某国の皇子、冒険者となる

くー

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第9章 嵐の前に

11. 罠

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サナトリオルムはこちらに向けて魔法を放った。

放たれた魔法は、俺に当たる寸前で見えない壁に阻まれ露散した。

「なんだと?」
「俺が何の対策もなしにおまえに会いに来るとでも思ったか?」
「フン……ただの莫迦ではないか」

やっぱり、侮られているよな……
俺は拳をグッと握りしめ、堪えた。

「……おまえともう少し話してみたかったけど、そっちは乗り気じゃないみたいだな。そろそろ帰らせてもらうよ」

「待て」

「サナトリオルム……おまえの好きにはさせないぞ」

魔法を唱え、俺は教会から転移した。



転移先は、取り決めていた通り、魔族の里のミーカの診療所の前だ。

ハア……ハア……

鼓動が早い。心臓が口からまろび出そうだ。

怖かった……

「ノア!!」
ニケが診療所から飛び出してきた。
「よかった……無事で……」
「やったよ……ほらこれ」

俺は装備している腕輪を掲げて見せた。

「うん……っ!成功してるよ、ノア」


「ノア……」

聞き覚えのある声に振り向くと、診療所の扉の前には兄上がいた。他の仲間たちも揃っている。

「あ、兄上……」
「話は皆から聞いている。私はおまえにのみ危険を背負い込ませた責を皆に咎めていたが……こうして困難を成し遂げたおまえを前にして…………働きを称賛し、労いの言葉を与える他に何かできることが……あるだろうかっ……」

兄上は泣き崩れてしまった。


俺はサナトリオルムをおびき出した。
ニケの作ってくれた腕輪を装備した状態で、ヤツの魔法をこの身に受けるために。

魔族の里にある膨大な量の書物――その一冊に、古代の錬金術師の手記があった。
魔法の使用者の魔力を記憶し、魔力の持ち主の居場所を装備者に感知させる腕輪。

今も俺はやつの魔力を感じていた。
ここより北東の地に、ヤツはいる――


「兄上……申し訳ありません。兄上を欺くような真似をしたこと、お詫びいたします。ですが、俺はどうしても、自分の力で成し遂げたかったのです」

「おまえの判断は……正しい。事前に私に相談していれば、私は必ずおまえの計画を阻止していただろう。私がおまえの代わりにその任を引き受けたはずだ。だが、そうしていればサナトリオルムはこちらの思惑に感づき、計画は失敗に終わっていたかもしれない。おまえだからこそ、成し遂げられた。私はおまえに心から感謝している。よくやってくれた、と……」
「兄上……」
「だが、もう二度と、こんな危険なことはしないでくれ!おまえに何かあったらっ……!私は、私は……っ!」
「少し落ち着こうか、グラヴィス……」

見かねたラウルスが止めに入ってくれた。助かった……

「やりましたね!ノア!」
「さすがノア~!」
「おまえのおかげだ、ノア」

仲間たちも口々に作戦成功を喜んでくれた。

「みんなのおかげだよ、ありがとう」


サナトリオルムの居場所がわかった今、手をこまねいて待っている理由はない。
こちらから奴の根城へと乗り込み、厄災を起こさせる前に息の根を止めてやるのだ。


もうこれ以上おまえの好きにはさせない。

待っていろよ、サナトリオルム。



第9章・完
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