異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏

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第2話

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そんな日々を送っていると家の扉を叩く音が聞こえた。

「誰かしら?」

そう言いながら玄関の扉を開くと20歳くらいの男性と女性が立っていた。

「あら?カイトとマリじゃない!おかえりなさい」

カイトとマリはそれぞれ21歳と20歳になった義兄弟姉妹だ。
二人とも私が拾って育てた子供で冒険者登録を出来る年齢になると同時に冒険者になり、たまに家に帰ってきては冒険の話や成果を言いに戻り、手料理を食べたいと言って泊まることが多い。
私の後ろからは声は聞こえないけど精霊の4人の気配を感じるので私と一緒に玄関まで来てくれたみたいだ。
この精霊は約200年前に私が小さな精霊に魔力を与え使役した、
ウンディーネのアクア
ノームのイル
サラマンドラのサラ
シルフのシルフィ
の4人である。

「ママー!ただいまー!」

「母さん、ただいま」

私はもうママとは呼ばれる歳ではないので恥ずかしいけれど可愛い我が子が喜んで呼ぶので文句なんて言えない。

「おかえりなさい。カイト、マリ」

精霊たちの綺麗な声が響くとカイトもマリも嬉しそうな顔をする。

「お兄ちゃんお姉ちゃん!おかえり~!」

この子は私の最年少の義娘でハイエルフのケイ。
まだ12歳だからか私だけでなくカイトとマリにも飛びつくように抱きついている。

「ただいま、ケイ」

そんなケイを優しく受け止めるカイトとマリ。
私もケイを抱き上げて頭を撫でてあげる。

「いつもご苦労様、カイト、マリ」

「いや・・・母さんの方こそ、俺達のために・・・ありがとう」

カイトの感謝の言葉に少し照れてしまう。
確かにこの世界に来てからというもの色々あり過ぎたけど、こうやって家族と一緒に暮らせているのはあの時の選択のお陰でもあるだろう。

「それにしても・・・久しぶりに顔を見せてくれたと思ったら突然来るものだから少し驚いたわよ」

まあでもこの子達のことだし、きっと何か事情があるんだろうと思って待っていれば案の定だったようで、その理由はすぐに分かる事となった。

「あのね、ママ!私たちついにSランク冒険者になれたんだ!!」

そう言ってマリが満面の笑みを浮かべながらギルドカードを見せてきたのだ。
それは紛れもなく本物であり、しかもそこにはしっかりと記されていたのである……『S』という文字が。
つまりそれは彼女達が間違いなくこの世界最高レベルの冒険者であるという証明書のようなものなのだ。
だからこそ私は純粋に嬉しかったのだと思う。
自分の子供がここまで成長してくれたことに対して喜びを感じずにはいられないというのが母親として当然のことであろうから。

「本当に凄いわ。よく頑張ったわね」

「はい!これからも頑張ります!!」

そう言って今度はカイトが満面の笑みを浮かべたまま近づいてきて私に抱きついてきたのだ。
もうそんな甘える年齢ではないのにと流石にこれはちょっと困ってしまう。
どうすれば良いのか悩んでいる間に、

「ちょっとお兄ちゃんだけずるい!わたしもわたしも!!」

そう言ってマリも負けじと反対側に来て同じようにしてきた……流石にこれは少し問題なのかもしれないと思い始めてしまいそうになったその時である……

「カイト、マリ、レーナ様が困っていますよ。そろそろ離れてもらってもいいですか?」

おそらく私と同じ意見を持っていたであろうアクアに言われてようやく離れてくれた。

「とりあえず二人共お腹減ってるでしょう?何か食べたいものはある?」

「えっとじゃあ唐揚げとハンバーグをお願いしようかな……」

「なら私はカレーを作ってほしい!」

相変わらず我が子ながら遠慮がないなと思いつつもそれが嬉しい気持ちの方が強いので特に文句もない。

「分かったわ。それじゃあまずはご飯にしましょうね」

そう言って皆にはリビングで休憩してもらっている間に私とアクアとサラで料理を作り出す。

キッチンに立ち、私とサラとアクアは早速調理に取り掛かった。
サラはオーク肉とドラゴン肉を用意し、アクアはコカトリス肉、私は大きなドラゴン肉の塊を手に取った。


「さーってとハンバーグを作るぞー!」

サラはまずオーク肉とドラゴン肉をそれぞれ大きめの塊から削ぎ落とした。
ドラゴン肉は通常の牛や豚の肉と比べて密度が高く、通常だと堅くなってしまうのが特徴的だ。
サラはアクアに魔法の力で大理石を冷やしてもらい台の上で肉を切り始めた。

「オークの脂がドラゴンの堅さを和らげるから……うん、これくらいがちょうどいい配合かな」

サラはオーク肉7割、ドラゴン肉3割の比率で肉を切り分けて私が作った専用の『オリハルコン製ミートミンサー』に移していく。
このミートミンサーは私が趣味で作ったもので魔法の力で肉の結合が強くなる効果を持たせることができる。

「さぁて、ひき肉にするぞ!」

サラが宣言すると肉をミンサーに入れ始める。
レバーを引くと魔力で動き金属板に押し付けられた肉が挽かれていく音が響いた。
サラは途中でミンサーを止めて中のひき肉を確認し、

「もう少し粗めが良いな……」

と呟きながら再調整を行った。
ボウルに移したひき肉に塩、胡椒と共に私が乾燥させて保存していた香草を加えていく。
手袋をつけたサラは丁寧に均等に混ぜ合わせる。
手の熱で肉の脂肪が溶け出し、ねっとりとした艶が出始める。
ここでパン粉を入れると水分を吸収してしまうためタイミングが重要だ。

「そうだ!トマトソースを入れてみようかな?」

サラが提案してきたので私はうなずき返した。
冷蔵庫から取り出した自家製トマトソースを少量加えると更に深みのある香りが漂う。
最後に卵黄と小麦粉を入れて手でこねていく。
肉は均等に混ざり、まさに理想的な粘りが出てきた。

「よし!良い具合だ!」

サラが満足そうに言うとあらかじめ温めていたフライパンにハンバーグダネを平たく伸ばして載せていく。
片面が焼ける匂いがキッチン中に広がり、カイトとマリが思わず覗き込んだ。

「うわぁ!美味しそう~!」

マリがよだれを垂らしそうになる。

「まだだよ!裏返したらチーズ乗せるから」

サラがウィンクしながら告げる。
フライパンの中でじゅうじゅうと音を立てながら焼けるハンバーグ。
表面が黄金色になり、サラが丁寧に裏返すと中から溢れる肉汁が泡となって踊る。
私が用意した溶かしチーズをたっぷりかけて蓋を閉め、蒸し焼き状態にした。

---

「さて、こちらは唐揚げですね」

アクアは巨大なコカトリスのもも肉とむね肉の塊を解体していく。
アクアの手にはオリハルコン製のナイフが光り、刃先が肉に触れると音もなく切れ目が走る。
筋肉質だが鶏肉のような弾力を持ち合わせるコカトリスの肉は揚げ物料理に最適だ。

「これを一口サイズに切り分けてと」

肉塊を約2~3cm角に切り分けていくアクア。
肉の繊維を見極めながら手際よく解体する様は熟練の職人のようだ。
全て切り終えると深い容器に移し替える。
そこに醤油、生姜の搾り汁、ニンニクのすりおろしを加え、十分に揉み込む。

「あと10分は漬け込んでおいて……」

アクアは鍋を準備し、油を温めはじめる。
温度計が180℃を示すと片栗粉をまぶした唐揚げ用の肉を徐々に入れ始めた。
油の跳ねる音と共に美しい黄金色に染まっていく肉。
時折箸でひっくり返しバランスよく火が通るように注意を払う。
網の上で余分な油を切る。
皿に盛りつけながら横目でカイトを見る。

「お待ちかねの唐揚げ完成よ」

---

「カレーは時間がかかるし魔法を使って頑張りますか」

私は圧力鍋に向かった。
ドラゴンのすじ肉に特殊な浄化魔法を使って臭みと灰汁を取り除き、圧力鍋に入れ茹でる。
私は独自配合の特製スパイスを用意していた。
一般的なスパイスよりも褐色が深く複雑な香辛料の香りが立ち上がる。
自家栽培の玉ねぎ、人参、ジャガイモを大量に切り、フライパンで炒め始める。
透き通った飴色になるまで弱火で時間をかける。
焦がさないように注意深く見守りながら野菜から出る水分を利用して煮詰めていく。
その隣ではドラゴンのすじ肉を圧力鍋でゆっくり煮込んでいる。
私が調合したスパイスを振りかけながら丁寧にかき混ぜる。
カレーのベースとなる野菜とスパイスを溶かし合わせ、圧力を抜き煮込んだドラゴンすじ肉を加え、煮込んでいた汁を少しずつ混ぜ、全体に馴染ませる。

「さて、仕上げましょう」

私が秘密の調味料、自作の蜂蜜入りヨーグルトを加えるとカレーの香りが更に深まった。
トロリとしたルーの中にはホロホロに崩れそうなドラゴンのすじ肉が浮かんでいた。
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