要石の巫女と不屈と呼ばれた凡人

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第六章 偽り

戦闘狂と鍛錬狂

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「『ヤナ様、そろそろ来賓の方々がお見えになり始めます。それに伴い、人が一気に増えます。ご用心ください』」

「『あぁ、わかった』」

 俺は、既に会場へと到着し、ライの少し離れた所から周囲を警戒していた。

「『まさかと思って聞くんだが、今日ライが壇上に上がって話したりする事が、あったりするのか?』」

 俺は、会場に設けてある壇上を見ながら、セバスに尋ねた。

「『いえ、今の所はヤナ様と事前に確認している予定通りの進行で、そのような事はございません』」

「『そうか、何か予定が変更になったら必ず連絡してくれ』」

 俺は、セバスに念入りに確認してから通信を切った。

「マスター、名場面の再現はなしですか?」

「やかましいわ……だが、どう来るかな? 狙撃系か直接来るか」

 ライの周りには、『獄炎のヘルフレイム大垣レール』を形状変化デフォルマシオンで『 黒炎のヘルフレイムケージ』を『待機ホールド』の状態にしてある。当然、神出鬼没隠蔽/隠密/偽装で『透明インビジブル』にして、更に気配を消しながら行った為、ライも気づいていないだ。

 俺は会場を見ながら、敵がどうやってライの命を取りに来るのか考えていた。そうしているうちに、徐々に会場には立派な服を着た紳士やら、ゴージャスなドレスに身を包んだ女性や、そのご令嬢が次々と集まりだした。

 ライは、会場に到着した人に、来て貰った礼を述べながら挨拶を交わしていた。その姿は、まさに何処からどう見ても、気品溢れる御令嬢に見えるだろう。

 だが、俺には何故かマネキンが動いているようにしか見えなかった。


 セアラのように、感情を殺しているようでもなく


 アシェリのように、強さを願うようでもなく


 エディスのように、外に憧れを持つようでもなく


 ライには、何も感じなかった



「マスター、そろそろ会場が一杯になります。来賓ゲストマーカーも、殆ど会場内に集まっています」

「ヤナビは、屋敷内の地図マップでおかしな動きを見せるマーカーがいないかをチェックしてくれ。マーカーの数が多すぎて、俺では把握しきれない。俺は、ライの周囲を警戒する事に集中する」

「承知しました、マスター」

 そしてセバスによって、会場内に舞踏会が始まる案内がされ、壇上に屋敷の主であるキンナリが上がり、全員に挨拶を述べている。

 そして曲が流れ出すと、ライが招待客の中の一人と踊り出し舞踏会がいよいよスタートした。



「これが、所謂上級階級のパーティってやつか、初めて見たな」

 俺は、部屋の中央で曲に合わせて踊る若い男女を眺めながら、呟いた。

 舞踏会は集団お見合いだと、漠然と聞いた事はあるが、いざ目の前で実際に見ると、どちらかと言えば令嬢の目が狩人の目のように見え、おそらく有力者の長男だと思われる青年が、子鹿に見えた。

「……この世界、怖い……」

「マスター、元の世界も大して変わらないと思いますよ?」

「……マジで?……」

「マスターは、良くも悪くも純粋ですからね」

 ヤナビの言葉に戦慄していると、セバスから通信が入った。

「『どうした?』」

「『ヤナ様、予定の変更でございます。ライ様が、来て頂いた皆様に向けて改めてお礼を申し上げたいと。それで、これから壇上に上がり、話をされます』」

「『やっぱり、そうなるよなぁ……わかった、気をつける』」

 俺は、予想通りの展開にため息を吐きながら、壇上に上がっていくライを見つめた。

 ライが壇上に上がり、招待客へと向き全員に微笑みかける。招待客は、その美しさに見惚れるように、ライを見つめていた。

 そして、ライが口を開き言葉を出そうとした瞬間だった。

「何だ!? 死神の危険/気配慟哭自動感知が激しく警告を!? 不味い! 『 黒炎のヘルフレイムケージ』!」

 俺は、死神の危険/気配慟哭自動感知で危険を察した瞬間、ライの周囲に『待機ホールド』させていた『 黒炎のヘルフレイムケージ』を発動させた。そして、正面から斬撃の気配を感じ、壇上に飛び乗りライの正面に『天』『地』を抜き構えた。

 そして、次の瞬間に斬撃が屋敷に到達し、そのまま俺へと到達した。

「くっ! 重い!」

 俺は『天』『地』で、その飛んできた・・・・・斬撃を受け止めた。

「ヤナ殿! どうしたのだ一体!」

 キンナリが、俺に向かい大声を出してくるが、それを無視してセバスに指示を出す。

「セバス! 予定通り・・・・全員を裏口から避難させろ! 敵は正面! 一体だ! 既に、正面の護衛は、全員動かなくなっている!」

 俺が壇上から、セバスと前もって、外から俺が周りを守りきれない・・・・・と判断した場合に決めていた行動を、大声で指示を出す。

 そして、後ろを振り返りライに向かっても指示を出す。

「ライ、予告通りにお前を狙う輩が現れた。この『 黒炎のヘルフレイムケージ』を解除リリースするから、セバスの指示に従って、裏口から避難しろ」

 俺は、それだけ話と再度正面を向きなおして、刀を正面に振り抜いた。

「ちっ! バカみたいに外からバスバスと、屋敷に斬り込み入れやがって! ライ! わかったな! さっさと逃げろ!」

 俺は、屋敷の部屋に出入り口まで逃げる招待客の頭に上を一気に飛び越え、そのまま正面玄関から屋敷の外へと飛び出した。

 すると、正面の門から堂々と禍々しい瘴気を纏いし漆黒の鎧を身につけた男が、こちらへと歩いてきていた。

 手には自分の背丈よりも大きく、瘴気が漏れ出す狂気に満ちた巨大な大剣を持っていた。

 その男を見て、俺は反射的に腕輪と指輪を外し、今出来る最大の身体強化を図る。

「『明鏡止水精神統一』『神殺し限界超越』『三重トリプル』『天下身体能力/魔力無双増幅増強』」

 俺が身体強化をかけると、男が俺に話しかけてきた。

「ほほう、中々良いじゃないか。確かにそれ・・なら、雑魚名持ち達が相手にならん筈だな」

「あんた……魔王か?」

 俺は、あまりの相手から受ける威圧と殺気に、思わず口から言葉が出てしまった。

「俺が? 魔王・・?……フハハハハハハ! アレ・・と一緒にされては心外だが、魔王を知らないから仕方があるまいな」

「……今回は、俺を狙った茶番か?」

「あぁ? どうだろうな? あいつ・・・は、きっとお前に興味ないだろうから、偶然だと思うがな」

 その男は、苦笑していたが、その獰猛な目を俺から外すことはなかった。

「俺の名は、ケンシーだ。今日死ななかったら、覚えておけ。死んだら、忘れていい」

「は?」

「お前に、絶望を届ける相手の名だ」

「はっ! 言うねぇ。それなら、俺の名はヤナだ」

「あぁ、知っている。『目と耳』で情報を共有しているからな」

「なら、話は早い。最後まで・・・・忘れるなよ?」

「最後?」

「お前らが、滅びるその時まで、この名がお前らを追い詰める」

「フハハハハハハ! 其方も、言うじゃないか!」

 俺と、ケンシーはお互いに嗤い合う。

「「さぁ、やるか」」

 お互いの言葉が重なり、同時にお互いの剣戟が激突した。



「何あの二人ぃ? 随分、楽しそうにしてるぅ」

 私は一人・・屋敷に残り、二人の戦いを見ていた。

「私が恋する予定なのにぃ、ケンちゃんが何で本の中の、恋した人みたいに楽しそうなのぉ? 何かずるいぃ」

 二人が嗤いながら、斬り結ぶ様子を見ながら、私は呟いた。

 私の筋書きシナリオでは、あの男がケンちゃんにボロボロにされた所で、私が走りよりあの男を身を挺して守って、神聖魔法でケンちゃんを追い払う予定なのだ。

「そうしたらぁ、主人公ヒーローヒロインに恋する筈なのにぃ」

 勇者の書いた本は、主人公の危機に、主人公に想いを寄せる少女が身を以て主人公を助ける。そこで主人公は、助けてくれた少女の想いに気付く展開だった。

「これじゃ、助けにはいれないんですけどぉ?」

 二人は、まるで踊るようにお互いの剣戟を受け止め、そして自らの刀剣を相手に繰り出す。二人の戦いによって、屋敷の庭は既に見る影もない程に荒れ果てていた。

 更に二人の戦いは時間が経つにつれ、激しさを増していく。

「絶対、二人とも私のこと忘れてるよねぇ。しょうがないなぁ」

 私は、自分の筋書きへと修正する為に、準備をし始める。



「楽しいなぁああ! 楽しいだろぉお! 楽しいに決まってるよなぁあああ!」

「やかましいわ! 戦闘狂バーサーカーと一緒にするな! こっちは必死だよ!」

「フハハハハハハ! 嘘をつけ! ならば、何故お前嗤っているのだ!」

 ケンシーにそう言われ、俺は更に嗤う。

「まぁ、あれだ。お前かなり強いんだわ、結構今なんだかんだと、危機的状況ピンチなんだよな、俺」

「あぁ? だからどうした?」

「分からないのか? 危機死地好機鍛錬だろ?」

 俺は、今の全力を出して尚、一瞬でも隙を見せた瞬間、命を絶たれる様な鍛錬を楽しんでいた。

 これ以上の、鍛錬があるだろうか?

「……」

「マスター、戦闘狂バーサーカー鍛錬狂変態にドン引きしてますよ?」

「はぁ? そんなわけないだろ? あいつだって一緒だろ。だから、嗤ってたんじゃないのか?」

「お前と一緒にするな! この鍛錬狂変態が!」

戦闘狂バーサーカーに、変態扱いされたくないわ!」



 二人は、お互いの隙が中々見つけられず、決め手をかいていた。

「ちぃ、これ以上ここでやると、屋敷の方まで壊しちまいそうだ!」

「そんな箱の事など、心配せずに自分の心配をするんだな! 『瘴気狂い身体増強増幅』!」

瘴気狂い身体増強増幅』とケンシーが叫ぶと、変身こそしなかったが、身体から一層の瘴気が噴き出し、剣圧が一層増した。

「ぐぅ! ここで更に身体強化かよ!」

「グハハ! まだシヌなよ! 楽しませろぉおお!」

 ケーシーからの鋭くも強烈な剣戟が迫り、回避しようとした瞬間だった。

「な!? 足が!?」

 足が空間に固定・・・・・されているかの様に、動かなかったのだ。

「しまっ……」

「マスター!」



 俺の視界一面が、自らの鮮血で真っ赤に染まった。
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