婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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運命の終幕

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「もう場所はお借りしましたし、行きましょうかステラ様」

 大歓声の中、ハウンドは悪びれなく入り口に向かう。
 この中で婚約を了承していないと言っても聞いてもらえないか、さらなる熱狂のネタを与えるだけだろう。
 少しだけ困った顔をして、ステラはため息をついた。小声でハウンドに耳打ちする。

「あとで話はつけるわよ」

「ス、ステラ」

 家を出ようとしたとき、父親の声がステラの足を止めた。
 しかし振り向いたステラは父の元に戻るわけでもなく、しっかりとハウンドの腕に手を置いている。

「……『お父様の願い』どおり、私はハウンド家の皆さまとはかかわりなく生きていきます。皆様、どうぞお幸せに」

「ま、待ってくれ! あれは……あれは違うんだ……!」

 ステラが地下室にいる間、母とブリジットはパーティーの準備に忙しくしていたらしいが父親は違う。
 娘が男と出ていったなどと吹聴し、縁を切ると方々で宣言していたのだ。
 それはステラが死んだあと、グレアム家は関係ない、ステラが死んだのは自業自得だと主張する為だ。

 いまさらステラは大事な娘だと言っても信じる者はいないだろう。
 父親の制止をよそに、ステラとハウンドはグレアム邸を後にした。
 あとには情けなくへたり込んだグレアム家の当主、いつのまにか気絶している母親、そして怒りと絶望と疲れでぐちゃぐちゃのブリジットが残っただけだった。

 
 馬車に戻るとそこにはすでにセシリアとマリオンがいた。

「お疲れ様。爽快だったわね~!」

 セシリアは心底楽しそうに笑っている。
 彼女たちはステラ救出でグレアム家と関わったのでかなり楽しそうだ。

「二人ともありがとう。おかげであの人たちにもいい薬になったんじゃないかしら。これで自分のしたことに気付いてもらえるといいのだけれど」

 娘として、親からの扱いの差はずっとショックだったが育ててくれたのだ。悲しさはあれど飲み込むつもりではいた。
 しかし殺そうとするのは一線を越えている。
 今回のことで反省して心を入れ替えるのならステラは何も言わないつもりだが長い付き合いだ。
 期待しない方がいいかもしれない、と薄っすら感じている。
 暗い顔をしているステラに、セシリアは貴族としてきっぱり告げた。

「ステラが大事を好まないのは知っているわ。でも……こうなった以上彼らは少なくとも今までどおりの生活は出来ないの。治安維持の観点からもね。今回何があったのかは、もう王家も知っていると思うわ」

「えっ」

「殺人未遂だからね」

 結果的に助かったうえに復讐も出来たのでステラは気にしていなかった。
 だから王家に話が行くとは話が大きくなりすぎだが、その答えは目の前と隣にいる。
 バーンズ侯爵家とアロガンスハート侯爵家が揃って動いているのだから、王家に報告が上がるのは当然だ。

(二人があんまりにも普通に接してくれてるから忘れてた……)

 存在していることが大事件なのだ、この二人は。
 さらに王家御用達のマリオンまでいる。

「まあ話の続きは私の家でしましょうか」

 四人を乗せた馬車はアロガンスハート家のタウンハウスへ向かった。


 ステラたちをの乗せた馬車が去ったあとのグレアム家はひどいものだった。
 自分の娘を殺そうとした親に向かって誰かが料理を投げつけると、あとはもう止まらない。

「殺人者! 子供を殺すなんてな!」

「あの子がずっと見すぼらしかったのはお前たち家族のせいだろう! 恥を知れ卑怯者!」

 卵がべちゃりと当たった。
 食べ終わった後の肉の骨が、油のべったりついたサラダの入っていたボウルが次々と投げられる。

「ううっ!」

「きゃあ! やめて!」

「あらあら、あなたの子供もそう言ったんじゃないのかしら」

 何も言えず俯くと、あはははは! と笑い声が返ってくる。
 グレアム家の人々は床に視線を落として、どうしてこうなったのだろうと考える。
 ブリジットとデリックをさっさと結婚させなかったから?
 ステラをもっと厳しく管理下に置いていたら?

「いや……あの男だ」

 ハウンド。

 あの男が現れてから全てがおかしくなった。
 ステラが生意気になり、ブリジットがおかしくなった。
 父親がぼそりと呟いた時、玄関口の方が急に慌ただしくなった。
 重い金属の踵の音、規律の取れた動きが素早く屋敷の中に突入してきた。
 揃いの紺の制服、金の飾り。

「王城騎士団……!?」

「グレアム家当主、並びにその妻と子供だな。 お前たちに殺人未遂容疑が出ている。来てもらおう」

「そんな、なにかの間違いですわ!」

「アロガンスハート家とバーンズ家から証言が出ている。言い分があるなら牢で聞こう」

 騎士団はてきぱきとブリジットたちを拘束し、護送用馬車に詰め込んでいく。

「いやあああ!」

 ブリジットの悲鳴と共にドアが閉じ、残された招待客たちは顔を見合わせた。
 そして誰ともなく、自分は関係ないといったように逃げるように帰っていった。
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