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第06章 獣人の土地
04 獣人との邂逅
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めでたくハンター試験合格した。いや、俺たちとしてはあまりめでたくはないが……。
さて、それはともかくさっそく獣人族の土地へ向かおうと思う。
「合格、おめでとうございます。これが、ギルドカードです。なくさないようにしてくださいね。もしなくされた場合は再発行いたしますが、その際金貨3枚必要となります」
まずはギルドカードの発行手続きと説明が行われたわけだが、俺としては特に重要視していないので適当に聞いていた。なにせ、俺たちがギルドに登録したのは川を渡るためだけだから。
「船に乗るのにこれを提示すればいいってわけね」
「はい、船にいる職員へご提示ください」
「もう、すぐに言ってもいいんだよな」
ここでダンクスが受付にそう聞いた。これは俺にとっても重要だ。
「ええ、問題ありません」
「そう、それじゃさっそく行きましょ」
「だな」
「ああ」
というわけで俺たちはさっそくギルドを出て船着き場へと向かおうと思う。まぁ、ギルドを出るとき若干恨みがましい顔でこっちを見ている連中がいたが、俺には関係ないな。
やってきました船着き場。
「結構でかい船だな」
「そうね。まぁ、行と帰りでは乗る人数が違うしね」
シュンナが顔をしかめながらそう言った。行きはハンターのみだが、帰りは狩られた獣人族たちが乗ることになるからだ。
「おっ、見ない顔だな。新人か」
「ほんとだ、ていうかあんたでかくない?」
「おい、見ろよすげぇかわいくない」
船を眺めているとふいにそんな声をかけてきた3人組がいる。男2人に女1人、組み合わせとしては俺たちと同じだな。雰囲気でいえばそこまで悪い人間には見えない。しかし、こいつらがハンターであることを考えると複雑だ。まっこいつらは自分たちが悪いことをしているという実感がないんだろう。キリエルタ教のせいでそういった教えを幼いころから受けているからある意味で仕方ないのかもしれない。
「あなたたちは?」
シュンナも少し複雑な表情を浮かべつつも3人が誰なのかを尋ねた。こういうところはさすがとしか言えない。俺には無理だな。
「俺たちは……」
「アタシたちは、リカルドの牙ってパーティーで冒険者をやってるんだけどね。ここ2年はここでハンターやってるかな。あっ、アタシはウリカ、んで、これがバズでこっちがプリスね」
バズと呼ばれた男がしゃべろうとしたところでウリカという女が横取りしてしゃべりだした。
「なんでお前が答えんだよ。こういうのはリーダーの俺だろ」
どうやらバズがリーダーなんだそうだ。それにしても冒険者がハンターにか、まぁ、おかしくはない話か。
「へぇ、そうなんだ」
「こっちのほうが稼げるしね。そっちも?」
「まっ、そんなとこかな」
全く違うがシュンナは話を合わせるようだ。その後シュンナとウリカでいくらかの話をしていったのだった。特に俺もダンクスもその話は興味はなかったが、1つ興味深い話が合った。それによると、どうやら最近ギルドから受け取る首輪に当たり外れがあり、あたりを引けば問題なく獣人族を奴隷へとすることができるが、外れを引くと機能せずに獣人族から反撃を受ける羽目となる。それにより何人かのハンターが命を落としているという、しかもその外れが出る確率が最近上昇傾向にあり、この3人はこれを最後に冒険者に戻ろうかという話をしているそうだ。
「ギルドもちゃんと確認してほしいよね」
「そうね」
そう言った会話をしているが、その外れって間違いなく俺が改造後に製造されたものだろう。あれは犯罪者などにしか機能しないからな、そこら辺にいるだけの獣人族では首輪が機能することはない。もちろんその獣人が何らかの犯罪行為をしていたのなら問題なく機能することになるだろう。ちなみにだけど、あの首輪は人を殺したら当然機能するが、正当防衛などでは機能しないことになっている。だから、獣人族がハンターを返り討ちにしていたとして、それで相手が死んでいたとしてもその獣人に首輪が付くことはない。
それから、いくらか話しているうちに船は出向したのだった。
船に乗ること15分ほどしたところで、対岸へとたどり着いた。
「ついたか」
「そうみたいね」
「そんじゃ、行くか」
俺たちはほかの奴らに続いて船を降りたのだった。
そこにはうっそうとした森が広がっているだけだった。
「船は行くんだな」
「一回戻って別の奴らを連れてくるんだろ」
「そういえば、そう言っていたよね」
ハンターギルドが運営しているあの船は全体でも三艘しかないらしく何度も行き来をしては、ハンターどもを運んでいるようだ。
「それじゃ、アタシたちは行くわね」
「ええ、それじゃまた」
「返り討ちにあんなよ」
そう言ってウリカたちは森の中へと去っていった。普通なら多少なりとも話したウリカたちが無事に戻ることを祈ってやりたいところだが、どんないいやつであろうともハンターである時点で俺たちには許せる連中ではないので、離れた瞬間にどうでもいい連中へと変わったのだった。
「俺たちも行くか」
「そうね」
「だな」
そんなわけで俺たちもまた森へと入っていったのだった。
森へと入ると、なんだか空気が少し変わった気がする。なんというか重くなったというのだろうか。
「遠いがいるな」
「いるわね。こっちを警戒してる」
シュンナとダンクスには獣人族の気配を感じているようだが、残念ながら俺のはまだそんな芸当は無理だ。そのため探知をかけてみた。すると、確かに遠くの方にいくつか俺たちに対して敵対している存在があった。
「とりあえずそっち行ってみるか」
「だな」
「あたしたちの目的のためにはまずは接触しないとね」
「そうだな」
俺たちに敵対しているとはいえ、相手が獣人族である可能性がある以上俺たちは接触する必要がある。それはハンターだからというわけではなく、単純に俺たちの目的のためだ。
「森が深いな」
「本当にこんなところに人が住んでいるのかって思うよね」
「まぁ、獣人族は森との親和性が高いからな。街中よりもむしろ森の中のほうがいいんだろう」
「へぇ、そうなのね」
「まっ、考えてみると獣人族と言えば獣が混じった種族だしな。気もと言えば森とおもえば当たり前か」
「そんなとこだな」
ダンクスが言ったように獣人族というのは獣の特徴を持つ種族であるがゆえに、人よりも獣よりになるために街中よりも森の中のほうがいろいろと能力などが上昇する。それでなくとも身体能力だけでいうと獣人族は人族よりも高い。
それを考えるとハンターというのはよく森の中で獣人族を狩ろうと思ったものだ。だからだろうハンターとなるためには一定以上の戦闘能力が必要になるというわけだ。それがどの程度かというとオーク程度なら何とか単独討伐できるぐらいだそうだ。そう考えるとつまり、ハンターというのは前世の俺の両親よりも強いということになる。それだけ強ければ普通に冒険sにゃやれよと思うのは俺だけだろうか。
と、それはいいとして、それからしばし歩いていくとダンクスとシュンナが同時に止まり、周囲を警戒始めた。
「客か?」
「そうみたいね」
「スニル、どのくらいいる」
俺が聞くとシュンナとダンクスがそうだと答え、相手の数を聞いてきたのですぐに探知魔法を発動させた。
「15人ってとこか結構な数だな」
「まぁ、結構奥まで来たからな」
「それで、どうする?」
探知に引っかかった数は15とそれなりに多いが、そもそも俺たちは彼らに会うために来たのでわざわざ奥へと足を踏み入れたのだから仕方ない。
「攻撃はするなよ。あとで面倒になる」
下手に攻撃をすると後で交渉の際にきっと面倒になることは間違いない。
「それはいいけれど、攻撃されたらどうするの?」
「結界を張れば問題ない」
俺はそういうとすぐさま周囲に結界を張った。これで彼らがどんな攻撃をしてきても全く問題ない。
「シュンナ頼む」
「任せて、とはいえうまくいくかはわからないけれど」
これから周囲にいる連中と交渉することになるわけだが、その交渉は基本シュンナが担当することになっている。ていうか消去法でもシュンナしかいない。なにせ俺は、人見知りで話せない。まぁ、人と話すのが苦手であって人前で話すのはできるんだが、交渉となると相手とのやり取りが発生するので俺には荷が重い。そして、ダンクスはというと見ての通りの強面なので交渉には不向きだ。
「すー、はー、周りにいる獣人族の人たち、聞いてほしい。あたしたちはあなたたちと争うために来たわけでもましてや捕らえるために来たわけじゃない」
シュンナは深呼吸をしてから大きな声でそう話しかけた。
「反応はねぇな」
「そりゃぁな」
それに対して周囲の獣人族からは何の反応もなかった。それはそうだろう、彼らにとって俺たち人族は敵以外の何物でもない。
「あたしたちは旅をしているさなか、ある国で……」
シュンナは簡単にだが奴隷狩りに関しての経緯を獣人族たちに説明始めた。
「……というわけで、あたしたちはあなたたちの同胞である獣人族、猫人族の女性の遺体とその傍らにいた赤ちゃんを保護したわ。あたしたちはその女性と赤ちゃんをあなたたちへ返すために来たのよ」
「……」
さすがにこれには反応を示したようでわずかだが周囲がざわついた。
「どう出るかだな」
「そうだな」
はてさてどう出るか。そう思っているとふと矢が飛んできた。尤もその矢は俺が張った結界に阻まれて俺たちへ届くことはなかった。
「信じられないかもしれないけれど、事実よ。スニル」
「ああ」
俺たちも最初から信じてもらえるとは思っていない。というか俺としてはもっと攻撃が来ると思っていたが、矢が1本だけだった。まぁそれはともかくシュンナから次の手に移行するように指示を受ける。
次の手とは、予想できるかもしれないが俺たちが見つけた女性、つまりサーナの母親の遺体を取り出して彼らに見せるというものだ。そんなわけで”収納”から真っ白な箱を取り出した。
「この箱には、さっき言った女性が入っているわ。確認して頂戴」
シュンナはそう言って箱のふたを開いてその場を離れた。そう、箱というのは棺桶のことで、その中にはサーナの母親がゾーリン村の女性陣によって身ぎれいにされて真っ白な死装束を身に着けた状態で寝かされその周囲にはきれいな花が敷き詰められている。これは日本式なわけだが、こうした理由は俺たちが獣人族がどのように埋葬するか知らないし、人族(キリエルタ教)のやり方でやるわけにはいかない。なにせサーナの母親はキリエルタ教の教えによって地獄を見て最後は命を落とす羽目となった。そんな奴らの方法で埋葬されても死んでも死にきれないからな。そこで、キリエルタも全く関係ない俺の故郷である日本式にしたというわけだ。ちなみに、この埋葬方法はゾーリン村から称賛を浴び、今後この方法で埋葬しようという話まで出たほどだ。
それはさておき、シュンナを含む俺たちがある程度の距離を取ってからしばし、ふいに木の上から1人の男が降りてきた。降りてきたのは猫人族みたいで、そのあと3人の男たちが続いて降りてきて、何やらいくつかのやり取りを行った後、最初に降りてきた男が棺桶を確認し、ほかの3人が武器を俺たちへと向けた。
「……ニーナ」
棺桶を確認している男がそう小さくつぶやいた。もしかして知り合いだろうか。可能性はあったが、どうやらここにきて正解だったかもしれない。
「な、なんだとっ!!」
俺にも超えたぐらいだから間にいた3人の男たちの耳にもつぶやきが聞こえていたようで、そのうちの1人がものすごい勢いで棺桶の方を見た。そして、俺たちへの警戒も忘れたのかすぐに棺桶の方へと向かい走ってその中を覗き込んだ。
「そ、そんな。ばかなっ……」
そう言って膝から崩れ落ちた。様子から見て相当親しい間柄だったと見える。猫人族だし。
「ニーナ、どうして、どうしてこんなことに」
さめざめと涙を流す男たち。
「身内、かな?」
「かもな」
「だとしたら……」
泣き崩れる男たちの様子を見たシュンナとダンクスも、あの2人がサーナの母親の身内ではないかと考えたようだ。確かにそうとしか思えない崩れ方だ。
「……」
それからしばし、2人の男たちは泣き俺たちを警戒していた男たちもそれに戸惑っている。
「……はっ、そうだ。おいっ、貴様ら!」
すると何かに気が付いたように最初に降りてきた男が俺たちの方を見て叫んだ。
「なにかしら?」
もちろん答えるのはシュンナだ。
「先ほど、赤子といったか?」
先ほどシュンナは女性とその赤ん坊を発見したと告げたわけだが、それに今気が付いたようだ。
「ええ、そうよ。間違いなくその人の子よ。なにせ、あたしたちが発見した時はまだへその緒がついていたのだからね」
「な、なんだとっ!」
これにはもう1人の男が聞き捨てならないと反応した。ああ、ええと順番でいうと面倒なので、2人の特徴でいうと、最初の男が若く、もう1人が中年ぐらいの年齢に見える。ので、今後は男とおっさんと呼称することにする。
「へその緒、それは本当か」
「ええ、そうよ。結構危なかったんだけど、何とか赤ちゃんは助けることができたわ。今はここにいないけれど、近くであたしたちの仲間が世話をしているわ。元気な女の子よ」
男たちの勢いに押されつつもシュンナがそう答えると、男たちは何やらショックを受けているようだった。
「1つ聞くけれど、その女性はあなたたちの知り合い?」
「あ、ああ、妹だ」
「私の娘だ」
予想通り身内だったらしい、それを聞いたとき俺たちは3人とも悲痛な表情をしていたことだろう。このような形で身内が帰ってきた。これは最悪なことだ。
「そう」
シュンナもようやくその言葉をひねり出した。
「赤子は、無事なのか」
ここで男が絞り出すような声で聴いてきた。
「ええ、元気よ。ここに連れてきましょうか?」
「できるのか?」
「まぁね。スニル」
「わかった、それじゃ、ちょっと行ってくる」
俺はそう言って”転移”を使って聖都の宿へと飛んだ。
さて、それはともかくさっそく獣人族の土地へ向かおうと思う。
「合格、おめでとうございます。これが、ギルドカードです。なくさないようにしてくださいね。もしなくされた場合は再発行いたしますが、その際金貨3枚必要となります」
まずはギルドカードの発行手続きと説明が行われたわけだが、俺としては特に重要視していないので適当に聞いていた。なにせ、俺たちがギルドに登録したのは川を渡るためだけだから。
「船に乗るのにこれを提示すればいいってわけね」
「はい、船にいる職員へご提示ください」
「もう、すぐに言ってもいいんだよな」
ここでダンクスが受付にそう聞いた。これは俺にとっても重要だ。
「ええ、問題ありません」
「そう、それじゃさっそく行きましょ」
「だな」
「ああ」
というわけで俺たちはさっそくギルドを出て船着き場へと向かおうと思う。まぁ、ギルドを出るとき若干恨みがましい顔でこっちを見ている連中がいたが、俺には関係ないな。
やってきました船着き場。
「結構でかい船だな」
「そうね。まぁ、行と帰りでは乗る人数が違うしね」
シュンナが顔をしかめながらそう言った。行きはハンターのみだが、帰りは狩られた獣人族たちが乗ることになるからだ。
「おっ、見ない顔だな。新人か」
「ほんとだ、ていうかあんたでかくない?」
「おい、見ろよすげぇかわいくない」
船を眺めているとふいにそんな声をかけてきた3人組がいる。男2人に女1人、組み合わせとしては俺たちと同じだな。雰囲気でいえばそこまで悪い人間には見えない。しかし、こいつらがハンターであることを考えると複雑だ。まっこいつらは自分たちが悪いことをしているという実感がないんだろう。キリエルタ教のせいでそういった教えを幼いころから受けているからある意味で仕方ないのかもしれない。
「あなたたちは?」
シュンナも少し複雑な表情を浮かべつつも3人が誰なのかを尋ねた。こういうところはさすがとしか言えない。俺には無理だな。
「俺たちは……」
「アタシたちは、リカルドの牙ってパーティーで冒険者をやってるんだけどね。ここ2年はここでハンターやってるかな。あっ、アタシはウリカ、んで、これがバズでこっちがプリスね」
バズと呼ばれた男がしゃべろうとしたところでウリカという女が横取りしてしゃべりだした。
「なんでお前が答えんだよ。こういうのはリーダーの俺だろ」
どうやらバズがリーダーなんだそうだ。それにしても冒険者がハンターにか、まぁ、おかしくはない話か。
「へぇ、そうなんだ」
「こっちのほうが稼げるしね。そっちも?」
「まっ、そんなとこかな」
全く違うがシュンナは話を合わせるようだ。その後シュンナとウリカでいくらかの話をしていったのだった。特に俺もダンクスもその話は興味はなかったが、1つ興味深い話が合った。それによると、どうやら最近ギルドから受け取る首輪に当たり外れがあり、あたりを引けば問題なく獣人族を奴隷へとすることができるが、外れを引くと機能せずに獣人族から反撃を受ける羽目となる。それにより何人かのハンターが命を落としているという、しかもその外れが出る確率が最近上昇傾向にあり、この3人はこれを最後に冒険者に戻ろうかという話をしているそうだ。
「ギルドもちゃんと確認してほしいよね」
「そうね」
そう言った会話をしているが、その外れって間違いなく俺が改造後に製造されたものだろう。あれは犯罪者などにしか機能しないからな、そこら辺にいるだけの獣人族では首輪が機能することはない。もちろんその獣人が何らかの犯罪行為をしていたのなら問題なく機能することになるだろう。ちなみにだけど、あの首輪は人を殺したら当然機能するが、正当防衛などでは機能しないことになっている。だから、獣人族がハンターを返り討ちにしていたとして、それで相手が死んでいたとしてもその獣人に首輪が付くことはない。
それから、いくらか話しているうちに船は出向したのだった。
船に乗ること15分ほどしたところで、対岸へとたどり着いた。
「ついたか」
「そうみたいね」
「そんじゃ、行くか」
俺たちはほかの奴らに続いて船を降りたのだった。
そこにはうっそうとした森が広がっているだけだった。
「船は行くんだな」
「一回戻って別の奴らを連れてくるんだろ」
「そういえば、そう言っていたよね」
ハンターギルドが運営しているあの船は全体でも三艘しかないらしく何度も行き来をしては、ハンターどもを運んでいるようだ。
「それじゃ、アタシたちは行くわね」
「ええ、それじゃまた」
「返り討ちにあんなよ」
そう言ってウリカたちは森の中へと去っていった。普通なら多少なりとも話したウリカたちが無事に戻ることを祈ってやりたいところだが、どんないいやつであろうともハンターである時点で俺たちには許せる連中ではないので、離れた瞬間にどうでもいい連中へと変わったのだった。
「俺たちも行くか」
「そうね」
「だな」
そんなわけで俺たちもまた森へと入っていったのだった。
森へと入ると、なんだか空気が少し変わった気がする。なんというか重くなったというのだろうか。
「遠いがいるな」
「いるわね。こっちを警戒してる」
シュンナとダンクスには獣人族の気配を感じているようだが、残念ながら俺のはまだそんな芸当は無理だ。そのため探知をかけてみた。すると、確かに遠くの方にいくつか俺たちに対して敵対している存在があった。
「とりあえずそっち行ってみるか」
「だな」
「あたしたちの目的のためにはまずは接触しないとね」
「そうだな」
俺たちに敵対しているとはいえ、相手が獣人族である可能性がある以上俺たちは接触する必要がある。それはハンターだからというわけではなく、単純に俺たちの目的のためだ。
「森が深いな」
「本当にこんなところに人が住んでいるのかって思うよね」
「まぁ、獣人族は森との親和性が高いからな。街中よりもむしろ森の中のほうがいいんだろう」
「へぇ、そうなのね」
「まっ、考えてみると獣人族と言えば獣が混じった種族だしな。気もと言えば森とおもえば当たり前か」
「そんなとこだな」
ダンクスが言ったように獣人族というのは獣の特徴を持つ種族であるがゆえに、人よりも獣よりになるために街中よりも森の中のほうがいろいろと能力などが上昇する。それでなくとも身体能力だけでいうと獣人族は人族よりも高い。
それを考えるとハンターというのはよく森の中で獣人族を狩ろうと思ったものだ。だからだろうハンターとなるためには一定以上の戦闘能力が必要になるというわけだ。それがどの程度かというとオーク程度なら何とか単独討伐できるぐらいだそうだ。そう考えるとつまり、ハンターというのは前世の俺の両親よりも強いということになる。それだけ強ければ普通に冒険sにゃやれよと思うのは俺だけだろうか。
と、それはいいとして、それからしばし歩いていくとダンクスとシュンナが同時に止まり、周囲を警戒始めた。
「客か?」
「そうみたいね」
「スニル、どのくらいいる」
俺が聞くとシュンナとダンクスがそうだと答え、相手の数を聞いてきたのですぐに探知魔法を発動させた。
「15人ってとこか結構な数だな」
「まぁ、結構奥まで来たからな」
「それで、どうする?」
探知に引っかかった数は15とそれなりに多いが、そもそも俺たちは彼らに会うために来たのでわざわざ奥へと足を踏み入れたのだから仕方ない。
「攻撃はするなよ。あとで面倒になる」
下手に攻撃をすると後で交渉の際にきっと面倒になることは間違いない。
「それはいいけれど、攻撃されたらどうするの?」
「結界を張れば問題ない」
俺はそういうとすぐさま周囲に結界を張った。これで彼らがどんな攻撃をしてきても全く問題ない。
「シュンナ頼む」
「任せて、とはいえうまくいくかはわからないけれど」
これから周囲にいる連中と交渉することになるわけだが、その交渉は基本シュンナが担当することになっている。ていうか消去法でもシュンナしかいない。なにせ俺は、人見知りで話せない。まぁ、人と話すのが苦手であって人前で話すのはできるんだが、交渉となると相手とのやり取りが発生するので俺には荷が重い。そして、ダンクスはというと見ての通りの強面なので交渉には不向きだ。
「すー、はー、周りにいる獣人族の人たち、聞いてほしい。あたしたちはあなたたちと争うために来たわけでもましてや捕らえるために来たわけじゃない」
シュンナは深呼吸をしてから大きな声でそう話しかけた。
「反応はねぇな」
「そりゃぁな」
それに対して周囲の獣人族からは何の反応もなかった。それはそうだろう、彼らにとって俺たち人族は敵以外の何物でもない。
「あたしたちは旅をしているさなか、ある国で……」
シュンナは簡単にだが奴隷狩りに関しての経緯を獣人族たちに説明始めた。
「……というわけで、あたしたちはあなたたちの同胞である獣人族、猫人族の女性の遺体とその傍らにいた赤ちゃんを保護したわ。あたしたちはその女性と赤ちゃんをあなたたちへ返すために来たのよ」
「……」
さすがにこれには反応を示したようでわずかだが周囲がざわついた。
「どう出るかだな」
「そうだな」
はてさてどう出るか。そう思っているとふと矢が飛んできた。尤もその矢は俺が張った結界に阻まれて俺たちへ届くことはなかった。
「信じられないかもしれないけれど、事実よ。スニル」
「ああ」
俺たちも最初から信じてもらえるとは思っていない。というか俺としてはもっと攻撃が来ると思っていたが、矢が1本だけだった。まぁそれはともかくシュンナから次の手に移行するように指示を受ける。
次の手とは、予想できるかもしれないが俺たちが見つけた女性、つまりサーナの母親の遺体を取り出して彼らに見せるというものだ。そんなわけで”収納”から真っ白な箱を取り出した。
「この箱には、さっき言った女性が入っているわ。確認して頂戴」
シュンナはそう言って箱のふたを開いてその場を離れた。そう、箱というのは棺桶のことで、その中にはサーナの母親がゾーリン村の女性陣によって身ぎれいにされて真っ白な死装束を身に着けた状態で寝かされその周囲にはきれいな花が敷き詰められている。これは日本式なわけだが、こうした理由は俺たちが獣人族がどのように埋葬するか知らないし、人族(キリエルタ教)のやり方でやるわけにはいかない。なにせサーナの母親はキリエルタ教の教えによって地獄を見て最後は命を落とす羽目となった。そんな奴らの方法で埋葬されても死んでも死にきれないからな。そこで、キリエルタも全く関係ない俺の故郷である日本式にしたというわけだ。ちなみに、この埋葬方法はゾーリン村から称賛を浴び、今後この方法で埋葬しようという話まで出たほどだ。
それはさておき、シュンナを含む俺たちがある程度の距離を取ってからしばし、ふいに木の上から1人の男が降りてきた。降りてきたのは猫人族みたいで、そのあと3人の男たちが続いて降りてきて、何やらいくつかのやり取りを行った後、最初に降りてきた男が棺桶を確認し、ほかの3人が武器を俺たちへと向けた。
「……ニーナ」
棺桶を確認している男がそう小さくつぶやいた。もしかして知り合いだろうか。可能性はあったが、どうやらここにきて正解だったかもしれない。
「な、なんだとっ!!」
俺にも超えたぐらいだから間にいた3人の男たちの耳にもつぶやきが聞こえていたようで、そのうちの1人がものすごい勢いで棺桶の方を見た。そして、俺たちへの警戒も忘れたのかすぐに棺桶の方へと向かい走ってその中を覗き込んだ。
「そ、そんな。ばかなっ……」
そう言って膝から崩れ落ちた。様子から見て相当親しい間柄だったと見える。猫人族だし。
「ニーナ、どうして、どうしてこんなことに」
さめざめと涙を流す男たち。
「身内、かな?」
「かもな」
「だとしたら……」
泣き崩れる男たちの様子を見たシュンナとダンクスも、あの2人がサーナの母親の身内ではないかと考えたようだ。確かにそうとしか思えない崩れ方だ。
「……」
それからしばし、2人の男たちは泣き俺たちを警戒していた男たちもそれに戸惑っている。
「……はっ、そうだ。おいっ、貴様ら!」
すると何かに気が付いたように最初に降りてきた男が俺たちの方を見て叫んだ。
「なにかしら?」
もちろん答えるのはシュンナだ。
「先ほど、赤子といったか?」
先ほどシュンナは女性とその赤ん坊を発見したと告げたわけだが、それに今気が付いたようだ。
「ええ、そうよ。間違いなくその人の子よ。なにせ、あたしたちが発見した時はまだへその緒がついていたのだからね」
「な、なんだとっ!」
これにはもう1人の男が聞き捨てならないと反応した。ああ、ええと順番でいうと面倒なので、2人の特徴でいうと、最初の男が若く、もう1人が中年ぐらいの年齢に見える。ので、今後は男とおっさんと呼称することにする。
「へその緒、それは本当か」
「ええ、そうよ。結構危なかったんだけど、何とか赤ちゃんは助けることができたわ。今はここにいないけれど、近くであたしたちの仲間が世話をしているわ。元気な女の子よ」
男たちの勢いに押されつつもシュンナがそう答えると、男たちは何やらショックを受けているようだった。
「1つ聞くけれど、その女性はあなたたちの知り合い?」
「あ、ああ、妹だ」
「私の娘だ」
予想通り身内だったらしい、それを聞いたとき俺たちは3人とも悲痛な表情をしていたことだろう。このような形で身内が帰ってきた。これは最悪なことだ。
「そう」
シュンナもようやくその言葉をひねり出した。
「赤子は、無事なのか」
ここで男が絞り出すような声で聴いてきた。
「ええ、元気よ。ここに連れてきましょうか?」
「できるのか?」
「まぁね。スニル」
「わかった、それじゃ、ちょっと行ってくる」
俺はそう言って”転移”を使って聖都の宿へと飛んだ。
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しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
S級冒険者の子どもが進む道
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【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
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気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
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