6 / 51
1章
僕のヒーローは翠くんなんですけど……
しおりを挟む
えっ……誰!?
開いた扉から入ってきたのは、銀縁の眼鏡をかけた一見、冷たそうな目をした人だった……
えぇ~、普通こういう時って扉バーンして翠くんが助けに来てくれて、楓だいじょうぶ?って言われるまでが、お約束だと思っていたから……ガチで萎える……。
「君たち、これは……同意が有っての事なんだろうな。」
話し方は丁寧だけど眼鏡を指で上げる姿に凄みを感じて居ると、そばで見ていた2人はスミマセンと言うなり凄い勢いで教室から飛び出していった。
その場に残っている、ゆう君と呼ばれた人は僕の顎を掴んでいる手を震わせていた。
「かなめ、悪気はなかったんだよ」
ヘラヘラしながら僕から手を離してくれたけれど、悪気が無かったと言えば、何をしても良いとは限らないからね……
さっき掴まれた腕は痛い……助けに来たのは翠くんじゃない……僕は引きづられただけじゃないか……マジでありえない……
翠くん、もう帰っちゃったかな……
翠くんに、楓って名前呼ばれたいな……
「君、大丈夫?」
そう言って、手を差し伸べてもらったので遠慮なく手を取らして貰った。
この人ぱっと見は真面目そうに見えるけどツーブロの刈り上げ部分がエグいし首元には赤い印付いているのを隠す気も無い所を見るとチャラいな……。
外向きの笑顔を作って、お礼をすると名前を聞かれたので普通に答えると眼鏡の奥の目が細められた気がした。
「なるほど……君があの楓かえでちゃんか……」
どうして他人のバース性に、こんなに興味を持つ人が多いんだろう……
家に居ると絶対に感じる事は無いのに……一歩家の外に出るとΩに対しての他人からの扱いが酷いと感じるのは僕だけなんだろうか……。
メガネに、お礼を言ってその場を離れながら、ふいに昔のことが脳裏に浮かんだ……
✽✽✽✽
僕がαだと敢えて明言しないのには、遥の存在が大きい。
まだ僕が幼い頃……その頃までは遥の事を普通にママと呼ぶことができていた。
僕にとっては優しくて、笑顔で見守ってくれる友達のママに負けないぐらい可愛くて大好きなママだった。
「ママ!みてみて、ありさんが何かを運んでいるよ」
普段は、あまり行く事の無い少し大きな公園で発した僕の言葉で、遙が悲しい顔をするなんて思っても見なかった。
ねぇ、今の聞いた?あの子ママって言ったわよね……
でも見て、顔は綺麗だけど……どうみても男よね?
男性でママって事はΩって事よね……
初めて悪意を感じるヒソヒソを聞いたのは、この時が初めてだった。
僕がママと呼んだからママが悪く言われたの?
とっさに出た言葉に遥は泣きそうな笑顔を浮かべながら僕の耳を両手で塞いだ。
その時に聞こえた言葉は今でも忘れることが出来なかった。
「Ωの子とは遊んではいけません。」
変なものを見るような目をして、口元を歪ませながら楽しそうに話をしている大人達。
悲しそうな表情をしながらも、僕を見つめる目は優しかった……今なら分かる遥は悲しかったんじゃなくて悔しかったんだ。
そしてこの頃の僕は、僕がママって呼んだから遥を悲しませたんだ……そう思い込んでしまった。
その時、僕の元へと笑顔で近づいて話かけてくれたのが翠くんだった。
「なんでΩだと遊んではダメなの?」
ヒソヒソと醜い笑みを浮かべながら話をしていた大人達にも聞こえたのか、その人達はバツが悪そうに自分たちの子供を連れて公園から逃げるように帰っていった。
ママが僕の耳から手をした時、その子が話しかけてくれた。
「ねぇ!きみ名前はなんて言うの?俺は翠!年長だよ、向こうに兄ちゃんも居るから一緒に遊ぼう!」
翠くんの笑顏に安心してママの方を見ると柔らかな笑顔を浮かべながら頷いていた。
「僕は楓、年少さんです。」
翠くんは、楓は男の子だったんだと目をパチクリさせて、いたけれど直ぐに僕の手を取ると、翠くんの、お兄ちゃんのいる方へと向かっていつた。
この時から僕の中では翠くんはヒーローだった。
そして、この日を境に僕はママと呼ぶことが出来なくなり、初めて遥ちゃんと、呼んだときに凄く悲しそうに顔歪めていたのを今でもハッキリと、覚えていた。
あの時は子ども心に辛かったな……。
でも、あの事が有ったから翠くんと出会え、遥も翠くんのママと仲良くなり、僕たち家族に新しい風が吹いたのも確かだった。
翠くんは僕だけでなく僕の家族にとってもヒーローなんだ。
だからこそ、助けに来てくれるのが翠くんだったら……と、淡い夢をみてしまった。
僕がΩと言われても否定も肯定もしないのは、そのままの僕を見てくれる人たちが居るから、敢えて言う必要性が分からないから。
幼い頃を思い出しながら、散々な目にあったと窓の外に目を向けると翠くんの姿が見えた。
「はぁ~遠目で見ても格好良すぎてヤバすぎる……」
見つからないように、窓から目だけを出して翠くん鑑賞していると、後から声がかかった。
「楓ちゃんも、やっぱり翠を狙ってるの?」
振り返った僕の目に映ったのは……。
開いた扉から入ってきたのは、銀縁の眼鏡をかけた一見、冷たそうな目をした人だった……
えぇ~、普通こういう時って扉バーンして翠くんが助けに来てくれて、楓だいじょうぶ?って言われるまでが、お約束だと思っていたから……ガチで萎える……。
「君たち、これは……同意が有っての事なんだろうな。」
話し方は丁寧だけど眼鏡を指で上げる姿に凄みを感じて居ると、そばで見ていた2人はスミマセンと言うなり凄い勢いで教室から飛び出していった。
その場に残っている、ゆう君と呼ばれた人は僕の顎を掴んでいる手を震わせていた。
「かなめ、悪気はなかったんだよ」
ヘラヘラしながら僕から手を離してくれたけれど、悪気が無かったと言えば、何をしても良いとは限らないからね……
さっき掴まれた腕は痛い……助けに来たのは翠くんじゃない……僕は引きづられただけじゃないか……マジでありえない……
翠くん、もう帰っちゃったかな……
翠くんに、楓って名前呼ばれたいな……
「君、大丈夫?」
そう言って、手を差し伸べてもらったので遠慮なく手を取らして貰った。
この人ぱっと見は真面目そうに見えるけどツーブロの刈り上げ部分がエグいし首元には赤い印付いているのを隠す気も無い所を見るとチャラいな……。
外向きの笑顔を作って、お礼をすると名前を聞かれたので普通に答えると眼鏡の奥の目が細められた気がした。
「なるほど……君があの楓かえでちゃんか……」
どうして他人のバース性に、こんなに興味を持つ人が多いんだろう……
家に居ると絶対に感じる事は無いのに……一歩家の外に出るとΩに対しての他人からの扱いが酷いと感じるのは僕だけなんだろうか……。
メガネに、お礼を言ってその場を離れながら、ふいに昔のことが脳裏に浮かんだ……
✽✽✽✽
僕がαだと敢えて明言しないのには、遥の存在が大きい。
まだ僕が幼い頃……その頃までは遥の事を普通にママと呼ぶことができていた。
僕にとっては優しくて、笑顔で見守ってくれる友達のママに負けないぐらい可愛くて大好きなママだった。
「ママ!みてみて、ありさんが何かを運んでいるよ」
普段は、あまり行く事の無い少し大きな公園で発した僕の言葉で、遙が悲しい顔をするなんて思っても見なかった。
ねぇ、今の聞いた?あの子ママって言ったわよね……
でも見て、顔は綺麗だけど……どうみても男よね?
男性でママって事はΩって事よね……
初めて悪意を感じるヒソヒソを聞いたのは、この時が初めてだった。
僕がママと呼んだからママが悪く言われたの?
とっさに出た言葉に遥は泣きそうな笑顔を浮かべながら僕の耳を両手で塞いだ。
その時に聞こえた言葉は今でも忘れることが出来なかった。
「Ωの子とは遊んではいけません。」
変なものを見るような目をして、口元を歪ませながら楽しそうに話をしている大人達。
悲しそうな表情をしながらも、僕を見つめる目は優しかった……今なら分かる遥は悲しかったんじゃなくて悔しかったんだ。
そしてこの頃の僕は、僕がママって呼んだから遥を悲しませたんだ……そう思い込んでしまった。
その時、僕の元へと笑顔で近づいて話かけてくれたのが翠くんだった。
「なんでΩだと遊んではダメなの?」
ヒソヒソと醜い笑みを浮かべながら話をしていた大人達にも聞こえたのか、その人達はバツが悪そうに自分たちの子供を連れて公園から逃げるように帰っていった。
ママが僕の耳から手をした時、その子が話しかけてくれた。
「ねぇ!きみ名前はなんて言うの?俺は翠!年長だよ、向こうに兄ちゃんも居るから一緒に遊ぼう!」
翠くんの笑顏に安心してママの方を見ると柔らかな笑顔を浮かべながら頷いていた。
「僕は楓、年少さんです。」
翠くんは、楓は男の子だったんだと目をパチクリさせて、いたけれど直ぐに僕の手を取ると、翠くんの、お兄ちゃんのいる方へと向かっていつた。
この時から僕の中では翠くんはヒーローだった。
そして、この日を境に僕はママと呼ぶことが出来なくなり、初めて遥ちゃんと、呼んだときに凄く悲しそうに顔歪めていたのを今でもハッキリと、覚えていた。
あの時は子ども心に辛かったな……。
でも、あの事が有ったから翠くんと出会え、遥も翠くんのママと仲良くなり、僕たち家族に新しい風が吹いたのも確かだった。
翠くんは僕だけでなく僕の家族にとってもヒーローなんだ。
だからこそ、助けに来てくれるのが翠くんだったら……と、淡い夢をみてしまった。
僕がΩと言われても否定も肯定もしないのは、そのままの僕を見てくれる人たちが居るから、敢えて言う必要性が分からないから。
幼い頃を思い出しながら、散々な目にあったと窓の外に目を向けると翠くんの姿が見えた。
「はぁ~遠目で見ても格好良すぎてヤバすぎる……」
見つからないように、窓から目だけを出して翠くん鑑賞していると、後から声がかかった。
「楓ちゃんも、やっぱり翠を狙ってるの?」
振り返った僕の目に映ったのは……。
70
あなたにおすすめの小説
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる