チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆

文字の大きさ
34 / 69

第7話 追放勇者、後手後手に回る【その1】

しおりを挟む
「……痛ってぇ……なんだこれ」
 ソファーで朝を迎えたサック。どうやらうっかり寝てしまったようだ。柔らかいクッションを枕にしてはいたが、体制が悪かったのだろうか。
 サックはしばらく、慣れない頭痛に苛まれることになった。

「やべ、寝ちまったか」
 いなくなった新聞屋──クリエの後を追うべく、サックは昨夜から、彼女が何かしらの痕跡を残していないかを探し回っていた。すると、教団に関わる資料が何枚か抜き取られていた事に気付いた。
 藁にもすがる思いで、盗られた資料を精査したが、しかし結局、これといった共通点は無かった。

「単純に時間稼ぎに使われたな……くソッ」
 悪態をつくサック。クリエの足取りは何も得られなかったのだ。

「……」
 サックは気持ちを切り替えんと、ソファから立ち上がり伸びをした。そして総隊長室の部屋を出ようと扉に向かうと、ちょうど、ジャクレイが部屋に入って来るところと鉢合わせた。

「お、起きたか」
「悪い、ジャクレイ。またベッドに使ってしまった」
「気にすんな、本来なら宿を紹介すべきだったんだがな……ほれ、約束の品物だ」

 ジャクレイは手に持っていた小包をサックに手渡した。両の手に十分収まるほどのそれは、白い布で包まれていた。

「ん? 薬草か」
 サックは手に取った瞬間、その包みの中身を『鑑定』していた。自然と身についてしまった『いつでも鑑定』が発動したのだ。

「おう、昨日言われた薬草だ。部下に買いに行かせてた」
「ありがとう、これでもっと深い治療ができる」
「どういたしまし……治療……ん?」
 すると、ジャクレイが急に首を傾げた。そして、サックに渡した薬草の包みを呆然と見つめた。

「……なあ、サック。なんで俺、『この薬草を準備した』んだ?」
(え……?)
 急に、変なことを口走ったジャクレイに、サックは驚きの声すら出せなかった。

「何って、ジャクレイ、サザンカとヒマワリの件だろ?」
 とうとうボケてしまったのか。既に年齢は50を超えているが、呆けるには少し早い。もしかして、サックを揶揄からかったのだろうか。

「ああ! そうだそうだ、忍者姉妹のことだ。なんだろう、急に忘れてしまっていたぞ」
 ははは、と、照れ隠しともとれる笑い声をあげたジャクレイであった。

「勘弁してくれ、そんな大事なこと忘れるなんて……」
 ギャグとしては全く笑えないボケに対して、サックは若干たじろいたが、ジャクレイはいつもの陽気なおじさんの表情を見せてきた。

 すると彼は、持ち前の明るい笑顔を崩すこと無く、腰に巻いていた革ベルトに据え付けてある短刀を抜いた。

 兵士に支給されるそれは、憲兵なら誰もがもっているナイフである。それを彼は、

「ははは……ほんと、どうしちまったんだろうな」

 などと笑いながら、短刀を逆手に強く握り、勢いよく自分の首に突き立てんとした。

 真っ直ぐ、迷い無く。
 抜き身の刃はジャクレイの右首に向かっていき、そして赤い鮮血を散らした。



「──!!  っぶねぇっ!!!」

 刃は、ジャクレイの首の寸前のところで止まっていた。彼の首には突き刺さらず、差し出したサックの手の甲を貫き止まっていた。

「……は?」
「痛ってえっ! ……やられたっ!」

 サックは突き刺さった短刀をそのままに、ジャクレイの腕を捻り上げそのまま投げ飛ばし地面に叩きつけた。
 もちろんジャクレイには武術の心得はあるが、自身が意図しない中で、自分の首を短刀で貫こうとしたことに理解が追い付かず、サックの行動に全く対応できなかった。なんとか受け身を取るのが、彼の出来る精一杯だった。

「ぐはっ!!」
 すると、ジャクレイの手から短刀が外れた。今の今まで短刀は強くジャクレイの手に握られていたのだ。

「お、俺はいったい……」
 何故、自分の考えには程遠いこと──自殺未遂を行ってしまったのか。サックがいなければ確実に自分は死んでいた。

「ジャクレイ! 大丈夫かっ!」
「あ、ああ……なんだ……これは」
 天井を仰いだまま、ジャクレイは返答した。自分自身の行動を未だに信じられないようで、口をポカンと空け呆けていた。
 しかし事の重大さは理解できていて、そのため、多量の脂汗が身体中から吹き出ていた。

 そして、自殺を食い止めたサックの右手には、突き刺さったままの短刀があった。
 サックは激痛に耐えながら短刀を抜き、地面に投げ捨てた。カラン、と金属特有の乾いた音が響き渡る。
 と同時に、血を留めていたものが無くなった手の甲からは、先程以上に勢いよく血が溢れ出た。流れ出た血は、薬草を包んでいた白い布を真っ赤に染めた。

潜在解放ウェイクアップ──薬草に【止血】を付与」

 ジャクレイが持ってきた薬草の束から適当に見繕い、右手に無造作に擦り付けた。
潜在解放ウェイクアップ』による淡い光と共に、薬草は隠された能力を引き出され、サックの右手に空いた穴を治し始めた。

 しかし、止血は出来ても痛みは消えなかった。鎮痛剤の調合や、それこそ、薬草への潜在解放で痛み止め作用を引き出す事も可能ではあったが、

(強過ぎる鎮痛薬は、精神を麻痺させる。いまの俺に、細かい調整ができる気がしねぇ)

 現状考えうる『最悪の事態』に備え、サックは鎮痛効果を付与することを控えた。

 薬草による止血はあっという間に終え、傷こそ残るものの、サックの右手の穴は完全に塞がった。

「サック……」
「暗示だ」

 皆まで言うな、と言わんばかりに、サックはジャクレイの言葉を制した。

「昨日の夜中に仕込まれていた。俺も朝方、異様な頭痛に苛まれたが……くそっ! 暗示を避けた副次的な頭痛だっ!」

 サックには暗示が効かなかったのだ。元々、道具師は薬師の上位職であるため、薬師のもつ多くの状態異常耐性を引き継いでいる。

 サックの感じた朝の頭痛は、単なる寝違えではない。強力な暗示に対抗する事で生じたものだった。

「……寝ている……間……!!」
 そしてサックの頭の中に、考えうる最悪なシナリオが出来上がる。
 詰所では多くの憲兵が24時間働いている。無論、深夜にも不足の事態に備えて、起きているものもいれば、仮眠を取るものもいる。

 ジャクレイも、昨今稀に見る異常事態も重なり、詰所で寝泊まりをしていた。つまり、ジャクレイも就寝中に暗示を掛けられたのだ。

(……この建物全員に、同じ暗示が掛けられたとしたら……)

「……くそマズイ!」
 するとサックは総隊長室を飛び出し、建物のエントランスに向かった。
 朝のこの時間なら、人が一番集まる場所だろうとの考えからだ。

 暗示による行動──自殺行為を行う──には、引き金トリガーとなるものが必要だ。
 それは、人の仕草であったり、特定のワードであったり、時限式なものでもあったりする。

(まだ、引き金トリガーが自明じゃないけど……!!)
 黙って居座るわけにはいかない。
 こうしている間に、知らず知らずのうちに、『自死による大量殺人』が行われかねない。

 サックは奥歯を強く噛んだ。ギリっ! と乾いた刷れる音がサックの頭に響く。

(ここの人たち全員を人質に仕立てたな……ボッサ!)

 焦るサックではあるが、彼の思いは、誰も殺させない。たった一点だった。

「こんな下らない理由で、人が死んでたまるかっ!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...