某国の皇子、冒険者となる

くー

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第4章 古代遺跡探索行

13. 入れ替わり

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まさか、そんなことが……
頭の中から響く声の正体は、

――ルクス?

俺は今から9年前、10歳のときに高熱を出し、自分が異世界転生者であることを思い出した。
と思っていた。今、このときまでは。ルクス・ベルムデウスの声を聞くまでは。

9年前、俺は転生者であることを思い出したのではなく、熱で瀕死だったルクスの中に、魂だけの存在として入り込んだ……のだとしたら?
ノア・スタークと名乗り始めたことで、今まで眠っていたルクスの自我が表層化した――?

思えばここ最近、自分自身のものであるというには、違和感のある感情が芽生えることがあった。それは、主に兄上に相対したときに起こっていた。
兄上へのそういった想いは俺ではなく、ルクスのものだったに違いない……

そんな…だからって、どうしたらいいんだよ……

『だから、代わってって言ってるの。ぼくだって兄さまからすごいねって、褒められたい。お話したい。そこどいて……』

どくって、どうやって……

「ノア!大丈夫か!ノア!」
「兄上…急ぎましょう、早くここを出なければ」
「頭を抱えていたが、どこか痛むのか?見せてみろ……っ!」
兄上は俺の髪の毛をかき回し、傷の有無を確認したが、何も異常はみつからなかったようだ。
「ヒール!」
「大丈夫です。もう歩けます」
「念のため回復魔法をかけておいたが、ぜったいに無理はするなよ」

壁に刺さった剣を回収するために兄上は、俺から数秒間、目を離した。
そして俺は何かに足を滑らし、仰向けに倒れ、気を失ってしまった。




「ノア!お願いだ!目を開けてくれ!」
回復魔法のあたたかい波動を感じる。兄上は倒れた俺に何度もヒールをかけてくれていた。

もう大丈夫だって、知らせないと。兄上の魔力が尽きてしまう前に……
「……兄さま、ぼくもう大丈夫だよ」
「ノア……?」
「ねぇ兄さま……今はふたりきりなんだから、ルクスって呼んでほしいな」
「……いいのか?」
「うん、いいよ!」

兄上と話しているのは俺じゃない。俺の言葉は喉から発せなくなってしまっている。
今、兄上と話しているのはルクスだった。

俺はルクスにからだの主導権を奪われた。いや――取り返されたと言うべきなのか?


「ね、兄さま…ぼく、なんだか疲れちゃったみたい。少し、やすみたいな」
「なに!?それは大変だ。すぐに休もう」
兄は適当な小部屋を見つけると、次々と魔法を唱え、快適な空間を作り出した。
亜空間召喚魔法からふたりがけのソファやテーブルなど、さまざまなものを取り出す。
俺の亜空間召喚魔法の使用可能面積は狭めの風呂場から広めの風呂場という具合に、少しだけ拡張されたのだが、兄のはどれくらいの面積なのだろうか。質問できないのがもどかしかった。

『ルクス、おい、ルクスってば……』

さっきからルクスに呼びかけ続けているが、聞こえていないのか無視されているのか、ルクスからの返事はない。

ソファに三角座りをしているルクスは、兄上が魔法を唱えるのを興味深そうに見つめている。

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