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2章 碧、あやかしと触れ合う
第4話 お父さんの実家へ
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土曜日、「とくら食堂」はお休みである。朝はいつもより少しゆっくり寝て、お父さんが作ってくれたブランチを食べる。後片付けを終えて一息ついたあと、お父さんと碧は並んでキッチンに立つ。
作るのは唐揚げ、春巻き、甘酢団子である。手間暇掛かるものばかりなのだが、これが半年に1度の「お楽しみ」なのだ。その間、お母さんは他の家事をしてくれている。
碧はせっせと豚のひき肉をこねる。混ぜ込んでいるのは白ねぎのみじん切りと卵、つなぎの片栗粉と調味料だ。それを丸め、温まった米油の中に落としていく。
お父さんは春巻き作り。具は鶏ひき肉と筍の水煮とにら、春雨とシンプルである。春雨はボウルの中でお湯に浸かっている。筍を千切りにし、にらはざく切りにしていく。
全てを炒め合わせて紹興酒やオイスターソースなどで味付けをして、ごま油で風味を付けたら、バットに移して粗熱を取る。
肉団子がそろそろ揚がるころだ。米油の中でくらくらと泳ぐ肉団子を油切りバットに上げた。碧はほっと息を吐くと、高さのあるフライパンに甘酢の材料を入れて混ぜ、火を着けた。
冷蔵庫の中では唐揚げ用の鶏肉が、塩味の下味に浸かっている。あとは小麦粉と片栗粉の衣をまとわせて揚げるだけだ。
お父さんと碧は手際良く手を動かして、調理を進めていった。
お父さんの実家は大阪府の北部、箕面市にある。箕面市は箕面山や、その山中にある箕面大滝などの観光地であることと同時に、高級住宅街であることでも知られていて、お父さんの実家も例に漏れず豪邸である。
2階建ての風格ある和の一軒家、そして広大で手入れされたお庭。確か家屋は7LDK。そこに今、祖父母と長男家族が住んでいて、あやかしたちが自由に出入りしている。お父さんは次男なのだ。
碧が25歳の誕生日を迎える5月。それを祝うために、お母さん方の祖父母とともに、お父さんの実家でパーティが行われるのが、毎年の恒例だった。
お父さんの実家は宴会が好きで、毎週土曜日に家族だけのものを催すそうだ。祖父母に長男家族、あやかしを巻き込んで大盛り上がりするという。楽しそうではあるが、毎週だと大変そうだな、なんて碧は思ってしまう。
ちなみに準備は通いの家政婦さんがやってくれるそうだ。片付けのときには家政婦さんはお仕事時間外なので、あやかしも含めてみんなで手分けしてやっているそう。
お父さんは作ったお料理を保温バッグに入れ、レンタカーの後部座席に乗せる。本町で暮らしていると、交通の便が良いこともあって、車の出番は滅多に無いので、都倉家では車を所持していない。必要なときはレンタカーを借りることにしている。
碧のお誕生日祝いの宴会なのに、どうして碧がお料理を用意するのか、なんてことも思わないでは無いが、帰省のたびに祖父母たちがお父さんと碧のお料理を楽しみにしてくれているのだ。なのでつい張り切ってしまう。
今回は中華系のオードブルにしたが、そのときによって作るものは変わる。半年前の帰省のときには筑前煮と豚の角煮を作って持っていった。嬉しいことに大好評だった。
お父さんの運転するレンタカーで、一路箕面へ。実家の最寄り駅は、阪急電車箕面線の桜井駅。いわゆる桜井エリアといわれる場所である。観光地のメインは終点の箕面駅で、桜井駅は宝塚線からの乗り換え駅、箕面線の起点となる石橋阪大前駅の次。ちなみに箕面線は起点駅と終点駅を合わせて4駅だ。
桜井エリアは高級住宅街ではあるものの、数々の個人店が並ぶ桜井市場や100均ショップなどもあって、庶民的な面もある。チアリーディングの強豪である箕面自由学園があるのも桜井だ。
本町から桜井までは、阪神高速の本町入り口から環状線に乗り、池田線に進行して終点の池田出口で降り、府道に乗る。渋滞が無ければ40分ほどだ。電車を使っていっても同じぐらいである。
助手席にお母さん、後部座席の右側に碧。碧は左横に鎮座している保温バッグを押さえている。一般的な白いセダンは環状線で少しの渋滞に引っかかりながらも、池田線はスムーズに進んだ。
環状線は大阪市内の街中を走るので、大小のビルがひしめいている。だが池田線は徐々に郊外へとラインを伸ばしていく。見える景色が移り変わり、碧は荷物を押さえつつ、ぼんやりと流れる車窓を眺めた。
お父さんの実家に行くのは半年ぶり。前は昨年12月のころだった。クリスマスも兼ねての宴会だ。
お正月はいつもお母さんと碧は、お母さんの実家に帰省する。場所は豊中市の岡町だ。阪急宝塚線の岡町駅が最寄り駅である。活気のある商店街があって、下町といった趣で、生活がしやすそうな土地である。
お父さんの実家はいわゆる本家なので、お正月には親戚一同が集まるそうだ。そうなると必然的に働かされるのは女性である。来るのが主にお祖父ちゃんの兄弟家族なので、年齢のこともあって、キッチン仕事やお世話は女性が、と考える男性は多い。
「泰三だけ帰ってきたらええ。凪ちゃんと碧ちゃんはわざわざ苦労しにくる必要無いわ」
お祖母ちゃんはそう言って。
「そうそう。わたしは同居してるから動くけど、これも正月だけの我慢やから。凪ちゃんと碧ちゃんはゆっくりしてて~」
お父さんの兄嫁さんもそう言ってくれる。
なのでお母さんと碧は、お言葉に甘えさせていただいている。ちなみにお父さんは帰省のたびにキッチンに陣取って、女性陣の助けになっている。
「ぼくは料理人やから、みんなにぼくの作った料理、食べて欲しいねん」
表向きはそう言っている。お父さんは女性だけを働かせる価値観では無いのだ。だから、そんなお父さんは女性陣から大人気である。お兄さん、碧から見たら伯父さんとお祖父ちゃんも、できる限り動いてくれる。都倉本家はかかあ天下なのだった。
作るのは唐揚げ、春巻き、甘酢団子である。手間暇掛かるものばかりなのだが、これが半年に1度の「お楽しみ」なのだ。その間、お母さんは他の家事をしてくれている。
碧はせっせと豚のひき肉をこねる。混ぜ込んでいるのは白ねぎのみじん切りと卵、つなぎの片栗粉と調味料だ。それを丸め、温まった米油の中に落としていく。
お父さんは春巻き作り。具は鶏ひき肉と筍の水煮とにら、春雨とシンプルである。春雨はボウルの中でお湯に浸かっている。筍を千切りにし、にらはざく切りにしていく。
全てを炒め合わせて紹興酒やオイスターソースなどで味付けをして、ごま油で風味を付けたら、バットに移して粗熱を取る。
肉団子がそろそろ揚がるころだ。米油の中でくらくらと泳ぐ肉団子を油切りバットに上げた。碧はほっと息を吐くと、高さのあるフライパンに甘酢の材料を入れて混ぜ、火を着けた。
冷蔵庫の中では唐揚げ用の鶏肉が、塩味の下味に浸かっている。あとは小麦粉と片栗粉の衣をまとわせて揚げるだけだ。
お父さんと碧は手際良く手を動かして、調理を進めていった。
お父さんの実家は大阪府の北部、箕面市にある。箕面市は箕面山や、その山中にある箕面大滝などの観光地であることと同時に、高級住宅街であることでも知られていて、お父さんの実家も例に漏れず豪邸である。
2階建ての風格ある和の一軒家、そして広大で手入れされたお庭。確か家屋は7LDK。そこに今、祖父母と長男家族が住んでいて、あやかしたちが自由に出入りしている。お父さんは次男なのだ。
碧が25歳の誕生日を迎える5月。それを祝うために、お母さん方の祖父母とともに、お父さんの実家でパーティが行われるのが、毎年の恒例だった。
お父さんの実家は宴会が好きで、毎週土曜日に家族だけのものを催すそうだ。祖父母に長男家族、あやかしを巻き込んで大盛り上がりするという。楽しそうではあるが、毎週だと大変そうだな、なんて碧は思ってしまう。
ちなみに準備は通いの家政婦さんがやってくれるそうだ。片付けのときには家政婦さんはお仕事時間外なので、あやかしも含めてみんなで手分けしてやっているそう。
お父さんは作ったお料理を保温バッグに入れ、レンタカーの後部座席に乗せる。本町で暮らしていると、交通の便が良いこともあって、車の出番は滅多に無いので、都倉家では車を所持していない。必要なときはレンタカーを借りることにしている。
碧のお誕生日祝いの宴会なのに、どうして碧がお料理を用意するのか、なんてことも思わないでは無いが、帰省のたびに祖父母たちがお父さんと碧のお料理を楽しみにしてくれているのだ。なのでつい張り切ってしまう。
今回は中華系のオードブルにしたが、そのときによって作るものは変わる。半年前の帰省のときには筑前煮と豚の角煮を作って持っていった。嬉しいことに大好評だった。
お父さんの運転するレンタカーで、一路箕面へ。実家の最寄り駅は、阪急電車箕面線の桜井駅。いわゆる桜井エリアといわれる場所である。観光地のメインは終点の箕面駅で、桜井駅は宝塚線からの乗り換え駅、箕面線の起点となる石橋阪大前駅の次。ちなみに箕面線は起点駅と終点駅を合わせて4駅だ。
桜井エリアは高級住宅街ではあるものの、数々の個人店が並ぶ桜井市場や100均ショップなどもあって、庶民的な面もある。チアリーディングの強豪である箕面自由学園があるのも桜井だ。
本町から桜井までは、阪神高速の本町入り口から環状線に乗り、池田線に進行して終点の池田出口で降り、府道に乗る。渋滞が無ければ40分ほどだ。電車を使っていっても同じぐらいである。
助手席にお母さん、後部座席の右側に碧。碧は左横に鎮座している保温バッグを押さえている。一般的な白いセダンは環状線で少しの渋滞に引っかかりながらも、池田線はスムーズに進んだ。
環状線は大阪市内の街中を走るので、大小のビルがひしめいている。だが池田線は徐々に郊外へとラインを伸ばしていく。見える景色が移り変わり、碧は荷物を押さえつつ、ぼんやりと流れる車窓を眺めた。
お父さんの実家に行くのは半年ぶり。前は昨年12月のころだった。クリスマスも兼ねての宴会だ。
お正月はいつもお母さんと碧は、お母さんの実家に帰省する。場所は豊中市の岡町だ。阪急宝塚線の岡町駅が最寄り駅である。活気のある商店街があって、下町といった趣で、生活がしやすそうな土地である。
お父さんの実家はいわゆる本家なので、お正月には親戚一同が集まるそうだ。そうなると必然的に働かされるのは女性である。来るのが主にお祖父ちゃんの兄弟家族なので、年齢のこともあって、キッチン仕事やお世話は女性が、と考える男性は多い。
「泰三だけ帰ってきたらええ。凪ちゃんと碧ちゃんはわざわざ苦労しにくる必要無いわ」
お祖母ちゃんはそう言って。
「そうそう。わたしは同居してるから動くけど、これも正月だけの我慢やから。凪ちゃんと碧ちゃんはゆっくりしてて~」
お父さんの兄嫁さんもそう言ってくれる。
なのでお母さんと碧は、お言葉に甘えさせていただいている。ちなみにお父さんは帰省のたびにキッチンに陣取って、女性陣の助けになっている。
「ぼくは料理人やから、みんなにぼくの作った料理、食べて欲しいねん」
表向きはそう言っている。お父さんは女性だけを働かせる価値観では無いのだ。だから、そんなお父さんは女性陣から大人気である。お兄さん、碧から見たら伯父さんとお祖父ちゃんも、できる限り動いてくれる。都倉本家はかかあ天下なのだった。
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