怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
155 / 203
文化祭勧誘編

二学期②

しおりを挟む
【高坂修斗目線】

「はぁ、やっと落ち着いた」

「なんか大変だね、コーサカ君」

 昼休み、ニノと新之助と弁当を食っていた俺はため息を一つついた。
 朝からクラスの奴らに囲まれ、休み時間には他クラスの奴らやサッカー部が乗り込んできた。
 一部の人達はやはり俺が東京ヴァリアブルで中学時代プレーしていたことを知っていたが、同時にサッカーをやめていることも知っていた。
 それがくだんの動画のせいでプレーできるもんだと勘違いして勧誘に来たのだ。
 のらりくらりと言葉を濁しつつかわすのは大変だった。

「こんなことになるなんて思ってなかったよ」

「新学期早々、午後まであるのも変な学校だよね」

「にしてもアレだよな、修斗ってマジでサッカー上手かったんだな」

 新之助がパンを口に頬張りながら言った。

「なんで高校入ってから付き合い長いお前が知らねーんだよ」

「だって俺、修斗がサッカーやってるとこ見たことねーし」

 そういやこいつ、桜川に勝手に情報流すくせに俺がフットサルやってたりするところ一回も見に来てなかったな。
 そう考えるとなんか無性に腹立つ。

「そういえば僕も見たことないな~」

「この動画もCG編集を疑ってます俺は」

「そこまで疑うのはもはや俺のこと嫌いだろ」

「だぁってよぉ! お前ばっかりチヤホヤされんのムカつくじゃんか! お前には若元という可愛い幼馴染がいるのに、桜川といい会計の子といい、それ以外の女子からも囲まれるとか一体何人はべらせるつもりだ!」

「侍らせたことねぇよ。それに朝囲んできたのは男が大半だっただろ」

「男もいける口なのか!?」

「火のない所に煙立てようとすんな!」

「火はありそうだけどね」

「ニノ、シャラップ!」

 牧村さんかメイドの鈴華さんが作ってくれたであろう弁当を静かに食べててくれ。
 新之助一人相手するのだけでも疲れるんだ。
 ご飯も食べ終わりそうだし、ちょっと昼休みは一人で落ち着くところに逃げるか。

「ちっ、こんなところで食べてられるか。俺は一人で行く」

「急に死亡フラグ立てやがった」

「気を付けてね~」

 弁当をちゃっちゃと片付けて俺は教室を出た。
 とはいえ昼休みはどこにも人はいる。
 落ち着ける場所といえばどこだろうか。

「…………おお、そういえば俺ならではの特権があるじゃないか」

 こういう時に使わずいつ使うというのだ。
 そう、生徒会室だ。
 あそこなら一般の生徒は入ってこないし、昼休みなら神奈月先輩達もいないだろう。
 それにソファもある。ゆっくりするには最高じゃないか。

 俺は生徒会室の扉を開けた。
 案の定、部屋には誰もいなかった。

「いいね、やっぱり誰も───」

「んっ…………はぁはぁ、あっ…………んっ」

 …………ええ、ちょっと待ってぇ。
 なんかすっげぇなまめかしい声が聞こえるんだけど。
 会計の部屋からってことは…………前橋?
 なにこれ聞いたらマズイやつ?
 何してんのかは知らんけど…………とりあえず部屋から出た方がいいんかな……………………いやいや待て。
 なんで俺が出て行かなきゃならんのだ。
 ここは生徒会役員なら誰でも使える場所。つまり俺だってここにいていい権利がある。
 そうだそうだ。
 前橋が個室で何してようが、俺には関係のない話じゃないか。
 俺はゆっくりソファでくつろがせてもら───。

「ふぅ………………えっ?」

「あっ」

 ガチャリと個室から前橋が出てきて、ソファに座っている俺と目があった。
 少し額が汗ばみ、火照ったように頬が赤くなっていた。
 そして俺に気付いたところでさらに顔が赤くなっていく。

「な……なななな……!!」

「あー…………どうぞ、俺に気にせず続けて」

「なんで高坂がいるの!!」

 凄い大声だった。
 弥守に相対していた時よりも大きい。
 どうやら第一声の選択肢を間違えたようだ。
 梨音の時と言い、どうも俺は初手しょて下手へたを打つのが上手じょうずみたいだ。

「なんでと言われましても、一応生徒会庶務だし」

「そういうことじゃなくて! あ、汗かいてるからあんまり見ないで!」

 前橋はサッと前髪から顔を両手で覆うように隠した。

「それよりも、個室で何してたかなんて俺は聞かないから大丈夫。なまめかしい声なんて聞いてないから」

「艶かしい…………? ッ───!! ち、違うから! 筋トレ! 腹筋してたの!!」

「ははっ。あの前橋が筋トレなんてするわけないじゃないか」

「高坂は私の何を知ってるの…………じゃなくて、ほんとに筋トレなんだってば!」

 そう言われ、部屋の中を覗いてみると確かにストレッチマットが敷いてあった。
 この部屋私物化しすぎだろ。

「なんで筋トレ? しかも生徒会室で」

「そ、それは…………」

「答えられないならエロいことしてたってことにするぞ!」

「こ、答えるってば! うう…………なんでこんなことに…………」

 いかん。
 涙目になってる前橋を見ると、なんか被虐心が芽生えてくる。
 ほどほどにしておこう。

「筋トレは……海水浴に行ったときに男の人達に絡まれたから…………」

「海水浴?」

 ああ、俺がシミュレーションで突破した男3人組のやつか。
 前橋はかなり怖がってたもんな。

「そこで私、ほんとに怖くなっちゃって、若元達の後ろに隠れるばかりで何も出来なかったから…………だから少しでも鍛えたら精神面もマシになるかなって……あの時以降少しでも続けるようにしてる」

「なるほど」

 肉体の成長は精神にも影響する。
 それは実際にあると思う。
 体を鍛えている人は余裕があるというのはよく聞く話だ。
 果たして前橋の体格からして効果があるのかどうかはなんとも言えないけど、本人がやる気になっているのであれば良いことだ。

「で、なんで生徒会室?」

「それは…………普段からお昼はここでご飯食べてるから…………」

「えっ」

 それってつまり…………ぼっち飯?
 もう二学期だというのに?
 もしかして俺、踏み込んではいけないサンクチュアリに踏み込んでしまった?

「ほら! そんな顔する! だから言いたくなかったの!」

「いやいや、ちょっと涙が出てきただけなんだ」

「泣きたいのは私だよ……!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...