純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝

第104話・温もりに守られて

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翌朝。
古城の窓から差し込む淡い光に、ルナフィエラはゆっくりと目を開ける。

昨夜のことが鮮やかに思い出され、胸の奥がじんわりと熱くなる。
頬が自然と赤く染まり、視線を枕に落とした。

「……おはよう、ルナ」

低く穏やかな声が耳に届く。
隣では、ユリウスがもう目を覚ましていて、やわらかな微笑を浮かべていた。

「ユリウス、おはよう……」

少し照れくささを抱えながら返事をすると、ユリウスは目元を緩めて微笑む。

「顔色も悪くない。……朝食に行こう」

差し出された手を取ると、そのまま自然に並んで部屋を出た。

廊下を歩く間も、ユリウスは歩調を合わせ、時折視線を向けてくる。
その穏やかな気配に、昨夜の余韻が再び胸を温めた。


食堂に入ると、すでにヴィクトル、シグ、フィンが席についていた。

いつも通りの穏やかな朝――その視線に、昨夜のことを責める色はひとつもない。

むしろ、柔らかな笑みや、静かな頷きが迎えてくれる。
それだけで胸の奥の不安がほどけ、ルナフィエラは小さく笑みを返した。

朝食を終えると、森へ散歩に出ることに。
朝の森はひんやりとした空気に包まれ、木漏れ日が揺れ、土や落ち葉の匂いが心をほぐしていく。

「調子はどうだ?」

先を歩くシグが振り返る。

「うん、大丈夫。……森、やっぱり落ち着く」

ルナフィエラは自然と笑みがこぼれた。


散歩のあとは、しばらく中断していた魔力の制御訓練が再開された。

ヴィクトルが静かな声で指示を出し、ユリウスが魔力の流れを整える補助をしてくれる。
フィンは傍で励ますように声をかけ、ときどき治癒魔法をかけてくれる。
シグは少し離れたところで見守ってくれていた。

集中と休憩を繰り返しながら、森の風と仲間たちの声に包まれた時間が過ぎていく。


その夜、ルナフィエラの寝室には全員が集まっていた。
カーテン越しの月明かりが、淡く4人と1人を照らしている。

ベッドの上、ルナフィエラは少し緊張した面持ちでシーツを握っていた。
昨夜よりも慣れたはずなのに、胸の奥に戸惑いが残る。

「大丈夫だ。俺が支える」

低く落ち着いた声とともに、シグが背後から彼女の上半身を抱きとめる。

大きな手が背筋や肩を撫で、額や頬に触れる唇は温かく、安堵が胸に広がっていった。

足元では、フィンが膝をついてルナフィエラの脚を優しく開かせる。

「怖がらなくていいよ。…ほら、もう力抜いて」

優しい声をかけながらルナフィエラの手を取り、その緊張をゆっくりと解いていく。
穏やかなやりとりが続くうちに、胸の奥が熱を帯び、喉から小さな息がこぼれた。

「…ふふ、いい反応」

ゆっくりと、深く、温もりを重ねるような動きが続くたび、体の奥までやわらかな熱が広がり、頭の中がぼんやりしていく。

その熱が一気に高まった瞬間、ルナフィエラはその感覚に戸惑い、反射的に身を引こうとした。

「…っ、や…っ」

だが、背後のシグが強く抱きとめる。

「逃げるな。…大丈夫だ、俺たちがいる」

低く響く声が、震える心を包み込んだ。

左右からはヴィクトルとユリウスがそれぞれ彼女の手を取り、温もりを伝える。

「…ルナ様、大丈夫です」

「……ルナ、そのまま受け入れていい」

二つの声が、揺れそうになる意識を現実に引きとめる。

フィンのやさしい動きが重なっていく。
その瞬間、昨日よりも大きな波に心ごと攫われ、ゆっくりとその身を委ねていった。

やがて波が静まり、ルナフィエラは安堵と心地よさの中でまぶたを閉じる。
耳元では、フィンの嬉しそうな囁きと、シグの小さな息遣いが重なって響いていた。


温かな毛布に包まれたベッドの上。
波のような感覚が静まったあとも、ルナフィエラの心臓はまだ少しだけ早く打っていた。

「……ルナ」

耳元に届く声は、どこか名残惜しさを含んで優しい。
目を開けると、すぐ近くにフィンの笑顔があった。
その瞳は子犬のようにきらきらと輝いていて、見ているだけで胸の奥がほぐれていく。

「今日は、すごく頑張ったね」

そう囁くと、フィンはそっと彼女の髪を撫でる。
その手の動きは驚くほど柔らかく、まるで子守唄のような安心感があった。

「もう眠ってもいいよ。僕がずっと、そばにい
るから」

穏やかな声に導かれるように、ルナフィエラは小さく頷く。
体を少しだけ動かすと、自然とフィンの腕の中に収まった。

その胸に耳を当てると、静かな鼓動が伝わってくる。

「……あったかい」

思わずこぼれた呟きに、フィンは少し照れたように笑い、
「ルナが安心できるなら、ずっとこうしてる」と言って腕に力を込めた。

やがて、まぶたがゆっくりと落ちていく。
最後に感じたのは、髪に触れる優しい口づけと、包み込むような温もりだった。

それは夢の中まで続いていくようで、ルナフィエラは静かな眠りに落ちていった。
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