154 / 203
文化祭勧誘編
二学期①
しおりを挟む
【若元梨音目線】
今にして思えば、私が初めて修斗を意識し始めたのは6歳の頃だった。
自分達が通い始めた小学校とは別のところでクラブチームのサッカーの練習をしているということで、一人で修斗に会いに行ったんだ。
それなのに途中で道に迷っちゃって。
『ぐすっ…………ぐすっ…………ママぁ……パパぁ……しゅーと…………うう……』
実際は小学校から近くの公園にいたんだけど、自分がどこにいるのかも分からず、ベンチに座って泣いていた。
『りお!』
少ししたら、練習着のまま修斗が走って私を見つけてくれたんだ。
『…………しゅーと……?』
『りおのおかーさんがグラウンドに来てりおが来てるはずって言ってたから…………なのに来てないから迷子になってると思ったんだ』
修斗は凄く汗だくで息も荒くなっていて、それが練習の途中だったからなのか、必死に探してくれていたからなのかは分からない。
『ごめんなさい……道、分かんなくなっちゃって』
『いいよ、ちゃんと見つけられたんだし』
『でも……練習の途中なのに』
『りおのためなら練習なんてどーでもいいよ。サッカーなんかより大事だもん。ほら、行こ』
そう言って私の手を取ってくれた時のぬくもりを私は今でも覚えてる。
その時の修斗にとっては当たり前の行動だったのかもしれないけど、幼い私が修斗のことを意識するには充分すぎるエピソードだった。
ただ、それが今のような恋愛感情かと言われればそうとは言い切れない。
小さい子特有の好きなもの、嫌いなもので分類した時の好きだった気がする。
もちろんそれがきっかけであったことは間違いない。
中学生に上がる頃には、他人とは違う特別な感情を修斗には抱いていた。
ただの幼馴染というだけじゃなく、一人の男の子として。
でも私がその感情を表には出さず、自分の心に嘘をつくようにしてきたのには理由があった。
一番は修斗に恋愛感情が全く無かったことだった。
中学1年生になった頃、修斗は既に東京Vのジュニアユースに在籍していた。
1にサッカー2にサッカー。
常にサッカー漬けの修斗にとって、サッカーより大事なものは無かったんじゃないかなと思う。
『修斗、次の土曜日にお父さん達と遊園地に行くんだけど修斗も行かない?』
『あー…………悪い! 土曜日は涼介や優夜とサッカーの練習する予定なんだ』
『そっかぁ…………じゃあ日曜日は?』
『日曜はクラブチームで試合があるし……夜まで練習するつもりなんだよね』
『そう……なんだ。そうだよね、練習大変だもんね』
『ごめんなぁ』
『ううん、全然気にしないで!』
似たようなやり取りを何回もした覚えがある。
私は6歳の時に修斗に言われたことを覚えているけど、成長とともに人の価値観は変わる。
修斗の中の一番が私じゃなくてサッカーに変わったことに気づいた時、私は修斗のことが好きという感情を心の奥にしまい込み、出来るだけ修斗の邪魔をしないようにしようと思った。
自分の気持ちを修斗に伝えれば、それは間違いなく修斗にとって邪魔になるし、万が一、万が一拒絶された時に私はもう修斗の隣にいることは出来なくなる。
だから私はできるだけフラットに、あくまで幼馴染という立場であり続けられるように努めたんだ。
それが今、修斗はサッカー以外の楽しみに触れて中学時代のような一つの事柄に熱中するようなことは無くなった。
よく佐川君と女子の体だったりをふざけて話し合ったりしてるけど、中学時代の修斗からしたら考えられなかった。
一度、着替え中の私の部屋に修斗が入ってきて下着姿を見られたこともあったけど……なんというか、私の体を見て、その…………エロくなったみたいなこと言ってて…………う、ゔゔん! ま、まぁ要は意識し始めているようなことも言ってた。
だからもし、もしも修斗に恋愛感情というものがあるのだとしたら、それはつまり私以外の誰かを好きになることがあるかもしれないわけで。
今も修斗の周りには可愛い女の子達がいっぱいいて、きいだったり美月だったり冬華だったり神奈月先輩だったり。それに動画のせいで私の知らない人が修斗のことを気になりだすかもしれない。
修斗が私以外の誰かを受け入れて、私の大事な場所が無くなる可能性があるのなら、もう自分の気持ちを隠すことなんてしない。
修斗のことを最初に好きになったのは、私なんだから。
今にして思えば、私が初めて修斗を意識し始めたのは6歳の頃だった。
自分達が通い始めた小学校とは別のところでクラブチームのサッカーの練習をしているということで、一人で修斗に会いに行ったんだ。
それなのに途中で道に迷っちゃって。
『ぐすっ…………ぐすっ…………ママぁ……パパぁ……しゅーと…………うう……』
実際は小学校から近くの公園にいたんだけど、自分がどこにいるのかも分からず、ベンチに座って泣いていた。
『りお!』
少ししたら、練習着のまま修斗が走って私を見つけてくれたんだ。
『…………しゅーと……?』
『りおのおかーさんがグラウンドに来てりおが来てるはずって言ってたから…………なのに来てないから迷子になってると思ったんだ』
修斗は凄く汗だくで息も荒くなっていて、それが練習の途中だったからなのか、必死に探してくれていたからなのかは分からない。
『ごめんなさい……道、分かんなくなっちゃって』
『いいよ、ちゃんと見つけられたんだし』
『でも……練習の途中なのに』
『りおのためなら練習なんてどーでもいいよ。サッカーなんかより大事だもん。ほら、行こ』
そう言って私の手を取ってくれた時のぬくもりを私は今でも覚えてる。
その時の修斗にとっては当たり前の行動だったのかもしれないけど、幼い私が修斗のことを意識するには充分すぎるエピソードだった。
ただ、それが今のような恋愛感情かと言われればそうとは言い切れない。
小さい子特有の好きなもの、嫌いなもので分類した時の好きだった気がする。
もちろんそれがきっかけであったことは間違いない。
中学生に上がる頃には、他人とは違う特別な感情を修斗には抱いていた。
ただの幼馴染というだけじゃなく、一人の男の子として。
でも私がその感情を表には出さず、自分の心に嘘をつくようにしてきたのには理由があった。
一番は修斗に恋愛感情が全く無かったことだった。
中学1年生になった頃、修斗は既に東京Vのジュニアユースに在籍していた。
1にサッカー2にサッカー。
常にサッカー漬けの修斗にとって、サッカーより大事なものは無かったんじゃないかなと思う。
『修斗、次の土曜日にお父さん達と遊園地に行くんだけど修斗も行かない?』
『あー…………悪い! 土曜日は涼介や優夜とサッカーの練習する予定なんだ』
『そっかぁ…………じゃあ日曜日は?』
『日曜はクラブチームで試合があるし……夜まで練習するつもりなんだよね』
『そう……なんだ。そうだよね、練習大変だもんね』
『ごめんなぁ』
『ううん、全然気にしないで!』
似たようなやり取りを何回もした覚えがある。
私は6歳の時に修斗に言われたことを覚えているけど、成長とともに人の価値観は変わる。
修斗の中の一番が私じゃなくてサッカーに変わったことに気づいた時、私は修斗のことが好きという感情を心の奥にしまい込み、出来るだけ修斗の邪魔をしないようにしようと思った。
自分の気持ちを修斗に伝えれば、それは間違いなく修斗にとって邪魔になるし、万が一、万が一拒絶された時に私はもう修斗の隣にいることは出来なくなる。
だから私はできるだけフラットに、あくまで幼馴染という立場であり続けられるように努めたんだ。
それが今、修斗はサッカー以外の楽しみに触れて中学時代のような一つの事柄に熱中するようなことは無くなった。
よく佐川君と女子の体だったりをふざけて話し合ったりしてるけど、中学時代の修斗からしたら考えられなかった。
一度、着替え中の私の部屋に修斗が入ってきて下着姿を見られたこともあったけど……なんというか、私の体を見て、その…………エロくなったみたいなこと言ってて…………う、ゔゔん! ま、まぁ要は意識し始めているようなことも言ってた。
だからもし、もしも修斗に恋愛感情というものがあるのだとしたら、それはつまり私以外の誰かを好きになることがあるかもしれないわけで。
今も修斗の周りには可愛い女の子達がいっぱいいて、きいだったり美月だったり冬華だったり神奈月先輩だったり。それに動画のせいで私の知らない人が修斗のことを気になりだすかもしれない。
修斗が私以外の誰かを受け入れて、私の大事な場所が無くなる可能性があるのなら、もう自分の気持ちを隠すことなんてしない。
修斗のことを最初に好きになったのは、私なんだから。
11
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる