105 / 177
第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第103話・ゆっくりでいいから
しおりを挟む
「……だから、みんなの気持ちを、ちゃんと受け止めたい」
その一言に、場の空気がわずかに揺れた。
驚きと戸惑い、そして確かな喜びが、男たちの瞳に浮かぶ。
ユリウスが静かに問いかける。
「……本当に、いいんだね?」
ルナフィエラはゆっくりと頷いた。
「うん……でも、いきなりは怖いから…だから……ゆっくり、で」
「わかった。今日は最後までしない。
……ルナは、ただ感じるだけでいい」
ユリウスはそう言って、そっとルナフィエラの頬に触れ、額に軽く口づけた。
指先で髪をすくい上げ、耳元や首筋にやわらかなキスを落としていく。
その間、ヴィクトルの手がゆっくりと膝へ触れ、布越しに温もりを伝えてきた。
驚きにわずかに身をこわばらせた彼女に、彼は静かな声で囁く。
「……大丈夫です。嫌ならすぐにやめますので」
その誠実な響きに、緊張は少しずつ解けていった。
やさしい手つきが、布越しに何度も輪を描き、やがて直接触れられる。
温もりと心地よい刺激がじわじわと広がっていき、息が細くなる。
上から落ちてくるユリウスの口づけと、優しい手つき。
二方向から与えられる熱に、思考が追いつかなくなっていく。
「……っ……あ……」
胸の奥から熱がせり上がり、全身を支配する。
呼吸は浅くなり、視界がかすみ、そして──ふっと、何かがほどけた。
力が抜け、ベッドの上に身を預ける。
心も身体も、ふわりと軽くなっていた。
「……初めてだから、戸惑うのは当然だね」
ユリウスの低い声が耳元に落ちる。
ルナフィエラは瞬きをして、潤んだ瞳で彼を見上げた。
何が正解なのかも、どう振る舞えばいいのかもわからない。
ただ、胸の奥が温かく満たされている──それだけは、確かだった。
ヴィクトルが隣に膝をつき、そっと背を撫でる。
「……よく、頑張りましたね。初めてでしたが、ちゃんと受け入れてくださいました」
低く柔らかな声が、耳にやさしく響く。
反対側ではフィンが彼女の手をそっと握り込む。
「すごかったよ、ルナ。……偉いね」
明るさを少し抑えた声音が、胸に沁みた。
シグは何も言わず、ただ静かに頷く。
その眼差しだけで、充分に気持ちは伝わってくる。
最後に、ユリウスが身を屈め、額へ軽く唇を落とした。
「ルナ、上手にできていたよ」
短いひと言と温かな感触が、胸の奥まで広がっていく。
4人の気配に囲まれ、ルナフィエラは小さく息を吐いた。
胸の高鳴りはまだ収まらないけれど、不思議な安らぎが全身を包んでいた。
「……では、今日はユリウスの番ですね。あとはお願いします」
ヴィクトルがそう言って立ち上がり、フィンとシグもそれに続く。
「また明日ね、ルナ」
フィンが笑みを残し、シグは無言のままドアを閉めた。
静寂が訪れる。
残されたユリウスがルナフィエラの視線を受け止め、穏やかに問いかけた。
「……少し、欲しいんじゃないかな?」
彼女は瞬きをして首を傾げ、それからおずおずと頷く。
「……うん。でも、いいの?」
「もちろん。拒む理由などないよ」
淡く微笑むと、ユリウスは首元をさらけ出すよ
うに襟を緩めた。
促されるまま、ルナフィエラはそっと顔を寄せ、白い肌に唇を押し当てる。
「……いただきます」
ちくりと牙を立てると、温かく豊かな力が舌先に広がっていった。
(……あったかい……)
ゆっくりと血をもらっている間、ユリウスの手がルナフィエラの髪を撫でる。
「ルナに血をあげられることは、僕にとっても嬉しいことだよ」
低く囁く声に、ルナフィエラは頬を染めた。
やがて牙を離し、舌で小さく傷跡をなぞる。
「……ありがとう。なんだか、落ち着く」
「それは何よりだね。……ただ、もうひとつ」
言葉を終えるより早く、ユリウスは彼女の顎をそっと持ち上げ、唇を重ねてきた。
最初は短く、次いで深く――吸血の余韻と熱を確かめ合うように。
吐息が混ざり、胸の奥が甘く締めつけられる。
唇を離すと、ユリウスは小さく笑みを浮かべた。
「……お疲れさま、ルナ。今夜は、このまま眠ろう」
そう言って毛布を整え、ルナフィエラを腕の中へと引き寄せる。
「……うん」
耳元に響く心音と温もりに包まれながら、ルナフィエラは静かにまぶたを閉じた。
その一言に、場の空気がわずかに揺れた。
驚きと戸惑い、そして確かな喜びが、男たちの瞳に浮かぶ。
ユリウスが静かに問いかける。
「……本当に、いいんだね?」
ルナフィエラはゆっくりと頷いた。
「うん……でも、いきなりは怖いから…だから……ゆっくり、で」
「わかった。今日は最後までしない。
……ルナは、ただ感じるだけでいい」
ユリウスはそう言って、そっとルナフィエラの頬に触れ、額に軽く口づけた。
指先で髪をすくい上げ、耳元や首筋にやわらかなキスを落としていく。
その間、ヴィクトルの手がゆっくりと膝へ触れ、布越しに温もりを伝えてきた。
驚きにわずかに身をこわばらせた彼女に、彼は静かな声で囁く。
「……大丈夫です。嫌ならすぐにやめますので」
その誠実な響きに、緊張は少しずつ解けていった。
やさしい手つきが、布越しに何度も輪を描き、やがて直接触れられる。
温もりと心地よい刺激がじわじわと広がっていき、息が細くなる。
上から落ちてくるユリウスの口づけと、優しい手つき。
二方向から与えられる熱に、思考が追いつかなくなっていく。
「……っ……あ……」
胸の奥から熱がせり上がり、全身を支配する。
呼吸は浅くなり、視界がかすみ、そして──ふっと、何かがほどけた。
力が抜け、ベッドの上に身を預ける。
心も身体も、ふわりと軽くなっていた。
「……初めてだから、戸惑うのは当然だね」
ユリウスの低い声が耳元に落ちる。
ルナフィエラは瞬きをして、潤んだ瞳で彼を見上げた。
何が正解なのかも、どう振る舞えばいいのかもわからない。
ただ、胸の奥が温かく満たされている──それだけは、確かだった。
ヴィクトルが隣に膝をつき、そっと背を撫でる。
「……よく、頑張りましたね。初めてでしたが、ちゃんと受け入れてくださいました」
低く柔らかな声が、耳にやさしく響く。
反対側ではフィンが彼女の手をそっと握り込む。
「すごかったよ、ルナ。……偉いね」
明るさを少し抑えた声音が、胸に沁みた。
シグは何も言わず、ただ静かに頷く。
その眼差しだけで、充分に気持ちは伝わってくる。
最後に、ユリウスが身を屈め、額へ軽く唇を落とした。
「ルナ、上手にできていたよ」
短いひと言と温かな感触が、胸の奥まで広がっていく。
4人の気配に囲まれ、ルナフィエラは小さく息を吐いた。
胸の高鳴りはまだ収まらないけれど、不思議な安らぎが全身を包んでいた。
「……では、今日はユリウスの番ですね。あとはお願いします」
ヴィクトルがそう言って立ち上がり、フィンとシグもそれに続く。
「また明日ね、ルナ」
フィンが笑みを残し、シグは無言のままドアを閉めた。
静寂が訪れる。
残されたユリウスがルナフィエラの視線を受け止め、穏やかに問いかけた。
「……少し、欲しいんじゃないかな?」
彼女は瞬きをして首を傾げ、それからおずおずと頷く。
「……うん。でも、いいの?」
「もちろん。拒む理由などないよ」
淡く微笑むと、ユリウスは首元をさらけ出すよ
うに襟を緩めた。
促されるまま、ルナフィエラはそっと顔を寄せ、白い肌に唇を押し当てる。
「……いただきます」
ちくりと牙を立てると、温かく豊かな力が舌先に広がっていった。
(……あったかい……)
ゆっくりと血をもらっている間、ユリウスの手がルナフィエラの髪を撫でる。
「ルナに血をあげられることは、僕にとっても嬉しいことだよ」
低く囁く声に、ルナフィエラは頬を染めた。
やがて牙を離し、舌で小さく傷跡をなぞる。
「……ありがとう。なんだか、落ち着く」
「それは何よりだね。……ただ、もうひとつ」
言葉を終えるより早く、ユリウスは彼女の顎をそっと持ち上げ、唇を重ねてきた。
最初は短く、次いで深く――吸血の余韻と熱を確かめ合うように。
吐息が混ざり、胸の奥が甘く締めつけられる。
唇を離すと、ユリウスは小さく笑みを浮かべた。
「……お疲れさま、ルナ。今夜は、このまま眠ろう」
そう言って毛布を整え、ルナフィエラを腕の中へと引き寄せる。
「……うん」
耳元に響く心音と温もりに包まれながら、ルナフィエラは静かにまぶたを閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果
下菊みこと
恋愛
身体は大人、頭脳は子供になっちゃった元悪役令嬢のお話の長編版です。
一話は短編そのまんまです。二話目から新しいお話が始まります。
純粋無垢な主人公テレーズが、年上の旦那様ボーモンと無自覚にイチャイチャしたり様々な問題を解決して活躍したりするお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
【受賞&書籍化】先視の王女の謀(さきみのおうじょのはかりごと)
神宮寺 あおい
恋愛
謎解き×恋愛
女神の愛し子は神託の謎を解き明かす。
月の女神に愛された国、フォルトゥーナの第二王女ディアナ。
ある日ディアナは女神の神託により隣国のウィクトル帝国皇帝イーサンの元へ嫁ぐことになった。
そして閉鎖的と言われるくらい国外との交流のないフォルトゥーナからウィクトル帝国へ行ってみれば、イーサンは男爵令嬢のフィリアを溺愛している。
さらにディアナは仮初の皇后であり、いずれ離縁してフィリアを皇后にすると言い出す始末。
味方の少ない中ディアナは女神の神託にそって行動を起こすが、それにより事態は思わぬ方向に転がっていく。
誰が敵で誰が味方なのか。
そして白日の下に晒された事実を前に、ディアナの取った行動はーー。
カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門 特別賞受賞。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
銀狼の花嫁~動物の言葉がわかる獣医ですが、追放先の森で銀狼さんを介抱したら森の聖女と呼ばれるようになりました~
川上とむ
恋愛
森に囲まれた村で獣医として働くコルネリアは動物の言葉がわかる一方、その能力を気味悪がられていた。
そんなある日、コルネリアは村の習わしによって森の主である銀狼の花嫁に選ばれてしまう。
それは村からの追放を意味しており、彼女は絶望する。
村に助けてくれる者はおらず、銀狼の元へと送り込まれてしまう。
ところが出会った銀狼は怪我をしており、それを見たコルネリアは彼の傷の手当をする。
すると銀狼は彼女に一目惚れしたらしく、その場で結婚を申し込んでくる。
村に戻ることもできないコルネリアはそれを承諾。晴れて本当の銀狼の花嫁となる。
そのまま森で暮らすことになった彼女だが、動物と会話ができるという能力を活かし、第二の人生を謳歌していく。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる