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初夜騒動3
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「ひ、妃殿下!? 大事ございませんか!」
べしゃんと床に落ちたまま天井を見上げていると、視界に大司教の慌てた顔が飛び込んできた。
「お、お怪我はございませんか」
それまでの厳粛な雰囲気は台無しである。
大司教もだが、シュメルヒも自分の身に何が起きたのか分からず、呆然としてしまった。
ハッとして身体をあちこち触った。後頭部に瘤ができていそうだが、幸い出血はなくほっと安堵の息を漏らした。
「シュメルヒ様!? まあヨアン、あなたなんてことを」
退出しようとしていたイルミナが駆け寄ってくる。
「何をしているのですか、ヨアンっ!!」
ヨアンの細い肩がビクッと震えた。
金切り声を発したのは、ブルネットの髪を肩に垂らしたエセル王妃だった。
「母上……」
ツカツカとヨアンに近寄り、手に持った扇を大きく振りかざす。
イルミナが素早く二人の間に割って入った。
「エセル、落ち着いて頂戴。シュメルヒ様も怪我がないようだし、とにかくヨアンに謝るように、」
「王妃である私のすることに指図なさらないでくださいまし、お義姉様。……ヨアン!貴方という子は!なぜいつも、私に恥をかかせるようなことばかりっ……お兄様に申し訳なく思わないのですか!?」
ひゅ、とヨアンの喉が鳴った。
「ヨアン!?」
喉を押さえて前のめりになったヨアンを、イルミナが急いで支える。
「かはっ、は、はッ……っ」
どんどん顔が赤く、次第には青くなっていく。
口を開けているのに、空気の抜けたひゅうひゅう、という音が漏れるばかりで、呼吸がままならない様子だった。
「ヨアン!?……医者を!早く!」
心臓がドクドク跳ねるのを感じた。
「やっぱり」と「どうして」が交錯する。
前世でも同じようにして、ヨアンは発作を起こした。
その時も侍医を呼んだが容体が良くならず、<初夜の儀式>以降、寝たきりの状態がかなり長く続いたのだ。
(発作が長引けば、またそうなってしまう!)
前世では床入り前に発作が始まった。
今世ではシュメルヒが寝台に入ってもヨアンは発作を起こす様子がなかったから、今回は大丈夫だと思っていた。
油断していた。
「イルミナ様、お願いした物はどこにありますか!」
ヨアンを支えるイルミナが一瞬固まり、すぐにハッとして反対側の扉を見た。
「控えの間の使用人たちに用意させているけれど……」
素早く隣室まで走った。
勢いよくドアを開けると、中では数人の侍女たちが異変に気付いておろおろしていた。
突然入って来たシュメルヒを見るや、ヒャッと飛び上がる。
「イルミナ夫人の言いつけで用意した物はどこです?」
「え、あ、こちらにございます!」
年長らしい侍女がすぐに戸棚から藤籠を持ってきた。
受け取ると、すぐに引き返して、ヨアンに近寄ろうとして……ハタと立ち止まる。
だめだ。手袋はしているが、彼に直接触れるわけにはいかない。
「イルミナ様。これをヨアン様の口元に当ててください。隙間ができないように押さえて」
「これは何なの? 口を覆ったら苦しいはずよ」
「ええ、ですが」
イルミナは半信半疑だ。一方、エセル王妃は「無信全疑」である。
「ヨアンは息が苦しいのですよっ、それをこんな、口を塞いだらよけいに苦しいに決まってるでしょう!医者はまだなのですか?」
「王妃様、私が間違っておりました」
エセルが今度は何だとばかりに、イライラと睨んでくる。
「正確には鼻と口を覆ってください。今すぐ」
「あ、あなたっ、正気じゃないわっ!」
「エセル、お願い、シュメルヒ様の言う通りにしましょう」
「なんですって!?お義姉様、馬鹿なこと言わないで。離してくださいな!」
興奮したエセル王妃を、イルミナが押さえる。
それに気を乱したエセル王妃が、また藻掻く。収拾がつかなくなってきた。
この場で最も身分のある女性二人の悶着に、周囲はおろおろと成り行きを見守るばかりだ。
「誰か、手を貸してください」
シュメルヒが請うても誰も動かない。大司教もだ。
気持ちは理解できる。
ここで下手に手を出して、容体が悪化したら責任を負わされる。シュメルヒに協力すれば、イルミナの顔は立つが、エセル王妃に逆らうことになる。
「はっ、は、っ、」
ひゅうひゅう、と痛ましい音がヨアンの口から零れている。土気色になってきた顔を見ていると、こちらまで苦しくなってきた。
(こうなったら私がヨアン様に触るしかないか)
本来許されないことだが、このままでは前世の二の舞だ。
重篤に寝付いてしまう前に何とかしなくては。
「あ、あのっ、妃殿下、私、お、お手伝いします」
覚悟を決めた時、侍女の一人が恐る恐る近寄って来た。
見ると、まだ若い。さっきの控えの部屋にいたのだろう。
緊張した面持ちで、びくびくしながらも、ぐっと我慢して前に出てきた様子だった。
ちじれた赤茶色の髪に、そばかすが目立つ顔。
侍女にも階級があるが、ドレスではなくお仕着せの質素な灰色の服を着ていることから、良家の子女ではなく、平民出の下級メイドだと分かった。
本来、何事もなければこの部屋に入ることはないし、勝手な行動をすれば罰せられる立場だ。
そのせいか、少女の茶色の目はおどおどして、落ち着きがない。
相当に勇気を振り絞っているのか、一言発するたびにどもってしまっている。
「あなた、名前は」
「は、はいっ、アンヌでございます、妃殿下」
「ではアンヌ。ここへきて、皮袋の口をもって、そうです……ヨアンさまの鼻と口を覆ってください。ヨアン様、落ち着いてゆっくりと深呼吸してください。吸って……吐いて、ゆっくりです、深く息を吐いて、そう、お上手です。繰り返して。……いい子ですね」
今度はアンヌを扇で叩こうとしたエセラ王妃も、ヨアンの呼吸が徐々に落ち着いてくると、力が抜けたように腕を下ろした。
真剣に皮袋を押さえているアンヌも、ほっとした顔をした。
「よかった……」
シュメルヒの同じ気持ちだった。よかった。事前に書物で調べていた対処法が上手くいって、本当に良かった。
シュメルヒがアンヌの横顔を見ると、それに気づいたアンヌはヒッ、と首を竦めた。
「もう手を離しても大丈夫ですよ」
「はい」
「助かりました。ありがとう」
「そ、そんな、勿体ないお言葉です。こんなことでお役に立てたなら、良かったです。殿下は村にいる弟と同じ歳だから放っておけなくて……あ、すみません、大変失礼をっ」
「落ち着きなさい」
「は、はい。申し訳ありません」
少女は、叩き起こされて到着した侍医と場所を交代すると、そそくさと控えの間に戻って行った。
――アンヌ。名前を覚えておこう。少々落ち着きはないが、悪い子ではなさそうだ。
「ヨアン、良かった。心配したのよ。もう大丈夫、シュメルヒ様が助けてくださったのですよ」
「おばさま……」
ヨアンはぐったりとイルミナを見上げている。
その目が横を向き、シュメルヒを映す。
ヨアンが何かを言いかけた。
が、結局、言葉は発せられない。緑の目は戸惑うように揺れて、フイと逸らされてしまう。
「イルミナ様、王妃様。このようなことになりましたので、ヨアン様がゆっくりと休まれるように、今夜は自室へ下がらせていただきたく思うのですが……」
「……そうね、そうして頂戴。本当にありがとう。イレニアにはあたくし達の知らない治療方があるのね」
シュメルヒが前もって道具を用意させたことを、内心では不審に思っているのかもしれない。
けれど、真実を話しても頭がおかしくなったと思われるだけだ。
「偶然にございます。……さっきの娘にも、褒美を取らせたいのですが」
「優しいのね。もちろん、家令に伝えておきましょう」
「お待ちを、王妃様」
横合いから声がした。
さっきまで姿も見えなかった年嵩の女官が、イルミナににじり寄って来た。
「あの子は厨房の皿洗いをしている下働きです。いくら妃殿下の命とはいえ、皇太子殿下にあのような真似をするなど……たまたま何事もなかっただけで、本来許されないことでございます」
たまたま何事も、のところで、チラッとシュメルヒを見る。
ひっつめた髪と気の強そうな目をした彼女のことは、シュメルヒも覚えていた。
「ヒルデ女官長。あなたはヨアン殿下付きの筆頭のはず。殿下が大変な時に、今までどこにいたのです」
シュメルヒが冷たく問うと、ヒルデは突然の名指しに狼狽えた。
「わ、私は……本来、この部屋には限られた御方しか立ち入ってはならぬ決まりでっ……」
ヒルデは助けを乞うように、エセル王妃に視線をやる。
―なるほど。
ヒルデの推薦人は王妃で、本当の主人はヨアンではなくエセルというわけだ。
エセル王妃が望まないのだから、シュメルヒの手伝いなどするはずもない。
だが、そればかりが理由だろうか。
今思えば前世でも、このヒルデという女官長はヨアンに対してきつく当たっていた気がする。
当時、シュメルヒはそのことに気付いてはいたが、自身がイレニアで使用人から世話をされてこなかったせいもあって、主従関係が不健全であることにまで思い至らなかった。
自分が知らないでだけで、王族と召使とはそういうものだと決めつけていたのだ。
ハビエルを傍に置くようになった今なら、明らかにおかしかったと断言できる。
(私は馬鹿だ。ヨアン様の近くにいたのに、彼の境遇に全く関心を払わなかった。仮とはいえ、妃なのに)
ハビエルは確かにうるさくて無礼だが、それでもシュメルヒを蔑ろにすることは絶対にない。
きちんと生活を整えて、居心地よく過ごせるよう、どんなに小さなことも先回りして気を配ってくれる。
前世のヨアンには、そんな人間が一人でもそばにいただろうか……。
べしゃんと床に落ちたまま天井を見上げていると、視界に大司教の慌てた顔が飛び込んできた。
「お、お怪我はございませんか」
それまでの厳粛な雰囲気は台無しである。
大司教もだが、シュメルヒも自分の身に何が起きたのか分からず、呆然としてしまった。
ハッとして身体をあちこち触った。後頭部に瘤ができていそうだが、幸い出血はなくほっと安堵の息を漏らした。
「シュメルヒ様!? まあヨアン、あなたなんてことを」
退出しようとしていたイルミナが駆け寄ってくる。
「何をしているのですか、ヨアンっ!!」
ヨアンの細い肩がビクッと震えた。
金切り声を発したのは、ブルネットの髪を肩に垂らしたエセル王妃だった。
「母上……」
ツカツカとヨアンに近寄り、手に持った扇を大きく振りかざす。
イルミナが素早く二人の間に割って入った。
「エセル、落ち着いて頂戴。シュメルヒ様も怪我がないようだし、とにかくヨアンに謝るように、」
「王妃である私のすることに指図なさらないでくださいまし、お義姉様。……ヨアン!貴方という子は!なぜいつも、私に恥をかかせるようなことばかりっ……お兄様に申し訳なく思わないのですか!?」
ひゅ、とヨアンの喉が鳴った。
「ヨアン!?」
喉を押さえて前のめりになったヨアンを、イルミナが急いで支える。
「かはっ、は、はッ……っ」
どんどん顔が赤く、次第には青くなっていく。
口を開けているのに、空気の抜けたひゅうひゅう、という音が漏れるばかりで、呼吸がままならない様子だった。
「ヨアン!?……医者を!早く!」
心臓がドクドク跳ねるのを感じた。
「やっぱり」と「どうして」が交錯する。
前世でも同じようにして、ヨアンは発作を起こした。
その時も侍医を呼んだが容体が良くならず、<初夜の儀式>以降、寝たきりの状態がかなり長く続いたのだ。
(発作が長引けば、またそうなってしまう!)
前世では床入り前に発作が始まった。
今世ではシュメルヒが寝台に入ってもヨアンは発作を起こす様子がなかったから、今回は大丈夫だと思っていた。
油断していた。
「イルミナ様、お願いした物はどこにありますか!」
ヨアンを支えるイルミナが一瞬固まり、すぐにハッとして反対側の扉を見た。
「控えの間の使用人たちに用意させているけれど……」
素早く隣室まで走った。
勢いよくドアを開けると、中では数人の侍女たちが異変に気付いておろおろしていた。
突然入って来たシュメルヒを見るや、ヒャッと飛び上がる。
「イルミナ夫人の言いつけで用意した物はどこです?」
「え、あ、こちらにございます!」
年長らしい侍女がすぐに戸棚から藤籠を持ってきた。
受け取ると、すぐに引き返して、ヨアンに近寄ろうとして……ハタと立ち止まる。
だめだ。手袋はしているが、彼に直接触れるわけにはいかない。
「イルミナ様。これをヨアン様の口元に当ててください。隙間ができないように押さえて」
「これは何なの? 口を覆ったら苦しいはずよ」
「ええ、ですが」
イルミナは半信半疑だ。一方、エセル王妃は「無信全疑」である。
「ヨアンは息が苦しいのですよっ、それをこんな、口を塞いだらよけいに苦しいに決まってるでしょう!医者はまだなのですか?」
「王妃様、私が間違っておりました」
エセルが今度は何だとばかりに、イライラと睨んでくる。
「正確には鼻と口を覆ってください。今すぐ」
「あ、あなたっ、正気じゃないわっ!」
「エセル、お願い、シュメルヒ様の言う通りにしましょう」
「なんですって!?お義姉様、馬鹿なこと言わないで。離してくださいな!」
興奮したエセル王妃を、イルミナが押さえる。
それに気を乱したエセル王妃が、また藻掻く。収拾がつかなくなってきた。
この場で最も身分のある女性二人の悶着に、周囲はおろおろと成り行きを見守るばかりだ。
「誰か、手を貸してください」
シュメルヒが請うても誰も動かない。大司教もだ。
気持ちは理解できる。
ここで下手に手を出して、容体が悪化したら責任を負わされる。シュメルヒに協力すれば、イルミナの顔は立つが、エセル王妃に逆らうことになる。
「はっ、は、っ、」
ひゅうひゅう、と痛ましい音がヨアンの口から零れている。土気色になってきた顔を見ていると、こちらまで苦しくなってきた。
(こうなったら私がヨアン様に触るしかないか)
本来許されないことだが、このままでは前世の二の舞だ。
重篤に寝付いてしまう前に何とかしなくては。
「あ、あのっ、妃殿下、私、お、お手伝いします」
覚悟を決めた時、侍女の一人が恐る恐る近寄って来た。
見ると、まだ若い。さっきの控えの部屋にいたのだろう。
緊張した面持ちで、びくびくしながらも、ぐっと我慢して前に出てきた様子だった。
ちじれた赤茶色の髪に、そばかすが目立つ顔。
侍女にも階級があるが、ドレスではなくお仕着せの質素な灰色の服を着ていることから、良家の子女ではなく、平民出の下級メイドだと分かった。
本来、何事もなければこの部屋に入ることはないし、勝手な行動をすれば罰せられる立場だ。
そのせいか、少女の茶色の目はおどおどして、落ち着きがない。
相当に勇気を振り絞っているのか、一言発するたびにどもってしまっている。
「あなた、名前は」
「は、はいっ、アンヌでございます、妃殿下」
「ではアンヌ。ここへきて、皮袋の口をもって、そうです……ヨアンさまの鼻と口を覆ってください。ヨアン様、落ち着いてゆっくりと深呼吸してください。吸って……吐いて、ゆっくりです、深く息を吐いて、そう、お上手です。繰り返して。……いい子ですね」
今度はアンヌを扇で叩こうとしたエセラ王妃も、ヨアンの呼吸が徐々に落ち着いてくると、力が抜けたように腕を下ろした。
真剣に皮袋を押さえているアンヌも、ほっとした顔をした。
「よかった……」
シュメルヒの同じ気持ちだった。よかった。事前に書物で調べていた対処法が上手くいって、本当に良かった。
シュメルヒがアンヌの横顔を見ると、それに気づいたアンヌはヒッ、と首を竦めた。
「もう手を離しても大丈夫ですよ」
「はい」
「助かりました。ありがとう」
「そ、そんな、勿体ないお言葉です。こんなことでお役に立てたなら、良かったです。殿下は村にいる弟と同じ歳だから放っておけなくて……あ、すみません、大変失礼をっ」
「落ち着きなさい」
「は、はい。申し訳ありません」
少女は、叩き起こされて到着した侍医と場所を交代すると、そそくさと控えの間に戻って行った。
――アンヌ。名前を覚えておこう。少々落ち着きはないが、悪い子ではなさそうだ。
「ヨアン、良かった。心配したのよ。もう大丈夫、シュメルヒ様が助けてくださったのですよ」
「おばさま……」
ヨアンはぐったりとイルミナを見上げている。
その目が横を向き、シュメルヒを映す。
ヨアンが何かを言いかけた。
が、結局、言葉は発せられない。緑の目は戸惑うように揺れて、フイと逸らされてしまう。
「イルミナ様、王妃様。このようなことになりましたので、ヨアン様がゆっくりと休まれるように、今夜は自室へ下がらせていただきたく思うのですが……」
「……そうね、そうして頂戴。本当にありがとう。イレニアにはあたくし達の知らない治療方があるのね」
シュメルヒが前もって道具を用意させたことを、内心では不審に思っているのかもしれない。
けれど、真実を話しても頭がおかしくなったと思われるだけだ。
「偶然にございます。……さっきの娘にも、褒美を取らせたいのですが」
「優しいのね。もちろん、家令に伝えておきましょう」
「お待ちを、王妃様」
横合いから声がした。
さっきまで姿も見えなかった年嵩の女官が、イルミナににじり寄って来た。
「あの子は厨房の皿洗いをしている下働きです。いくら妃殿下の命とはいえ、皇太子殿下にあのような真似をするなど……たまたま何事もなかっただけで、本来許されないことでございます」
たまたま何事も、のところで、チラッとシュメルヒを見る。
ひっつめた髪と気の強そうな目をした彼女のことは、シュメルヒも覚えていた。
「ヒルデ女官長。あなたはヨアン殿下付きの筆頭のはず。殿下が大変な時に、今までどこにいたのです」
シュメルヒが冷たく問うと、ヒルデは突然の名指しに狼狽えた。
「わ、私は……本来、この部屋には限られた御方しか立ち入ってはならぬ決まりでっ……」
ヒルデは助けを乞うように、エセル王妃に視線をやる。
―なるほど。
ヒルデの推薦人は王妃で、本当の主人はヨアンではなくエセルというわけだ。
エセル王妃が望まないのだから、シュメルヒの手伝いなどするはずもない。
だが、そればかりが理由だろうか。
今思えば前世でも、このヒルデという女官長はヨアンに対してきつく当たっていた気がする。
当時、シュメルヒはそのことに気付いてはいたが、自身がイレニアで使用人から世話をされてこなかったせいもあって、主従関係が不健全であることにまで思い至らなかった。
自分が知らないでだけで、王族と召使とはそういうものだと決めつけていたのだ。
ハビエルを傍に置くようになった今なら、明らかにおかしかったと断言できる。
(私は馬鹿だ。ヨアン様の近くにいたのに、彼の境遇に全く関心を払わなかった。仮とはいえ、妃なのに)
ハビエルは確かにうるさくて無礼だが、それでもシュメルヒを蔑ろにすることは絶対にない。
きちんと生活を整えて、居心地よく過ごせるよう、どんなに小さなことも先回りして気を配ってくれる。
前世のヨアンには、そんな人間が一人でもそばにいただろうか……。
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