【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 後半

第90話:よろしく頼む

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 ギフトで繋がったジルとの契約の絆を通し、あらん限りの念を込めて叫んだ。

「ジル!! 契約の絆により命じる! 時空を超えてやってこい!」

 ギフトの強制力までは使っていないとは言え、ジルに対して命令したのは初めてかもしれない。
 転移が大嫌いなジルのことだ。何か言われるかもしれないが、それはあとでしっかり謝ろう。

 これでオレはもう今できることをするのみ!
 魔王てとらぽっどへの攻撃の手を強め、転移の邪魔がされないようにその隙を作り出す!

黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつ! 【漆桶しっつう】」

 黒闇穿天こくあんせんてん流槍術りゅうそうじゅつに伝わる秘匿された技。
 母さんからは人前での使用を禁じられている技だったが、てとらぽっど相手に時間を稼ぐにはそうも言っていられないだろう。

 村を出るときはまだ完全に使いこなせていなかったが、今のオレなら問題ないはずだ。

 すると、オレの愛槍である『雷槍ヴィジュランダ』の穂先が霞のように掻き消えた。
 そう。この技は杏と柚の持つ魔剣と非常に似た効果をもたらす。
    
 しかし、剣などよりも槍の方がこの技は凶悪だ。
 さまざまな間合いから繰り出される突きに、距離をとっての薙ぎ払い。

 さらに閃光などのほかの奥義と組み合わせることで、その効果はさらに跳ね上がる。

「はぁっ!!」

 そこから今のオレの持つすべての力と技をもって、無数の攻撃を繰り出した。

 突きから穂先を跳ねあげての袈裟斬り、槍を回転させて斬り払いながら石突きで突きを放ち、に属する蹴りや掌底などの無手の技も織り交ぜながら、とにかく攻撃の手を緩めず攻め続けた。

「のわぁ!? これは避けきれないのだ!?」

 こうして時間を稼いでいると、オレからすこし離れた空間にようやく転移魔法陣が現れた。

 その数三つ・・

「は? なんで三つ? どういうこと?」

 疑問に思っている間に転移魔法が発動した。
 その魔法陣から現れたのは、小さな影が二つと大きな影が一つ。

「「ジルさん!? 説明して……にゃ!?」」

 なんだか懐かしい声だ。
 ちいさな影はリリーとルルーだった。

 こちらはわかる。
 ジルと一緒にいたはずだから、巻き込まれたのかもしれない。
 あとで謝っておこう。

 しかし、もうひとつの影は思っていたものとは違っていた。

≪ジルニトラ様!? 今度はなんなのですか!? よろしく頼むって!?≫

 そこに現れたのは、見知らぬ大きな白い獣だった。
 その獣はジルと同じように魔法音声で話せるようだ。


 だが、なにか混乱しているようだし、不意を打たれては不味い。
 オレは鹿威しを放って一旦てとらぽっどと距離をとり、みんなをかばえる位置へと移動した。

「えっと……リリー、ルルー、久しぶり……でもないか。とりあえず今は戦闘中なんだ。まずは警戒を。それで、どうして二人だけが? ジルは?」

 側まで移動して話しかけると、そこで二人はようやくオレに気付いたようで変な声をあげた。

「ふへ? コウガ!? どうしてこんな所にいるんですか!?」

「リリー、『にゃ』つけないといけない……にゃ」

 こういう時は意外と妹のルルーの方が落ち着いてるな。
 でも、状況を掴めているわけではなさそうなので、簡単に説明をする。

「詳しくはあとで説明するが、今、魔王と戦闘中なんだ。でも、なかなかに厳しくてな。それでジルに助けを求めたら……なぜか二人と一匹が送り込まれてきたという状況だ。ジルから話は……聞いてなさそうだな。で、混乱しているところ悪いんだけど、かなりやばい状況なんだ。ちょっと協力して欲しい」

 魔王に視線を向けたままそう話すと、リリーとルルーもひとまずは立ち直ってくれたようだ。

「な、なるほど。それでさっそく特訓の成果を試せるぞ。って言ってたの……にゃ」

「でも、たぶん自分が転移したくないのが本音だと思う……にゃ」

 たしかにジルがどれだけ転移が嫌いかということだけはよくわかったな……。

「あ……どうやらジルは音速でこっちに向かっているっぽいな。それで、一緒に転移してきたその白い大きな獣はいったい?」

 そう尋ねると、二人は気付いていなかったのか振り返って引き攣った笑みを浮かべる。
 そしてこう口にした。

「「えっと……神獣さま……にゃ」」

 もしかして……とは思ったけど、本当に神獣様だった。
 神々しい気配を感じるし、そんな気はしてたけどさ……。

「し、神獣さま……」

 ジルは無茶苦茶で非常識だとわかっていたつもりでいたが、改めて自分が思っている以上に非常識なやつなんだと認識をあらたにした。

≪いや、お恥ずかしいところをお見せした。私は神獣『セツナ』と言う。そこの二人の守護神獣となったものだ。ちょっと突然のことで慌ててしまったが、さきほども念話でジルニトラ様から二人の面倒を頼まれた。これからはよろしく頼む≫

「うちのジルがなんかもう本当にすみません!」

 魔王に隙を見せるわけにはいかないので頭を下げて謝れないのが心苦しいぐらいだ。
 しかし、リリーとルルーの守護神獣となったって、この短期間でいったいなにがあったんだ?

≪それは……気にしなくても良い。ジルニトラ様には大昔からとても世話になっているのでな。これぐらいのことでは恩は返せぬのだ。それにしても単身で魔王相手に戦うとは……。しかもあの魔王、邪神の気配まで纏っているではないか。よく持ちこたえたな。さすがはジルニトラ様の主であらせられる≫

 どうやらこのまま戦いに加勢してくれるようだ。
 神獣様の加勢とは非常に心強い。

 あと、なにげに常識を持ってそうな方なのでそっちの意味でも心強い。

 ただ、前にリリーとルルーに聞いた話だと、魔王の軍勢を相手に戦った際、封印の影響で力をかなり失っていると聞いたのだが大丈夫なのだろうか?

「ところでセツナ様は体の方はもう大丈夫なのですか? 失礼ですが、封印のせいでかなり力を消耗してしまっていると聞いていたんですが?」

 神獣さまに傷を負わせるわけにはいかない。失礼と思いながらもそう口にする。
 しかし、これは余計な心配だったようだ。

≪たしかにそのような状況だったのだが……ジルニトラ様に回復してもらった上に加護まで頂いたので、今は神獣としての位階が数段上がっている。今ならその魔王とも互角に戦ってみせようぞ。あと、私の名はセツナで良い。私だけ敬称をつけられるとジルニトラ様に合わす顔がない……頼むぞ?≫

 ジルの加勢こそされなかったが、なぜか猛特訓を終えたと自信に満ちているリリーとルルーに、神獣セツナ様まで加わった。

 ここからが戦いの本番だ!
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