おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第09章 勇者召喚

12 これからの話

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 ついに勇者との邂逅を果たし、彼らに日本に帰れないことを伝えた。かなりショックを受けているようだが、これから何とかしてフォローするしかないだろう。ほんと、俺ってこういうの苦手なんだけどどうすればいいのかねぇ。

「さてと、俺が元日本人であることを信じてもらえたところで、場所を移動するかこんなところでいつまでも勇者と魔王をしてても仕方ないし」

 俺たちは今謁見の間で、まさに玉座に座る魔王と対峙する勇者の状態だ。

「あ、確かに言われてみると」
「じゃぁ、ついてきてくれ」
「は、はい、あっ、でもその前に聞かせてください?」

 さぁ移動しようと立ち上がった瞬間勇者の姉が声をかけてきた。

「ん、なんだ?」
「ダゴンさんたち、えっと、聖騎士の人たちはどうなったのですか?」
「あっ、そうだ。どうなったんだよ!」

 ここにきて勇者が思い出したように詰め寄ってきたが、今まで忘れててたなこいつ。

「あいつらか、ていうかダゴンってクトゥルフ神話に出てそうな名前だな」

 確かクトゥルフ神話で魚かなんかの神の名前がダゴンとか言ったような気がする。

「そんなことより、どうなったんだよ」
「ああ、悪い、安心しろ、あいつらなら問題ない、あれはただの転移魔法、今頃シムサイト商業国の首都シムヘリオにあるオリフェイス商会ってとこの地下牢で混乱しているだろうよ」
「どこですかそこ、というかなんで地下牢?」
「まぁ、いろいろ事情があってな。あとで説明するが、聖騎士の奴らにも地下牢に閉じ込められるってことを経験してもらおうと思ってね」
「だからなんでだよ」
「言ったろ、あとで説明するって、とりあえず話も長くなるだろうし移動するぞ。ああ、そうだ、ついでだから言っとくと、残りの3人いたろ、そいつらも無事だぞ。けがはしてたが簡単な治療はしてあるし、そいつらもその地下牢に送ってあるから、今頃合流でもしていることだろ」
「えっ! ほ、本当ですか?」
「本当に?」
「だからなんで地下牢なんだよ」

 勇者の姉と聖女は事実を聞き喜んでいるが、勇者はいまだに突っ込んでいる。

「そっ、それともう1ついうと、お前たちが倒した3人の四天王、獅子人族のグロッゴ、エルフのリンデル、魔族の恰好したシュンナ、この3人もちゃんと生きてるからな」
「えっ?」
「えっと、それって?」
「どういうこと?」

 ついでにいった俺の言葉にさらに驚き混乱する3人であったが、俺はそれだけ言うとさっさと謁見の間の奥へと歩いていく。奥への扉へ着いたところで後ろを向くと、慌てた様子の3人が追いかけてきた。

「こっちだ」

 そうして扉を開けて廊下に出ると一番手前の扉に手をかけて開け放った。
 ここは俺たち王家の人間が使う応接間みたいなところだ。

「とりあえず座ってくれ」
「は、はい」
「それで、さっきの話どういうことだよ。なんで生きてんだよ」

 座ったとたんに勇者が聞いてきたが、死んだはずの奴がどうして生きているのか不思議なんだろう。

「簡単なことだ、聖騎士たちは気絶した段階でリンデルが転移魔法を発動させる魔道具を使って転移させた。それで、グロッゴも最後爆発したろ」
「は、はい」
「あの爆発と同時にここ魔王城に転移するように設定した魔道具を持たせていたからだ。まぁ、帰ってきたときはボロボロだったけどな。すぐに俺が治療かけたからぴんぴんしてるぞ。リンデルも同じだ。まぁ、お前たちは戦っていないから知らないだろうが、それでシュンナはというと、これは結構こってただろ」
「こってたって、俺は斬ったんだけど」
「私もこの目で見ました。確かにあのシュンナって魔族は孝輔が斬りました」

 勇者の証言をその姉が保証し、聖女も頷いている。

「ほら、みんながみんな爆発じゃ芸がないだろ、だからシュンナだけは幻覚で演出したんだ」
「そうそう、勇者に斬られるように仕向けるの結構大変だったんだよね」

 俺の言葉に続いてそんな声が聞こえてきた。

「あれ? シュンナが持ってきたのか」
「勇者だけあってあの子たち怖がってね。一時間ぶりぐらいかな」

 なるほど、確かにメイドたちは魔族であるがゆえに、勇者を怖がっているな、また、後半部分は勇者たちへ向けて言っているようだ。

「えっ、えっ!?」
「ど、どういう、えっ?」
「!」

 シュンナの登場に驚愕し困惑する3人、それはそうだろう3人が知るシュンナは魔族であり、何より先ほど勇者によって斬られて死んでいるはず、それが人族の姿で元気に表れたのだからな。それでも、姉と聖女は同性だけあって声を出して驚くことはできているが、勇者は……これは完全にやられているな。シュンナといえば、絶世の美少女か美女という存在であり、大きな胸を持ちながらもくびれた腰といったスタイルもとんでもなく良い、そんなものが突然目の前に会われたら、青少年ならこうなるだろう。俺だって前世の記憶がなかったらここまでシュンナと普通に会話なんてできなかっただろう。

「それじゃ、あたしがここにいたら話が進まなそうだから向こう行ってる」
「おう」

 シュンナは勇者を見てそういった。確かに勇者がこの状態では話が進まないだろう。

「え、ええと、あの、魔王さん、あの人は?」
「ああ、今のがシュンナ、お前たちも街の外で戦ったろ、あのシュンナだよ。まぁ、あの時は変装の魔道具を使って魔族の恰好してたからな」
「えっ、そ、それじゃ、ほんとにさっきの人があの、四天王の? 人間だったんだ」
「そういうこと、まぁ、それはさておいて、話の続きと逝きたいところだけど、その前に自己紹介をしとくか。改めて俺の名はスニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアといって、ここテレスフィリア魔王国で魔王をしている。前世は日本人で名前は転生の際に混乱するからってことで記憶から消してもらったから覚えていない。だがXXX県出身で&&&県に住んでたってことはわかる。そんで、向こうで40手前で病死して、この世界の神様に面白半分で転生させてもらったってとこか。それと俺を呼ぶときはスニルでいいぞ」

 簡単にではあるが自己紹介をした。

「あっ、えっと、私は三倉麗香といって、▽▽県立〇〇高校の3年生です。この子は弟の孝輔といって同じ高校に通っている1年生です。こっちの子は浜谷那奈ちゃん、孝輔と同じ1年生で、幼馴染であり一応孝輔の彼女でもあります」

 姉だけあって麗香が残り2人の紹介も一緒にやった。ていうか勇者と聖女が付き合ってるって、それはまた前世の俺だったらふざけろって叫びそうだな。まぁ、今の俺はポリーという似たようことがあるので何とも言えないが。

「えっと、麗香に孝輔、那奈だな。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「さて、それじゃ続きと行きたいが、そうだな。まずは間違いを正すところからにするか」
「間違い、ですか?」
「俺たちの何が間違ってるん、ですか?」

 間違いを正すというと、3人は自分が間違っているという自覚がないために首をかしげる。

「お前たちがっていうか、教会から間違いを教えられているんだよ」
「教会が? それっていったい」
「うん、まずはさっきシュンナについて、ちらっと人間だったのかって言ったよな」
「えっ、あっはい」
「それなんだけど、まず魔族も人間だからな。というか獣人族もエルフもドワーフも同じ人間だ。そんで俺たちみたいな姿をしたものは人族という人間の一種となる」
「そ、そうなんですか? 私たち魔族は邪神の眷属で魔物と同じって、それに亜人は罪を犯した人だって聞いてました」
「だろうな、教会ではそういう風に教えているからな」

 キリエルタ教では幼いころよりそういって教え、魔族は恐れ、他種族はさげすむようにしてきた。

「嘘だったのかよ!」
「だま、騙されたの、私たち」

 憤慨する孝輔とショックを受ける那奈であったが、ここは一応フォローを入れたほうがいいだろう。

「いや、別に奴らも嘘を言ったわけでもだましたわけでもないんだよ。立ち悪いことに」

 ここが本当に厄介だ。

「どういうことですか?」
「魔族についても他種族についても彼らはそう思い込んでいるんだ。長い長い年月そう信じ切っているともいえるが」
「そ、そうなんですか、でもなんで?」

 那奈としてはなぜ彼らが本気で思い込んでいるのか気になったようだ。

「魔族に関してはキリエルタが出てくるより以前から言われていることだからなぁ。キリエルタの時点で常識だったんだ。他種族に関してはもとは、というかキリエルタ自身は獣人族が敵というだけで、エルフやドワーフに関しては交流すべきだと言ってたみたいだ」
「えっ! それって」

 違うじゃないかと麗香は思ったようだ。

「これは俺の推測なんだが、弟子ってことはないと思うから、のちの信者だろうと思うけど誰かが獣人族を敵視するならドワーフとエルフも同じと考えたってとこだろ、そして奴隷にする際に罪悪感を覚えないために人にあらずと、亜人と定め、前世で罪を犯した者たちという設定を後付けした」

 俺の推測は間違っていないと思う。

「ど、奴隷、ですか?」
「そ、そんなものが」
「この世界って奴隷制度あるのか?」

 あれ、なんだか違うところに食いついてきたけど、もしかして3人は奴隷制度のことを知らないのか。

「奴隷のこと聞いてないのか……ああ、そっか確かにお前たちに告げる必要はないか」

 勇者の役割は俺という魔王の討伐、そして聖都には表向き奴隷なんてものはいない。そう考えると知る必要はないな。下手したら、勇者の刃が自分たちに向くからな。

「はい、聞いていません。本当なんですか?」
「ああ、あるぞ。というか俺って奴隷スタートだったからなぁ」
「「「えっ!」」」

 3人がそろって声を上げた。まぁ、まさか異世界転生していきなり奴隷スタートはないよな。

「スニルさんって、奴隷だったんですか? なんで?」
「簡単に言うと、俺って12歳で前世の記憶を取り戻すようにしてて、だからそれまでは普通に子供だったわけなんだけど、2歳の時に両親が死んで、孤児になって、引き取った奴らから虐待を受けてたんだよ。んで、最終的に奴隷商に売られたってわけだ。だから12歳で記憶を取り戻した時、奴隷だったってわけだ」
「そ、それは」
「ご、ごめんなさい」

 俺の説明を聞いて麗香と那奈は泣きそうになり謝ってきて孝輔は苦い顔をしている。

「記憶を取り戻すまではつらかったが、今では特に気にもしてないから、でもま、おかげで15歳だってのにこの小ささだからな、これだけは文句を言いたいところだよな」

 そう言って俺は笑って見せた。そうしないと3人とも悲痛な表情が抜けないからな。

「んでだ。とにかく亜人と称することで己の心を守ったってことだろうな」
「ひどいですね」
「うんそうね。私教会を信じられなくなったかも」

 3人はショックを受けている。

「ま、俺もいろいろ言ったけど、キリエルタ教って宗教は人族にとっては善良な宗教なんだよ。特に権力争いをしているわけでもないし、違うことを言うからと異教徒とか宗教裁判とかもないし、聖職者という立場を利用して信者に無体なことをするものもいないし、まぁ、広い世界だからどこかにはいるかもしれないけれど、少なくとも俺が把握している限りではないな」

 そこがキリエルタ教の不思議なところでもある、本当に善良な宗教なんだよな。もちろん人族限定ではあるが。

「それはそれで、ほんとか信じられないですけど」

 麗香が言うが、これは日本人の性みたいなものだよな。変な宗教が多くあるから宗教というものに拒絶反応を示すんだよな。実際俺も前世では無神論者だったし。

「だろうな。でも、思い出してみな。教皇にはあっただろ、どんな印象だった?」
「教皇様ですか、えっと、すごく優しそうな人でした」
「はい、だから先ほどのことは信じられなくて」
「そうだよなぁ」

 俺自身は当然教皇に会ったことがないが、枢機卿から人柄などについては聞いている。それによると理性的であり、とても善良で裏で悪事を働くような人物ではないとのことだった。尤もそれはあくまで人族が相手の場合のみ、なにせ聖都の地下にはひそかにドワーフを数名奴隷として確保しており、彼らに聖騎士の装備類を作らせているという、しかもそれらをドワーフ製としてではなく、神からの贈り物として聖騎士たちに使わせているらしい。
 ちなみに孝輔たちが持つ装備もそのドワーフ製だ。それもご丁寧に製作者の部分を意図的に削除している。
 しかし、俺の鑑定であればそのあたりもばっちりとわかるんだけどね。

「俺も人づてではあるが教皇の人柄は聞いているからな。でも、それこそ彼らが他種族に対して本気でそう考えている証拠になるんじゃないか。他種族を見下し支配することで、そうした欲求を払しょくしているからこそ、同族である人族に対してどこまでも善良でいられる」

 これが俺がキリエルタ教が善良である理由であると思っている。そうしないと人間なんて欲深い生き物が、あんな善良でいられるわけがない。

「そ、そういうモノなんですか?」
「残念ながらな。人間てのは欲深いからな。お前たちだって覚えがないか、自分はこいつより上だって、例えば自分より成績の低いやつとか運動神経の悪い奴。そうしたやつを見ると少なくともほっとしたりしないか、ああ、自分が一番下じゃないんだってな」
「は、はい、あります」
「た、確かに」
「そう考えるのも人間の業というものだな。まっ、魔王を名乗ってる俺が言うのもなんだけど」

 魔王、つまり王を名乗るということこそまさに支配欲の塊みたいなものだ。

「さてと、これで大体話したよな。ええと、聖騎士たちのことも話したし、四天王のこと、あとは魔族たちの真実、あと何かあったかなぁ。まぁ、なんだ聞きたいことあるか?」

 大体の話はすんだ気がするが、もしかしたらまだ話していないことなどもあるかもしれない、そこで考える間に孝輔たちに聞きたいことを尋ねてみた。

「それなら、ダゴンさんたちってどうなるんですか? ていうかなんで地下牢?」
「ダゴン? ああ、聖騎士たちか」

 ダゴンといわれても誰のことかわからなかったが、そういえばさっき聖騎士だって聞いたな。

「それなら心配いらない。シムサイトって国は商人の国ではあるんだが、キリエルタ教だから、聖騎士が雑に扱われることはないはずだし、教会もあるから特に問題なく聖都にたどり着けるだろう。まぁ、ちょっと遠いけどな」
「遠いって、どのくらいですか?」
「そうだな。、この地図を見てくれ」

 そう言って俺はテーブルの上に”収納”から取り出した世界地図を見せた。といってもこれは俺の”マップ”を参考にしたものだから俺が行ったことがない場所は真っ白となっている。

「ここが、テレスフィリアでアベイル、この街がここな」

 そう言って地図上の地点を指さす。

「あれ。ここって島国なんですか?」
「まぁな。だからお前たちが渡ったあの川は本当は海なんだよ。んで、聖都がここな」
「はい」
「シムサイトはここになる」
「結構遠いですね」
「そうだな。どんなルートで来るかはわからないが、そうそう帰ってはこないだろ」
「どうしてそんな遠くに?」
「簡単に言えば時間稼ぎだ」
「時間稼ぎ?」
「ああ、さっさと聖騎士たちが戻ってしまうと下手したら今度は軍を引き連れてきそうだからな。その前に教皇と話をつける必要があるだろ。俺が危険な魔王ではないということを知らせる必要があるし、何より日本人としてお前たちの召喚に文句の一つでも言わないといけないしな」

 俺の言葉に納得する3人であった。

「それと地下牢に入れたのは、奴ら教会の身勝手な考えで何の罪もない者たちが捕らわれ奴隷にされている。そんな彼らの気持ちの一端でも知ってもらおうと思ってな」

 もちろんこんなことだけで彼らがそれらを反省するとは思っていない。それでも聖騎士を地下牢に入れたという事実が、国民たちの溜飲を下げるのに一役買ってくれればと思ってのことだ。

「そうなんですね。スニルさんの話を聞くまではなんでって思いましたけど、今はなんかわかる気がします」

 どうやら麗香は納得してくれたようだ。
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