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1章 いらない子、アシェ
5 身代わり
しおりを挟む「やっぱりアシェに……」
「だろう?ママ」
リビングに入るとすぐにお義母さんにそう言われる。何の話だろう。
テーブルの上には見慣れない紋章が置いてあった。模様が入っていて、キラキラカッコいい。
「学院の子と度胸試しで、あの騎士団長ヴァルド・ノイシュタット様の紋章を盗ったのは、本当に凄いわ……レオンちゃん。
学院の友人の中でも1番だったでしょう」
騎士団長ヴァルド・ノイシュタット様。
この国で一番強い騎士様だって、聞いたことがある。
「そ、そうだよ!1番凄いものを盗んだんだ!
みんな凄いって言ってて……」
「……でもね、それがバレたらいけないことだって。可愛いレオンちゃんの首が……飛んでしまうかもしれないの。分かるわよね?」
「だ、だから!やばいと思ったから、アシェを呼んだんだろう!」
ぐいっと身体を引っ張られる。
え?なんで、ぼくが呼ばれたんだろう。
「アシェ。お前……身代わりになれ。
お前がこれを、盗んだことにしろ」
「え……?」
「アシェ。レオンちゃんの身代わりになりなさい。ヴァルド様に返して、あんたが謝罪するのよ。レオンちゃんはアシェと違って優秀。
魔力だって高い、あんたとは違うのよ!
こんなところで罰を……処刑されるわけにはいかないのよ!」
身代わり……?処刑……?
「れ、レオン義兄さんがちゃんと、ごめんなさいすれば、きっとヴァルド様だって許して……」
「うるさい!それでおれが処刑されたらどうするんだ!いや牢屋行きかもしれない!下手したら拷問されるかもしれないだろ!」
「あっ」
どんっと身体を突き飛ばされて、近くの椅子にぶつかった。背中に少し痛みが走った。
「このために姉さんはあんたを寄越したのね。初めて感謝したわ。いい?アシェ。
明日朝一でヴァルド様の元に行って『自分が盗みました』って言うのよ。
そのままレオンちゃんの代わりに罰を受けて来なさい」
「……お、お義母さ……」
「何も言わずに帰って来たらどうなるか……分かってるでしょうね。バラしても、あんたの戯言を聞き入れる者は居ない。
もうそのまま――帰って来なくても、構わないわ」
「…………っ」
それは、そのまま処刑されても構わない。
そういう意味だ。
ぼろり、と身体が、心が崩れ落ちた。
涙も出ない。
ぼくが家事をいっぱい頑張ったら、いつか魔法を使えるようになったら、お義母さんやお義兄さんと仲良くなれるかもって。
そう思ってた。だから毎日頑張ってた。
でもぼくはお義兄さんの身代わりに、なる。そうするしか、ないんだ。
「さっさと明日の準備をなさい」
「アシェ。頼んだぞ。
ちゃんとおれの代わりに謝ってこいよ」
レオン義兄さんに手を掴まれる。
ぼくの手の中には紋章が、握らされていた。
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