おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第10章 表舞台へ

01 街の案内

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 翌朝、目を覚ますとものすごくだるい。これは神界へ行ったことによるものだ。あそこに行く時というものは肉体は眠っているが、精神が起きている状態となるために、精神がおっさんである俺にはほんとにきつい。いうなれば徹夜したようなものだ。
 とはいえ、肉体の疲れはとれているので、覚醒はしているので仕方なく起き上がる。

 そうして、身支度を整えたのち重い足を引きずってリビングへと向かったのだった。

「あっ、おはようございます。スニルさん」

 リビングへと行くとそこにいたのは麗香、孝輔姉弟と那奈であった。

「おう、お前たちは元気そうだな」
「はい、まぁ疲れてはいるんですけど、このぐらいなら」
「なんか徹夜したみたいですけど、私も大丈夫です」
「私もです」
「そうか、若いな」
「はは、それよりスニルさん、昨日はというか夜? えっと、ありがとうございました。おかげで両親にも会えましたし、お別れもできました。これもスニルさんのおかげです」

 麗香が改まってそういって頭を下げて、それに倣い那奈が、孝輔が続けて頭を下げてきた。

「いいさ、というか俺がやったのは事情説明をしただけで、会わせたのは神様だからな」
「はい、神様にはそのどこにいるのかわからないので、起きた時にお礼を言いました」
「そっか、ならきっと聞いてるだろうよ。神様も暇ってわけじゃないからずっと俺たちを見ているわけじゃないが、今朝ぐらいは俺たちを見ていただろうからな」
「はい、それでスニルさんに聞きたいんですけど、もしかしてスニルさんて私たちの両親のこと知っているんですか」

 ここで麗香が聞いてきたわけだが、これは間違いなく俺が最後に言った言葉によるものだろう。

「ああ、母親は七海紗友里ななみさゆりだろたしか、父親の方は悪いが芸人ってことしか知らないが」
「はいそうです」

 麗香たちの母親である七海紗友里というのは、俺が日本にいた頃に活躍していた芸能人で、確か本職はモデルだった。そのモデルの旦那が当時は売れない芸人だということで話題に上がった覚えがある。だから父親の方は知らないというわけだ。

「向こうで死ぬころだから今から15年ぐらい前か、そのころは彼女は多くのバラエティでレギュラーしてたからなぁ。俺が見ていた番組もそこに含まれていたからそれで知ったってところか、それにだ、実は彼女は前世の俺が最期に見た人物でもあるんだよ」
「えっ、それってどういう、もしかして母に会ったことが?」
「いや、そうじゃなくてテレビでな。あの時は昼飯食った後で、そのままバラエティを見ていたんだが、そこに映っていたのがお前たちの母親、七海紗友里だったレギュラーだったからな。確かなんかのロケやってて、そうそう確か3つか4つの娘と一緒にいたな」
「えっ?!」
「なんかのドラマに出て天才子役とか言われて、その母親が七海紗友里ってことで一緒に出てたんだよ。そっか、あの娘、名前は確か麗香、そう考えるとでかくなったもんだな」

 まさか今俺の目の前にいる麗香が、あの時最期に見た人物である七海紗友里の娘、麗香の成長した姿だったわけだ。

「そ、そうだったんですね。確かに私幼いころ子役やってて、母とその番組に出たことがあります。といっても私はほとんど覚えてませんけど」
「だろうな。3つだろ、そのころの記憶なんてあるわけないからな。俺だって全くだし」
「不思議な縁なんですね」

 俺と麗香の縁を聞いた那奈がしみじみとそういった。

「そうだな。でも、実はそうした縁があったからこそお前たちが召喚されたみたいなんだけどな」
「どういうことです?」
「神様が言うには、地球の召喚対象範囲ってのは俺と何らかの縁のあるものなんだそうだ。といってもその縁も今言ったように俺が最期に見た人物であるとかそうしたレベルだから結構範囲は広いけどな」
「へぇ、でも何でですか?」
「そりゃぁ、俺が神様から直接召喚された人間であり、地球が対象範囲になった原因でもあるからだな。だから俺を中心に範囲ができたみたいだ。その中から勇者と聖女が選ばれたというわけだな」
「えっ! あの、それって私もスニルさんと何らかの縁があるってことですか?」

 ここで那奈が驚きながらそう聞いてきた。

「そうなる。というか孝輔よりも那奈の方が縁としては近いぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、那奈の母親の従兄で深山弘太みやまひろたってやつがいるんだけど知らない?」
「深山のおじさんですか、知ってます。私子供ころからだが弱くて、おじさんの病院でお世話になっていましたから」
「おうそうか、あいつ医者になったのか。まぁ、そうだろうとは思ってたけどな」
「えっと」
「ああ、悪い悪い、実はその深山弘太ってのは俺の小学校時代の数少ない友人なんだよ。というかむしろ親友といってもいいぐらいには仲が良かったな。あの頃は俺もまだひねくれてなかったし」
「そうなんですか? なんかすごいですね」

 俺の言葉を聞いた那奈は驚愕に目を見開きながらも、この縁というものに感心している。

「そうなんだよなぁ。だから、余計に範囲が狭かったはずなんだけどな」

 日本での召喚対象範囲は俺と縁のある者たちの中から勇者と聖女に適性のあるものが選ばれる。しかもその両者が同一の所在にいる必要もあるために普通に考えたらありえない奇跡といってもいいだろう。

「まぁ、それはいいとして、今日の予定だけど一応予定ではお前たちの案内をすることになってる」
「案内、ですか?」
「ああ、魔族にとって勇者と聖女というものは恐怖の対象なんだよ。なにせかつて国を滅ぼした相手だからな」

 あの時、確かに悪いのは魔族であったがそれでも勇者と聖女によって国が滅んだのは事実であり、彼らは命からがら逃げた者たちの子孫、これを恐れるなという方が無理がある。

「恐怖って、そんなにですか?」

 一方で俺もそうだが麗香たち現代日本人にはわからない感覚だ。

「それに関しては説明できない、俺もよくわかってないしな。ほら、現代日本人にとって何が怖いか、もし日本で表現するなら鬼や妖怪といいたいところだけど、昔ならともかく今の俺たちではそれが存在しないものであるということが分かっているからそんなに恐怖は感じないだろ。それなら存在する恐怖としてやくざとかが考えられるが、これも恐怖のベクトルが違うと思うし、結局どう説明したところで伝わらないんだ」
「ああ、確かに言われてみるとそうですね」
「で、でも、ゆ、幽霊とか怖いですよ」

 俺の言葉に孝輔が納得すると那奈が恐れながら幽霊が怖いという。

「確かにそうだが、これも人によるし、何より実際にはいるのかいないのかわからないだろ。まぁ、だからこその恐怖なんだが、これもベクトルが違うよな。なにせ、勇者と聖女は実際ここにいるわけだし、逆に人族にとっての魔族、魔王がそういう存在なんだよ。だからこそ教皇がビビってお前たちを召喚してしまったわけだ」

 という俺の言葉には3人も納得したのだった。

「それでだ。勇者と聖女、魔王が和気あいあいと街中なんかを歩いていたらどうよ。魔族たちの不安も少しは晴れるとは思わないか。まぁ、すべての不安をってわけにはいかないだろうが」
「それで、スニルさんが俺たちの案内ですか?」
「そういうこと、あとポリーとサーナを連れていく予定だ」
「えっ、サーナちゃんを」
「それにポリーちゃんもですか?」

 ポリーとサーナを連れていくというと麗香と那奈が食い気味に聞いてきた。

「ああ、ポリーは俺の嫁、つまり魔王妃という認識だし、そのポリーが戦闘要員ではないことはみんな知っていることだし、何よりサーナは国中から魔王家の姫として知られているから、そんな2人も一緒にいることでなおお前たちの安全性をアピールできるというわけだ」

 ちなみにこのことを考えたのは議会であり、俺が快諾したものだ。

 その後俺たちは朝食を食べたのちに、街へ繰り出すこととなったのだった。


「昨日は誰もいなかったけれど、今は結構人がいるんですね」

 魔王城を出たところで街の様子を見た孝輔がそういった。

「昨日はお前たちが来るってことで外出禁止令を出していたからな。そうしないとお前らはともかく、いや、あの時のお前たちなら住人にいきなり襲い掛かるぐらいはしたかもしれないからな。少なくとも聖騎士どもなら下だろ、まぁ、聖騎士ぐらいなら問題ないんだろうがさすがにお前たちとなると住民じゃ無理だからな」
「あ、ああ、そ、そうですね。確かに昨日の私たちなら、そうしたかもしれないです」
「は、はい、魔族は悪い人たちだって聞いてましたし」
「だろ、まぁこれが普段通り、といいたいんだが見てるな」
「はい見られてます」
「やっぱり俺が勇者だからですか?」
「だろうな。住人達にもお前たちのことは話してあるからな。もちろんお前たちが俺と故郷を同じくして平和的な奴らだってことはしっかりと話して聞かせているから、さすがにパニックになって襲い掛かってくることはないだろうが、それでも不安から警戒心が思いっきり出てるんだろう」

 魔族の住人からしたら勇者というものは本当に恐怖の対象なんだろう。俺がそばにいても不安がぬぐわれることはないみたいだ。まぁ、こればかりは徐々に解いていくしかないだろう。

「さて、それでどこに行きたい」
「ねぇスニル、那奈さんたち着るものが少ないから服屋さんに行った方がいいんじゃない」

 麗香たちに聞いたらポリーが提案してきた。

「ああ、そういえば今着てるのもメイドが用意したものだったな」
「はい、これ結構着心地がいいです」
「そうだね。でも、確かにもう少しあった方がいいのは確かですけど」
「よしっ、それじゃまずは服屋に行くか」
「はい」

 俺の言葉を聞いて、最初は遠慮がちであった麗香と那奈が嬉しそうに返事をしたので、シュンナたちがよく行くという服屋が近くにあるのでそこに向かうことにした。

「服屋さんってこの街にどのくらいあるんですか?」
「えっと、確か10建ぐらいだったと思います」

 麗香の質問に答えたのは俺ではなくポリーだ。というか俺は服屋なんて興味がないからしならなかったが、そんなにあったんだな。

「この国の服は主に女性ドワーフが作っているんだが、それぞれが店を構えているからな。だから店によってデザインとかが違うからめぐってみるのも面白いんじゃないか」
「へぇそうなんですね。今度行ってみます」
「えっと、その時は案内しますね」
「ありがとポリーちゃん」

 ポリーが案内するというと麗香が抱き着いて礼をしようとしたようだが、今麗香の腕の中にはサーナがいるためにできないようで戸惑っている。

 そうこうしているうちにやってきた目当ての服屋。

「あれ? ここって武防具屋じゃ」

 看板を見た孝輔がそういうが、その通り看板は鎧と剣が描かれており、服屋に見えない。

「ここはもともと武防具屋だったらしいんだが、結婚して嫁さんが中で服屋を始めたんだよ」

 ドワーフは男性が鍛冶だが女性は服飾、そのため結婚して夫婦で店をやるとこういう形になることが多い。

「ああ、そういうことですか」
「それじゃ、中に入りましょ」

 麗香の号令とともに店の中に入っていく。

「いらっしゃい、あら、陛下お珍しいですね」

 中に入ると幼女にしか見えないドワーフ女性が出迎えてくれた。

「えっと」
「ドワーフの女性は幼いころに成長が止まるから、これで成人なんだ」

 出迎えてくれた女性ドワーフが、あまりにも幼い容姿をしていることに戸惑っている麗香たちに説明をしておく。

「? あっ、もしかしてそちらが例の勇者ですか?」

 俺がドワーフについて説明していると、何をいまさらと不思議そうにしていた女性はすぐに納得したようだ。

「ああ、勇者たちは別の世界から来た人間だからな。ドワーフだって今初めて見ているんだ」
「そうなんですね。えっと、初めましてドワーフのエルモといいます。服のことなら私にお任せください」

 女性ドワーフであるエルモがそういって麗香たちに挨拶をしている。

「初めまして、麗香といいます。私、向こうではモデルって仕事を少しだけですけどしてて、服にすごく興味あります。この世界にはどんな服があるのかとか教えてください」
「あらあらあら、もちろんよ。私もあなたの世界の服を教えて頂戴な。陛下に聞いても教えてもらえなくて」
「前意にも言ったけど、俺は服に全く卿がないんだよ。それでも何となくでは話したろ」
「ええ、ええ、確かに、でも陛下に教えていただいたものはシンプルなものが多くて」
「悪かったな。まぁ、なんにせよ麗香なら確かに俺よりも詳しいのは確かだろ。というかたぶん那奈も孝輔も俺よりもはるかに詳しく知っているんじゃないか」

 全く興味がない俺としては、服なんてものは着ることができれば何でもいいというところだが、麗香は日本で母親と同じくモデルをしていたらしいし、那奈も少女としての最低限の知識を持っていてもおかしくない。というか麗香にあこがれみたいなものを持っているようだから、きっとそれなりに知識を持っているだろう。そして孝輔もまた現代の若者、最近(15年前の話)では男だって当たり前のようにファッションに気を使っているというから、きっと俺なんかよりもずっと豊富な知識を持っているだろう。

「俺もそんなに詳しくないですよ。まぁ、姉ちゃんや母さんの影響で多少は知ってますけど」
「その多少がどの程度は知らないが、それでも十分だと思うぞ」
「ずいぶんと騒がしいなぁ。客かぁ」

 俺たちが話をしていると騒がしいと言っておくからだれがどう見てものドワーフがのっそりと出てきた。

「えっ!」
「あっ!」
「ど、ドワーフ!」

 いかにもドワーフの登場に沸く麗香たち、その気持ちは俺にもよくわかる。俺だって初めてドワーフを見た時は内心興奮したものだ。

「おうなんだなんだ。そんなにドワーフが珍しいのか?」
「あんた。この人たちは昨日来たって言う勇者たちよ。陛下がおっしゃっていたでしょ、勇者は別の世界から来たって」
「そこの世界にはドワーフはいないからな。まぁ、想像上はあるんだが、あくまで物語での話だ」

 ドワーフを最初に想像したのは誰かはわからないが、北欧神話に出てくる妖精だが、その後トールキンによって俺たちが想像するドワーフそのものになった。それからいくつかの作家がその存在を作品に登場させ、現代ではゲームを始めアニメ、小説などに登場され、日本人の大半がドワーフといえばトールキンのドワーフというイメージとなった。俺もまさか、その想像通りの存在が異世界であるこの世界にいるとは思わなかった。

「へぇ、そんなもんか。それより陛下、以前に聞いたあれいいな。切れ味がすげぇぞ」

 エルモの旦那である男性ドワーフのグリモラはすぐに麗香たちへの関心を捨てて、いつだったか話した刀の製法について話し始めた。

「おうそうか。あっそうだ孝輔」
「はい?」
「武器はどうする? その剣使いづらいだろ」
「えっと、そうですね確かにあの剣って使いづらいですけど、よくわかりましたね。聖騎士の人たちにも気が付かれなかったんですけど」
「別に俺が気が付いたわけじゃないさ。実際に戦ったシュンナとダンクスからな。それに孝輔って剣道やっているんだろ。それなら西洋剣のようなものは使いづらいと思ってな。俺だってただ剣術スキルを持っているってだけでこの世界の剣は使いづらいと感じたからな。というわけでどうだ。このドワーフ、名をグリモラというんだが、以前刀の製法を教えたから打てるぞ。尤もいらないってのならいいが」
「いえ、確かにもう俺が戦う必要はないかもしれないとは思いますけど、何があるかわからないし一応剣は持っておいた方がいいと思いますし、それなら使いづらいものより扱いなれた物の方がいい気がしますし、お願いしても」
「おう、ということだグリモラ刀を一振り頼む」
「いいぜ。それなら話を詰めるからこっち来な。ついでに防具も買っていけ」
「は、はい」

 ということで孝輔はグリモラに連れられて店の奥へと向かっていった。その一方で麗香と那奈、ポリーはエルモとともに服の話が盛り上がりしばらく終わりそうにない。どうやら俺は一人放置状態となったみたいだ。仕方ない、のんびりと待つとするか。
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