怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
167 / 203
文化祭勧誘編

OB目線③

しおりを挟む
 それから合わせて3試合、ミニゲーム形式でチームを少し変えながら行った。
 意外だったのは赤坂コーチが義助にも指導していたことだ。
 体の当てに行き方、ボールをカットする時の状況やタイミング。個人の得意とするプレーをさらに伸ばそうとする指導は健在だった。
 ヴァリアブルの選手ではないというのに、面倒見の良いところは変わっていない。

 一方で俺は、怪我明けで初めての実践といった形だったが、思っていたよりも問題はなかった。
 ボールに対する基礎プレー、プレー中におけるアイディア、状況判断になまりはなかった。
 日頃からイメージしていた甲斐があったというものだ。
 ジュニアユース相手なら問題ないことが分かった。
 一つ不安材料を挙げるとするならば、スタミナの問題だろう。
 こればっかりは仕方がない。一度下がった心肺機能を元に戻すには日頃からの努力がものを言う。一朝一夕では身に付かない。

「ありがとうございました、赤坂コーチ」

「ああ。こいつらも良い刺激になっただろう。ユースの奴らは忙しいみたいだから滅多に来なくてな。高坂が来てくれて勉強になったはずだ」

「またどこかで」

「怪我には気をつけるんだぞ」

 その言葉に俺は少し微笑んだ。
 最後まで俺のことを見放さなかった赤坂コーチ。
 来年からユースに上がるというなら、いつかは戦うことになる。
 その時が楽しみだ。


 義助と一緒に大石さんの所へ戻った。
 既に時間は昼の12時半。
 朝から4時間近くここにいたことになる大石さんにも疲れがあるかと思っていたが、存外元気そうに俺達に手を振った。

「いやぁ高坂君は本当にサッカーが上手いんだねぇ。義助が熱を持つのも分かる気がするべ」

「そうなんだよ! 姉ちゃんもやっと分かってくれたかぁ! 高坂さんはヴァリアブルジュニアユースの全ての大会における三連覇の立役者なんだべ! 本来はオラなんかが話すことのできる人じゃねんだから!」

 3年目の大会で、俺は怪我で途中離脱したせいで三連覇には絡んでいないのだが、わざわざ訂正して義助の熱に水を挿す必要もないだろう。
 とりあえず愛想笑いをしておいた。

「今日はありがとなぁ。今度またお礼するすけ」

「いいですよそんなの。俺も懐かしい連中に会うことができた口実になるんで」

「こ、高坂さん!」

「ん?」

 義助が突然緊張したように姿勢を正した。
 なんだろう。
 告白でもされるのかな。
 男と付き合う趣味は持ち合わせていないんでお断りさせて頂こう。

「オラ…………俺! 高坂さんと同じ高校に行く予定なんです! 高坂さんと今日みたいにサッカーがしたいんです!」

「…………なるほど」

 ある意味告白に間違いはないか。
 義助の実力ならば、東京グレイブのユースに上がることができるのは間違いないだろう。
 わざわざそれを捨ててまで俺と同じ所に来るというのは、中三にしてはそれなりの覚悟がいる。
 それを決断できるのは大したメンタリティだ。

「一応聞くけど、それは俺を東京グレイブに誘っているってわけじゃないよな?」

「はい! いや、もちろんグレイブのユースに来てくれることになったら絶叫ものですけど、俺はただ高坂さんと同じところでやりたいんです!」

「なら俺もハッキリ言わせてもらうが、俺はまだどこに所属するか決めていない。瑞都高校に在籍しているのは間違いないが、高校の部活に入るのか、ユースにセレクションを受けて入るのか、その辺りはまだ不透明なんだ。そんな俺に合わせてお前は後悔しないのか? 今後の人生全てを左右することなんだぞ?」

「後悔しないっす! 俺、もう決めたんです!」

 俺はちらりと大石さんを見た。
 大石さんも話は聞いているみたいで、優しく頷いた。

 調べたところによるとAFC東京グレイブユースはプリンスリーグ関東1部。
 そして瑞都高校も今年は一つ下のプリンスリーグ関東2部で順位は好調らしく、来年は1部に上がれるかもしれないし、全国高校サッカー選手権大会でも勝ち進んでいるという話を聞いた。
 その成果の裏にはやはり狩野隼人の存在が大きいようだ。
 だからもし、俺が別のユースに入ることになったとしても、義助にとってはマイナスになることが少ないかもしれない。

 ちなみに東京ヴァリアブルユースはプレミアリーグEASTにいるため、さらに上のリーグになる。
 涼介達はそのレベルで戦っているのだ。

「…………分かった。ならこれ以上、俺が言うこともないだろう。もし同じチームメイトになった時はよろしくな」

「はい! お願いします!」

 俺と義助は固く握手をし、この日は解散となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

処理中です...