幽霊じゃありません!足だってありますから‼

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アーリス様を見守る会:狂信者の暴走②

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「ライディンは学園を卒業後、メシアン国に移住し魔術師の職を探す予定でした。私は既に魔術師団に所属していましたので、仲介役をする手筈になっていたのです。しかし、卒業して数日後、分厚い書簡が届きました。その手紙には、卒業式の舞踏会の場でクリストファー殿下がアーリス様との婚約を一方的に破棄すると告げられたと書かれていました。ライディンは怒りのあまりタガが外れてしまったようで、その文章は読み進めていくと激しく妄想的な表現に変わっていきました。最後の方はアーリス様を1番幸せにできるのは私だ。と書かれていたのです。」

「アーリス嬢と駆け落ちだと!」
「アーリスと駆け落ちだと!なんて奴だ!」

奇しくも陛下とお父様の声が重なった。大臣達もザワザワとざわめいている。

「はい・・・しかし、駆け落ちはライディンの一方的な妄想です。実際にはイルギアス殿から御説明があった通り、攫って行こうとしていたのです。ライディンは恐らく・・・恋に狂っていたのです。」

恋に狂っていた・・・その言葉に鳥肌がたった。前世で聞いたパラノイア恋愛妄想狂という言葉が頭を掠めた。

「私はその書簡を読み終わると強い胸騒ぎを覚え、真意を問いただす書簡を送り返しました。本当は本人に直接問いただしたかったのですが、イルギアス殿をはじめとするメシアン国の魔法師団が不在であり、留守を預かる身でしたのでその時メシアン国を離れる訳には行かなかったのです。じりじりと返事を待っている中、届いたのはアーリス様の訃報でした。そして・・・ライディンは消息不明となったのです。私はライディンが自暴自棄になって失踪したか、後を追って自死したのかと・・・ずっと気にかけておりました。縁あってトバルズ国の魔術師団に入った後も、時々ライディンを探していたのです。」

その時、ダリスが私を見て深々と頭を下げた。
「アーリス様、大変申し訳ございません。アーリス様と初めてお会いした時、"ライディンの気も知らないで今まで何処にいたのか"と貴女にしてみたら理不尽な気持ちを抱いてしまいました。全ての元凶はライディンに有ったというのに・・・当初の御無礼をお許しください。」

此処が謁見の間でなければ、恐らくまた土下座していただろう。ダリスの顔には深い謝罪の念が込められていた。
言葉もなく頷き返すと、ダリスはまた頭を下げた。

「なるほど、分かった。」
陛下はダリスの言葉を最後まで聞くと、ゲラン様に話を振った。
「ゲラン、"ライディン"なる者がアーリス嬢の拐かしを企んだ犯人に間違いないようだ。そして葬られた亡骸もライディンなる者の物だろう。犯人が既に亡くなっているならば、これ以上の詮議は無用だと思うが、そなた意見はあるか?」
「恐らく、"ライディン"なる者が犯人に間違いないないでしょう。しかしながら後々の為、葬られた亡骸が"ライディン"であるかを調査した方が良いと思います。イソラ公爵、葬られた亡骸をこちらに送っていただけますか。」
「承知致しました。昨夜、公爵家に送るように手配致しましたので、届きましたら直ぐに此方へ送ります。」
「では、その結果が判明しましたら、もう一度詮議致しましょう。陛下よろしいでしょうか。」
「分かった。それで良い。それではこの場は解散とする。」

陛下とアレン様、ゲラン様が退室されると大臣達がザワザワと騒ぎ始めた。

ダリス様に詰問する方や、私に話を聞こうと迫ってくる方もいた。私はお父様が庇うように間に入ってくれたが、ダリスはかなり強く迫られていた。
イルギアス様もダリスの傍で大臣達を宥めるように話しているが、お父様程の抑止力はなくダリスは困っているようだった。(どうしよう。誰か止めてくれないかしら・・・)

その時、アレン様が謁見の間に再び現れた。
「これはどういうことだ?まるでダリスやアーリス嬢が犯人であるかのようだな。」
今まで聞いたことが無い厳しい、低い声だった。支配する者特有の逆らえないがその声にはあった。
「ア、アレン殿下、私達はただ話を聞こうと思っただけでして・・・」
慌てて大臣達が取り繕うとしたが、アレン様はにべも無かった。
「先程の詮議が全てだ。陛下の前で話したことに偽りがあると言うのか?」
「めっ滅相もございません。」
「では解散せよ。ダリスやアーリス嬢に今度も付き纏ったり、噂など流した者達には処罰する。」
「承知致しました!」
バタバタと大臣達が謁見の間を退室して行った。
最後に残されたのは、アレン様、ダリス、イルギアス様、お父様、私の5人だけとなった。

「アーリス嬢、陛下がお呼びになっている。一緒に来てください。」
「アレン殿下、では私も一緒に」
「陛下が呼ばれているのはアーリス嬢だけだ、私も同席するので大丈夫だ。任せてくれ。」
お父様は心配気に私を見たが、承知致しました。と言うと謁見の間を退室した。

「それでは、アーリス嬢行きましょうか。」
陛下の執務室に訪れるのは初めてだった。
アレン様が先導するように前を歩いていく。
その背中を見ながら『夢渡り』の前にお会いしたアレン様と、のアレン様の印象がほんの少しだけ変わった気がした。(なんて言ったらいいのかしら?・・・ぼやけてた輪郭がクッキリした感じ?)お2人の言葉でアレン様の何かが変わったのだろうか。

そんなことを考えていると、いつの間にか執務室に着いていた。重厚な扉を開けると、豪奢で広い部屋が広がっていた。
高級な美術品と思しき物が処々に置いてある。
一角には歴代の王の肖像画が飾られていたが、1番大きな肖像画には紅いビロードのカーテンが取り付けられており、直接見えないようになっていた。その紅さが目に入ったためか、何故かその肖像画が気になって仕方がなく気づいたらチラチラと見てしまっていた。

陛下は侍従達にお茶を用意させると、人払いし執務室には3人だけとなった。
3人になってようやく陛下が重い口を開いた。
「アーリス嬢、此処にそなたを呼んだのはあの場謁見の間では話せない事があったからだ。」
「はい。・・・どのようなお話でしょうか?」
「ゲランから『夢渡り』の話を聞いた。その中でアーサーとエリスが話した『あの子』に関する言葉についてだ。その言葉は私の長年の憂いとも関係があった。まずはこれを見てくれ。」

陛下は立ち上がると、先程気になった紅いビロードのカーテンが着いた1番大きな肖像画の前に歩いて行った。
アレン様も私もその後に続いた。
近づいて見ると、絵は思ったより大きく実寸大位の物であることが分かった。
陛下が無言でカーテンの紐を引くと、紅いビロードのカーテンが開いた。

その絵には、が描かれていた。
そう言ってもいいくらい、そっくりだったのだ。唯一違うのは瞳の色だった。右目は王族特有の紫色の瞳、左目は血塗らたような紅色の瞳・・・どちらも昏い何かを見つめているようだった。
その絵を見ていると、何かを訴えてくるような気がしてザワザワする。肖像画に書かれた王の名は「パスカル・トバルズ」と書かれていた。

「父上、これは・・・」
いつも臣下の前アーリスの前では陛下と尊称で呼んでいるアレン様が、陛下を父上と呼んでいる。衝撃で素が出たようだった。

「これは、平定者パスカル・トバルズ王、恐らくアレン、お前の前世にあたる方だ。これから話すことはお前にとって酷な話になるかもしれん。」

アレン様を気遣わしげに見つめながら、陛下は話し始めた。
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