おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第03章 コルマベイント王国

02 襲われてる人々

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 生まれて初めての人殺しによる盗賊討伐、思っていたよりも大丈夫な自分に驚きつつも、今はそれを良しとしようと思う。
 多分、神様が何かしたか、それともこの12年の人生からやはり精神のどこかが壊れていたのか。
 まぁ、後者だろうと思う。なにせ、記憶を取り戻すまでの俺は間違いなく精神が死んでいたからな。
 ほんと、記憶を取り戻してよかったと思う、精神は壊れていても前世の精神と記憶が修復してくれたわけだしな。でも、やっぱりどっか治せなかったんだろ、でも、それは今回の場合いいほうに働いたと思おう。

 そんなわけで、何とか盗賊討伐を終えた俺たちは、再び街道に出て歩き出す。

「近くの街って、あとどのくらいだ」
「そうだな、地図によるとあと、4時間も歩けばつけるんじゃないか」
「4時間?! まだなだだな」
「そこって、宿場町なんだっけ」
「ああ、そうだ」

 大きな街同士が離れている場合、途中に宿屋が集中した町ができることがあり、それが宿場町というらしい。
 もちろん宿屋だけではなく旅に必要な物資なども扱う店なども充実しているそうだ。


 というわけで歩くこと4時間と少し、ダンクスの見立て通り目の前に宿場町の防壁が見えてきた。

「やっと、ついたか」
「そうみたいね。ふふっ、お疲れ様」
「さっさと、入ろうぜ」

 というわけで列に並んで門を抜けるわけだが、ここで思っていた通りひと悶着があった。
 宿場町といえど、ここは領主が管理する町ということで当然門番がおり、例のごとく12歳未満は実の両親でなければ通れないという規則があった。
 んで、俺は見た目12歳未満だからなどうしてももめるんだよな。
 まぁ、結局鑑定水晶を使うことで入れたんだけど。

 そうそう、道中で倒した盗賊だけど武器を拾っておいたので渡したら、それなりに名のある盗賊だったらしく結構な額の報奨金をもらえた。

「毎回これも面倒だな」
「だな」
「何かいい方法があればいいんだけど」

 ダンクスとシュンナも同じく毎回は面倒だと思ったようだ。
 とまぁ、それはおいおい考えるとして、今は宿をとろうと思うんだけど、どこがいいんだろうな。

「どこにするんだ?」
「適当でいいんじゃないか」
「あんまり適当だと変な宿になるわよ。まぁ、ダンクスがいれば妙な気は起こさないと思うけどね」
「まぁ、そうだろうな」

 そんなわけで、あたりの店をめぐっていい宿を聞いて回った。
 もちろん聞いたのはシュンナだけどな。
 それにより、エルモの風亭という宿が安くていい宿であるという情報があちこちから聞けたので、とりあえずその宿に向かうこととなった。

 そして、やってきたエルモの風亭だが、評判通りいい宿に見えた。

「よさそうだな」
「そうね」
「そうだな。部屋が空いていればいいけど」

 そう言いながら扉を開けると元気のいい声が響いた。

「いらっしゃーい、3名様? ごめんなさーい、お部屋1つしか開いてないの」

 入るなり部屋は1つしかないと断られた。

「ああ、あたしたち別に1つでもいいわよ。どんな部屋?」
「あっ、そうです? でもでも、お部屋は2人用ですよ」

 どうやら、ツインの部屋しか開いていないらしい。

「ああ、それで大丈夫。この人床で寝るから」

 シュンナはそう言ってダンクスを指さした。

「えっ、えっと、その方が、ですか?」

 さすがに宿の従業員だけあってダンクスを見ても悲鳴は上げなかったが、ちょっと怖がっているな。

「ええ、ああっ、大丈夫よ。こんな顔しているけど、あたしたちの中で一番の善人だから」

 シュンナのいう通り、これは間違いないだろう、じゃぁ誰が一番悪人かというとあまり差はないと思う、シュンナもなんだかんだで善人だし、となると一番は俺かな。

「そうですか、でもでも、いいんですか?」

 宿屋の従業員の少女は恐る恐るダンクスに聞いた。

「ああ、構わないぞ。というか俺のなりだと普通のベッドじゃどっちみち寝れねぇからな」
「あっ、ああ、確かに、あっ、すみません」

 ダンクスのサイズをざっと見た少女は納得しつつもすぐに謝った。
 やっぱり怖いらしいな。

「いいって、気にすんな。ああ、もちろん宿代は3人分払うぞ」
「ええ、もちろん、どうかしら」
「は、はい、お客さんが良ければ、こちらとしては問題ないですよ」
「じゃぁ、お願い、えっといくら?」
「はい、えっと1人、3,420トラムだから3人で10,260トラムです」
「それじゃ、これね」

 1人3,420トラム、日本円が同じくらいだとしたら安いな思うが、2人によるとこの国では平均より少し安いぐらいだそうだ。
 逆にこういった宿で1人10,000トラムも取られたら明らかにぼっているそうだ。
 また、同じ値段でも部屋が汚いとか、飯が付かないとかもありひどいときは財布や荷物が奪われるなんてこともよくあることだそうだ。
 治安が悪いな。
 でも、宿に泊まってものが盗まれるなんてことは、平和な日本でもニュースで聞いたことがあるからな。
 まぁ、40年近くの人生で1回しか聞いたことないけど。

「はーい、確かにそれではお部屋まで案内しますね」

 そう言って少女は歩き出したので、俺たちはそのあとをついていく。
 階段を上がった2階の、3番目の扉の前で止まった少女はこちらを見た。

「ここです。これ鍵です。なくさないようにしてくださいね。それとご飯はそっちの階段を降りたところに酒場がありますからそこで注文してください。一応食事代は宿代に含まれていますが、あんまり量が多いと追加料金をもらうことになりますから注意してください。あっ、あとお酒もボトル2本までなら大丈夫ですけど、それ以上は追加です。あとは、お湯はいりますか?」

 とそんな説明をしながらカギをシュンナに渡す少女、最後にお湯がいるかと聞いているがどういうことだ。
 俺は疑問符を浮かべているが、シュンナは分かっているようで答えた。

「ああ、こっちで何とかするから大丈夫よ」
「そうですか。わかりました」

 そう返事して少女は来た道を戻っていった。

「さぁ、まずははいりましょ」
「おう」
「ああ」

 それから部屋の中に入ったわけだが、確かにベッドが2つ並んでおいてあった。

「それじゃ、スニルはそっち使って、あたしこっち使うから、ダンクスはそこらへんなら大丈夫でしょう」
「おう、確かにここらなら問題なさそうだな。っと」

 シュンナの采配で俺らの寝る場所が決められて、ダンクスはマジックバックから巨大なマットレスを取り出した。
 そう、実はダンクスの巨体だとどの宿に行ったところでベッドに収まるわけがないことから、最初からダンクスは自前でマットレスを用意していた。
 それを”収納”に収めていたので、取り出したというわけだ。

「そういえば、お湯ってなんだ?」

 俺は先ほどのお湯のことを聞いた。

「んっ、ああ、お湯っていうのはほら、湯浴み用のお湯のこと、こういう宿では別料金でお湯を用意してもらうことになっているのよ。まぁ、あたしたちの場合はスニルが魔法で出せるでしょ」
「ああ、そういうことかそういえばこの世界には風呂はないんだったな」

 カリブリンでは毎日孤児院で温泉に入っていたし、昨日もテントでは普通に風呂に入っていたからな、忘れてた。
 そう、今朝当たり前すぎて説明を忘れていたが、俺のテントの中にはもう1つ扉があり、そこに風呂を設置してある。
 といってもそのお湯は俺が魔法で出したものだけどな。

「そういうこと、ということであとでお湯出してね」
「おう、わかった。そんじゃ、先に飯か?」
「だな、腹減ったしな」
「そうね。そうしましょう」

 というわけで、俺たちはまず飯を食うことにして、先ほど上がってきた階段とは別の階段を下りていく。
 すると、そこは少女が言った通り酒場となっており、多くの者たちが酒を飲み料理を楽しんでいた。
 尤も、シュンナを見て盛り上がったおっさんたちも、そのあと現れたダンクスを見て顔をそむけた。
 まぁ、そうなるよなぁ。

 その後適当に料理を注文して楽しんで、ダンクスが酒を飲み部屋に戻り、お湯を用意したわけだが当然まずはシュンナからということで俺とダンクスは部屋から出た。
 それから待つことしばし、シュンナと交代して俺とダンクスが体をふき、今日は休むこととなった。



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 翌日。

 宿のベッドの上で目覚めのいい朝を迎えた。
 横を見ればまだ眠っているシュンナ、起き上がるといつものごとくダンクスがすでに起きて剣の手入れをしていた。

「おう、起きたか」
「ああ」
「うーん」

 俺とダンクスがあいさつを交わしていると、隣のシュンナも目覚めたようだ。

「こっちも起きたみたいだな。ふわぁ」
「みたいだな。ほれっ」
「おう、サンキュ」

 あくびをすると顔を洗えとばかりにダンクスがタオルを投げてきたのでそれを受け取り、魔法で目の前に湯の球を出して直接顔を突っ込んだ。
 魔法ってホント便利だよなぁ。

「相変わらず器用な奴だな」
「おはよ。スニルあたしにも頂戴」
「ああ、おはよ。ほらっ」
「うん、ありがと」

 顔を洗っているとシュンナも目覚めたようなので、シュンナの分のお湯も用意してやると、シュンナは湯の球に手を突っ込み救い上げ洗い始める。

 そうしてから、準備をそれぞれ整えて、朝飯を食ってから宿を出る。

「またどうぞ」

 少女に見送られて俺たちは旅立つ。

「朝から活気があるな」
「ほんとね」
「あの串焼き、うまそうだなぁ、食っていかねぇか?」

 宿場町の朝はいくつもの屋台が出ており、活気にあふれていた。
 それを眺めつつ歩いていると、ダンクスはさっき朝飯を食ったというのに足りなかったようで、串焼きを食いたいと言い出した。

「いや、俺はいいよ。さっき食ったばかりだからな」
「うーん、あたしもいいかな」
「そうか、俺はまだ入るぜ」
「まぁ、そうだろうな」
「その体じゃね。はい、お金」
「ありがてぇ」

 ダンクスの巨体じゃ、普通の朝飯だけじゃ足りないだろうな。それがおわかっているからシュンナもダンクスに串焼きの金を渡した。
 こういう時のためにそれぞれにある程度の金は持っていたほうがいいのかな。
 一応今は、シュンナの財布に集約しているからな。
 考えていると、ダンクスが大量の串焼きを買って帰ってきた。
 ほんと、ダンクスはよく食うよな。まぁ、あの巨体じゃ仕方ないだろうけどな。
 ちなみに、俺とシュンナもそれなりに食うことは食う、日本でいうなら成人男性ぐらいは普通に食うと思う。
 それでも、ダンクスはその倍は食うからな。

 そんな買い食いをしたり、屋台に出ている雑貨などを見ていると門にたどり着いたので、町を出ることにした。


 そうして、再び街道をひぃこらと歩くことしばし、夜となり今日もまた夜営をする。
 といっても、むしろ俺たちの場合夜営のほうが快適なくらしができるんだけど……。


 そうして、翌日になり、またもや街道を歩いていた。
 そして、昼に差し掛かったころだった。

「んっ?」
「音?」
「剣戟か?」
「のようだな。悲鳴も聞こえるぞ」
「誰かが戦っているみたいね」
「だな、また盗賊か?」

 剣戟の音が聞こえることから、人対人である可能性が高い、となると盗賊に遭遇した人が戦っているんだろう。

「おそらくな」
「どうする?」
「一応見に行ってみるか?」
「そうしよっか」

 誰かが戦っているのなら、その戦いに俺たちが参加することはない。
 これはトラブルになる恐れがあるためにマナーとされている。
 だが、もし助成が必要ならそうすることもありうるので、一応確認のためにその場に行くわけだ。

 んで、実際現場に向かったわけだが思った通り盗賊、相手は馬車を引いた商人とその護衛の冒険者かな。

「冒険者みたいね」
「だな、でも、ちょっとまずいな」
「そうね」

 2人がそういう理由は数、冒険者の数は4人に対して盗賊の数は25、明らかに冒険者が不利だ。

「どうすんだ?」

 俺はこの場合どうするのが正解かを2人に訪ねた。

「そうね。一応助けがいるか声をかけるのがいいわね」
「なるほど、だったら、あそこの商人に声をかけるべきか?」
「そうね。でも、そのあと冒険者のリーダーにも確認する必要があるかな。中にはプライドが高くて、助けなんていらないって言い出す奴がいるし、何より雇い主が助けを求めても冒険者がいらないって言い張る場合もあるのよ」

 たまにそういう面倒がいるらしい。

「まぁ、いるだろうなぁ」
「じゃぁ、ちょっと行ってくるね」

 こういう交渉事は俺とダンクスは向いていないので、シュンナが向かってくれた。
 もちろん俺たちもシュンナについて商人の元へと向かっていった。

「……助けがいるか聞きたいんだけど」
「えっ、は、はいもちろん、助けて頂けるのでしたら、いくらでもお礼は致しますが、その……」

 商人は助けてくれるならありがたいといいつつもダンクスをちらっと見て不安そうな顔をした。
 まぁ、気持ちはわかる。

「ああ、大丈夫よ。ダンクスは顔が怖いだけだだから、それでどうかな」
「は、はい、ですが、護衛の冒険者さんにもお尋ねいたしませんと、私には何とも」
「そりゃぁそうよね。ねぇ、ちょっと助けがいるかなー」

 商人との交渉が終わったところで、今度は声を張り上げて冒険者たちに交渉を始めた。

「必要ねぇ。すっこんでろっ!!」

 なんとも向こうっ気が強そうな少年がそう言って断ってきた。

「何言ってるのよ。お願い」

 一方で盗賊の攻撃を必死に避けている格闘少女は必要だと叫んだ。
 どっちだよ。

「どうしろと?」
「よくあるのよ。それで、どっち、ていうかあんたたちリーダーは誰よ」
「俺がリーダーだっと、頼むできるなら助けてくれ、結構やばい」

 どうやら、今現在盗賊とつばぜり合い中の青年がこのパーティーのリーダーらしい。

「おいリック、俺はやれるぞ。助けなんていらねぇ」
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ。このままじゃ私たちやられちゃうでしょ」
「うるせぇ」

 なんだか戦いながら喧嘩が始まったんだけど……

「はぁ、あの子危ないわね」
「だな」
「下手をしたらあいつのせいで、全滅だな」
「そうなるかもね」

 そんな喧嘩を見つつ俺たちはそんな感想をつぶやいていた。

「んで、どうすんだ。あいつ以外は助けがいるって言ってるぞ」
「なら、問題ないわよ。というか依頼主とリーダーが助けを求めた以上あの子が何を言っても無駄よ」

 そういうものらしい、というわけで助けることにしたわけだが、さて、ああそうだあれを試してみるか。

「なら、ちょっとあれ、試してみてもいいか、ちょうどいいし」
「あれか?」
「あれね。いいんじゃない、スニルなら失敗しないでしょ」
「ああ、そのつもりはないけどな。まぁ、もらしたら頼む」
「おっけ」

 ということで、この乱戦状態を好機としてあることを試してみることした。
 それは、俺のメティスルの権能である”マップ”に敵味方表示できる仕様があり、これを利用して俺自身が選択した相手だけに魔法を行使するという通常の魔法使いでは出来えないことをしようってわけだ。
 まぁ、簡単に説明するとこんなところだが、実際にやってみようと思う。
 まず、”探知”でこの辺りを調べ”マップ”に人物だけを表示させ、盗賊を赤表示とし、商人と冒険者を青、俺たちを緑とした。
 これで準備は完了だ。あとは、”範囲指定”を敵味方すべてを巻き込むように大きく指定してから、赤表示されたものだけを”選択”それから魔法を発動する。
 今回使う魔法はこの間使ったものと同じ大地魔法の”アースニードル”だ。

「いくぞ」

 俺はそう言ってから魔法を行使した。

「うわぁ!」
「ぎゃっ!」
「きゃっ、なに?」
「うぉっと」
「ギヤァ!!」

 あたり一面に土でできた杭というか針が生えて、正確に盗賊だけを貫いた。
 近くにいた冒険者たちは突然の光景に目を見開き驚いていた。
 いや、一人腰を抜かしたな。

「うわぁ。さすがね」
「俺たちは分かっていたからいいけど、あいつらは悲惨だな」
「うまくいったみたいだな」

 俺が作り上げた惨状にシュンナもダンクスも若干引いていた。
 確かに、この光景はちょっとやべぇな。
 少し人にはお見せできない光景となってしまったよ。
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