旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜

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12話 謁見です

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私とメイリスは、謁見の準備ができるまで客室で待機をしていた。


「ところでメイリスは、冒険者登録する時、貴方の職業は何になりますの?」

「さぁ?私も初めて登録するので何になるのかまでは流石にわかりません」

ナリス国もハルエット国も共通で、冒険者登録をする時に、魔力の量を測った後、冒険者カードに記録されるまでは、自分がなんの職業になるのかわからないものだ。

多分私は魔術師とかその辺になるんだと思いますが...メイリスは何になるんでしょう?と思い聞いてみたものの、メイリスもまだわかりませんのね。

そんなことを思っていると

「お嬢様の職業は、聖女、とかなりそうですね」

と言われた。

「何を言ってますの?聖女なんて、私ごときがなれる訳ありませんわ」

聖女とは清らかな心と魔力の量...他にも色々あるが、最低限それは必ずなければならない。そして、そんなに簡単になれるようなものでは無い。

国の中で1人居たら良い方、それは勇者も同様だった。

シエラは聖女なのだが、本人は全く気付いてない為、ありえない、と連呼している。


そんな話をしていると、扉がノックされた。
開けてみるとフォストが立っていた。

「謁見の準備が整ったけど、大丈夫かな?」

「えぇ、こっちは大して準備がありませんもの。大丈夫ですわ」

私はそう言ってメイリスにも確認をとると、何も言わず頷いた。

大丈夫...とは言いましたが、ハルエット国の陛下に会うのは初めてですし流石に緊張しますわ。噂では気さくな方だと伺ってはいますが、どういう方でしょう?


フォストは私が考えてることを察したかのように

「父上は、礼儀や作法にうるさくないし、そんなに緊張しなくて大丈夫だからね」

といって笑った。

そう話をしていると、いつの間にか謁見の間の扉の前に到着していた。

「父上、フォストです。お二人を連れてきました」

ノックをしてからそう告げると、

「えっ!早くない!?髪の毛だけ整えてるから後、5秒!!」

と中から声が聞こえた。

そんなことも露知らず、フォストは扉を開けた。

「父上......さっき準備できたと言ったじゃないですか...」

とフォストが呆れた声で言うと

「ふははは!さっきまでは調子が良かったんだけどな、頭を掻いたら崩れてしまった!」

と豪快な笑い声が響いた。

「全く...毎回髪の毛を整えてくれてる人達が可哀想ですよ」

私は、チラッと横に居る従者を見ると苦笑していながらも楽しそうだった。

少し羨ましいな、と思いながら2人のやり取りを眺めていると、フォストは思い出したかのように

「そうだ!父上、報告した2人を連れてきたんですよ!」

と言った。

「おぉ!そうだった!そこに居る綺麗な女性か?」

陛下がこっちに視線を向けた。

「急な訪問で申し訳ございません。ナリス国から参りました。シエラ・ハーヴェストと申します」

私は、軽く自己紹介をした後、カーテシーをとった。

「従者のメイリスです」

とメイリスもそれに続いてお辞儀をした。

陛下はすぐに楽にしろ、と言うと

「そなたらが息子達を助けてくれたのは聞いている。本当にありがとう」

顔を上げた私たちに頭を下げた。

「そんなっ!お顔を上げてください!陛下が私達ごときに頭を下げることなど......っ」

私は咄嗟に陛下を止めようと思ったが

「いや、2人が居なかったら俺はここには居なかったかもしれない。俺からも改めて礼を言う。ありがとう」

とフォストにも頭を下げられてしまった。


「お二人共、やめてくださいっ。王族が私達ごときにそう簡単に頭を下げてはいけませんわ。」

......それと、私の心臓に悪いのでやめてください。
と言いたくなったのを堪えた。

顔を上げると、陛下は

「驚かせてすまないな。だが、王族だろうと助けられた相手に礼を言わないのは、なんか落ち着かないからな」

といって苦笑した。

それに対して私は

「フォスト殿下にはここまで護衛をしてもらいましたもの。お相子ですわ」

そう言って微笑むと陛下は驚いた顔をした後に豪快に笑った。




「して、シエラ嬢とメイリス。そなたらは、これからどうするのだ?」

と陛下に聞かれた。

「私達はこれから冒険者登録をして、どこかの宿をとるつもりですわ」

私がそう言うと、陛下は「ふむ......」と少し考えてから

「ここに定住するつもりはあるのか?」

と聞いてきた。

定住ですか...この国で、ならそれも良いですわね。

なんてことも考えるが、今回のはあくまで傷心旅行みたいなものだ。家のほとぼりが冷めて、一頻り楽しんだら一旦、ナリス国に戻らなければならない。

なので定住までは考えてないことを告げると陛下は

「なら、王宮に客人としてもてなしたいと思っているのだが、どうだろうか?判断はシエラ嬢に任せるが」

と言ってくれた。


「あ、もちろん、冒険者の活動はしても良いからね。元々はそのつもりだったんだし。ね、父上」

そうフォストが言うと陛下はもちろんだ、と頷いた。

冒険者にもなれて、王宮で泊まることができる...こんなにありがたいことはない気がする。

そう思った私はメイリスの方を見ると、任せますよ、と言って微笑んだ。



「......では、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?」

と私が言うと

「もちろん!」

フォストが、ありがとう!、と満面の笑みを浮かべた。
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