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第06章 獣人の土地
09 謝罪
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ついついうっかりとしか言いようがない。村長一家に対して両親の存在をほのめかしてしまった。
「スニル、どういうことだ?」
「説明してちょうだい」
村長とノニスおばさんがそう言って詰め寄ってきた。こ、これは逃げられない。それでも、何とかごまかそうとしてみた。
「ええと、何のこと?」
うん、俺にごまかすという高等技術はないな。というか、そもそも俺は前世を含めて人と話すことなんて数えるぐらいしかなかった。そのため会話に関する技術なんてものは皆無。だからこそいつもついポロっと言っちまうんだよな。尤も俺だって言っちゃいけないことといいことの区別はつくから、特に口が軽いわけじゃない。でも、こうして村長たちみたいにある程度心を許した相手には、どうしても自分に関することならポロっと言ってしまうわけだ。
「スニル、それ下手過ぎ」
ほら、ポリーにも下手だと指摘されてしまった。
「俺もそう思う……はぁ、仕方ないか。こうなるとは思ってたけど」
俺はため息を1つこぼしてから説明をすることにした。
「それで、どういうことなの?」
「どうもこうも、そのまま。ほら、俺が前世の記憶をもっている転生者だって話はしただろ」
「うん」
俺が転生者であることはすでに村長一家には話してある。まぁ、あの時も今回のようにポロっと言っちまったんだけど。
「あの時も驚いたもだがな」
「ええ、でも、納得はできたわよね」
「そうだな」
俺が転生者であるということは村長たちにとっては納得のことだったらしい。それほど俺という存在が異質に見えたってことだろう。まぁ、虐待されて奴隷として売られた子供の行動ではなかったからな。
「それと同じで、父さんと母さんも転生していたんだ」
「そ、それじゃ、やっぱりミリア、なの」
「ヒュリックもなのか?」
ノニスおばさんと村長が恐る恐る聞いてきた。
「そうなるかな。なんでも神様もあそこで俺が両親を失うってことに焦ったらしくて、それで2人も転生させたみたいだよ」
そう説明したわけだが、ポリー以外の面々の様子がおかしくなった。
「あ、ああ、そんな」
「まさか、まさか、そんな」
「2人が、2人が」
「スニル、良かったね」
「ああ、まぁな」
それから少しして、ようやく村長たちが落ち着いてきた。
「ふぅ、スニルには本当に驚かされることばかりだな」
「ホントにね。まさか、あの2人がね」
「そうね。それで、スニル君、2人は、その……」
ノニスおばさんが少し言いよどんでいるが、聞きたいのはもしかしたら俺の過去を2人が知っているのかどうかかな。
「俺は話していないけれど、ダンクスとシュンナが話したらしい」
「そ、そう、知ったのね」
俺の答えを聞いてノニスおばさんが意気消沈している。
「スニル、2人を連れてきてはもらえないか、いまさらと思うかもしれないが、どうしても話さなければならない」
村長が真剣な面持ちでそういった。
「わかった、それじゃ今から行ってくるよ」
「今からか……うむ、そうだな。頼めるか」
村長が少し考えたのちそう言ったので俺はその場でうなずいてから、家の外に出て獣人族の村へと戻ったのだった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
獣人族の村へと戻って来た俺はさっそくテントへと向かった。
「ただいま」
「おかえり、早かったわね」
「まぁね」
「何かあった?」
俺の様子を見た母さんがすぐに何かを感じ取ったようだ。
「ああ、うん、それがさ。さっき村長たちと話していたんだけれど、そこで、ついぽろっとね」
「ぽろっと、ああ、もしかして俺たちのことか?」
以前にも俺がついぽろっと転生者であることを、話してしまっていることを知っている父さんがそう言い当てた。
「そんなとこ」
「ああ、なるほどね」
「それはまた、面倒そうだな」
「まぁね。それで、村長たちが父さんと母さんに話があるから連れてきてくれって、どうする?」
俺がこういうと父さんと母さんは少し嫌そうに悩んでいる。これは別に2人が村長たちに会いたくないというわけではなく、村長たちにあった際にどんなことがあるかがわかっているからである。まぁ、俺にもそれは想像できることで、間違いなく村長たちは2人に対して謝罪をしてくるだろう。なにせ、まず村長たちは父さんを最期までよそ者扱いをしていたし、そのうえで俺が虐待を受けていた。村長たちはそれを知らなかったとはいえ、死んだことにされていた俺のことを確かめようともしなかった。これは親からしたら怒りを覚える事実だろう。尤も、一応俺も2人には村長を始め現在の村に世話になったとこはしっかり説明してあるので、2人もそこまで怒り心頭という感じではない。
「……そうだな。行かないわけにはいかないな」
「そうね。いつかはちゃんと話さないといけないわよね。私もみんなには会いたいし」
父さんにとっては、自分を認めてもらえなかった連中に過ぎないが、母さんにとっては故郷であり中には幼いころからの友人であったりかわいがってくれた人だっている。または、自分がかわいがった人物だっているだろう。そこのところ父さんとの違いがあるようだ。
「それじゃ、向こうも待ってるだろうし、さっさと行く」
「そうだな。行くか」
「ええ」
父さんと母さんはそれぞれ気合を入れて俺とともにゾーリン村へと向かうことになった。
「それじゃぁ、サーナちゃんはミサさんに預ける必要があるわね」
「だな」
今現在サーナの面倒を見ているのは母さんと父さん、ガルミドとミサはそれぞれ仕事などのためにここにはいない。そんな中俺たち3人が出かけてしまうとサーナを1人残すことになってしまう。シュンナとダンクスは森だしな。そんなわけで、まずサーナをミサへ預けるためにガルミドの家へと赴いた。
「……というわけだから、少しの間この子を預かってほしいのだけれどいいかしら」
「あらっ、もちろんよ。さぁ、こっちにいらっしゃい」
ミサには一旦故郷に帰ることを説明した。それというのもこの集落の人間なら俺が”転移”の使い手であることを知っているからだ。そんで、ミサはというと喜んでサーナを預かってくれた。
そうして、すぐに”転移”してゾーリン村へと向かったのだった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「ここも変わらないな」
「ええ、そうね。懐かしいわ。といっても、私たちにとってはついこの前のような気がするけれど」
「まぁ、2人にとってはそうだろうね」
父さんと母さんは、記憶を取り戻してからまだそこまで日が経っていない。そのため、前世で命を落としたその日は、ある意味でついこの間の記憶なんだよな。
「スニル」
そうこうしているとポリーがやって来た。
「え、えっと、ねぇ、もしかして……」
「ああ、父さんと母さんだ」
やって来たポリーが見慣れない2人を見て俺の袖を引っ張りながら小声で聞いてきた。
「ポリーちゃん、うん、面影もあるし綺麗になったわねぇ」
「確かに、スニルにはもったいないぐらいだな」
考えてみると母さんにとってポリーは、ノニスおばさんにとっての俺と同じように母乳を与えていたんだよな。といっても現在身長はポリーのほうがでかいんだけどね。というか、ポリーって今の俺よりもでかいんだよなぁ。当然と言えば当然なんだけど……。
「え、ええと、初めまして?」
「ふふっ、そうね。ポリーちゃんは覚えていないものね。それに、今は私も姿が変わってしまっているから、そうなるのかしらね」
「いやぁ、でも記憶としては違うからなぁ」
ポリーは若干緊張しつつ父さんと母さんに挨拶をしたが、その言葉は初めまして。しかし、ポリーにとっては記憶になくとも赤ん坊のころに幾度となくあっている。というか先にも言ったようにポリーは母さんから母乳をもらっているわけだから、この挨拶は違う気がする。とはいえ、父さんと母さんはともに転生しているために姿が全く違うから、この挨拶も決して間違いというわけでもないのかもしれない。
「まぁ、それはともかくどうする。すぐに村長の家に行く?」
「そうだな。こういうことはさっさと済ませておきたいな」
「そうね」
村長のところに行けば面倒ごとになることが分かっているために、そういうことはさっさと済ませてしまおうということだ。
「ええと、それじゃぁ、案内します」
「ええ、お願いね」
こうして俺たち親子はポリーの案内の元村長宅へと向かったわけだが、実際この案内は不要のもの、なにせ俺たちはみんなこの村を良く知っているからだ。
「なんか、変な感じ」
「何がだ?」
ポリーがふふっと少し笑いながらそう言ったので、首をかしげながら聞いてみた。
「だって、スニルのお父さんとお母さんなのに、私たちより子供なんだよね」
「ああ、そういうことか、まぁ、たしかにな。といっても2人とも俺とはあまり変わりないけどな」
「それは、スニルが小さいんだもの」
「俺だって、そのうちでかくなるさ。今もしっかり伸びているしな」
「だと良いね」
前世の時はこの辺りの年齢で身長が泊ってしまったが、今回はスタートが遅かっただけに遺伝的には大きくなれるはずだ。聞くところによると母さんは小柄だったが父さんは大きかったらしいしな。
そうこうしているうちに俺たちは村長の家へとたどり着いたのであった。
「ただいまぁ。お爺ちゃん、来たよー」
ポリーは家に帰るなりそう叫んだ。それを聞いて母さんは少し微笑んでいた。ポリーはしっかりしているようでこういうところは子供のままだからな。残念ながら俺には失われたものだな。
「……ミ、ミリア、なの?」
「久しぶりね。ノニス」
「ミリアー」
家の中からノニスおばさんが飛び出してきて、玄関前に立つ母さんを見たのちわなわなと震えながら母さんかと尋ね。母さんがそうだとうなずくとひしっと抱き着いた。
「ああ、ああー、ミリア、ミリア」
「よし、よし」
ノニスはまるで子供の用に母さんの胸で泣き出したことで、母さんも驚きつつも何か懐かしそうに抱きしめてなだめている。確かノニスおばさんと母さんとでは母さんが少し年上で、幼いころは母さんがノニスおばさんの面倒を見ていたんだよな。おそらく今の2人はそのころに戻っているのかもしれないな。
「ヒュリックか?」
「ああそうだ。村長、デリク久しぶりだな」
一方で父さんも村長やその息子でポリーの父親のデリクへと挨拶を交わしているが、こちらは男同士だけあってドライな挨拶となっている。
それからしばらくしてようやくノニスおばさんが落ち着いてきた。
「落ち着いた? ノニス」
「え、ええ、ごめんなさい。ごめんなさい」
落ち着いたかと思ったノニスおばさんは今度は謝りだした。
「ノニス?」
「私が、私が、本当にごめんなさい。ミリア」
ノニスおばさんはそう言って深々と頭を下げた。ここにきて母さんもノニスおばさんが何を誤っているのかということが分かったようだ。まぁ、これしか思いつかない気もするが。
「ノニス、あなたが悪いわけじゃないわ」
「で、でも、私があの時もっと強くもっと強く、強くいっていれば……」
ノニスおばさんはひどく後悔していた。それは、俺が両親を失ったとき、最初俺を引き取ろうとしたが、その前に奴が引き取った。それにより俺が虐待を受け続けていたということを。
「ノニス、それに関してはわしらも同罪だ。わしたちはギブリを信じてしまっていた。まさか、あ奴があのようなことをしていたとは夢にも思っていなかったのだ。ミリア、ヒュリック本当にすまなかった。お前たちはこの村を命がけで守ってくれた。にも関わらずわしらはその恩を仇で返してしまった」
ノニスおばさんと同様、村長とデリコおじさんもまた同じく後悔している。そのため2人も深々と頭氏下げたのであった。それにつられてポリーまで頭を下げてしまったが、これはご愛嬌という奴だろう。
「村長、デリクもノニスも頭を上げてくれ。確かにスニルが受けたことは俺たちとしては許しがたいことだ」
父さんがそう言うと一瞬びくっとなる3人。
「でも、スニルから聞いてるわ。スニルが旅立つときノニスが、服とかをいっぱい用意してくれたんですってね。ありがとう、本来なら私がするべきことなのに代わりにしてくれて」
「ああ、そうだな。それにそれだけでなくほかにもいろいろと世話になったと聞いている。ありがとう」
母さんと父さんはそれぞれそう言って村長たちに笑顔を向けたのだった。
「それはともかく、家の中に入らない。いつまでもここに居ても仕方ないし」
お互いに謝罪とお礼の言い合いをしていたが、ここは玄関先、いつまでもこんなところに居ても仕方ないとそう提案した。
「そ、そうだな。さぁ、入ってくれ」
「ええ」
「じゃ、邪魔する」
それから俺たちは村長の家へと入ったのであった。
「それじゃ、俺はポリーと出てくるよ」
「あ、ああ、そうしろ」
「そうね。気を付けて、ポリーちゃんまたあとでね」
「あっ、はい」
それから俺とポリーは村長宅を出て村へと繰り出していったが、父さんと母さんは改めて村長たちからの謝罪と説明を受けたようだった。
「スニル、どういうことだ?」
「説明してちょうだい」
村長とノニスおばさんがそう言って詰め寄ってきた。こ、これは逃げられない。それでも、何とかごまかそうとしてみた。
「ええと、何のこと?」
うん、俺にごまかすという高等技術はないな。というか、そもそも俺は前世を含めて人と話すことなんて数えるぐらいしかなかった。そのため会話に関する技術なんてものは皆無。だからこそいつもついポロっと言っちまうんだよな。尤も俺だって言っちゃいけないことといいことの区別はつくから、特に口が軽いわけじゃない。でも、こうして村長たちみたいにある程度心を許した相手には、どうしても自分に関することならポロっと言ってしまうわけだ。
「スニル、それ下手過ぎ」
ほら、ポリーにも下手だと指摘されてしまった。
「俺もそう思う……はぁ、仕方ないか。こうなるとは思ってたけど」
俺はため息を1つこぼしてから説明をすることにした。
「それで、どういうことなの?」
「どうもこうも、そのまま。ほら、俺が前世の記憶をもっている転生者だって話はしただろ」
「うん」
俺が転生者であることはすでに村長一家には話してある。まぁ、あの時も今回のようにポロっと言っちまったんだけど。
「あの時も驚いたもだがな」
「ええ、でも、納得はできたわよね」
「そうだな」
俺が転生者であるということは村長たちにとっては納得のことだったらしい。それほど俺という存在が異質に見えたってことだろう。まぁ、虐待されて奴隷として売られた子供の行動ではなかったからな。
「それと同じで、父さんと母さんも転生していたんだ」
「そ、それじゃ、やっぱりミリア、なの」
「ヒュリックもなのか?」
ノニスおばさんと村長が恐る恐る聞いてきた。
「そうなるかな。なんでも神様もあそこで俺が両親を失うってことに焦ったらしくて、それで2人も転生させたみたいだよ」
そう説明したわけだが、ポリー以外の面々の様子がおかしくなった。
「あ、ああ、そんな」
「まさか、まさか、そんな」
「2人が、2人が」
「スニル、良かったね」
「ああ、まぁな」
それから少しして、ようやく村長たちが落ち着いてきた。
「ふぅ、スニルには本当に驚かされることばかりだな」
「ホントにね。まさか、あの2人がね」
「そうね。それで、スニル君、2人は、その……」
ノニスおばさんが少し言いよどんでいるが、聞きたいのはもしかしたら俺の過去を2人が知っているのかどうかかな。
「俺は話していないけれど、ダンクスとシュンナが話したらしい」
「そ、そう、知ったのね」
俺の答えを聞いてノニスおばさんが意気消沈している。
「スニル、2人を連れてきてはもらえないか、いまさらと思うかもしれないが、どうしても話さなければならない」
村長が真剣な面持ちでそういった。
「わかった、それじゃ今から行ってくるよ」
「今からか……うむ、そうだな。頼めるか」
村長が少し考えたのちそう言ったので俺はその場でうなずいてから、家の外に出て獣人族の村へと戻ったのだった。
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獣人族の村へと戻って来た俺はさっそくテントへと向かった。
「ただいま」
「おかえり、早かったわね」
「まぁね」
「何かあった?」
俺の様子を見た母さんがすぐに何かを感じ取ったようだ。
「ああ、うん、それがさ。さっき村長たちと話していたんだけれど、そこで、ついぽろっとね」
「ぽろっと、ああ、もしかして俺たちのことか?」
以前にも俺がついぽろっと転生者であることを、話してしまっていることを知っている父さんがそう言い当てた。
「そんなとこ」
「ああ、なるほどね」
「それはまた、面倒そうだな」
「まぁね。それで、村長たちが父さんと母さんに話があるから連れてきてくれって、どうする?」
俺がこういうと父さんと母さんは少し嫌そうに悩んでいる。これは別に2人が村長たちに会いたくないというわけではなく、村長たちにあった際にどんなことがあるかがわかっているからである。まぁ、俺にもそれは想像できることで、間違いなく村長たちは2人に対して謝罪をしてくるだろう。なにせ、まず村長たちは父さんを最期までよそ者扱いをしていたし、そのうえで俺が虐待を受けていた。村長たちはそれを知らなかったとはいえ、死んだことにされていた俺のことを確かめようともしなかった。これは親からしたら怒りを覚える事実だろう。尤も、一応俺も2人には村長を始め現在の村に世話になったとこはしっかり説明してあるので、2人もそこまで怒り心頭という感じではない。
「……そうだな。行かないわけにはいかないな」
「そうね。いつかはちゃんと話さないといけないわよね。私もみんなには会いたいし」
父さんにとっては、自分を認めてもらえなかった連中に過ぎないが、母さんにとっては故郷であり中には幼いころからの友人であったりかわいがってくれた人だっている。または、自分がかわいがった人物だっているだろう。そこのところ父さんとの違いがあるようだ。
「それじゃ、向こうも待ってるだろうし、さっさと行く」
「そうだな。行くか」
「ええ」
父さんと母さんはそれぞれ気合を入れて俺とともにゾーリン村へと向かうことになった。
「それじゃぁ、サーナちゃんはミサさんに預ける必要があるわね」
「だな」
今現在サーナの面倒を見ているのは母さんと父さん、ガルミドとミサはそれぞれ仕事などのためにここにはいない。そんな中俺たち3人が出かけてしまうとサーナを1人残すことになってしまう。シュンナとダンクスは森だしな。そんなわけで、まずサーナをミサへ預けるためにガルミドの家へと赴いた。
「……というわけだから、少しの間この子を預かってほしいのだけれどいいかしら」
「あらっ、もちろんよ。さぁ、こっちにいらっしゃい」
ミサには一旦故郷に帰ることを説明した。それというのもこの集落の人間なら俺が”転移”の使い手であることを知っているからだ。そんで、ミサはというと喜んでサーナを預かってくれた。
そうして、すぐに”転移”してゾーリン村へと向かったのだった。
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「ここも変わらないな」
「ええ、そうね。懐かしいわ。といっても、私たちにとってはついこの前のような気がするけれど」
「まぁ、2人にとってはそうだろうね」
父さんと母さんは、記憶を取り戻してからまだそこまで日が経っていない。そのため、前世で命を落としたその日は、ある意味でついこの間の記憶なんだよな。
「スニル」
そうこうしているとポリーがやって来た。
「え、えっと、ねぇ、もしかして……」
「ああ、父さんと母さんだ」
やって来たポリーが見慣れない2人を見て俺の袖を引っ張りながら小声で聞いてきた。
「ポリーちゃん、うん、面影もあるし綺麗になったわねぇ」
「確かに、スニルにはもったいないぐらいだな」
考えてみると母さんにとってポリーは、ノニスおばさんにとっての俺と同じように母乳を与えていたんだよな。といっても現在身長はポリーのほうがでかいんだけどね。というか、ポリーって今の俺よりもでかいんだよなぁ。当然と言えば当然なんだけど……。
「え、ええと、初めまして?」
「ふふっ、そうね。ポリーちゃんは覚えていないものね。それに、今は私も姿が変わってしまっているから、そうなるのかしらね」
「いやぁ、でも記憶としては違うからなぁ」
ポリーは若干緊張しつつ父さんと母さんに挨拶をしたが、その言葉は初めまして。しかし、ポリーにとっては記憶になくとも赤ん坊のころに幾度となくあっている。というか先にも言ったようにポリーは母さんから母乳をもらっているわけだから、この挨拶は違う気がする。とはいえ、父さんと母さんはともに転生しているために姿が全く違うから、この挨拶も決して間違いというわけでもないのかもしれない。
「まぁ、それはともかくどうする。すぐに村長の家に行く?」
「そうだな。こういうことはさっさと済ませておきたいな」
「そうね」
村長のところに行けば面倒ごとになることが分かっているために、そういうことはさっさと済ませてしまおうということだ。
「ええと、それじゃぁ、案内します」
「ええ、お願いね」
こうして俺たち親子はポリーの案内の元村長宅へと向かったわけだが、実際この案内は不要のもの、なにせ俺たちはみんなこの村を良く知っているからだ。
「なんか、変な感じ」
「何がだ?」
ポリーがふふっと少し笑いながらそう言ったので、首をかしげながら聞いてみた。
「だって、スニルのお父さんとお母さんなのに、私たちより子供なんだよね」
「ああ、そういうことか、まぁ、たしかにな。といっても2人とも俺とはあまり変わりないけどな」
「それは、スニルが小さいんだもの」
「俺だって、そのうちでかくなるさ。今もしっかり伸びているしな」
「だと良いね」
前世の時はこの辺りの年齢で身長が泊ってしまったが、今回はスタートが遅かっただけに遺伝的には大きくなれるはずだ。聞くところによると母さんは小柄だったが父さんは大きかったらしいしな。
そうこうしているうちに俺たちは村長の家へとたどり着いたのであった。
「ただいまぁ。お爺ちゃん、来たよー」
ポリーは家に帰るなりそう叫んだ。それを聞いて母さんは少し微笑んでいた。ポリーはしっかりしているようでこういうところは子供のままだからな。残念ながら俺には失われたものだな。
「……ミ、ミリア、なの?」
「久しぶりね。ノニス」
「ミリアー」
家の中からノニスおばさんが飛び出してきて、玄関前に立つ母さんを見たのちわなわなと震えながら母さんかと尋ね。母さんがそうだとうなずくとひしっと抱き着いた。
「ああ、ああー、ミリア、ミリア」
「よし、よし」
ノニスはまるで子供の用に母さんの胸で泣き出したことで、母さんも驚きつつも何か懐かしそうに抱きしめてなだめている。確かノニスおばさんと母さんとでは母さんが少し年上で、幼いころは母さんがノニスおばさんの面倒を見ていたんだよな。おそらく今の2人はそのころに戻っているのかもしれないな。
「ヒュリックか?」
「ああそうだ。村長、デリク久しぶりだな」
一方で父さんも村長やその息子でポリーの父親のデリクへと挨拶を交わしているが、こちらは男同士だけあってドライな挨拶となっている。
それからしばらくしてようやくノニスおばさんが落ち着いてきた。
「落ち着いた? ノニス」
「え、ええ、ごめんなさい。ごめんなさい」
落ち着いたかと思ったノニスおばさんは今度は謝りだした。
「ノニス?」
「私が、私が、本当にごめんなさい。ミリア」
ノニスおばさんはそう言って深々と頭を下げた。ここにきて母さんもノニスおばさんが何を誤っているのかということが分かったようだ。まぁ、これしか思いつかない気もするが。
「ノニス、あなたが悪いわけじゃないわ」
「で、でも、私があの時もっと強くもっと強く、強くいっていれば……」
ノニスおばさんはひどく後悔していた。それは、俺が両親を失ったとき、最初俺を引き取ろうとしたが、その前に奴が引き取った。それにより俺が虐待を受け続けていたということを。
「ノニス、それに関してはわしらも同罪だ。わしたちはギブリを信じてしまっていた。まさか、あ奴があのようなことをしていたとは夢にも思っていなかったのだ。ミリア、ヒュリック本当にすまなかった。お前たちはこの村を命がけで守ってくれた。にも関わらずわしらはその恩を仇で返してしまった」
ノニスおばさんと同様、村長とデリコおじさんもまた同じく後悔している。そのため2人も深々と頭氏下げたのであった。それにつられてポリーまで頭を下げてしまったが、これはご愛嬌という奴だろう。
「村長、デリクもノニスも頭を上げてくれ。確かにスニルが受けたことは俺たちとしては許しがたいことだ」
父さんがそう言うと一瞬びくっとなる3人。
「でも、スニルから聞いてるわ。スニルが旅立つときノニスが、服とかをいっぱい用意してくれたんですってね。ありがとう、本来なら私がするべきことなのに代わりにしてくれて」
「ああ、そうだな。それにそれだけでなくほかにもいろいろと世話になったと聞いている。ありがとう」
母さんと父さんはそれぞれそう言って村長たちに笑顔を向けたのだった。
「それはともかく、家の中に入らない。いつまでもここに居ても仕方ないし」
お互いに謝罪とお礼の言い合いをしていたが、ここは玄関先、いつまでもこんなところに居ても仕方ないとそう提案した。
「そ、そうだな。さぁ、入ってくれ」
「ええ」
「じゃ、邪魔する」
それから俺たちは村長の家へと入ったのであった。
「それじゃ、俺はポリーと出てくるよ」
「あ、ああ、そうしろ」
「そうね。気を付けて、ポリーちゃんまたあとでね」
「あっ、はい」
それから俺とポリーは村長宅を出て村へと繰り出していったが、父さんと母さんは改めて村長たちからの謝罪と説明を受けたようだった。
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疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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