21 / 171
第02章 旅立ちと出会い
05 両親の軌跡
しおりを挟む
「お前さんらの分はわかった、んで、坊主お前さんはどうするんじゃ」
2人の注文が終わったところで、ドワーフは俺を見てそう聞いてきた。
確かに、俺も武器を欲しいと思っていたけど、まさか向こうから聞いてくるとは。
こうして、せっかく聞いてきたんならと、俺は日本刀について説明して、作ってもらうことにした。
もちろん日本刀の製法は独特なものだし、ドワーフも知らない製法だったこともあり、喜々として取り組んでくれるようだ。
「では、受け渡しは1週間後ということでよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないぞ」
「畏まりました、では、代金はその時で結構ですので」
「はい、お願いします」
そんなわけで、俺たちは武器屋を後にしたのだった。
「そういえば、スニルって剣も使えたんだね」
「ああ、使えるっていっても、剣術のスキルがあるだけだけど」
「剣術?」
この世界のスキルにはこういった技術系のスキルもある。例えば、シュンナであれば双剣スキルで、ダンクスは片手剣スキルという風にだ。でも、俺のように剣術といったスキルはない。
ちなみに、この剣術スキルは日本刀特化となっている。
そんなことを説明していると、目の前に冒険者ギルドが見えてきた。
「あそこがギルドよ。こうしてみると、どこも同じようなデザインなのね」
「そうみたいだな。テッカラも似た感じだったよ」
「ああ、俺の故郷のトリセットも、リエリュークもこんな感じだったな」
俺たちはそれぞれ知っている街で見た、冒険者ギルドの姿を思い出しながらギルドの中に入っていく。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
俺たちがギルドの受付に行くと、受付嬢が一瞬だけ俺たちを見て驚いたような表情をしたが、すぐに持ち直してそう尋ねてきた。
「えっと、この子なんだけど、以前このギルドでご両親が冒険者をしていたそうで」
まず、受付に応えたのはシュンナだ。俺は知っての通り人見知りで人と話すのが苦手だ、そして、ダンクスはいきなり声をかけるには顔が怖い、そこで、人当たりの良い元冒険者でもあるシュンナが代表となったわけだ。
「そうですか。では、何かご両親のことがわかるものはあるかな?」
受付嬢は、シュンナから俺に向き直りまさに子供に聞くように尋ねてきた。
いや、まぁ俺は、見た目が幼いから仕方ないか。
気にしても仕方ないと、あきらめて答える。
「えっと、家にこれがあった」
そういって、俺が取り出したのは2枚のカードだった。
「ああ、ギルドカードね。それじゃ、ちょっとそれに魔力を流してみてもらえるかな。方法はわかる?」
俺が出したのはギルドカード、冒険者ならだれもが登録時にもらえるものだ。
それが、家に両親の分おいてあったのでそれを出したというわけだ。
「わかる」
受付嬢に言われた通り、カードに俺自身の魔力を流してみる。
すると、カードが2枚とも淡く光り何やら文字が出現した。
そこには、それぞれ両親の名前、『ミリア』『ヒュリック』と表示されていた。
どういうことかというと、これはシュンナから聞いたことだが、ギルドカードは魔道具で、魔力を通すと名前を含むいくつかの情報が表示されるようになっている。
そして、この表示させる機能は本人の魔力でなければ表示されない仕組みになっているそうだ。
尤も、ギルドでは別な方法で読み取ることができるらしいが……
んで、この本人しか無理なのになぜ俺が両親の名前を表示させることができたのかというと、それは俺が子供だからだ。
というのも、これは”森羅万象”にもあるが、魔力というものは人によって波長が違う。しかし、親子など血縁となると、波長が受け継がれる。もちろん世代を超えて行けば別のものになっているらしい。
つまり、俺の魔力波長は両親から受け継いだ2人と似通った波長となる。
だから、両親のカードを表示させることができたというわけだ。
「えっと、ええ、間違いなくご両親ね。えっと、名前はミリアさんとヒュリックさんね。登録番号は……ちょっと待ってね」
「えっ!!」
受付嬢が両親の名前を読み、そこに書かれている番号を見てから、待つように告げ席を離れようとしたところで、突如隣からそんな驚愕したような声が響いたので思わずそっちを見た。
すると、そこには30代ぐらいの女性がこっちを見ていた。
「い、今、ミリアとヒュリックって言わなかった。それに、あなた、あっ、ごめんなさい、突然」
女性はどうやら、両親の名に覚えがあるのかかなり驚いているんだが、まぁ、その後すぐに冷静に戻って突然声をかけたことに謝って来たけどな。
「い、いえ、あ、あの、もしかして、この子の両親のことを?」
そんな女性に俺たちの中で一番コミュ力があるシュンナが尋ねた。
「え、ええ、ごめんなさい、ちょっとそのカード見せてもらってもいいかしら」
「……」
俺はそれにうなずきつつ、カードを差し出すことで答えた。
「ありがと……やっぱり、あの2人のカード、じゃぁ、あなたは、あの2人の、そう、そうなのね」
「あんた、こいつの両親の知り合いなのか?」
ここで、ダンクスが俺たちを代表して聞いた。
「ええ、もちろん知っているわ。なにせ、私は元冒険者で、ミリアとヒュリック、2人とはパーティーを組んでいたんだからね」
「えっ!?」
「お待たせしました。あら、シエリルさん、どうされました?」
「ええ、ちょっとね。それで?」
「ああ、はい、ミリアさんとヒュリックさんは当ギルドで登録されているわ。それから、ああ、そっか、シエリルさんとワイエノさんとパーティーを組んでいたんですね」
「そう、だから私も隣で聞いて、驚いちゃってね。ああ、私はシエリルよ。ワイエノは今は私の旦那よ」
ということらしい、どうやらまさかの両親のことをよく知っている人物だった。
「というわけだから、この子たちはこっちで預かるわね」
「わかりました」
そんなわけで、俺はシエリルに連れていかれてギルド内に設置されている休憩スペースというか談話スペースへとやって来た。
「改めて、自己紹介をするわね。私はシエリル、元冒険者で当時あなたの両親であるミリアとヒュリックとはパーティを組んでいたのよ。それで、今は引退して旦那、さっきも言ったけど同じくパーティーを組んでいたワイエノと冒険者向けの雑貨屋を営んでいるわ」
「えっと、俺はスニル」
「あたしは、シュンナと言います」
「俺はダンクスだ。スニルとは、ここに来る途中で知り合って、今は一緒に行動している」
「そう、えっと、それで、どうして2人のことを? まさか!」
「……」
俺が両親のことを尋ねてきたということが、どういうことなのかを悟ったシエリルは口をふさぐが、俺は小さくうなずいた。
「亡くなったそうです。10年前に2人とも、スニルは当時2歳で、両親のこと覚えていないそうです」
「えっ! ちょっとまって、10年前、えっ、それって、どういう?」
シュンナが簡潔に両親のことを説明したことで、シエリルは混乱したらしい。どうやら、両親が死んだことは知らなかったらしい。
「やっぱり、ご存じなかったんですね?」
「え、ええ、知らなかった。連絡はなかったけど、元気にしているとばかり、で、でも、ちょっとまって、スニル君、あなた、一体いくつ?」
「12」
「それは間違いないですよ。鑑定水晶でも確認してますから」
「ああ、門のところでな」
「そんな、だって、君、どう見ても」
どう見ても、もっと幼い、シエリルはそういいたいんだろうが、言えないでいるようだ。
「まぁ、これにはちょっとした事情がありまして」
「そ、そう、わかったわ、で、でも、ここじゃなんだし、これから私の店に来てもらえるかな」
「……」
「わかりました」
シエリルの問いに俺はうなずいて答え、シュンナがはっきりと言葉で伝えた。
こうして、俺たちはシエリルについてギルドを出て、少し離れたところにある、路地に入っていき少し進んだところにある店にやって来た。
「ここよ。さぁ、入って、あんたー!」
シエリルは店に入るなり、すぐに旦那であるワイエノを呼んだ。
「あんだよ。大声なんか出しやがって、んっ、客か?」
「ええ、ミリアとヒュリックの子よ」
「なに! おおっ、そうか、あいつらげ……」
ワイエノが何かを言おうとしたところで、いつの間にかシエリルが動いており、ワイエノの口をふさいだ。
すげぇ、見えなかったな。元冒険者とは伊達じゃないな。
「なんだよ」
「ちょっと、こっち来て」
それから、シエリルは何やら、小声で話し始めた。
そうして、少ししたところでワイエノが少し気まずそうにやって来た。
まぁ、おそらく両親のことを話したんだろう。
「お、おう、悪いな。えっと、それで、スニルだったか、なるほどな、ミリアにそっくりじゃねぇか」
ワイエノはそういってにかっと笑いながら、俺の頭を撫でた。
「それで、さっきのこと聞かせてもらいたいんだけど、いいかしら」
「は、はい、ダンクス」
「ああ、そうだな。スニル、俺たちは店でも見ていようぜ」
「んっ、ああ、そうだな。そうするか」
シュンナが俺のことを話そうとしたところで、シュンナはダンクスの名を呼び、ダンクスもシュンナの意図を理解したのかすぐに俺を誘ってきた。
そんな2人のやり取りを見て、俺自身もシュンナの意図がわかったのでその誘いに乗った。
これは、シュンナの気遣いで、いくら俺が前世の大人としての記憶を持っているからといっても、さすがに虐待の話を自らあちこちにしたいというわけではないし、何より俺自身忘れたい過去でもある。
だから、こうして俺のいないところで話してくれるんならありがたい。
そんなわけで、俺とダンクスは店にやって来て、商品をいろいろ見て周っている。
「へぇ、いろいろあるんだな」
テントに毛布、ロープなどに始まり調理器具、見れば納得の品ばかりだ。
もっとも、”収納”に大量の食い物と、マジックテントを持つ俺にはあまり必要ないものが多い。だが、ロープとかは必要だ。あとは背嚢かな”収納”があるからいらないんだが、さすがに手ぶらで旅をするのは不自然だからな。
「なんだこれ?」
見て周っていると不意に石みたいな黒い何かを見つけた。
なんで、石を売ってるんだ。
俺がそんな不思議に首をかしげていると、ダンクスがやって来た。
「どうした、スニル。ああ、堅パンか」
「カタパン、なんだ、それ」
「恐ろしく硬いパンだ。保存食なんだよ」
なんと、パンらしい、しかも恐ろしく硬いって、確かに俺も石かと思ったけど、どうやって食うんだよ。
「どうやって、食うんだ」
「さすがにこのままじゃ、無理だぜ。まぁ、大体スープなんかに付けたりしてから食うんだよ。まぁ、それでも硬いけどな」
何をしたところでとにかく硬いらしい。
これは、あれだなどうしようもなくなった時の最後の保存食だな。
「スニル、ダンクス、もういいわよ」
俺たちがいろいろ見て周っているとシュンナが声をかけてきた。どうやら、俺についての話が終わったらしい。
ということで、俺とダンクスは先ほどいた奥に戻ったわけだが、やはりというべきかシエリルとワイエノは不自然な笑顔を顔に張り付けていた。
まぁ、気持ちはわかる。俺だってもし、まぁ、いなかったが、友人もしくは親友とも呼べるやつが知らぬ間に命を落としていて、その息子が虐待を受けていた。それは腹が立って仕方ないだろう、でもそれを若干12歳でしかない本人を目の前に出すわけにはいかず、不自然な笑顔となったわけだ。
というか、さっき2人の怒号が聞こえたしな、まぁ、俺も気が付かないふりして本題を聞こうと思う。
「お、おう、えっと、それで、スニル、お前はあいつらのことを知りたいんだよな」
「聞かせてほしい」
「任せて、そうね。何から話そうかしら……」
ということで、シエリルとワイエノの2人が両親のことを話してくれた。
といっても、まず2人が始めたのは2人が冒険者になるところからだった。
シエリルとワイエノはこの街で生まれ育った幼馴染で、この店はシエリルの実家だそうで幼いころから店に来る冒険者の話に憧れて冒険者となったという。
そうして、1年過ごしているとそこにこれまた同じ町で育っただけあり、ともに遊んだこともあった父さんが登録したところで一緒にパーティーを組むことにした。
そうして、一緒に仕事をすることさらに10か月ほどたったころ、ふとギルドに足を踏み入れた3人の前にちょうど村から出て登録を済ませたばかりの少女、つまり母さんがいたという。
そんな母さんを見た父さんはフリーズ、一方で母さんも同じくフリーズしていた。
どうやら俺の両親はお互いに一目ぼれだったらしい、いや、なんだか気恥ずかしいんだが……。
そんな両親の姿を見たシエリルとワイエノは、さっそく母さんをパーティーに誘ったという。
こうして、4人パーティーとなりそれから数年、カリブリンで活動をつづけたそうだ。
そして、シエリルがワイエノの子を身ごもったことを期に2人は冒険者を引退、また、そのころちょうどシエリルの両親が隠居を考えていたこともあり、2人でこの店を継いだとのことだった。
それからは、両親2人で活動していたらしいが、今度は母さんが俺を身ごもったことで引退し母さんの故郷であるゾーリン村に戻ったとのことだった。
「……そうか、ありがと」
「ううん、いいのよ」
そういって、シエリルは俺のもとにやってきて俺を抱きしめてきた。
俺はそれを甘んじて受け入れつつ、両親が過ごしたこの街をもう少し見て周りたいと思っていた。
あとはやっぱり、父さんが育った孤児院だな、あとで場所を聞いてみよう。
2人の注文が終わったところで、ドワーフは俺を見てそう聞いてきた。
確かに、俺も武器を欲しいと思っていたけど、まさか向こうから聞いてくるとは。
こうして、せっかく聞いてきたんならと、俺は日本刀について説明して、作ってもらうことにした。
もちろん日本刀の製法は独特なものだし、ドワーフも知らない製法だったこともあり、喜々として取り組んでくれるようだ。
「では、受け渡しは1週間後ということでよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないぞ」
「畏まりました、では、代金はその時で結構ですので」
「はい、お願いします」
そんなわけで、俺たちは武器屋を後にしたのだった。
「そういえば、スニルって剣も使えたんだね」
「ああ、使えるっていっても、剣術のスキルがあるだけだけど」
「剣術?」
この世界のスキルにはこういった技術系のスキルもある。例えば、シュンナであれば双剣スキルで、ダンクスは片手剣スキルという風にだ。でも、俺のように剣術といったスキルはない。
ちなみに、この剣術スキルは日本刀特化となっている。
そんなことを説明していると、目の前に冒険者ギルドが見えてきた。
「あそこがギルドよ。こうしてみると、どこも同じようなデザインなのね」
「そうみたいだな。テッカラも似た感じだったよ」
「ああ、俺の故郷のトリセットも、リエリュークもこんな感じだったな」
俺たちはそれぞれ知っている街で見た、冒険者ギルドの姿を思い出しながらギルドの中に入っていく。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
俺たちがギルドの受付に行くと、受付嬢が一瞬だけ俺たちを見て驚いたような表情をしたが、すぐに持ち直してそう尋ねてきた。
「えっと、この子なんだけど、以前このギルドでご両親が冒険者をしていたそうで」
まず、受付に応えたのはシュンナだ。俺は知っての通り人見知りで人と話すのが苦手だ、そして、ダンクスはいきなり声をかけるには顔が怖い、そこで、人当たりの良い元冒険者でもあるシュンナが代表となったわけだ。
「そうですか。では、何かご両親のことがわかるものはあるかな?」
受付嬢は、シュンナから俺に向き直りまさに子供に聞くように尋ねてきた。
いや、まぁ俺は、見た目が幼いから仕方ないか。
気にしても仕方ないと、あきらめて答える。
「えっと、家にこれがあった」
そういって、俺が取り出したのは2枚のカードだった。
「ああ、ギルドカードね。それじゃ、ちょっとそれに魔力を流してみてもらえるかな。方法はわかる?」
俺が出したのはギルドカード、冒険者ならだれもが登録時にもらえるものだ。
それが、家に両親の分おいてあったのでそれを出したというわけだ。
「わかる」
受付嬢に言われた通り、カードに俺自身の魔力を流してみる。
すると、カードが2枚とも淡く光り何やら文字が出現した。
そこには、それぞれ両親の名前、『ミリア』『ヒュリック』と表示されていた。
どういうことかというと、これはシュンナから聞いたことだが、ギルドカードは魔道具で、魔力を通すと名前を含むいくつかの情報が表示されるようになっている。
そして、この表示させる機能は本人の魔力でなければ表示されない仕組みになっているそうだ。
尤も、ギルドでは別な方法で読み取ることができるらしいが……
んで、この本人しか無理なのになぜ俺が両親の名前を表示させることができたのかというと、それは俺が子供だからだ。
というのも、これは”森羅万象”にもあるが、魔力というものは人によって波長が違う。しかし、親子など血縁となると、波長が受け継がれる。もちろん世代を超えて行けば別のものになっているらしい。
つまり、俺の魔力波長は両親から受け継いだ2人と似通った波長となる。
だから、両親のカードを表示させることができたというわけだ。
「えっと、ええ、間違いなくご両親ね。えっと、名前はミリアさんとヒュリックさんね。登録番号は……ちょっと待ってね」
「えっ!!」
受付嬢が両親の名前を読み、そこに書かれている番号を見てから、待つように告げ席を離れようとしたところで、突如隣からそんな驚愕したような声が響いたので思わずそっちを見た。
すると、そこには30代ぐらいの女性がこっちを見ていた。
「い、今、ミリアとヒュリックって言わなかった。それに、あなた、あっ、ごめんなさい、突然」
女性はどうやら、両親の名に覚えがあるのかかなり驚いているんだが、まぁ、その後すぐに冷静に戻って突然声をかけたことに謝って来たけどな。
「い、いえ、あ、あの、もしかして、この子の両親のことを?」
そんな女性に俺たちの中で一番コミュ力があるシュンナが尋ねた。
「え、ええ、ごめんなさい、ちょっとそのカード見せてもらってもいいかしら」
「……」
俺はそれにうなずきつつ、カードを差し出すことで答えた。
「ありがと……やっぱり、あの2人のカード、じゃぁ、あなたは、あの2人の、そう、そうなのね」
「あんた、こいつの両親の知り合いなのか?」
ここで、ダンクスが俺たちを代表して聞いた。
「ええ、もちろん知っているわ。なにせ、私は元冒険者で、ミリアとヒュリック、2人とはパーティーを組んでいたんだからね」
「えっ!?」
「お待たせしました。あら、シエリルさん、どうされました?」
「ええ、ちょっとね。それで?」
「ああ、はい、ミリアさんとヒュリックさんは当ギルドで登録されているわ。それから、ああ、そっか、シエリルさんとワイエノさんとパーティーを組んでいたんですね」
「そう、だから私も隣で聞いて、驚いちゃってね。ああ、私はシエリルよ。ワイエノは今は私の旦那よ」
ということらしい、どうやらまさかの両親のことをよく知っている人物だった。
「というわけだから、この子たちはこっちで預かるわね」
「わかりました」
そんなわけで、俺はシエリルに連れていかれてギルド内に設置されている休憩スペースというか談話スペースへとやって来た。
「改めて、自己紹介をするわね。私はシエリル、元冒険者で当時あなたの両親であるミリアとヒュリックとはパーティを組んでいたのよ。それで、今は引退して旦那、さっきも言ったけど同じくパーティーを組んでいたワイエノと冒険者向けの雑貨屋を営んでいるわ」
「えっと、俺はスニル」
「あたしは、シュンナと言います」
「俺はダンクスだ。スニルとは、ここに来る途中で知り合って、今は一緒に行動している」
「そう、えっと、それで、どうして2人のことを? まさか!」
「……」
俺が両親のことを尋ねてきたということが、どういうことなのかを悟ったシエリルは口をふさぐが、俺は小さくうなずいた。
「亡くなったそうです。10年前に2人とも、スニルは当時2歳で、両親のこと覚えていないそうです」
「えっ! ちょっとまって、10年前、えっ、それって、どういう?」
シュンナが簡潔に両親のことを説明したことで、シエリルは混乱したらしい。どうやら、両親が死んだことは知らなかったらしい。
「やっぱり、ご存じなかったんですね?」
「え、ええ、知らなかった。連絡はなかったけど、元気にしているとばかり、で、でも、ちょっとまって、スニル君、あなた、一体いくつ?」
「12」
「それは間違いないですよ。鑑定水晶でも確認してますから」
「ああ、門のところでな」
「そんな、だって、君、どう見ても」
どう見ても、もっと幼い、シエリルはそういいたいんだろうが、言えないでいるようだ。
「まぁ、これにはちょっとした事情がありまして」
「そ、そう、わかったわ、で、でも、ここじゃなんだし、これから私の店に来てもらえるかな」
「……」
「わかりました」
シエリルの問いに俺はうなずいて答え、シュンナがはっきりと言葉で伝えた。
こうして、俺たちはシエリルについてギルドを出て、少し離れたところにある、路地に入っていき少し進んだところにある店にやって来た。
「ここよ。さぁ、入って、あんたー!」
シエリルは店に入るなり、すぐに旦那であるワイエノを呼んだ。
「あんだよ。大声なんか出しやがって、んっ、客か?」
「ええ、ミリアとヒュリックの子よ」
「なに! おおっ、そうか、あいつらげ……」
ワイエノが何かを言おうとしたところで、いつの間にかシエリルが動いており、ワイエノの口をふさいだ。
すげぇ、見えなかったな。元冒険者とは伊達じゃないな。
「なんだよ」
「ちょっと、こっち来て」
それから、シエリルは何やら、小声で話し始めた。
そうして、少ししたところでワイエノが少し気まずそうにやって来た。
まぁ、おそらく両親のことを話したんだろう。
「お、おう、悪いな。えっと、それで、スニルだったか、なるほどな、ミリアにそっくりじゃねぇか」
ワイエノはそういってにかっと笑いながら、俺の頭を撫でた。
「それで、さっきのこと聞かせてもらいたいんだけど、いいかしら」
「は、はい、ダンクス」
「ああ、そうだな。スニル、俺たちは店でも見ていようぜ」
「んっ、ああ、そうだな。そうするか」
シュンナが俺のことを話そうとしたところで、シュンナはダンクスの名を呼び、ダンクスもシュンナの意図を理解したのかすぐに俺を誘ってきた。
そんな2人のやり取りを見て、俺自身もシュンナの意図がわかったのでその誘いに乗った。
これは、シュンナの気遣いで、いくら俺が前世の大人としての記憶を持っているからといっても、さすがに虐待の話を自らあちこちにしたいというわけではないし、何より俺自身忘れたい過去でもある。
だから、こうして俺のいないところで話してくれるんならありがたい。
そんなわけで、俺とダンクスは店にやって来て、商品をいろいろ見て周っている。
「へぇ、いろいろあるんだな」
テントに毛布、ロープなどに始まり調理器具、見れば納得の品ばかりだ。
もっとも、”収納”に大量の食い物と、マジックテントを持つ俺にはあまり必要ないものが多い。だが、ロープとかは必要だ。あとは背嚢かな”収納”があるからいらないんだが、さすがに手ぶらで旅をするのは不自然だからな。
「なんだこれ?」
見て周っていると不意に石みたいな黒い何かを見つけた。
なんで、石を売ってるんだ。
俺がそんな不思議に首をかしげていると、ダンクスがやって来た。
「どうした、スニル。ああ、堅パンか」
「カタパン、なんだ、それ」
「恐ろしく硬いパンだ。保存食なんだよ」
なんと、パンらしい、しかも恐ろしく硬いって、確かに俺も石かと思ったけど、どうやって食うんだよ。
「どうやって、食うんだ」
「さすがにこのままじゃ、無理だぜ。まぁ、大体スープなんかに付けたりしてから食うんだよ。まぁ、それでも硬いけどな」
何をしたところでとにかく硬いらしい。
これは、あれだなどうしようもなくなった時の最後の保存食だな。
「スニル、ダンクス、もういいわよ」
俺たちがいろいろ見て周っているとシュンナが声をかけてきた。どうやら、俺についての話が終わったらしい。
ということで、俺とダンクスは先ほどいた奥に戻ったわけだが、やはりというべきかシエリルとワイエノは不自然な笑顔を顔に張り付けていた。
まぁ、気持ちはわかる。俺だってもし、まぁ、いなかったが、友人もしくは親友とも呼べるやつが知らぬ間に命を落としていて、その息子が虐待を受けていた。それは腹が立って仕方ないだろう、でもそれを若干12歳でしかない本人を目の前に出すわけにはいかず、不自然な笑顔となったわけだ。
というか、さっき2人の怒号が聞こえたしな、まぁ、俺も気が付かないふりして本題を聞こうと思う。
「お、おう、えっと、それで、スニル、お前はあいつらのことを知りたいんだよな」
「聞かせてほしい」
「任せて、そうね。何から話そうかしら……」
ということで、シエリルとワイエノの2人が両親のことを話してくれた。
といっても、まず2人が始めたのは2人が冒険者になるところからだった。
シエリルとワイエノはこの街で生まれ育った幼馴染で、この店はシエリルの実家だそうで幼いころから店に来る冒険者の話に憧れて冒険者となったという。
そうして、1年過ごしているとそこにこれまた同じ町で育っただけあり、ともに遊んだこともあった父さんが登録したところで一緒にパーティーを組むことにした。
そうして、一緒に仕事をすることさらに10か月ほどたったころ、ふとギルドに足を踏み入れた3人の前にちょうど村から出て登録を済ませたばかりの少女、つまり母さんがいたという。
そんな母さんを見た父さんはフリーズ、一方で母さんも同じくフリーズしていた。
どうやら俺の両親はお互いに一目ぼれだったらしい、いや、なんだか気恥ずかしいんだが……。
そんな両親の姿を見たシエリルとワイエノは、さっそく母さんをパーティーに誘ったという。
こうして、4人パーティーとなりそれから数年、カリブリンで活動をつづけたそうだ。
そして、シエリルがワイエノの子を身ごもったことを期に2人は冒険者を引退、また、そのころちょうどシエリルの両親が隠居を考えていたこともあり、2人でこの店を継いだとのことだった。
それからは、両親2人で活動していたらしいが、今度は母さんが俺を身ごもったことで引退し母さんの故郷であるゾーリン村に戻ったとのことだった。
「……そうか、ありがと」
「ううん、いいのよ」
そういって、シエリルは俺のもとにやってきて俺を抱きしめてきた。
俺はそれを甘んじて受け入れつつ、両親が過ごしたこの街をもう少し見て周りたいと思っていた。
あとはやっぱり、父さんが育った孤児院だな、あとで場所を聞いてみよう。
39
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる