん、海老の頭と殻、どうすんの?」
「捨てておるがの?」
肉料理の仕込みをしている茂造が応える。
「じゃあ貰って良い? あ、中力粉も少し」
「おや、また何か思い付いたかの? 構わんぞい」
「ありがとう。カリル、海老の頭と殻、これで全部?」
カリルはせっせと魚を卸している。
「そーだよ。何? 何か出来んの?」
「んー……多分大丈夫だと思うんだけど、まだお試しだからさ。巧く出来たら、またみんなにも食べて貰うよ」
「おう! 楽しみにしてんぜ!」
また後でレシピを調べなければ。旨く出来れば良いのだが。
さて翌朝。壱はまた1時間早く起きる。若干睡眠不足を心配したが、まだまだ若いからか元気だ。
うん、ここは睡眠時間と手間を惜しんではいけない。
壱は厨房に降りて冷蔵庫を開くと、昨日の海老の頭と殻が入ったボウル、そして味噌の木桶、棚から中力粉の袋を取り出し、2階のキッチンに戻る。
まずはボウルに中力粉を入れ、作った加塩水を入れながら練って行く。やがて纏まると、全身の力を入れて押して行く。
本来なら踏んでコシを出したいところだが、この世界にはビニールやナイロンなどの袋が無いので難しい。流石に素足では踏みたく無いので、肩と腕の力に頼る。
滑らかに丸くなると、乾燥しない様に濡らした布を被せ、寝かせて置く。
次に鍋を出し、中火に掛ける。充分に熱くなったところで、よく洗った海老の頭と殻を入れ、木べらで乾煎りする。
次第に水分が飛び、焦げ目が付いて来て、香ばしい匂いがしてくる。すっかりと炒まったところで水をひたひたに入れる。
少し火を強めてやると、すぐに沸く。灰汁は殆ど出ない。木べらで殻などを押し潰しながら煮込んで行く。頭からは味噌も出る。これは絶対に美味しくなる筈だ。既に炒めて火は通っているので、臭みも無い筈だ。
日本酒があれば臭み消しにもっと良かったのだろうが、無いのだから仕方が無い。そう言えばこの村で作られるアルコールは全て醸造酒だった。米が育てば日本酒も作れるのでは無いだろうか。
食用の米と日本酒用の米は違うものだと聞いた記憶もあるので、また夜にでも調べてみよう。ああ、調べたい事がまた出来た。
そろそろ良いだろうか。スプーンで掬って味見をしてみる。かなり濃い海老の出汁が出ていた。これは凄い。臭みも無い。旨い。
これに味噌を溶けばどれだけ旨味が増すと言うのか。期待値鰻登り。
海老の出汁をザルで漉す。ザルに残った頭や殻を木べらで押し付け、更に旨味を絞り出して行く。
鍋の中には濃厚な海老の出汁が出来上がっていた。壱は鼻を鳴らし、次の作業に取り掛かる。
まずは、やや大きめの鍋に湯を沸かして。
休ませた小麦の種に打ち粉をして、綿棒で伸ばして行く。慣れない手付きだが、できる限り均等に。
どうにか伸ばせると、折り畳んで行く。そして厚みと同じ幅に、丁寧にゆっくりと切って行く。
包丁にはある程度慣れているし、物を切るのもそれなりに出来る。だがきちんと厳密に、と思うとかなり慎重になった。
まるで息を詰める様に包丁を動かし、切り終わった頃には大きく息を吐いた。
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