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第06章 獣人の土地
08 またポロっと……
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獣人族の集落に住み始めて1週間が過ぎた。
俺たちはまだテント暮らしをしているが、その設置場所は集落にだいぶ近づき、今ではガルミドの家の裏手に位置している。そのためか、最近ではガルミドとミサがちょくちょくやって来ては、サーナの世話をするようになっている。
「サーナちゃん、次はこれにしよっか」
「うん」
ミサがそう言って、目の前にある離乳食をスプーンですくって、サーナの口元へと運んでいる。
そんな様子をうらやましそうに見ているのがガルミドだ。2人は現在サーナの両脇に座り交互にこうして世話をしている。
「親父がこうなるとはな」
そう言って若干呆れつつ微笑んでいるのは、ニーナの兄にしてサーナの伯父グルト。
彼は最初俺たちに対して結構警戒心があったり、俺たちが付けた名であるサーナと呼ぶことをかなりためらっていた様子を見せたが、今ではすっかり気を許してくれている。それというのも……
「ふふっ、私たちの子が生まれたら、きっと同じようにかわいがってくれるわよ」
グルトの隣で同じく微笑んでいるのは、グルトの妻ミャイだが、実はこのミャイ5日ほど前にハンターにつかまりかけた。
この集落自体は結界によって人族には見つからないようになっている。実際に数日前に集落近くまで人族が偶然やって来たことがあったが、こちらからは見えていても向こうからは一切見えなかったようで、普通に素通りしていった。じゃぁ、なぜミャイがつかまりかけたのかというと、その時ミャイは集落を出て、森の中の山菜などを収穫していた。もちろんその際グルトなどが護衛としてついて行っていたのだが、ちょっとした手違いではぐれてしまった。そこへハンターがやって来て捕まったというわけだ。
では、なぜ助かったのか。それこそ俺が結界とは別に作った魔道具のおかげというものだろう。
それは、ちょっとしたアクセサリー的なものなんだが、首に奴隷の首輪が付けられると同時にけたたましい警報が鳴るようにしていた。本来なら、すぐに”解呪”がかけられるような物や”呪い”が発動しないようなものでもよかったんだが、それを作るには魔力が膨大なものとなり、それに使う魔石の大きさがとんでもなくでかくなる。
そこで、こうした警報装置としたというわけだ。そして、その結果グルトたちが気が付いて救出ができたというわけだ。んで、この魔道具を作った俺に感謝という意味もあって、こうして俺たちに気を許すようになったというわけだ。
とまぁ、こんなわけで1週間たった今では集落のみんなからの信頼を、受け取れるようになったというわけだな。とはいえ、完全にというわけではなくまだよそよそしいところもあるが、こればかりはこれからってとこだろ。
また、防衛に関してだが最近はダンクスとシュンナも参加しハンターたちを撃退している。尤もその際に人族の恰好で行うと面倒になるということから、変装の魔道具でその姿を獣人のそれへと変えている。
その姿、シュンナは元から超絶的な美少女であり、現在は19歳ということで美女へと移りつつあることから、かなりの破壊力となっている。俺は、まぁ特にシュンナ相手だからか特に問題ないが、集落の男性陣は見事撃ち抜かれている。といってもシュンナは人族であるから血舞うよう奴はほとんどいないけど。
んで、問題はダンクスで、ダンクスはシュンナとは真逆の超絶的な強面巨漢、そんな奴の頭に猫耳がちょこんと乗っている姿は別の意味での破壊力があり、なんていうか俺も引くぐらいには怖い……。
さて、それはともかく嬉しそうにサーナの世話をしているガルミド一家を横目に俺も朝食を食べたのだった。
「スニルはこの後はまた魔道具作り?」
「そのつもり、まだ足りないみたいだし」
母さんに予定を問われて答えた魔道具作りというのは、先にも説明した警報の魔道具のこと。なぜ、1週間もたってまだ作っているのかというと、もの自体は単純ですぐ作れるんだが、なんというか数が多い。というのも、この魔道具、作りが単純だけに使い捨てとなっている。そして、俺が思っていた以上にハンターたちがこの地へとやってくる。それというのもやはりこの集落の位置は、ハンターたちの上陸地点から一番近い集落となっているために、ここの防衛に出ていった獣人族や森へ出かけた者たちが次々に奴らにつかまってしまう。そのたびに消費して。だからこそ族長から在庫として大量に作ってほしいと頼まれたというわけだ。もちろん俺は引き受けた。それというのも、この集落はサーナの母であるニーナの故郷、ガルミドをはじめとしてサーナと血縁関係にある家族がいる。もしそんな彼らに何かあればサーナが悲しむことになるかもしれない。だからこそそれを防ぐために俺たちはどんなことでもしようと思う。尤も、さすがにこれだけの数の魔道具を作るための魔石の数がそこまでない。そこで魔石はある程度提供してもらうことになっている。
「あまり、根を詰めないようにね」
「わかってるよ」
そんなわけで部屋に引きこもり魔道具作りに入るのであった。
こうして、作ることしばし、結構な数が出来上がってきたところで来客があった。
「スニル、お客さんよ」
「客? 誰?」
「族長、なんかスニルに頼みたいことがあるそうよ」
族長の頼みってなんだろうか。まぁ、とにかく行ってみよう。
「おおっ、スニルすまんな」
「……」
族長に対していつものように無言で返事をする。
「ふむ、実はなおぬしに頼みたいことができてな。今からわしの家へ来てくれんか?」
よくわからないが、族長の言葉だし特に断る理由もないので行くことにした。もちろん俺だけだと会話が成り立たないので、父さんに同行してもらう。
というわけでやって来た族長の家、するとそこには見たことのない獣人が俺と父さんを見ていぶかしむようににらみつけていた。俺って前世から人にあまり興味がなかったから人を覚えるのが苦手だったけれど、さすがにこんなにらみつけてくる人はこの集落にはいなかったはずだ。
そんなことを考えていると族長が説明してくれた。
「この者は、隣村の族長の息子でアルベという。アルベ、この子がスニル、例の魔道具を作ってくれたものだ」
「こ、こんな子供が?」
「そうだ。まぁ、子供といっても見た目だけで実際には14だそうだが」
「はっ? 14! うそだろっ!」
「……」
相変わらずの人見知り発動しているために、アルベの言葉に答えること出来ず俺は黙ったままだ。
「クルーダ殿、本当にこんな子供が、しかも人族があれを作ったというのですか?」
「そうだ。アルベわしも最初は信じられなかったが、確かに間違いない」
「そうか、しかし、なぜ?」
アルベは族長になぜ俺がそんなものを作っているんかと聞いている。まぁ、獣人族からしたら人族である俺が獣人族を守る魔道具を作っていることが信じられないのだろう。
「それについてはこれから話そう……」
それから族長はアルベに事の経緯を話して聞かせたのだった。それを聞いたアルベは本当に信じられないという風に聞いていた。
「クルーダ殿それを信じろというのか」
「そうだ」
「一体、何が目的で」
「俺たちがここに来たのは、さっき族長が言ったように保護した子を返すためだ。尤も俺たちも情が移ってしまったから、そのままこの地に住まわせてもらっているが」
俺に代わり父さんが答えた。
「そ、そんなことで、馬鹿なっ!」
アルベは心底信じられないという。
「確かに俺たちは人族だけど、だからと言って人族すべてが他種族を忌み嫌っているわけじゃない」
父さんの言う通りで、少なくとも俺たちの周りにはそんな奴は誰一人いない。
「ほかはともかく彼らにつては信じてもいいと考えている。今も、2人が我らとともに防衛の警備にあたってくれている」
「まじかっ……いや、本当なんだろうな。でも、信じられない」
アルベはまだ信じられないといっているがほんと、こればかりは仕方ない。
「それよりも……」
そんなことよりなぜ俺が呼ばれたのかと族長に聞くためにその一言を発した。
「しゃべれんのかよ!」
俺がしゃべったことでアルベがそう突っ込んできた。
「悪いな。スニルは人と話すのが苦手でな。まぁ、こうして少しぐらいなら話せるんだが」
そう言って父さんが俺の頭の上に手を置いてきた。
「ああ、そういうことか」
アルベが納得したところで本題に入ってほしいんだけど、俺はそんな意味の目線を族長に送った。
「そうじゃったな。今回スニルを呼んだ理由だが、実は先ほどアルベに結界とこれについて聞かれてな。これを作ったのがスニルだと話したところだったのだ」
「俺の村にもこいつを作ってもらいたい。俺の村はここと同じく人族共に多く襲われていて、先日も親友がさらわれた。そんなときにこの村での話を聞いてな。最近この村でさらわれた奴はいないと、しかも話によるとたとえ捕まっても大きな音で周囲に知らせるものまで使っているという。そこで俺がここに調べに来たというわけだ」
そこで族長から俺のことを聞かされたということらしい。
「それでどうだスニル、作ってはくれんか」
族長がそう言ってきたが俺としては作ること自体は構わないんだが、問題もある。
「スニル?」
「魔石がないし、数が多い」
「だよな。ああ、ええとだな。作ること自体は別に構わないんだが、警報の魔道具だけでも作るには魔石が必要になる。手持ちの魔石はすでにほぼ使い切っちまってるしこれ以上作るのは無理なんだよ。それと、結界の方もだな。一応中央の分はこの間取ってきたものがあと2つあるが、ほかの分がない」
魔道具を1つ作るだけでも魔石が必要になる。警報の場合はゴブリンあたりの小さなもので事足りるとはいえ、俺も無限に持っているわけじゃない。そろそろ手持ちもそこを突きかけている。もちろんこれについては族長にも告げており、今現在集落から供出してもらっている状態だ。また、結界につかう魔石、こいつの中央に使っているオーガの魔石はあと2つ、この間ダンクスたちに取って来てもらったものがありこれは族長も知っていることなので隠さず答えることができるが、問題は六芒星の頂点に使う魔石だ。残念ながらこれにつかえる魔石の手持ちがない。まぁ、一応あと2つほどあるんだけどそれじゃ足りない。父さんもこのことを知っているためにそう答えた。
「魔石?」
「ああ、魔道具を作るには魔石は欠かせないからな。警報についてはゴブリンとかの小さい物でもいいからな。ここにもそれなりにあったし、そっちにもあるだろ。そいつを渡してくれればそれで作ることはできる。尤も、現在この集落のために作っているからそのあとか、分けてもらうかとなるだろうが、そこは族長と相談してくれ」
「うむ、確かに今は多少在庫があったな。しかし、これを渡してしまえばこちらも困るからなぁ」
「一応、毎日ある程度の数は出来てるけどな。でも、作れるのがスニルだけだからな。そこらへんは考慮してもらいたい」
父さんがそう言って交渉をしてくれている。
「わかった、いいだろう。ゴブリンの魔石ならそれなりの数保管されているうえに我等には使いどころがないからな。クルーダ殿後ほど相談させていただきたいが構わないだろうか」
「ふむ、構わんよ」
「それと、結界についてだが、足りないという魔石はこちらで用意する。それで、どのぐらいのものを用意知ればいい」
思っていたよりも素直に魔石を出してきた。それほど必要なものであると判断したのだろう。人族である俺に頭を下げるぐらいにはな。
「オーク、全部で6、残り4」
そう言うことならと俺も必要な魔石の種類を答える。
「了解した。それをすぐに用意しよう。確かそれぐらいの物もあったはずだ」
ということで、どうやらこれから俺は隣の村へ行き結界の魔道具を作ることになるようだ。まぁ、構わないけどな。
その後、ある程度話をしたのち俺はテントへと戻ったのであった。
「ピュイー、ピュィー」
テントに戻るとちょうど上空からそんな鳴き声がして、集落に緊張が走ったがすぐに問題ないことを告げる必要がある。なにせ、この鳴き声はリーフの物だからだ。
「ダンクスがいないな。しょうがない」
リーフがいつも止まるダンクスが今この場におらず、俺や父さんでは体が小さいために止まらせる場所がない。そんなわけで、仕方ないので魔法で土を盛り上げて壁を作り止まれるようにした。
すると、上空から降りてきたリーフは素直にそこに止まったのだった。
「リーフ、ポリーからか」
「ピュイー」
リーフは嬉しそうに返事をしたので、その頭をなでつつその足に括り付けてある手紙を取り出した。
「ポリーによろしくな」
「ピュイー」
リーフはそう返事してから飛びだって言った。
「ポリーちゃんからか」
「みたい」
そんなわけでさっそくテント内に入りポリーからの手紙を見ることにした。
「なんて書いてあったの?」
手紙を読んでいる間黙って様子を見ていた母さんが読み終わったのを確認してから聞いてきた。
「ポリーも来たいって書いてある」
「ああ、この間ここに住むって書いたからね」
母さんが言うように、この集落に住むことを手紙でポリーに伝えてあり今回はその返事となるわけだ。それで、その内容はポリーもこの集落に来てみたいということだった。
「といっても、やっぱり無理だろ」
「そうね。ポリーちゃんを危険な目に合わせるわけにはいかないものね」
いくら集落の人たちが俺たちを受け入れるようになったからといって、まだ中には警戒したり恨みがましい目で見てくる連中だっている。俺たちはそれぞれ何があっても対処できる力があるが、ポリーは普通の人族のためにそれがない。そうなるとさすがにここに連れてくるというのは無理があった。
「とりあえず、一度戻ってみるよ」
「そうしなさい。スニルだってたまにはお休みしないと」
そう言うわけで、俺は一度ゾーリン村へ戻ることにした。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
村に戻ってくるとなんというかやっぱり落ち着くな。ええと、ポリーはどこだ?
”探知”を使ってポリーの居場所を探してみると、どうやら今は家に居るみたいだ。というわけで、まっすぐに村長の家へと向かって行く。
「あっ、スニルおかえりなさい」
「お、おう、ただいま」
村長の家の扉をノックするとポリーが出てきて、満面の笑顔で言ってきた。
「どうしたの、あっ、もしかしてお手紙?」
「ああ、さっきリーフが来たんだよ。おっと、帰ってきたみたいだな」
ポリーと話しているとふいにリーフの声が響き、どうやら帰ってきたようだ。
「おかえりなさい、リーフご苦労様」
ポリーは帰ってきたリーフに餌を手渡しであげている。最初は少し怖がっていたが今ではすっかりかわいがっているようだ。その後、ポリーはリーフを送還したところで改めてこちらを向き家へ入るように促された。
「おおう、スニルか、良く帰ったな。聞いたぞ無事に獣人族の土地へ着いたようだな」
「まぁ何とかね」
「それにしても、そこに住むなんて大丈夫なの」
「まぁ、最初は反発があったけどね。最近は何とかそれも収まりつつあるみたいだ」
「そっか、そういえば今日は1人で帰ってきたんだね」
「ああ、ダンクスとシュンナは獣人たちと一緒に集落の防衛に行ってるからな」
「ああ、そういうことね」
「2人とも強いものね」
「だな」
村長一家も2人が強いことはよくわかっているからな。
「あれっ、でもそうするとサーナちゃんはどうしているの?」
「ああ、サーナなら父さんと母さんが……あっ」
思わずポロっと行ってしまい、慌てて言葉を飲み込んでしまった。やべっ、と思ったがきっと大丈夫だと淡い期待をこめつつ言い直そうとした。
「えっ、ちょっと待って、今スニル君なんていったの!」
「父さんと母さんと言わなかったか、いや、んっ、どういうことだ?」
しっかり聞こえていたらしく、村長一家はかなり困惑していた。そりゃぁそうだろう、父さんと母さんという言葉から考えると、普通は俺の両親を考えるが、2人はすでに亡くなっている。となると残りはサーナの両親となるが、残念ながらそれもあり得ない、そもそもサーナの父親は誰かわからないし、母親であるニーナもまたすでに亡くなっているからな。となると、一体誰だとなるわけだ。さて、どうしたものか。
俺たちはまだテント暮らしをしているが、その設置場所は集落にだいぶ近づき、今ではガルミドの家の裏手に位置している。そのためか、最近ではガルミドとミサがちょくちょくやって来ては、サーナの世話をするようになっている。
「サーナちゃん、次はこれにしよっか」
「うん」
ミサがそう言って、目の前にある離乳食をスプーンですくって、サーナの口元へと運んでいる。
そんな様子をうらやましそうに見ているのがガルミドだ。2人は現在サーナの両脇に座り交互にこうして世話をしている。
「親父がこうなるとはな」
そう言って若干呆れつつ微笑んでいるのは、ニーナの兄にしてサーナの伯父グルト。
彼は最初俺たちに対して結構警戒心があったり、俺たちが付けた名であるサーナと呼ぶことをかなりためらっていた様子を見せたが、今ではすっかり気を許してくれている。それというのも……
「ふふっ、私たちの子が生まれたら、きっと同じようにかわいがってくれるわよ」
グルトの隣で同じく微笑んでいるのは、グルトの妻ミャイだが、実はこのミャイ5日ほど前にハンターにつかまりかけた。
この集落自体は結界によって人族には見つからないようになっている。実際に数日前に集落近くまで人族が偶然やって来たことがあったが、こちらからは見えていても向こうからは一切見えなかったようで、普通に素通りしていった。じゃぁ、なぜミャイがつかまりかけたのかというと、その時ミャイは集落を出て、森の中の山菜などを収穫していた。もちろんその際グルトなどが護衛としてついて行っていたのだが、ちょっとした手違いではぐれてしまった。そこへハンターがやって来て捕まったというわけだ。
では、なぜ助かったのか。それこそ俺が結界とは別に作った魔道具のおかげというものだろう。
それは、ちょっとしたアクセサリー的なものなんだが、首に奴隷の首輪が付けられると同時にけたたましい警報が鳴るようにしていた。本来なら、すぐに”解呪”がかけられるような物や”呪い”が発動しないようなものでもよかったんだが、それを作るには魔力が膨大なものとなり、それに使う魔石の大きさがとんでもなくでかくなる。
そこで、こうした警報装置としたというわけだ。そして、その結果グルトたちが気が付いて救出ができたというわけだ。んで、この魔道具を作った俺に感謝という意味もあって、こうして俺たちに気を許すようになったというわけだ。
とまぁ、こんなわけで1週間たった今では集落のみんなからの信頼を、受け取れるようになったというわけだな。とはいえ、完全にというわけではなくまだよそよそしいところもあるが、こればかりはこれからってとこだろ。
また、防衛に関してだが最近はダンクスとシュンナも参加しハンターたちを撃退している。尤もその際に人族の恰好で行うと面倒になるということから、変装の魔道具でその姿を獣人のそれへと変えている。
その姿、シュンナは元から超絶的な美少女であり、現在は19歳ということで美女へと移りつつあることから、かなりの破壊力となっている。俺は、まぁ特にシュンナ相手だからか特に問題ないが、集落の男性陣は見事撃ち抜かれている。といってもシュンナは人族であるから血舞うよう奴はほとんどいないけど。
んで、問題はダンクスで、ダンクスはシュンナとは真逆の超絶的な強面巨漢、そんな奴の頭に猫耳がちょこんと乗っている姿は別の意味での破壊力があり、なんていうか俺も引くぐらいには怖い……。
さて、それはともかく嬉しそうにサーナの世話をしているガルミド一家を横目に俺も朝食を食べたのだった。
「スニルはこの後はまた魔道具作り?」
「そのつもり、まだ足りないみたいだし」
母さんに予定を問われて答えた魔道具作りというのは、先にも説明した警報の魔道具のこと。なぜ、1週間もたってまだ作っているのかというと、もの自体は単純ですぐ作れるんだが、なんというか数が多い。というのも、この魔道具、作りが単純だけに使い捨てとなっている。そして、俺が思っていた以上にハンターたちがこの地へとやってくる。それというのもやはりこの集落の位置は、ハンターたちの上陸地点から一番近い集落となっているために、ここの防衛に出ていった獣人族や森へ出かけた者たちが次々に奴らにつかまってしまう。そのたびに消費して。だからこそ族長から在庫として大量に作ってほしいと頼まれたというわけだ。もちろん俺は引き受けた。それというのも、この集落はサーナの母であるニーナの故郷、ガルミドをはじめとしてサーナと血縁関係にある家族がいる。もしそんな彼らに何かあればサーナが悲しむことになるかもしれない。だからこそそれを防ぐために俺たちはどんなことでもしようと思う。尤も、さすがにこれだけの数の魔道具を作るための魔石の数がそこまでない。そこで魔石はある程度提供してもらうことになっている。
「あまり、根を詰めないようにね」
「わかってるよ」
そんなわけで部屋に引きこもり魔道具作りに入るのであった。
こうして、作ることしばし、結構な数が出来上がってきたところで来客があった。
「スニル、お客さんよ」
「客? 誰?」
「族長、なんかスニルに頼みたいことがあるそうよ」
族長の頼みってなんだろうか。まぁ、とにかく行ってみよう。
「おおっ、スニルすまんな」
「……」
族長に対していつものように無言で返事をする。
「ふむ、実はなおぬしに頼みたいことができてな。今からわしの家へ来てくれんか?」
よくわからないが、族長の言葉だし特に断る理由もないので行くことにした。もちろん俺だけだと会話が成り立たないので、父さんに同行してもらう。
というわけでやって来た族長の家、するとそこには見たことのない獣人が俺と父さんを見ていぶかしむようににらみつけていた。俺って前世から人にあまり興味がなかったから人を覚えるのが苦手だったけれど、さすがにこんなにらみつけてくる人はこの集落にはいなかったはずだ。
そんなことを考えていると族長が説明してくれた。
「この者は、隣村の族長の息子でアルベという。アルベ、この子がスニル、例の魔道具を作ってくれたものだ」
「こ、こんな子供が?」
「そうだ。まぁ、子供といっても見た目だけで実際には14だそうだが」
「はっ? 14! うそだろっ!」
「……」
相変わらずの人見知り発動しているために、アルベの言葉に答えること出来ず俺は黙ったままだ。
「クルーダ殿、本当にこんな子供が、しかも人族があれを作ったというのですか?」
「そうだ。アルベわしも最初は信じられなかったが、確かに間違いない」
「そうか、しかし、なぜ?」
アルベは族長になぜ俺がそんなものを作っているんかと聞いている。まぁ、獣人族からしたら人族である俺が獣人族を守る魔道具を作っていることが信じられないのだろう。
「それについてはこれから話そう……」
それから族長はアルベに事の経緯を話して聞かせたのだった。それを聞いたアルベは本当に信じられないという風に聞いていた。
「クルーダ殿それを信じろというのか」
「そうだ」
「一体、何が目的で」
「俺たちがここに来たのは、さっき族長が言ったように保護した子を返すためだ。尤も俺たちも情が移ってしまったから、そのままこの地に住まわせてもらっているが」
俺に代わり父さんが答えた。
「そ、そんなことで、馬鹿なっ!」
アルベは心底信じられないという。
「確かに俺たちは人族だけど、だからと言って人族すべてが他種族を忌み嫌っているわけじゃない」
父さんの言う通りで、少なくとも俺たちの周りにはそんな奴は誰一人いない。
「ほかはともかく彼らにつては信じてもいいと考えている。今も、2人が我らとともに防衛の警備にあたってくれている」
「まじかっ……いや、本当なんだろうな。でも、信じられない」
アルベはまだ信じられないといっているがほんと、こればかりは仕方ない。
「それよりも……」
そんなことよりなぜ俺が呼ばれたのかと族長に聞くためにその一言を発した。
「しゃべれんのかよ!」
俺がしゃべったことでアルベがそう突っ込んできた。
「悪いな。スニルは人と話すのが苦手でな。まぁ、こうして少しぐらいなら話せるんだが」
そう言って父さんが俺の頭の上に手を置いてきた。
「ああ、そういうことか」
アルベが納得したところで本題に入ってほしいんだけど、俺はそんな意味の目線を族長に送った。
「そうじゃったな。今回スニルを呼んだ理由だが、実は先ほどアルベに結界とこれについて聞かれてな。これを作ったのがスニルだと話したところだったのだ」
「俺の村にもこいつを作ってもらいたい。俺の村はここと同じく人族共に多く襲われていて、先日も親友がさらわれた。そんなときにこの村での話を聞いてな。最近この村でさらわれた奴はいないと、しかも話によるとたとえ捕まっても大きな音で周囲に知らせるものまで使っているという。そこで俺がここに調べに来たというわけだ」
そこで族長から俺のことを聞かされたということらしい。
「それでどうだスニル、作ってはくれんか」
族長がそう言ってきたが俺としては作ること自体は構わないんだが、問題もある。
「スニル?」
「魔石がないし、数が多い」
「だよな。ああ、ええとだな。作ること自体は別に構わないんだが、警報の魔道具だけでも作るには魔石が必要になる。手持ちの魔石はすでにほぼ使い切っちまってるしこれ以上作るのは無理なんだよ。それと、結界の方もだな。一応中央の分はこの間取ってきたものがあと2つあるが、ほかの分がない」
魔道具を1つ作るだけでも魔石が必要になる。警報の場合はゴブリンあたりの小さなもので事足りるとはいえ、俺も無限に持っているわけじゃない。そろそろ手持ちもそこを突きかけている。もちろんこれについては族長にも告げており、今現在集落から供出してもらっている状態だ。また、結界につかう魔石、こいつの中央に使っているオーガの魔石はあと2つ、この間ダンクスたちに取って来てもらったものがありこれは族長も知っていることなので隠さず答えることができるが、問題は六芒星の頂点に使う魔石だ。残念ながらこれにつかえる魔石の手持ちがない。まぁ、一応あと2つほどあるんだけどそれじゃ足りない。父さんもこのことを知っているためにそう答えた。
「魔石?」
「ああ、魔道具を作るには魔石は欠かせないからな。警報についてはゴブリンとかの小さい物でもいいからな。ここにもそれなりにあったし、そっちにもあるだろ。そいつを渡してくれればそれで作ることはできる。尤も、現在この集落のために作っているからそのあとか、分けてもらうかとなるだろうが、そこは族長と相談してくれ」
「うむ、確かに今は多少在庫があったな。しかし、これを渡してしまえばこちらも困るからなぁ」
「一応、毎日ある程度の数は出来てるけどな。でも、作れるのがスニルだけだからな。そこらへんは考慮してもらいたい」
父さんがそう言って交渉をしてくれている。
「わかった、いいだろう。ゴブリンの魔石ならそれなりの数保管されているうえに我等には使いどころがないからな。クルーダ殿後ほど相談させていただきたいが構わないだろうか」
「ふむ、構わんよ」
「それと、結界についてだが、足りないという魔石はこちらで用意する。それで、どのぐらいのものを用意知ればいい」
思っていたよりも素直に魔石を出してきた。それほど必要なものであると判断したのだろう。人族である俺に頭を下げるぐらいにはな。
「オーク、全部で6、残り4」
そう言うことならと俺も必要な魔石の種類を答える。
「了解した。それをすぐに用意しよう。確かそれぐらいの物もあったはずだ」
ということで、どうやらこれから俺は隣の村へ行き結界の魔道具を作ることになるようだ。まぁ、構わないけどな。
その後、ある程度話をしたのち俺はテントへと戻ったのであった。
「ピュイー、ピュィー」
テントに戻るとちょうど上空からそんな鳴き声がして、集落に緊張が走ったがすぐに問題ないことを告げる必要がある。なにせ、この鳴き声はリーフの物だからだ。
「ダンクスがいないな。しょうがない」
リーフがいつも止まるダンクスが今この場におらず、俺や父さんでは体が小さいために止まらせる場所がない。そんなわけで、仕方ないので魔法で土を盛り上げて壁を作り止まれるようにした。
すると、上空から降りてきたリーフは素直にそこに止まったのだった。
「リーフ、ポリーからか」
「ピュイー」
リーフは嬉しそうに返事をしたので、その頭をなでつつその足に括り付けてある手紙を取り出した。
「ポリーによろしくな」
「ピュイー」
リーフはそう返事してから飛びだって言った。
「ポリーちゃんからか」
「みたい」
そんなわけでさっそくテント内に入りポリーからの手紙を見ることにした。
「なんて書いてあったの?」
手紙を読んでいる間黙って様子を見ていた母さんが読み終わったのを確認してから聞いてきた。
「ポリーも来たいって書いてある」
「ああ、この間ここに住むって書いたからね」
母さんが言うように、この集落に住むことを手紙でポリーに伝えてあり今回はその返事となるわけだ。それで、その内容はポリーもこの集落に来てみたいということだった。
「といっても、やっぱり無理だろ」
「そうね。ポリーちゃんを危険な目に合わせるわけにはいかないものね」
いくら集落の人たちが俺たちを受け入れるようになったからといって、まだ中には警戒したり恨みがましい目で見てくる連中だっている。俺たちはそれぞれ何があっても対処できる力があるが、ポリーは普通の人族のためにそれがない。そうなるとさすがにここに連れてくるというのは無理があった。
「とりあえず、一度戻ってみるよ」
「そうしなさい。スニルだってたまにはお休みしないと」
そう言うわけで、俺は一度ゾーリン村へ戻ることにした。
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村に戻ってくるとなんというかやっぱり落ち着くな。ええと、ポリーはどこだ?
”探知”を使ってポリーの居場所を探してみると、どうやら今は家に居るみたいだ。というわけで、まっすぐに村長の家へと向かって行く。
「あっ、スニルおかえりなさい」
「お、おう、ただいま」
村長の家の扉をノックするとポリーが出てきて、満面の笑顔で言ってきた。
「どうしたの、あっ、もしかしてお手紙?」
「ああ、さっきリーフが来たんだよ。おっと、帰ってきたみたいだな」
ポリーと話しているとふいにリーフの声が響き、どうやら帰ってきたようだ。
「おかえりなさい、リーフご苦労様」
ポリーは帰ってきたリーフに餌を手渡しであげている。最初は少し怖がっていたが今ではすっかりかわいがっているようだ。その後、ポリーはリーフを送還したところで改めてこちらを向き家へ入るように促された。
「おおう、スニルか、良く帰ったな。聞いたぞ無事に獣人族の土地へ着いたようだな」
「まぁ何とかね」
「それにしても、そこに住むなんて大丈夫なの」
「まぁ、最初は反発があったけどね。最近は何とかそれも収まりつつあるみたいだ」
「そっか、そういえば今日は1人で帰ってきたんだね」
「ああ、ダンクスとシュンナは獣人たちと一緒に集落の防衛に行ってるからな」
「ああ、そういうことね」
「2人とも強いものね」
「だな」
村長一家も2人が強いことはよくわかっているからな。
「あれっ、でもそうするとサーナちゃんはどうしているの?」
「ああ、サーナなら父さんと母さんが……あっ」
思わずポロっと行ってしまい、慌てて言葉を飲み込んでしまった。やべっ、と思ったがきっと大丈夫だと淡い期待をこめつつ言い直そうとした。
「えっ、ちょっと待って、今スニル君なんていったの!」
「父さんと母さんと言わなかったか、いや、んっ、どういうことだ?」
しっかり聞こえていたらしく、村長一家はかなり困惑していた。そりゃぁそうだろう、父さんと母さんという言葉から考えると、普通は俺の両親を考えるが、2人はすでに亡くなっている。となると残りはサーナの両親となるが、残念ながらそれもあり得ない、そもそもサーナの父親は誰かわからないし、母親であるニーナもまたすでに亡くなっているからな。となると、一体誰だとなるわけだ。さて、どうしたものか。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
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武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
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美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
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海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
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そんな少年の物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
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夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
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強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
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目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
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