10 / 203
部活勧誘編
部活紹介④
しおりを挟む
しばらくすると女子マネージャーらしき人達も現れた。
5人……結構いるほうじゃないのか?
「良かったな、マネージャーも結構いるみたいじゃん」
「別に数は重要視してないよ~。あ、あの人、部活紹介でリフティングしてた人じゃない?」
桜川が指差した先には、リフティングで一際目立っていた人がいた。
俺の見立てでこのチームのエースではないかと思った人だ。
練習が進むにつれ、気が付けば俺と桜川以外にも部活を見に来ている生徒が多くいた。
全員がサッカー部を見に来ているわけではないと思うが、見た目でおおよそは検討がつく。
さすが強豪と呼ばれている学校、多くの入部希望者がいるようだ。
練習内容がミニゲーム形式となったところで、このチームの戦術がどのようなものなのかすぐに分かった。
前線からハイプレスをかけ、ボールを失ってもすぐさま数人で取り囲んで取り返す攻守の一体化を目指したゲーゲンプレッシング。
かつて、ドイツの有名な監督が取り組み、世界にその戦術の脅威さを知らしめたものだ。
そして、俺がいた東京Vのジュニアユース、ユースでも実践されていた戦術だ。
実際にはさらに現代化された5レーンというものを用いたものに変化しているが、基本的な戦術は変わらない。
高校の部活でも行われているのは知らなかった。
「やっぱりあの人がゲームメイクしてるな。攻撃のスイッチが入る時に必ずあの人に一度預けてリズムを作っている。ストライカータイプというよりも、視野の広さを活かして周りを使うタイプか……。それにしても周りの動き方に躊躇いが無いな。戦術理解度が高い証拠か……」
「……にやにや」
「……何だよ」
「部活に入らないとか言ってるくせに、楽しそうに解説するんだなーって」
「ぐっ……」
桜川が意地悪く笑った。
相手のプレーの質を研究するのは昔から続けてきていたことで、対戦相手の得意なプレー、苦手な攻められ方、選手一人一人がどっち利きかまで把握していた。
その癖がまだ抜けていないんだ。
「言っただろ、見るのは好きなんだって」
「やったらもっと楽しいと思うのになぁー」
どうしてもそっちの話題に振られるな……。
見たいものも見れたわけだし、長居しすぎる前にそろそろ帰るか。
「じゃ、俺はこれで失礼するよ」
「え~まだミニゲーム少し見ただけじゃん」
「充分楽しめたよ。それに、これ以上いたら桜川から同じ話を何度も聞かされる羽目になりそうだからな」
「明日も明後日もするよ!」
「勘弁してくれ……」
桜川はまだ少し見て行くということなので、俺は先に一人で帰ることにした。
まだ時間は午後5時。
この季節では夕方というには明るすぎる時間帯。
坂をくだりながら、自分の右足を気にする。
痛みは歩いているだけでは既に感じない。
下り坂で少し足に負担はかかるが、これぐらいでは平気ということだ。
部活を見たせいで少し足が疼く。
ボールを蹴りたいと心が疼く。
少し駆け足でくだってみた。
ズキリと右膝に鈍い痛みを感じた。
鋭い痛みではない。
我慢すれば走れる痛みだ。
だけど脳がブレーキを自然に掛けた。
怪我をした時の状況がフラッシュバックし、再び怪我するのではないかと錯覚させられてしまう。
「はは、情けないな……」
何故か笑いが口から溢れた。
自分の体の不甲斐なさに呆れてしまう。
怪我だけはするまいと注意していたのに、人生で初めての怪我が選手生命を絶たれるほどのものだなんて。
サッカーを見るのは好きだ。
これだけは嘘じゃない。
だけど見た後に気持ちが沈んでしまう。
この矛盾が俺を苦しめる。
「……やっぱりボールを触らないと落ち着かないな」
恥ずかしい話、梨音の家に来てからも部屋でずっとボールを触っている。
梨音には、もう吹っ切れて新しい部活を探すなんて虚勢を張ってみせたが、実際のところ未練タラタラだ。
出来ることならサッカーを続けたい。
プロを目指したい。
でもそれは叶わない。
いい加減現実を見なければならない。
そのためにもサッカー以外に夢中になれるものを見つけなければならない。
それに、早いとこ見つけないと桜川の誘いを断るのにも骨が折れそうだ。
「あ、梨音にケーキでも買っていってやるか……」
何気なく思い出した俺は、帰り道のケーキ屋に寄って詫びケーキを買って帰った。
5人……結構いるほうじゃないのか?
「良かったな、マネージャーも結構いるみたいじゃん」
「別に数は重要視してないよ~。あ、あの人、部活紹介でリフティングしてた人じゃない?」
桜川が指差した先には、リフティングで一際目立っていた人がいた。
俺の見立てでこのチームのエースではないかと思った人だ。
練習が進むにつれ、気が付けば俺と桜川以外にも部活を見に来ている生徒が多くいた。
全員がサッカー部を見に来ているわけではないと思うが、見た目でおおよそは検討がつく。
さすが強豪と呼ばれている学校、多くの入部希望者がいるようだ。
練習内容がミニゲーム形式となったところで、このチームの戦術がどのようなものなのかすぐに分かった。
前線からハイプレスをかけ、ボールを失ってもすぐさま数人で取り囲んで取り返す攻守の一体化を目指したゲーゲンプレッシング。
かつて、ドイツの有名な監督が取り組み、世界にその戦術の脅威さを知らしめたものだ。
そして、俺がいた東京Vのジュニアユース、ユースでも実践されていた戦術だ。
実際にはさらに現代化された5レーンというものを用いたものに変化しているが、基本的な戦術は変わらない。
高校の部活でも行われているのは知らなかった。
「やっぱりあの人がゲームメイクしてるな。攻撃のスイッチが入る時に必ずあの人に一度預けてリズムを作っている。ストライカータイプというよりも、視野の広さを活かして周りを使うタイプか……。それにしても周りの動き方に躊躇いが無いな。戦術理解度が高い証拠か……」
「……にやにや」
「……何だよ」
「部活に入らないとか言ってるくせに、楽しそうに解説するんだなーって」
「ぐっ……」
桜川が意地悪く笑った。
相手のプレーの質を研究するのは昔から続けてきていたことで、対戦相手の得意なプレー、苦手な攻められ方、選手一人一人がどっち利きかまで把握していた。
その癖がまだ抜けていないんだ。
「言っただろ、見るのは好きなんだって」
「やったらもっと楽しいと思うのになぁー」
どうしてもそっちの話題に振られるな……。
見たいものも見れたわけだし、長居しすぎる前にそろそろ帰るか。
「じゃ、俺はこれで失礼するよ」
「え~まだミニゲーム少し見ただけじゃん」
「充分楽しめたよ。それに、これ以上いたら桜川から同じ話を何度も聞かされる羽目になりそうだからな」
「明日も明後日もするよ!」
「勘弁してくれ……」
桜川はまだ少し見て行くということなので、俺は先に一人で帰ることにした。
まだ時間は午後5時。
この季節では夕方というには明るすぎる時間帯。
坂をくだりながら、自分の右足を気にする。
痛みは歩いているだけでは既に感じない。
下り坂で少し足に負担はかかるが、これぐらいでは平気ということだ。
部活を見たせいで少し足が疼く。
ボールを蹴りたいと心が疼く。
少し駆け足でくだってみた。
ズキリと右膝に鈍い痛みを感じた。
鋭い痛みではない。
我慢すれば走れる痛みだ。
だけど脳がブレーキを自然に掛けた。
怪我をした時の状況がフラッシュバックし、再び怪我するのではないかと錯覚させられてしまう。
「はは、情けないな……」
何故か笑いが口から溢れた。
自分の体の不甲斐なさに呆れてしまう。
怪我だけはするまいと注意していたのに、人生で初めての怪我が選手生命を絶たれるほどのものだなんて。
サッカーを見るのは好きだ。
これだけは嘘じゃない。
だけど見た後に気持ちが沈んでしまう。
この矛盾が俺を苦しめる。
「……やっぱりボールを触らないと落ち着かないな」
恥ずかしい話、梨音の家に来てからも部屋でずっとボールを触っている。
梨音には、もう吹っ切れて新しい部活を探すなんて虚勢を張ってみせたが、実際のところ未練タラタラだ。
出来ることならサッカーを続けたい。
プロを目指したい。
でもそれは叶わない。
いい加減現実を見なければならない。
そのためにもサッカー以外に夢中になれるものを見つけなければならない。
それに、早いとこ見つけないと桜川の誘いを断るのにも骨が折れそうだ。
「あ、梨音にケーキでも買っていってやるか……」
何気なく思い出した俺は、帰り道のケーキ屋に寄って詫びケーキを買って帰った。
20
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる