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第02章 旅立ちと出会い
04 カリブリン到着
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シュンナとダンクスの2人との出会いから2日、俺たちの目の前にはついにカリブリンの防壁が見えてきた。
「おっ、やっと着いたか」
「長かった」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「大丈夫、スニル」
「はぁ、はぁ、な、なんとか」
元気な2人に対して、俺は死にかけていた。
というのも、単純に俺の体力がなさすぎるからだ。
さすがは元冒険者と騎士、2人ともものすごい体力でしかも慣れていることもあり歩くのも速い。
まぁ、それでも俺に合わせて歩いてくれていたけど、それでも速かった。
おかげで、俺は歩いて数分で体力が尽きる。
最初こそ疲れるたびに休ませてもらったが、これじゃいつまでたってもたどり着けない。
というわけで、俺の体力が尽きるとダンクスの肩の上で休むこととなった。
ちなみに、肩に乗るといっても肩車ではなく、片側の肩に俺がちょこんと座る形だ。
俺の体格と、ダンクスの体格なら可能なことであった。
まぁ、そのおかげで予定よりかなり早く、カリブリンにたどり着けたのはありがたい。
「次! んっ、子供か、お前たちは親? ではないだろう、なら、悪いが12歳未満は親同伴でなければ街は入れないぞ」
門にいた警備兵が俺を見てから、シュンナとダンクスに向かってそういった。
これは村で村長たちから聞いたことだが、この国はどの街も12歳未満の子供は実の親同伴でなければ、街に入ることができないらしい。
俺の見た目はどう見てもその12歳未満、そんな俺がここに来ればこうなることは明白だった。
それで、ダンクスとシュンナだが、2人が俺の親だというのはちょっと無理がある。
ということでこの警備兵の反応は予想通りだった。
「ああ、確かに、俺らはこいつの親じゃないが、こいつは12歳だ」
「鑑定水晶で調べればわかるわ」
鑑定水晶とは鑑定スキルを魔道具化したもので、読めるのは名前、年齢、種族が表示される。
といっても、これは簡易版で名前は偽名を使っている場合は、偽名が表示されてしまうという。
だが、年齢と種族だけはごまかすことはできない、つまりこれを使えば俺の年齢が12歳であると証明できる。
「仕方ない、ちょっと待て」
鑑定水晶を使うことは特別なことでないが、警備兵としては少し手間となり面倒と感じているための反応である。
そして、警備兵は少し離れた場所に置いていた水晶を手に戻ってきた。
「じゃぁ、坊主、こいつに手をかざしてくれ」
「わかった」
俺は言われた通り、水晶に手をかざした。
すると、水晶がほのかに輝き、水晶の中に文字が出現した。
「……すまない」
文字を読んだ警備兵は俺に対して頭を下げた。
「いや」
こういう時どう返せばいいのかわからず、その一言しか言えなかった。
あれっ? 今、思ったことだが、俺は前世において元からの人見知りに加えて、縁が悪すぎて悪化していた。また、小心者の俺は自分の言葉を一度でも否定されると、そのことについて二度と話さなくなる。こうして、俺はほとんどしゃべらなくなっていったわけだ。だからこその今の一言なわけだが、考えてみれば村長たちをはじめとした村の者たちとはそれなりにしゃべっていたし、シュンナとダンクスに至っては、ごく自然に話せているんだよな。
まぁ、いいか。
「そうか、えっと、確かに12歳と確認した。身分証はあるか」
「いや、身分証はない」
「なら、1人2500トラムだ」
トラムというのはこの国の通貨単位のことだ。
「なら、3人で7500トラムね。えっと、じゃぁこれを」
シュンナはそういって無骨な財布から、セリウム大銅貨を7枚とセリウム銅貨を5枚取り出し警備兵に渡した。
この財布は、俺が旅立つ前に村で作ったもので、”収納”のようにいくらでも金をしまえるマジックバックのような財布となっている。
無骨なデザインとなっているのは、もともと男の俺が持つこととしていたためである。
だが、俺が金を持つと面倒ごとになることからシュンナに渡しておいたものだ。
まぁ、ダンクスでもよかったんだが、昔から男が大金を持つとろくなことモノを買わないということや、シュンナは元借金奴隷、つまり金で痛い目にあったことで厳しく管理してくれるだろうとの判断だ。
「確かに、ようこそカリブリンへ、次」
こうして、俺たちは無事カリブリンの街へ入ることができた。
「まずは、どこに行くんだ。ギルドか」
「そうだなぁ……」
「まずは、服屋に決まってるでしょ」
俺の言葉を遮りシュンナがそういった。
そういえば、シュンナもダンクスも俺の両親の服を無理やり着ているんだったな。そうなると、まずはちゃんとした服を整えるのが先か。
「そうだったな。ああ、あと、装備とかも先に見ておくか」
「ああ、そうだな。こいつは借り物だしな」
現在ダンクスとシュンナが持っている剣は、2人の元所有者であった奴隷商の護衛たちが持っていたもので、当然2人に合ったものではない。
「それじゃ、まずは服屋に行って、その後武器屋に行きましょう」
「だな」
そんなわけで、俺たちは3人でまずは服屋へ赴くことになった。
そうして、服屋にやって来たわけだが、俺とダンクスはただ黙ってシュンナを見ている。
っで、そのシュンナだが、さっきから嬉しそうに大量の服を試着し、俺とダンクスにどうかと聞いてくる。
それに対して俺とダンクスはただただうなずくだけである。
……疲れた……。
まぁ、それはいいとして、問題はシュンナが買った大量の服をどうするかというと、当然俺の”収納”に、ではなく、ダンクスが持っている鞄に入れられる。
実はこの鞄は俺の”収納”とつながっているマジックバックになっていて、鞄に入れたものを俺が”収納”から取り出すことも、その逆も可能となっている。
なんで、そんな風にしたのかというと、”収納”という魔法は使い手がいないため、俺が使いまくっていればいらぬトラブルが起きる可能性があるということを2人から聞かされたからだ。
かといって、こんな便利なものを使わないという手は考えられない。せっかく改造もしたしな。
そこで、俺が使うよりトラブルがやってこないであろうダンクスに使わせれば問題ないのではないかと思い、昨夜作って今朝渡したというわけだ。
尤も、ダンクスが使ってもトラブルはやってくるだろう、しかし、俺が使うよりは圧倒的に少なくなる。
なにせ、どう見ても幼児でしかない俺と違い、ダンクスは大男であり強面、そんな男に対して喧嘩を売るような奴はいない。少なくとも俺だったら売らないからな。
そんなわけで、今後も基本的にダンクスがマジックバックを使っていくことになるだろう。
ああ、そうそう、ちなみにだが、これと同じ機能を持ったマジックバックはシュンナも持っているということは告げておこう。
「じゃぁ、次は装備を見に行きましょうか」
「おう、待ってたぜ」
「だな」
服を大量に買い、それをダンクスがマジックバックに収めたことを、驚愕している服屋の店員をよそに、俺たちは店を出て、今度は装備を買うために武器屋に向かった。
そして、武器屋にやって来たわけだが、おおっ、剣が並んでる。すげぇ、あっ、あれロングソードってやつだよな。すげぇ、おっ、あれは、大剣か、すげぇ、本物だ!
「スニル、楽しそうだね」
「! はっ! いや、まぁ、な」
しまった、思わずテンションが上がってしまった。
しかし、これは仕方ない日本には武器屋は存在しないし、こんな光景はアニメなどでしか見たことがない。こんなファンタジー感丸出しの光景、誰だってテンションが上がるってもんだ。
実際、俺はさっきから頭の中は冷静であろうとしているが、結局あちこちきょろきょろと目を輝かせて武器を見ているしな。おおっ、すげぇ、武器屋だー!!!
「こうしてみると、年相応に見えるな」
「ほんとね」
「いらっしゃい」
2人がなんか言っていたが、ちょうど店員がやって来たので文句を言いそびれた。
出てきた店員を見て、俺は訝しむ。というのもここは武器屋で鍛冶工房でもあるという、しかし、出てきた男はどう見ても鍛冶が出来そうには見えない。ひょろってるしな。
「んっ、ああ、うちはドワーフの鍛冶師がいるんでね。私は経営をしているんだよ」
どうやら、俺の疑問に気が付いたらしく店員の男がそういった。なるほど、ドワーフか……えっ、ド、ドワーフ!
ドワーフって、あれか、鍛冶をはじめあらゆる技術の大家のか?
この世界にドワーフ族がいることは当然”森羅万象”にあったので知っている。
そして、そのドワーフは俺が知るドワーフと寸分も違わないということもだ。
そんなドワーフに、直に会えるのか、どこだ、ドワーフ!
なんか、ここに来てからテンション上がりっぱなしだが、仕方ない、なにせ、ドワーフだからな。
「会われますか。奥にいますよ」
「いいのか?」
「もちろん、何でしたら、直接ご注文されても結構ですよ」
店員はそういってダンクスを見た。
まぁ、それはダンクスはでかいため、店内にある剣じゃどれも合わないだろうな。店員もさすがに長年やっているのか、それを理解したらしい。
「ああ、じゃぁ、お願い」
シュンナがそう答えたことで、店員は顔をにやけさせながら俺たちを店の奥へと案内してくれた。
「んっ、なんじゃい店主、客か?」
「ああ、お客さんだよ。失礼のないようにね」
「ふんっ、そいつら次第じゃ。そんで、ワシのなんの用じゃ」
態度のでかさがまさにドワーフだなと思っていると、ふとあることに気が付いた。
「んっ、なぁ、シュンナ」
「なに?」
「あれって?」
俺はそういってドワーフの首を見た。そこには見覚えのあるものがあったのだ。
「ああ、そっか、スニルは知らないんだよね」
「何が?」
「この国が国教にしているキリエルタ教ではね、人族以外は人間ではないって教示があるのよ」
「なにそれ?」
意味が分からない、この世界では俺たちのような人族、ドワーフやエルフ、獣人族、魔族という風に多種多様の種族が存在している。
しかし、これらの種族は神様がはじめから作った人間の一種であると、俺の”森羅万象”には記録されている。
「まぁ、あたしも間違ってるとは思うけど、昔の偉い人がそういったみたいよ。それで、人族以外の種族は亜人って扱ってて、奴隷にされてるってわけ」
「なんじゃ、坊主、奴隷が珍しいのかのぉ」
俺とシュンナがそんな会話をしていると、ドワーフがそういって尋ねてきた。
小声だったんだけど、聞こえていたみたいだ。
「いや、奴隷は珍しくないけど、ドワーフは初めて見たから」
「おう、そうか、まぁ、確かに、ここらに同胞は居なかったからのぉ」
「それにしても、ずいぶんと自由な奴隷だな」
ダンクスが俺も思っていた疑問を投げかけた。
「家のドワーフは先代のころから居ますし、うちにとってはなくてはならない存在ですからね」
店主が言うようにドワーフのような技術のあるものは、奴隷となってもある程度の自由があるらしい。
また、このドワーフと店主は、店主が幼いころからここで働いており、奴隷というより小父さんのような存在だそうだ。
「なるほどな。まぁ、じゃぁ、注文いいか」
ダンクスが言った。
「おう、いいぞい、んで、お前さんは大剣で、そっちの嬢ちゃんは双剣ってところか」
ドワーフは2人のころをパッと見て、そういった。
「えっと、確かにあたしは双剣使うけど、わかるんだ」
「長年ドワーフをやっておるからのぉ、それぐらいはわかるわい」
「すげぇな。でも、俺は大剣じゃなくてロングソードが良いんだが」
ダンクスは元とは言え騎士、騎士の武器はやはりロングソードである。
「この際だから、変えたらどうだ。ダンクスの場合、どう見ても大剣だろ。ていうか、ロングソードがショートソードに見えそうだし」
「かっかっかっ、坊主の言う通りじゃわい。お主の体格だと、相当なでか物でも問題なかろう」
「そうよね。ダンクスが使うと普通の大剣でやっとロングソードに見えるかも」
「お前らなぁ、まぁ、確かに、以前にも言われたけどよ」
「だったら、試されてみませんか?」
俺たちが話していると店主がそんな提案をしてきた。
「はい、うちには大剣がありますから、実際にそれを振ってみては」
「あっ、いいんじゃない、やってみれば」
「ああ、そうだな。やってみるか」
ということで、俺たちは店の庭に出た。
「それじゃ、これをどうぞ」
「ああ、すまねぇ、借りるぜ。ふんっ」
店主がよっこらせっと、持ち上げた体験をダンクスは軽々と持ち上げて、一振り。
「うん、やっぱり、似合うよね」
「確かに」
「ふむ、もう少し大きさがあってももんだいなさそうじゃの」
ドワーフは一人、ダンクスにあった剣を考えているようだが、俺にはちょっとよくわからなかった。
それから、シュンナも店にあった双剣を借りて振り回し、ドワーフに注文したのだった。
「おっ、やっと着いたか」
「長かった」
「はぁ、はぁ、はぁ」
「大丈夫、スニル」
「はぁ、はぁ、な、なんとか」
元気な2人に対して、俺は死にかけていた。
というのも、単純に俺の体力がなさすぎるからだ。
さすがは元冒険者と騎士、2人ともものすごい体力でしかも慣れていることもあり歩くのも速い。
まぁ、それでも俺に合わせて歩いてくれていたけど、それでも速かった。
おかげで、俺は歩いて数分で体力が尽きる。
最初こそ疲れるたびに休ませてもらったが、これじゃいつまでたってもたどり着けない。
というわけで、俺の体力が尽きるとダンクスの肩の上で休むこととなった。
ちなみに、肩に乗るといっても肩車ではなく、片側の肩に俺がちょこんと座る形だ。
俺の体格と、ダンクスの体格なら可能なことであった。
まぁ、そのおかげで予定よりかなり早く、カリブリンにたどり着けたのはありがたい。
「次! んっ、子供か、お前たちは親? ではないだろう、なら、悪いが12歳未満は親同伴でなければ街は入れないぞ」
門にいた警備兵が俺を見てから、シュンナとダンクスに向かってそういった。
これは村で村長たちから聞いたことだが、この国はどの街も12歳未満の子供は実の親同伴でなければ、街に入ることができないらしい。
俺の見た目はどう見てもその12歳未満、そんな俺がここに来ればこうなることは明白だった。
それで、ダンクスとシュンナだが、2人が俺の親だというのはちょっと無理がある。
ということでこの警備兵の反応は予想通りだった。
「ああ、確かに、俺らはこいつの親じゃないが、こいつは12歳だ」
「鑑定水晶で調べればわかるわ」
鑑定水晶とは鑑定スキルを魔道具化したもので、読めるのは名前、年齢、種族が表示される。
といっても、これは簡易版で名前は偽名を使っている場合は、偽名が表示されてしまうという。
だが、年齢と種族だけはごまかすことはできない、つまりこれを使えば俺の年齢が12歳であると証明できる。
「仕方ない、ちょっと待て」
鑑定水晶を使うことは特別なことでないが、警備兵としては少し手間となり面倒と感じているための反応である。
そして、警備兵は少し離れた場所に置いていた水晶を手に戻ってきた。
「じゃぁ、坊主、こいつに手をかざしてくれ」
「わかった」
俺は言われた通り、水晶に手をかざした。
すると、水晶がほのかに輝き、水晶の中に文字が出現した。
「……すまない」
文字を読んだ警備兵は俺に対して頭を下げた。
「いや」
こういう時どう返せばいいのかわからず、その一言しか言えなかった。
あれっ? 今、思ったことだが、俺は前世において元からの人見知りに加えて、縁が悪すぎて悪化していた。また、小心者の俺は自分の言葉を一度でも否定されると、そのことについて二度と話さなくなる。こうして、俺はほとんどしゃべらなくなっていったわけだ。だからこその今の一言なわけだが、考えてみれば村長たちをはじめとした村の者たちとはそれなりにしゃべっていたし、シュンナとダンクスに至っては、ごく自然に話せているんだよな。
まぁ、いいか。
「そうか、えっと、確かに12歳と確認した。身分証はあるか」
「いや、身分証はない」
「なら、1人2500トラムだ」
トラムというのはこの国の通貨単位のことだ。
「なら、3人で7500トラムね。えっと、じゃぁこれを」
シュンナはそういって無骨な財布から、セリウム大銅貨を7枚とセリウム銅貨を5枚取り出し警備兵に渡した。
この財布は、俺が旅立つ前に村で作ったもので、”収納”のようにいくらでも金をしまえるマジックバックのような財布となっている。
無骨なデザインとなっているのは、もともと男の俺が持つこととしていたためである。
だが、俺が金を持つと面倒ごとになることからシュンナに渡しておいたものだ。
まぁ、ダンクスでもよかったんだが、昔から男が大金を持つとろくなことモノを買わないということや、シュンナは元借金奴隷、つまり金で痛い目にあったことで厳しく管理してくれるだろうとの判断だ。
「確かに、ようこそカリブリンへ、次」
こうして、俺たちは無事カリブリンの街へ入ることができた。
「まずは、どこに行くんだ。ギルドか」
「そうだなぁ……」
「まずは、服屋に決まってるでしょ」
俺の言葉を遮りシュンナがそういった。
そういえば、シュンナもダンクスも俺の両親の服を無理やり着ているんだったな。そうなると、まずはちゃんとした服を整えるのが先か。
「そうだったな。ああ、あと、装備とかも先に見ておくか」
「ああ、そうだな。こいつは借り物だしな」
現在ダンクスとシュンナが持っている剣は、2人の元所有者であった奴隷商の護衛たちが持っていたもので、当然2人に合ったものではない。
「それじゃ、まずは服屋に行って、その後武器屋に行きましょう」
「だな」
そんなわけで、俺たちは3人でまずは服屋へ赴くことになった。
そうして、服屋にやって来たわけだが、俺とダンクスはただ黙ってシュンナを見ている。
っで、そのシュンナだが、さっきから嬉しそうに大量の服を試着し、俺とダンクスにどうかと聞いてくる。
それに対して俺とダンクスはただただうなずくだけである。
……疲れた……。
まぁ、それはいいとして、問題はシュンナが買った大量の服をどうするかというと、当然俺の”収納”に、ではなく、ダンクスが持っている鞄に入れられる。
実はこの鞄は俺の”収納”とつながっているマジックバックになっていて、鞄に入れたものを俺が”収納”から取り出すことも、その逆も可能となっている。
なんで、そんな風にしたのかというと、”収納”という魔法は使い手がいないため、俺が使いまくっていればいらぬトラブルが起きる可能性があるということを2人から聞かされたからだ。
かといって、こんな便利なものを使わないという手は考えられない。せっかく改造もしたしな。
そこで、俺が使うよりトラブルがやってこないであろうダンクスに使わせれば問題ないのではないかと思い、昨夜作って今朝渡したというわけだ。
尤も、ダンクスが使ってもトラブルはやってくるだろう、しかし、俺が使うよりは圧倒的に少なくなる。
なにせ、どう見ても幼児でしかない俺と違い、ダンクスは大男であり強面、そんな男に対して喧嘩を売るような奴はいない。少なくとも俺だったら売らないからな。
そんなわけで、今後も基本的にダンクスがマジックバックを使っていくことになるだろう。
ああ、そうそう、ちなみにだが、これと同じ機能を持ったマジックバックはシュンナも持っているということは告げておこう。
「じゃぁ、次は装備を見に行きましょうか」
「おう、待ってたぜ」
「だな」
服を大量に買い、それをダンクスがマジックバックに収めたことを、驚愕している服屋の店員をよそに、俺たちは店を出て、今度は装備を買うために武器屋に向かった。
そして、武器屋にやって来たわけだが、おおっ、剣が並んでる。すげぇ、あっ、あれロングソードってやつだよな。すげぇ、おっ、あれは、大剣か、すげぇ、本物だ!
「スニル、楽しそうだね」
「! はっ! いや、まぁ、な」
しまった、思わずテンションが上がってしまった。
しかし、これは仕方ない日本には武器屋は存在しないし、こんな光景はアニメなどでしか見たことがない。こんなファンタジー感丸出しの光景、誰だってテンションが上がるってもんだ。
実際、俺はさっきから頭の中は冷静であろうとしているが、結局あちこちきょろきょろと目を輝かせて武器を見ているしな。おおっ、すげぇ、武器屋だー!!!
「こうしてみると、年相応に見えるな」
「ほんとね」
「いらっしゃい」
2人がなんか言っていたが、ちょうど店員がやって来たので文句を言いそびれた。
出てきた店員を見て、俺は訝しむ。というのもここは武器屋で鍛冶工房でもあるという、しかし、出てきた男はどう見ても鍛冶が出来そうには見えない。ひょろってるしな。
「んっ、ああ、うちはドワーフの鍛冶師がいるんでね。私は経営をしているんだよ」
どうやら、俺の疑問に気が付いたらしく店員の男がそういった。なるほど、ドワーフか……えっ、ド、ドワーフ!
ドワーフって、あれか、鍛冶をはじめあらゆる技術の大家のか?
この世界にドワーフ族がいることは当然”森羅万象”にあったので知っている。
そして、そのドワーフは俺が知るドワーフと寸分も違わないということもだ。
そんなドワーフに、直に会えるのか、どこだ、ドワーフ!
なんか、ここに来てからテンション上がりっぱなしだが、仕方ない、なにせ、ドワーフだからな。
「会われますか。奥にいますよ」
「いいのか?」
「もちろん、何でしたら、直接ご注文されても結構ですよ」
店員はそういってダンクスを見た。
まぁ、それはダンクスはでかいため、店内にある剣じゃどれも合わないだろうな。店員もさすがに長年やっているのか、それを理解したらしい。
「ああ、じゃぁ、お願い」
シュンナがそう答えたことで、店員は顔をにやけさせながら俺たちを店の奥へと案内してくれた。
「んっ、なんじゃい店主、客か?」
「ああ、お客さんだよ。失礼のないようにね」
「ふんっ、そいつら次第じゃ。そんで、ワシのなんの用じゃ」
態度のでかさがまさにドワーフだなと思っていると、ふとあることに気が付いた。
「んっ、なぁ、シュンナ」
「なに?」
「あれって?」
俺はそういってドワーフの首を見た。そこには見覚えのあるものがあったのだ。
「ああ、そっか、スニルは知らないんだよね」
「何が?」
「この国が国教にしているキリエルタ教ではね、人族以外は人間ではないって教示があるのよ」
「なにそれ?」
意味が分からない、この世界では俺たちのような人族、ドワーフやエルフ、獣人族、魔族という風に多種多様の種族が存在している。
しかし、これらの種族は神様がはじめから作った人間の一種であると、俺の”森羅万象”には記録されている。
「まぁ、あたしも間違ってるとは思うけど、昔の偉い人がそういったみたいよ。それで、人族以外の種族は亜人って扱ってて、奴隷にされてるってわけ」
「なんじゃ、坊主、奴隷が珍しいのかのぉ」
俺とシュンナがそんな会話をしていると、ドワーフがそういって尋ねてきた。
小声だったんだけど、聞こえていたみたいだ。
「いや、奴隷は珍しくないけど、ドワーフは初めて見たから」
「おう、そうか、まぁ、確かに、ここらに同胞は居なかったからのぉ」
「それにしても、ずいぶんと自由な奴隷だな」
ダンクスが俺も思っていた疑問を投げかけた。
「家のドワーフは先代のころから居ますし、うちにとってはなくてはならない存在ですからね」
店主が言うようにドワーフのような技術のあるものは、奴隷となってもある程度の自由があるらしい。
また、このドワーフと店主は、店主が幼いころからここで働いており、奴隷というより小父さんのような存在だそうだ。
「なるほどな。まぁ、じゃぁ、注文いいか」
ダンクスが言った。
「おう、いいぞい、んで、お前さんは大剣で、そっちの嬢ちゃんは双剣ってところか」
ドワーフは2人のころをパッと見て、そういった。
「えっと、確かにあたしは双剣使うけど、わかるんだ」
「長年ドワーフをやっておるからのぉ、それぐらいはわかるわい」
「すげぇな。でも、俺は大剣じゃなくてロングソードが良いんだが」
ダンクスは元とは言え騎士、騎士の武器はやはりロングソードである。
「この際だから、変えたらどうだ。ダンクスの場合、どう見ても大剣だろ。ていうか、ロングソードがショートソードに見えそうだし」
「かっかっかっ、坊主の言う通りじゃわい。お主の体格だと、相当なでか物でも問題なかろう」
「そうよね。ダンクスが使うと普通の大剣でやっとロングソードに見えるかも」
「お前らなぁ、まぁ、確かに、以前にも言われたけどよ」
「だったら、試されてみませんか?」
俺たちが話していると店主がそんな提案をしてきた。
「はい、うちには大剣がありますから、実際にそれを振ってみては」
「あっ、いいんじゃない、やってみれば」
「ああ、そうだな。やってみるか」
ということで、俺たちは店の庭に出た。
「それじゃ、これをどうぞ」
「ああ、すまねぇ、借りるぜ。ふんっ」
店主がよっこらせっと、持ち上げた体験をダンクスは軽々と持ち上げて、一振り。
「うん、やっぱり、似合うよね」
「確かに」
「ふむ、もう少し大きさがあってももんだいなさそうじゃの」
ドワーフは一人、ダンクスにあった剣を考えているようだが、俺にはちょっとよくわからなかった。
それから、シュンナも店にあった双剣を借りて振り回し、ドワーフに注文したのだった。
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