おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第06章 獣人の土地

05 獣人族の村

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 獣人族との邂逅の末、サーナと合わせることになり、1人”転移”で聖都にある宿近くの人の来なさそうな路地裏へと戻ってきた。

「さてと、父さんと母さんは宿の居ればいいけれど」

 今現在は昼前の午前中、特に2人に宿にいるようにと指示していたわけではないので、もしかしたらサーナを連れて散歩に出かけている可能性もあった。

「なんにせよ、とりあえず宿に行って聞いてみるか」

 そんなわけでまずは宿へと足を運んでみた。

「あらっ君は、おかえりなさい。あの子たちは散歩に出かけたわよ」

 俺の姿を見るなり聞くまでもなく女性がそう教えてくれた。ありがたいが、そうか思った通り散歩に出かけたか。

「わかった。ありがと」

 いくら人見知りでもお礼ぐらいは言えるので、そう言ってから再び宿の外へと出たのだった。

「さてどこに行ったのか。まぁ、探知でわかるんだが……あっ、探知するまでもなかったな」

 俺たちが泊っている宿は昨日サーナと遊んだ公園から見える場所にあった。つまり、この場所から公園が見えるというわけで、その公園で遊ぶ3人が見えた。
 というわけで、さっそく3人の元へと軽く走りながら向かったのだった。

「あっ、スニルおかえりなさい」
「おう、早かったな」

 父さんと母さんがそろって、すぐに走る俺の姿を見つけて声をかけてきた。さすがというべきか2人は近づく俺の気配にかなり敏感で、いつも黙って近づいても気が付かれるんだよな。昔から気配を消すのは得意だったはずなんだけれど、2人には通じない。まぁ、ダンクスとシュンナにも通じないけれどね。

「ああ、順調に事が進んで、今接触したところなんだ」
「そう、良かったわ。それで、サーナちゃんを連れていくことになったのね」
「そういうこと、囲まれたんだけど、その中にちょうどというべきか身内がいたみたいで」
「身内?」
「ああ、あの人はニーナさんって言って、その父親と兄がいたんだ」
「そう、そうだったのね」

 母さんは悲痛な表情をした、俺も周囲の目があるために言葉を濁しているが、あの人というのは当然サーナを産み落とした母親のことだ。

「それはつらいだろうな。それにしてもニーナか、サーナと似てたんだな」
「そうね」

 父さんはそう言ってサーナの頭を撫でたが、当のサーナはよくわかっておらず首をかしげている。

「俺も驚いたよ。こんな偶然があるんだなって、まっというわけで、シュンナが交渉してサーナを連れていくことになった」
「わかったわ。それじゃ急いだほうがよさそうね」
「そうだな。すぐに準備をして行こう」
「どこいくの?」
「ふふっ、サーナちゃんのお爺ちゃんのところよ。よかったわねぇ」
「じーちゃ?」
「そうそう、それじゃ俺はサクッと準備してくるからここで待っていてくれ」
「お願いね。ヒュリック」

 父さんが1人で宿へ向かうことになり俺と母さんとサーナの3人でこの場で遊んで待つこととなった。


 それから、しばししてサーナと遊んでいると宿から父さんがやって来た。

「引き払ってきたぞ」
「それじゃぁ、行きましょうか」
「ああ」

 それから俺たちはそろって人気のない場所まで向かいそこから”転移”した。



▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



「おう、戻ったか」
「状況は?」

 ”転移”で元の場所に戻るとすぐにダンクスがこっち見てそういったので、俺がいなくなってからの状況を確認した。というか、見た限りでは、人数が増えている。

「周りにいた奴らが出てきてな。今はニーナだったか、彼女の棺を運ぶ手筈を整えているところだ」

 ダンクスの言葉通り、見ると数人の男たちがニーナが収まっている棺桶を囲んでいる。

「俺が運んでもよかったんだけどな」
「それはシュンナも言ったが、彼らにとっては自分らで運びたいんだろう」
「まぁ、私たちはまだ信用されていないってことね」
「そうだろうな。人族が獣人族にしてきたことを考えれば当然と言えば当然か」

 俺とダンクスの会話に父さんと母さんも加わった。ちなみにシュンナはこの場におらず彼らの近くに武器を持った男たちに囲まれながら何やら話している。

「シュンナは交渉中みたいね」
「ああ、あの棺のことを説明しているんだ。そうしないとあいつらあそこからニーナを取り出そうとしたからなぁ」

 ダンクスによると、ニーナの埋葬方法は俺たち人族のやり方だと思ったようでそんな埋葬方法は御免被ると言わんばかりにニーナを取り出そうとした。そこでシュンナがすぐに動き出しこのやり方がキリエルタ教のやり方ではなくもっと遠くの全く関係ないところの物であることを説明したようだ。まぁ、結局は彼らにとっては人族のやり方ではあるけれどな。ただ、世界が違うだけで。

「まぁ、気持ちはわかる気がするな」
「そうね。でも、あれがスニルが元いた世界の方法なのね」
「まぁね」

 ニーナに施したものについては父さんと母さんも今初めて目にしたものだ。そりゃぁ、いくらなんでも2人に見せることはできないからな。

「スニル、戻ってたんだ。ミリアもヒュリックも来たんだね」

 話しているとシュンナが少し疲れた表情で戻ってきた。

「さっきね。それで、サーナちゃんはどうする」
「シュンナー」
「あーはいはい、このまま集落へ行くことになったから、その時かな」

 シュンナを見て手を伸ばして求めたサーナ、それを見たシュンナは母さんからサーナを受け取りつつそう返事した。どうやら、これから彼ら獣人族の集落へ行くことになったようだ。

「行くみたいだな」
「そうね。あたしたちも行きましょ」

 というわけで俺たちも獣人たちの後について歩き出した。といっても俺たちの周りには獣人族10人が武器を向けながらある程度の距離を取りつつだけどな。これは仕方ない、何度も言うが彼らにとって俺たち日ぞとくなんてものは敵以外の何物でもないんだから。まっ、それはともかく獣人族の集落というのはどんなところなのか、楽しみだ。



 囲まれつつ歩くことしばし、俺たちの目の前には突如集落と思しき建物群が見えてきた。

「あれが集落か」
「みたいね」
「緊張してきた」
「いきなり、攻撃されないよな」
「そうなったら、結界を張るよ」
「おうちー」
「そうだね。お家だねぇ」

 そんな会話をしながら俺たちはゆっくりと集落へと近づいていったのだった。

「止まれ!」

 集落の入り口手前で槍を構えた男たちに止められた。

「こいつらか?」
「ああ、そうだ」

 槍を向けてきた男たちが周りにいる連中へと確認した。

「妙な真似をすれば殺す、いいな」
「ええ、大丈夫よ。あたしたちは何かをするつもりないから」

 ちなみにだがサーナを抱いているシュンナ以外の俺たちはみんなで手を上げて万歳の状態で歩ている。おかげで腕が痛い……でも、これは彼らの指示であり、俺たちも敵意はないというアピールだから我慢するしかない。

「ニーナ!!……あっ、ああー」

 ふとそんな叫び声が聞こえてきたので前方を見ると、そこには1人女性がニーナの収まっている棺桶に追いすがり号泣している。

「あの人は?」
「……ニーナの母親だ」

 シュンナが目の前の男に尋ねるとどうやらニーナの母親だそうだ。まぁそうだろうな。

「……そう」

 ここで母さんが悲痛な表情をし、そんな母さんを父さんが抱き寄せようとしたが手を上にあげているのでできなかった。

 それからしばらくあたりは静まり返り、女性の鳴き声だけが響いていた。それを見ていた母さんとシュンナまでもが涙を流している。俺もちょっと来そうだったが何とかこらえた。


 そうして時間が過ぎ、ようやく少し落ち着いてきたのかニーナの母親が、父親に促されて俺たちの方へと向かってやって来た。

「……待たせたようだな。それで、その子が」
「ええ、ニーナさんの子よ。あたしたちはサーナと名付けたわ」

 そう言ってシュンナは抱いているサーナのフードを取った。それによりいつもは隠しているサーナの耳が出現した。先ほど”転移”で戻ってきたときはまだ変装の魔道具を起動したままだったが、先ほど解除していた。

「……この子が、ニーナの、ああ」

 母親がそう言って手をサーナに向けたのでシュンナは迷うことなくサーナを手渡したのだった。

「? だーえ?」

 当のサーナは自分が一体だれに手渡されたのかわからず首をかしげている。

「ふふっ、サーナ、その人はあなたのお婆ちゃんよ」
「ばーちゃ?」
「あっ、ああ、ええ、ええ、そうよ。お婆ちゃんよ」

 サーナにばーちゃと呼ばれたことで再び決壊したように泣き出してしまった。

「らいじょぶ? おなかいたい?」

 サーナは以前腹を痛めたことがあった。まぁ、俺たちは焦ったが、そこまで心配するようなことではなかったけど、サーナはその時の痛みを思い出したのだろうか。

「ううん、大丈夫、大丈夫よ」

 大粒の涙を流しながら、サーナを抱きしめる。その光景を見ていた者たちはみな、同じように涙を流していた。というか、気が付けば俺すらも涙をこらえることができなかったよ。

「うぉぉぉぅ、よがっだ。よがっだぁ」

 というかダンクスが一番号泣していたで、周囲の獣人たちが若干引いていた。というか俺たちもそれなりに長くダンクスといるが、こういうのに弱かったんだな。ダンクスの新たな一面を見た気がする。

「礼を言う、よく娘と孫を、連れてきてくれた」

 そう言ってニーナの父親が頭を下げたのには驚いた。これだけ嫌っている人族である俺たちに対してこうして頭を下げて礼を言うなんてな。実際、驚いたのは俺たちだけではなく周囲の獣人族たちもまた同様であった。

「礼はいらないわ。あたしたちがここに来たのは偶然だし、何よりサーナのためだったから」

 俺たちがここに来た目的はサーナを獣人族の土地に戻すためであり、身内がいたというのは完全なる偶然だ。まぁ、可能性はあるとは思ってはいたが。

「そうか、それで頼みがあるのだがいいか」
「何かしら」

 ニーナの父親がそう言ってきたが、頼みとは何だろうか。まぁ、大体想像はできるが。

「詳しいことを聞きたい」

 思っていた通りだった。確かにシュンナは最初に経緯は話したがそれはあくまで簡潔にだった。

「それはもちろんいいけれど、ここでは話しづらいわよ」

 俺たちの周りには多くの獣人族がいる。そんな中でニーナとサーナ親子の発見時の話はしないほうがいいだろう。

「わかった。では、私の家に来てもらおう、族長構わないか?」
「うむ、本来ならばそのような危険なことはさせられないが、まぁいいだろう。ニーナの最期、それはお前たちも知る権利がある。ただし、誰かはここに残ってもらい、監視させてもらう」

「わかったわ。えっと、それじゃぁ」
「それなら俺たちが残ろう」
「そうね。私とヒュリックはその時その場にいなかったわけだし」

 父さんと母さんがそう言って残ることを宣言した。

「そういうことなら俺も残るぜ。大丈夫だと思うが、ミリアとヒュリックに何かあってもあれだし、そもそも俺もあの時は宿にいたからな」
「わかったわ。それじゃ、あたしとスニルで行ってくるわね」
「おう」

 そんなわけで俺とシュンナで話をすることとなった。ちなみに、サーナは一旦ダンクスへと預けてある。これから話すことを考えるとそのほうがいいからだ。


 やって来たのはいくつか並ぶ木造の建物のいつ、どうやらここは自宅みたいだ。

「入ってくれ、しかし妙な真似はするなよ」
「しないわよ」

 相変わらず警戒が止まらないがこれは本当に仕方ない。それだけのことをこれまで人族は彼らに対してやって来たのだから。

「話を聞く前に、俺の名はガルミド、ニーナの父親だ。そして、こっちは妻のミサだ」

 リビングみたいなところに連れていかれたところでまずは自己紹介をされた。

「あたしはシュンナ、こっちはスニル旅人よ」
「旅人?」
「ええ、ここに来るためにハンターの資格は得ているけれど、出来ればそれは名乗りたくないわね」

 シュンナの言う通り俺たちがハンターになったのは手段としてだけだ。

「そうか、それでどこでニーナを」
「そうね。まずは経緯というかきっかけだけれど、あたしたちは旅のさなか奴隷狩りという連中の存在を知ったの……」

 シュンナはまず俺たちがどうしてニーナの元へ行くことになったのかを簡単に説明を始めた。それは、奴隷狩りの存在を知ったことから、俺たちがそれに興味を持ったこととその理由。そして、その奴隷狩りが調査の結果シムサイト商業国のトップ連中がかかわっているという事実までを話した。

「……ということで、あたしたちは意趣返しの意味を込めてそれぞれの店に侵入したのよ」
「……人族というのは、同族までそのようにするか。なんと野蛮な連中だ」

 これまでの説明を聞いてガルミドはかなり引いている。

「あたしもそう思う。ひどい話だってね。でも、最後あたしたちはシムサイトの当時の大統領、ええと、王様みたいな立場の人なんだけれど、そいつの店に侵入したわ。最初はほかの連中と同じように書類なんかを調べていたんだけれど、これまた同じようにスニルに”探知”魔法を使ってもらったの」

 ここでシュンナは言葉を切ったことで、ガルミドとミサの2人も若干緊張して聞いている。いよいよ核心であることが分かったのだろう。

「その結果、地下から本当に弱い反応があった。そうよねスニル」
「ああ、まさに消えそうなものだった。だから、俺たちは地下に弱った奴隷がいると思って向かったんだ」

 シュンナに言われたことで俺もようやく言葉を紡いだ。

「そして、地下に向かったあたしたちが見たのが」
「ニーナだった。というわけか」
「ええ、でもニーナさんはその時すでに息絶えていたわ」

 シュンナがそういうと、ガルミドとミサはショックから息をのんだ。

「ニーナさんが亡くなったのはあたしたちが行くよりも数時間ほど前で、その足元には弱弱しく泣いてる赤ちゃんが、まだへその緒が付いた状態でいたの」

 シュンナは話しながら当時のことを思い出していたのか、顔をかなり苦々しいものとしていた。俺だって思い出して怒りがこみあげてくる。あれはたぶん一生忘れられない光景だった。

「ショックを受ける光景だったわ。ニーナさんの状態は本当にひどいもので、着ているものは奴隷用のボロ、それよりもボロボロだったし、もうずっと体をふいていなかったみたいでかなり汚れていたし」

 シュンナがその事実を話と、ガルミドから殺気がただ亜良いはじめ、ミサはさらに号泣した。

「それと、これはあたしとスニルしか知らないことだけれど、実はサーナの首には奴隷の首輪がはまっていたの。これが何を意味をしているかわかる?」
「はっ、まさか、それは?」
「そう、つまりニーナさんがサーナを産んでからあたしたちが駆け付けるまでの間に誰かがその倍居たということ、でもニーナさんもサーナも何か処置がされた形跡はなかった」
「くそがっ!!」

 ガルミドは怒り心頭で目の前のテーブルにこぶしをたたきつけて、テーブルを粉砕した。

「ほんとに。あたしもそれを知った時許せなかったわ。ニーナさんと同じ女としても、ううん人として許せなかった」

 シュンナは再び怒りをあらわにしている。その気持ちは俺もわかるし、俺だってはらわたが煮えくり返る。
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