婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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運命の始まり3

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 ブリジットだった。
 全員に聞こえる怒号を発しながら周囲を睨みつける。
 使用人たちはぶんぶんと首を振って否定するが、ブリジットは信じずまず身近にいた使用人にビンタをかました。

「きゃあっ」

「アンタ!? 逃がしたんなら今からステラを殺しなさいよ!」

 おゆるしください、と泣いている使用人をばしばしと叩き、使用人が何も言わなくなると別の使用人にとびかかって同じように手を上げた。

「ブリジット……」

 父親が放心してそれだけ口にした。
 ブリジットは勉強ができないところが愛嬌のある娘だった。
 場を支配する頭はあったので、決して馬鹿ではないと自慢の娘だった。

 しかし、状況も分からず大声で自白しながら暴れている彼女を見てもはやどういった感情を持てばいいのか分からなかった。
 可愛い娘だとは一切思えず、ただ、今すぐ、ブリジットをこそ殺してほしいと両親は願ってしまっていた。

「おやおや。せっかくステラ様が情けをかけられたのに自分から無下にするとは予想していませんでしたね」

「言ってる場合じゃないわよ。さすがに止めないと……」

 飛び出してブリジットを止めようとするステラを、ハウンドが守るように片手で抱きしめる。

「ハウンド……!」

「いけませんステラ様。理性を失った者に近づいては怪我をしてしまいます。それに、彼らにとっては自業自得では?」

 それは少しだけ脳裏に過ぎらないこともなかった。
 地下室のドアを閉められた時、絶望した。
 そのあと毎秒、哀れに思った誰かが様子を見に来てはくれないかと思ったりもした。

「でも、彼らは主人の命令に従っただけなのよ」

「度を過ぎた主人への忠言も仕事だと思いますが……。ですが本当に気にしなくていいんですよ。すぐ収まりますから」

 ハウンドの言った通り、ブリジットはすぐに取り押さえられた。
 グレアム家の使用人ではなく、あれはセシリアの護衛たちだ。
 パーティー中に暴力沙汰があるとなれば、取り押さえるのもそれこそ仕事の内なのだろう。

「離しなさいよ! 触るな! 殺してやる裏切り者ッ!」

 暴れ倒して、床に組み伏せられたブリジットは髪もドレスも乱れている。
 それでもなお抜け出そうと身体全てをよじっている往生際のなさに呆れてしまう。
 デリックも止めるでもなく、化け物を見る目でブリジットを見ていた。
 異常な空間で、ハウンドだけは静かに苦笑していた。

「少しお耳に障りますね。彼女には静かにしていただきましょうか」

 あんな常軌を逸した相手にどうやって、と思うまでもなくハウンドはぎゅっとステラを抱きしめなおした。

 そして哀愁を乗せた通る声で説明する。

「彼女の自白のとおり、ステラ様はこの屋敷の地下蔵に閉じ込められ殺されようとしていました」

 ブリジットの豹変に引いて静まり返っていた招待客たちが、衝撃の事実に今度はざわめき始める。

「ブリジット嬢は裏切り者を探していましたが、グレアム邸の中にステラ様を助けようとした『裏切り者』はいません」

「な……っ」

 ブリジットが大人しくなる。じゃあ誰が。
 そこでやっとブリジットにも察しがついた。

「ハウンド様……あなたが……? でも、ステラを閉じ込めてから一度もいらしていないはず」

「ええ、私はね。旧友に手伝ってもらったのですよ」

 ハウンドが腕を伸ばして紹介したのはセシリアとマリオンだった。

「あらやだ。私は当然のことをしたまでよ。大切な友人を助けるっていうね」

「私は採寸に参っただけですわ」

 ほほほと呑気に笑う二人だが、それだけでグレアム家の面々にはいつのことだかピンときた。
 マリオンがセシリアとドレスの採寸に来た日だ。
 ブリジットたちはマリオンのリボンで作る即興ドレスのデザインに夢中で、セシリアの動向に全く意識をむけていなかった。

「……!」

 死体など誰も確認したくない。どうせ死んでいるか、生きていても出られないのだからと放置していた。
 その結果がこのざまだ。

「だとしても数日でよく気付いたわね」

「ステラ様は婚約者探しのために精力的に活動されていましたから、一日でも姿が見えないと違和感があったのです」

 とはいえ数日のことだ。
 この男のことだからなにか隠しているだろうとは思うのだが、助かったのでステラは聞かないでおく。
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