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第8章 呪われた世界
7. 再会
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「兄上……どうして?」
俺だってわかったの?今の俺の姿は、以前とは似ても似つかない……
どうして、ここにいるの?冷たい気候に、冷たい人たちが暮らす、知らない土地――
「すぐにおまえだってわかったよ……ノア、おまえの魂は特別なんだ。間違うものか……」
「兄上――」
そこで俺はハッ――と気づいた。
兄上の白く美しい手が、俺の腫脹にむくんだ顔に触れている……!
「俺に触ってはいけません!兄上を穢してしまいます……っ!」
兄上から身を離そうとからだを捩ろうとしたが強い力で阻まれ、できなかった。
「おまえが私を穢すことなど、あるものか……っ!」
「いやだっ……!放してください!感染ってしまったらどうするのですか!?」
どんなに足掻こうとも、腕の中から逃れることはできなかった。
病気で弱ったからだはすぐに息が上がり、眩暈を感じてしまう。
「うぅっ……!」
「ノア!大丈夫か!?」
「大丈夫です。少し眩暈がしただけ……」
兄上は心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。近い……感染ってしまったらどうしよう……
「かわいそうに……どんなにか苦しかっただろう……つらかっただろう……おまえをこんな目に会わせたサナトリオルムを、私は許さない。だが、まずはおまえを元に戻すのが先決だ」
「でも、どうやって……」
「すべて私に任せろ。安心してくれ……おまえはもう、大丈夫だから……」
兄上に抱きかかえられ、魔法で転移した先は海辺だった。
少し先には帝国の旗が翻る船が停泊している。
懐かしい――何日ぶりだろう……
あ……あれは――
ウィル……エトワール……ジン……ニケ……ラウルス……!
もう、二度と会えないと思っていた仲間たち……
目から自然と涙が溢れる。
船から仲間たちが降りてきて、足早にこちらへと向かってくる。俺は咄嗟にフードを深く被り、兄上の後ろに隠れた。
「グラヴィス!戻ったのか。まさか……」
「ああ、みつけた」
みんなの目がこちらに向けられているのを感じる。
「ノアなのか?」
「みんな……」
フードの合間から見た仲間たちはみな、変わっていないように見えた。
また会えて嬉しいはずなのに、今の自分の姿を思うと、みんなの輪の中に飛び込んでいくなんて、とんでもない……
今まであんまり意識してなかったけど、みんなかなりに美形のせいか余計に……
「ノア、あなたなのですね……」
「うん……もう会えないんだと思ってた。嬉しい……また、きみに会えるなんて……」
エトワールとニケは、泣き顔すらも美しい……
「俺もみんなに会えて嬉しい。でも今……俺、病気でひどい顔をしてるから……」
「ノア……そんなこと気にしなくていいんだよ?」
「そうだぞ、ノア……みんな、きみがこうして俺たちの元に帰ってきてくれただけで、十分なんだから」
ジンとウィルも変わってない。みんな、やさしいな……
「みな、案ずるな。ノアは私が元に戻す」
「兄さま……それってどういうことなの?」
かつての俺と同じ声音が、不満げな口調で兄上に尋ねた。
ルクス――
「ルクス……おまえはノアを助けたくないのか?」
「そういうわけじゃないけど……元に戻すって、ぼくとノアでひとつのからだを共有していくってことでしょ?不便っていうか……やっぱりいやだよ!」
「……まずは、みなに私の話を聞いてもらいたい。ここに至るまでの、すべてのあらましを……」
「それって……」
「『サナトリオルム』についてだ」
俺だってわかったの?今の俺の姿は、以前とは似ても似つかない……
どうして、ここにいるの?冷たい気候に、冷たい人たちが暮らす、知らない土地――
「すぐにおまえだってわかったよ……ノア、おまえの魂は特別なんだ。間違うものか……」
「兄上――」
そこで俺はハッ――と気づいた。
兄上の白く美しい手が、俺の腫脹にむくんだ顔に触れている……!
「俺に触ってはいけません!兄上を穢してしまいます……っ!」
兄上から身を離そうとからだを捩ろうとしたが強い力で阻まれ、できなかった。
「おまえが私を穢すことなど、あるものか……っ!」
「いやだっ……!放してください!感染ってしまったらどうするのですか!?」
どんなに足掻こうとも、腕の中から逃れることはできなかった。
病気で弱ったからだはすぐに息が上がり、眩暈を感じてしまう。
「うぅっ……!」
「ノア!大丈夫か!?」
「大丈夫です。少し眩暈がしただけ……」
兄上は心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。近い……感染ってしまったらどうしよう……
「かわいそうに……どんなにか苦しかっただろう……つらかっただろう……おまえをこんな目に会わせたサナトリオルムを、私は許さない。だが、まずはおまえを元に戻すのが先決だ」
「でも、どうやって……」
「すべて私に任せろ。安心してくれ……おまえはもう、大丈夫だから……」
兄上に抱きかかえられ、魔法で転移した先は海辺だった。
少し先には帝国の旗が翻る船が停泊している。
懐かしい――何日ぶりだろう……
あ……あれは――
ウィル……エトワール……ジン……ニケ……ラウルス……!
もう、二度と会えないと思っていた仲間たち……
目から自然と涙が溢れる。
船から仲間たちが降りてきて、足早にこちらへと向かってくる。俺は咄嗟にフードを深く被り、兄上の後ろに隠れた。
「グラヴィス!戻ったのか。まさか……」
「ああ、みつけた」
みんなの目がこちらに向けられているのを感じる。
「ノアなのか?」
「みんな……」
フードの合間から見た仲間たちはみな、変わっていないように見えた。
また会えて嬉しいはずなのに、今の自分の姿を思うと、みんなの輪の中に飛び込んでいくなんて、とんでもない……
今まであんまり意識してなかったけど、みんなかなりに美形のせいか余計に……
「ノア、あなたなのですね……」
「うん……もう会えないんだと思ってた。嬉しい……また、きみに会えるなんて……」
エトワールとニケは、泣き顔すらも美しい……
「俺もみんなに会えて嬉しい。でも今……俺、病気でひどい顔をしてるから……」
「ノア……そんなこと気にしなくていいんだよ?」
「そうだぞ、ノア……みんな、きみがこうして俺たちの元に帰ってきてくれただけで、十分なんだから」
ジンとウィルも変わってない。みんな、やさしいな……
「みな、案ずるな。ノアは私が元に戻す」
「兄さま……それってどういうことなの?」
かつての俺と同じ声音が、不満げな口調で兄上に尋ねた。
ルクス――
「ルクス……おまえはノアを助けたくないのか?」
「そういうわけじゃないけど……元に戻すって、ぼくとノアでひとつのからだを共有していくってことでしょ?不便っていうか……やっぱりいやだよ!」
「……まずは、みなに私の話を聞いてもらいたい。ここに至るまでの、すべてのあらましを……」
「それって……」
「『サナトリオルム』についてだ」
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