おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第09章 勇者召喚

15 事情説明と謝罪

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 勇者として異世界に召喚された孝輔と聖女の那奈、それに巻き込まれた麗香が今ついにそれぞれの両親と再会を果たした。

 親子の再会に水を差すわけにもいかず、少し離れた場所で気配を消していると、ふと麗香たちが俺を見て指さしている。どうやら、家族に俺のことを話しているようだ。それなら、ここは行くべきだろう、というわけでゆっくりと重い足取りで歩き出す。

「あっ、スニルさん、今スニルさんの話をしてて」
「そうみたいだな。えっと、初めまして俺の名はスニルバルド・ゾーリン・テレスフィリアと申します。このようななりではありますが、一応元は日本人、とはいえその際の名は転生時に消してもらっているので名乗ることはできませんが」
「えっ! て、転生? なにを……」

 俺の言葉を聞いた麗香たちの両親はかなり困惑した表情をしていた。そりゃぁいきなり転生とか言われても訳が分からないよな。

「信じられないのも無理はありません。いくら日本にこうした物語があふれているといっても現実に怒り得るわけがない。俺自身そちらの立場であったならば同じように困惑したことでしょう。しかし、残念ながらこれは事実、異世界というものは存在し、俺は日本からその異世界へ転生しましたから、そして、これは皆さんが尤も聞きたいことかと思いますが、お子さんたちに起きたことですが、お聞きに?」

 もしかしたら俺が言う前にすでに聞いているかもしれないので、一応確認しておく。

「い、いえ」

 異世界のことを聞いていないからそうだろうとは思っていたが、まだのようなので説明することにした。

「では、まず孝輔君ですが、彼は勇者として召喚されました。そして、続いて那奈さんは聖女として召喚、麗香さんに関しては、それに巻き込まれたという形です」
「勇者に聖女、なんというかまたテンプレな。しかし、これは誘拐ではないのか?」

 麗香と孝輔の父親がそういって怒りをあらわにしている。

「ええ、確かにその通り勇者召喚、聖女召喚といっていますが、これは間違いなく拉致」

 俺が言った拉致という言葉に家族全員から怒りが噴き出す。

「ふざけるな。開き直ってるんじゃない!」
「そうよ! ふざけないで頂戴!」

 俺は人の親になったことがないのでわからないが、何となく言いたいことはわかるので黙って怒りを受け止める。

「待って、お母さんスニルさんは違うの」
「そうよ。お父さん落ち着いて、スニルさんが私たちを召喚したわけじゃないんだよ」

 那奈と麗香がそろって俺を擁護してくれる。孝輔も頷きながらそれを援護しているようだ。

「どういうことだ?」
「私たちを召喚したのは教会で、スニルさんは魔王なの」
「つまり、私たちはスニルさんを討伐するために呼ばれたのよ」
「はっ?」

 那奈と麗香の言葉に今度はそろって間の抜けた顔をさらすことになった親たち。

「言い忘れていましたね。俺の現在の立場は魔王、テレスフィリア魔王国という国で魔王をさせてもらってますお子さんたちはそんな俺を討伐するため、キリエルタ教という宗教によって召喚されたのです。とはいえ、そもそも俺がうかつにも魔王を名乗ったことが今回の召喚が行われた原因です。その一端を担うものとしてまずは謝罪を、申し訳ありませんでした」

 俺はそういって頭を深々と下げた。事実として原因の一端だからな。

「それから、今回の召喚ですか、実は本来であれば日本人が召喚されることはなかったのです」
「そ、それはどういう?」
「本来であれば、異世界の神様が管理する数多の世界から選ばれるはずでした。ですが、それ以前に俺が日本から異世界に転生していたことで、両世界においてパスができていました。どうやらそれにより日本が選択範囲に含まれてしまったようです。このあたりは、地球と異世界の両神様の思わぬことであったということです」
「神様、神様がほんとに居るのか?」
「いますよ。とはいえ、両神様ともに、地上に干渉しないという決めごとをしており、人間のもとに姿を現すことはできないとのことですが、この場にはいますよ」
「ちょっと待って頂戴、君の言葉を聞いていると、君は神様と話をしているように見えるのだけれど、どういうこと? 君は一体?」

 神様の話をしているときに那奈の母親と思われる人物が、尤もな指摘をしてきた。

「先ほども言ったように元日本人の転生者ですよ。ただ、俺の場合ですから転生時にすでに神様に干渉されているので話ができるというわけです。尤も、本来であれば転生後放置されるはずだったんですけどね」

 転生の際に神様からもこれからは放置するから頑張れてきなことを言われたはずなんだが、想定外のことが起きすぎて、何度も会う事態となった。

「そんなことより問題は子供たちだ。どうやって連れ帰ればいい」

 麗香と孝輔の父親がそういって詰め寄ってきた。

「申し訳ないが、それは無理です」
「なにっ?」
「これについてはお子さんたちにもすでに話していることですが、世界を渡るということはそう簡単なことではありません」

 というわけで親たちへ世界を渡る際の説明をしていったのであった。

「……つまり、今この子たちの魂は2割しか残ていないということ」
「ええ、その通りです。ですがご安心を、魂というものは意外と丈夫でたとえカスしか残っていなくとも、人間が生きる上では全く問題ないそうです」

 神様によると、人間がどんな生き方をしたところで、魂を消耗するということはありえない。それこそ、世界を渡るというような無茶をしない限りは。

「神様がいるのなら何とかできないのか?」

 強めに抗議する那奈の父親。

「そうですね。確かに神様でしたら3割消費に抑えることは可能です。実際俺はその3割消費で異世界へ渡りましたから、ですが」
「この子たちは2割しか残っていないと」
「はい、この状態でさらに3割も消費してしまえば、今度は消滅してしまいます。神様としてもそれだけは避けたいとのことです」
「しょ、消滅!!」
「ど、どういうことだ!!!」

 消滅という言葉に顔を真っ青にしている親たち。

「魂の消費が10割、すべて消費するということは魂が消滅するということ、それは存在の消滅を意味します。つまり、この3人はそもそもということになります」

 俺の言葉を聞いた親たちは真っ青を通り越して、血の気を完全に失っている。

「ですから、お子さんたちを帰すというわけにはいかないのです。ですが、さすがにそれはあんまり、ということで今回の邂逅です。この邂逅は神々からの償いという特例として、一晩一回の限定で行われています」
「えっ?」
「とはいえ、一晩、約7時間と考えた場合、親子の最後としては短い、そこで時間を3倍に引き伸ばして、合計21時間、最後の時をお過ごしください。とのことです」

 俺はそういって頭を下げると、同時に隣で神様も頭を下げている。

「スニルさん、えっと神様、ありがとうございます」

 麗香の言葉を聞いた俺は、指をぱちりと鳴らす、すると俺たちから少し離れた場所に2つ巨大なものが出現した。

「あれは水をやわらかい物理結界で囲ったもので、どんな攻撃を受けたとしてもびくともしない。ソファ代わりに使ってください」

 最後の時を何もない真っ白空間で立って過ごすには味気ないので、魔法でソファを出してみた。実はこれ、ビーズクッションみたいな感触になっているから、たまに出してくつろいでいるんだよな。

「はい、お母さんお父さんいこ、孝輔もいくよ。それじゃ、那奈ちゃん、あとでね」
「はい」

 こうして俺の事情説明を何とか終わり、それぞれ家族がそろって結界のソファに向かっていったのであった。

「お疲れ、悪かったな」

 家族を見送っていると隣にいた神様がねぎらいの言葉をかけてくれる。

「ははっ、確かに疲れましたね。普段使わない言葉遣いをしましたし、たぶん間違いだらけの言葉だったと思いますけど」

 丁寧な言葉なんてものは、普段全く使わない。というか前世でも使った記憶がないからほとんど何となくだったから、おそらく変な言葉になっていた部分も多々あっただろう。それでも、謝罪と事情説明だからなちゃんとしないといけないだろう。本来こういう柄じゃないんだけどな。さてと、とにかく何とか終えたので、ほっとしつつ俺も自分用のソファを出してそこに倒れこむ。



 それからどれだけ時間がたっただろうか、とんでもなく暇だ。あれからひと眠りしたのにまだ時間があるんだよな。そう思いつつ何となく少し離れた場所にいる2組の親子の様子を眺めてみると、どうやら楽し気に会話をしているようで、その際にスマホが活躍しているみたいだ。ここは神様の空間だけあって、思ったものが具現化するからここにも彼らのスマホを持ち込める。まぁ、これは最初のころに麗香の願いを聞き留めた神様が俺を通して教えたことなんだけどね。それで、そのスマホで何を見ているのかというと、様子からしておそらくアベイルの街並みやサーナを見せているように思う。

「あいつら、かなり撮りまくってたからなぁ」

 転移で来た彼らは当然その時の持ち物も一緒に来ている。その中にはスマホもあり、魔王討伐にも持ってきていた。どうもその際に事あるごとにカメラで撮っていたみたいだ。さすがは現代っ子、どんなときにもスマホで撮影だ。まぁ、残念ながらネットにつながっていないから上げることはできないだろうが。そして、サーナと出会った麗香と那奈はというと、それはもうおかしくなるぐらいに激写しまくっていた。俺としてはものすごくうらやましい、俺は転生だからスマホを持ってきていないし、カメラなんてものもないから、サーナを撮ることができないからな。ちなみに、2人の様子を見ていたシュンナと母さんたちもまたカメラの存在に驚愕しつつも俺がその存在を知っていることに気が付き、なぜ教えてくれなかったのか、またなんで作っていないのかとものすごく怒られた。いや、俺だって作ろうとはしたけど、どうやって作ればいいのかわからなかったんだよな。

 とまぁ、そんなことを思いながら眺めていると、不意になぜかそろってこっちに向かってきた。

「スニルさん、いいですか?」

 なんだろうかと思っていると麗香が代表してそう言ってきた。

「なんだ?」
「えっと、両親がスニルさんと話がしたいと言ってまして」
「話?」
「スニルバルドさん、先ほどは大変失礼いたしました。娘たちから聞きましたが、スニルバルドさんは日本では私たちよりも年上でいらっしゃったと、また、この子たちのことをいろいろと気を使っていただいたと、申し訳ありません」

 麗香の母親がそういって代表して言って頭を下げると、ほかの親たちも一斉に頭を下げてきた。

「……いえ、お気になさらずに、そもそもの原因は俺ですから、神様の遊び半分に同じく遊び半分で乗ったわけですからね」

 これは紛れもない事実だからな。

「それで、話というのは?」

 まさかただ謝りに来たわけではあるまい。

「はい、この子たちがもう日本には帰れない。それはしぶしぶではありますが、理解しました。ですが、やはりこの子たちがこれからどのようなところで過ごすことになるのか、それを知りたいのです」
「この子たちもまだあまりよく知らないようですので、ぜひ聞かせてはもらえませんか?」

 なるほど、確かにこれから子供が過ごす場所がどういうところなのか気にならない親は無し、か。

「わかりました。確かに3人も異世界にきて2か月、知っていることも教会が教えたものだけでしょう、教会の教えは間違いだらけですから」

 俺の言葉に3人も頷いているので、まず世界のことを話すことにした。

「俺たちが今いる世界は、いわゆる魔法と剣のファンタジー、スキルというものもあるし魔物も盗賊もいる。それを討伐する仕事として冒険者だっている。そんな世界です。人種として、俺がそうですが、地球人と同じ姿をした人族、獣の特徴を持つ獣人族、それから定番であるエルフとドワーフがいます。そして魔族、魔族と聞くと悪魔的な、人類の敵というイメージが強いと思いますが、ここではただ魔法に長けた人間の一種です。ただ、今から1万年ほど前、俺にとっては先代の魔王が世界を手に入れようと画策したことで、現代では邪神の眷属という扱いとなっています」

 先代魔王が行ったことはそこまでおかしなことではない。日本だってかつて戦国時代、多くの武将がそれを求めて戦いに明け暮れた。そんな話をしたところ皆が納得してくれた。

「それから、宗教ですが、これはキリエルタ教というものがあり、人族の大半がこれを信仰しており、俺が教会と言っているものがこれです」
「つまり、この子たちを召喚した者たちということか」
「そうです。とはいえ、実はこの宗教、信じられないかもしれませんが、人族相手の場合のみ善良な宗教なんですよ。よくまみれて金を無心するわけでもなく、立場を利用して信者に無体なことをするわけでもないんですよ」
「……」

 俺の言葉を聞いて言葉を失っている。宗教といえば悪いイメージを持つのが俺たち日本人だからな。いやまぁ、日本だってまともな宗教は当然あるが、妙な宗教が目立って仕方ない。

「尤も、それが他種族となると別ですが……」

 ここでキリエルタ教の教えとしての他種族の扱いを説明していく。その中にはもちろん奴隷として、ハンターたちが行っていたことなども話した。もちろんこの場には那奈の弟もいるために一応名いっぱいぼかしながらだけどな。

「それはまた、ずいぶんとひどいな」
「ええ、同じ人間なのでしょう」
「そうです。ですが、彼らはその真実を知らないんですよ。本気でそう思っているんです。だからこそ、どんな非道なことだってできる。ということです」

 ここに人間の業の深さというものがある気がする。

「そして、3人がこれから過ごすであろう俺の国、テレスフィリア魔王国ですが、国民の構成は魔族、獣人族、エルフ、ドワーフの人族以外で人族は俺と身内数人となります。政治形態は日本と同じ立憲君主制、ただし、日本と違いとして俺もまた政治に参加しているということでしょうか、俺が政治の方針を決め、それをもとに議会で話し合ってもらう、もちろん俺もその議会には参加しています。そして、もしそこで俺の意見、方針に異見があるのであれば遠慮なく言ってもらう、それは国民とて同じ、1国民が王に文句を言うなんて通常なら打ち首獄門、でもテレスフィリアではそんなことしません。法でも禁止しています」
「ほぉ、それはよさそうですね」
「ええ、だいぶ戸惑われましたけどね。でもそうすることで王も議会議長も独裁はできなくなります」
「確かに」
「3人だって、今後議会に参加して何か意見を言ってくれてもいいぞ。というかそうしてくれると助かる面もあるんだよな。俺も大学は出てるけど、何となく出ただけだから政治のことなんてさっぱりだし、というか俺公民って嫌いだったし学校で学んだことなんてほとんど忘れてるからな」

 それからも俺はテレスフィリアについてあれこれと話して聞かせたのであった。


 そうして、さらに時間がたち今現在は再びそれぞれの家族に分かれて最後の話をしていることだろう。

「スニル、そろそろ時間だ」
「そうですか。わかりました。おーい、そろそろ時間だ!」
「えっ、はーい」

 俺の言葉に麗香が返事をし、家族に最後の別れの言葉を交わし、最後の抱擁を交わしている。

「スニルさん、この子たちのことよろしくお願いします」

 麗香と孝輔の母親が代表してそう言って、親たち皆が頭を下げた。

「任せてください、前世の俺ならともかく、今の俺は魔王、一国の王ですから3人の今後について全力でサポートします」
「ありがとうございます」
「いえ、尤も向こうにはあなたのようなモデルの仕事も芸人の仕事もありませんがね。いや、なければ作ればいいだけですが」
「えっ?!」

 俺の言葉に驚く麗香と孝輔の両親、なぜ俺がここでそんなこと言ったのかというと、単純に俺がこの2夫婦のことを知っていたからでしかない。麗香の母親ってモデルで前世の時幾度となくテレビで見ていたからな。ちなみに父親の方は芸人みたいなんだが、俺は知らない。母親の方が芸人と結婚したという事実を知っているだけだ。

 とにかくそんな驚く2人をよそに俺たちは異世界に戻ったのだった。
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