某国の皇子、冒険者となる

くー

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第8章 呪われた世界

6. 御使い

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チリン――チリン――
一歩踏み出すごとに、服に縫い付けれた鈴が音を立てる。
重度の皮膚病患者は鈴を携行するようにと定められていた。


陽が沈み、空が夕焼けの赤に染まる頃――

村が見えてきた。あと少しだ……

だが、十歩も歩かないうちに、モンスターの気配がこちらへと近づいて来るのを感じた。それも複数の……

俺は杖を構えた。

「来い!」

それは、野犬に似たモンスターだった。4……いや、5匹もの群れに囲まれてしまった。
このからだに入れられてからというもの、魔法は使えなくなってしまっている。おまけに左目は見えておらず、右目の視力も悪い。

戦闘用ではないただの杖で、どこまで立ち向かうことができるのだろうか……


モンスターは二匹同時に俺に飛びかかり、それぞれ腕と脚に噛みついた。

「うわああぁっ!」

鋭い牙が食い込み、振りほどこう必死で腕を振り回したが、モンスターは顎の力を更に強めた。獰猛な牙は肉を食いちぎらんと、より深く埋められていく。

立ってもいられなくなり地面に倒れ込むと、残りの三匹も獲物を仕留めんと飛びかかってきた。

もうダメだ――

敗者に残された唯一の道は、諦めること――

目をきつく瞑り、そのときを待った。




――が、それはいつまでも訪れなかった。


気が付くと、腕と脚に噛みついていたモンスターも消えていた。


何が起こったというのだろう?


身を起こすと、夕焼けの中をひとつの影がこちらへと歩み寄ってくるのが見えた。

ああ、そうか……俺は――

死んだのか……





人影は、俺のそばまで来ると立ち止まり、手を差し出した。

遠目でもわかっていたけれど、やっぱりだ……


その人は、ここにいるはずのない人――


夕陽の中に溶け込んでしまいそうな赤い髪と甲冑に身を包み、美しい顔で俺を見下ろしている。


その御使いは、兄上の姿をしていた。


差し出された手を取るために腕を伸ばすと、しっかりと手を握られ、体を起こされた。

「ノア……みつけた」

御使いは、今にも泣き出しそうに目を潤ませていたが、やさしく微笑んでいる。

「俺は、どこへ行くの――?」

天国?……それとも地獄?

「帰ろう。私たちの家に。だがその前に、そのからだをどうにかしなければ……」
「……家?死者たちの家?」
「ノア!おまえは死んでいないぞ!?」

御使いは両手から籠手と手袋を取り去った。
「ほら、あたたかいだろう?」

剣を握り続けて固くなった手のひらに頬を包まれた。
そのあたたかさに、自然と涙がこぼれた。

ああ、生きている――

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