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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第131話・幸せを抱きしめて
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3人は、やがてルナフィエラが足を止めた店の前に辿り着いた。
橙色に染まるショーウィンドウの奥、ふわふわの毛並みに大きなリボンをつけたぬいぐるみが、変わらず愛らしい姿で並んでいる。
「……あった!」
フィンが真っ先に声を弾ませ、駆け込もうとするのをユリウスが肩を掴んで止めた。
「落ち着くんだ、フィン。こういう買い物は順序が大切だ」
「えー、でも! 早く買わないと他の人に取られちゃうかもしれないよ!」
「その心配は不要かと。あれは少々大きめで高価な品。そう簡単に売れるものではない」
ヴィクトルが冷静に告げ、扉を押し開ける。
店内に入ると、柔らかな布や小物に囲まれた空間が広がっていた。
ユリウスは真っ直ぐにカウンターへ向かい、上品な笑みを浮かべて声をかける。
「外に飾ってある、大きなリボン付きのぬいぐるみを。……あれを一つ、譲っていただけますか」
店主は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐににこやかに頷いた。
「まあ……あれをお求めとは。お嬢さんへの贈り物ですかな?」
ユリウスが答えるより早く、フィンがにやっと笑いながら叫んだ。
「そうだよ! 僕たちのお姫様にね!」
「……フィン」
ヴィクトルが小さく制止したが、店主は楽しげに笑みを浮かべ、ぬいぐるみを抱えて戻ってきた。
目の前に差し出されたそれは、昼間の印象よりもさらに柔らかそうで、抱きしめるのにぴったりな大きさだった。
「……ルナ様が、これを抱いている姿……」
ヴィクトルの声が思わず熱を帯びる。
「ふふ、絶対似合うよね!」
フィンは目を輝かせ、頬が緩みっぱなしだ。
ユリウスは二人を一瞥し、代金を迷いなく支払った。
「決まりだね。……これは、彼女への贈り物だ」
店主はぬいぐるみを手に取り、
「長旅でも汚れぬように包ませていただきますね」と言い、柔らかな布を広げた。
ぬいぐるみを大切そうに布で包み込み、その上から厚手の革袋に収める。
「これなら持ち運びも安心です。末永くお傍に置いてやってください」
差し出された袋をヴィクトルが受け取り、自然に微笑む。
「感謝いたします。きっとお喜びになるでしょう」
ユリウスも満足げに頷き、フィンはそわそわした様子で袋の中を気にしている。
「ねえ、早くルナに渡そうよ!」と弾む声をあげ、3人は足早に宿へと戻っていった。
宿に戻ったルナフィエラのもとへ、ユリウスたち3人が袋を差し出した。
「ルナ。……これを、受け取ってほしい」
首を傾げながら袋の中をのぞき込み、布をそっと開く。
そこに現れたのは、昼間、店先で目を奪われたぬいぐるみ。
リボンを首元に結んだ、ふわふわの大きな子。
「えっ……!? ど、どうして……これ……!」
瞳が大きく揺れ、ルナフィエラは言葉を失う。
言葉にはしていなかった、心の中だけの憧れ。
誰にも気づかれていないと思っていた。
それなのに――どうして。
「……ルナ様のお顔に、全部書いてありましたよ」
ヴィクトルが穏やかに微笑む。
「ぼくもわかったよ! あんなに見つめてたんだもん!」
フィンが元気よく笑えば、ユリウスは肩をすく
める。
「隠していたつもりでも、僕らの目はごまかせないさ」
驚きと嬉しさとで胸がいっぱいになり、ルナフィエラの頬に涙が伝った。
「……気づいてくれてたなんて……思わなかった……」
シグが小さく息をつき、彼女の頭に大きな手を乗せる。
「欲しいなら欲しいって、ちゃんと言え」
けれど声音は優しく、彼なりの愛情が滲んでいた。
「……うん…ありがとう……みんな……」
声を震わせながらぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
思った通りふわふわで、胸が温かく満たされていく。
ぬいぐるみを抱きしめて涙を拭ったルナフィエラに、ヴィクトルがそっと小さな布包みを差し出した。
開いてみれば、ぬいぐるみとお揃いの色合いのリボン。
「……これも一緒に、と思いまして」
ルナフィエラがきょとんと目を瞬かせると、ヴィクトルは優しく微笑んだ。
「明日はこのリボンで、ルナ様の髪を結わせていただけませんか?」
その声音はいつもと変わらず静かで礼儀正しい。
けれど瞳に宿る想いは深く、胸がじんわり温かくなるのを感じた。
「……うん。お願い」
リボンを胸に抱きしめて頷くと、ヴィクトルは安堵するように小さく息を吐いた。
その光景を見ていたフィンが「やっぱり似合うと思ったんだよ!」と元気よく声を上げ、ユリウスは「明日は楽しみだな」と囁く。
シグも静かに頷きながら、頭を大きな手でぽんと撫でてくれた。
ルナフィエラは幸せで胸がいっぱいになり、涙がまた滲んでしまうのだった。
橙色に染まるショーウィンドウの奥、ふわふわの毛並みに大きなリボンをつけたぬいぐるみが、変わらず愛らしい姿で並んでいる。
「……あった!」
フィンが真っ先に声を弾ませ、駆け込もうとするのをユリウスが肩を掴んで止めた。
「落ち着くんだ、フィン。こういう買い物は順序が大切だ」
「えー、でも! 早く買わないと他の人に取られちゃうかもしれないよ!」
「その心配は不要かと。あれは少々大きめで高価な品。そう簡単に売れるものではない」
ヴィクトルが冷静に告げ、扉を押し開ける。
店内に入ると、柔らかな布や小物に囲まれた空間が広がっていた。
ユリウスは真っ直ぐにカウンターへ向かい、上品な笑みを浮かべて声をかける。
「外に飾ってある、大きなリボン付きのぬいぐるみを。……あれを一つ、譲っていただけますか」
店主は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐににこやかに頷いた。
「まあ……あれをお求めとは。お嬢さんへの贈り物ですかな?」
ユリウスが答えるより早く、フィンがにやっと笑いながら叫んだ。
「そうだよ! 僕たちのお姫様にね!」
「……フィン」
ヴィクトルが小さく制止したが、店主は楽しげに笑みを浮かべ、ぬいぐるみを抱えて戻ってきた。
目の前に差し出されたそれは、昼間の印象よりもさらに柔らかそうで、抱きしめるのにぴったりな大きさだった。
「……ルナ様が、これを抱いている姿……」
ヴィクトルの声が思わず熱を帯びる。
「ふふ、絶対似合うよね!」
フィンは目を輝かせ、頬が緩みっぱなしだ。
ユリウスは二人を一瞥し、代金を迷いなく支払った。
「決まりだね。……これは、彼女への贈り物だ」
店主はぬいぐるみを手に取り、
「長旅でも汚れぬように包ませていただきますね」と言い、柔らかな布を広げた。
ぬいぐるみを大切そうに布で包み込み、その上から厚手の革袋に収める。
「これなら持ち運びも安心です。末永くお傍に置いてやってください」
差し出された袋をヴィクトルが受け取り、自然に微笑む。
「感謝いたします。きっとお喜びになるでしょう」
ユリウスも満足げに頷き、フィンはそわそわした様子で袋の中を気にしている。
「ねえ、早くルナに渡そうよ!」と弾む声をあげ、3人は足早に宿へと戻っていった。
宿に戻ったルナフィエラのもとへ、ユリウスたち3人が袋を差し出した。
「ルナ。……これを、受け取ってほしい」
首を傾げながら袋の中をのぞき込み、布をそっと開く。
そこに現れたのは、昼間、店先で目を奪われたぬいぐるみ。
リボンを首元に結んだ、ふわふわの大きな子。
「えっ……!? ど、どうして……これ……!」
瞳が大きく揺れ、ルナフィエラは言葉を失う。
言葉にはしていなかった、心の中だけの憧れ。
誰にも気づかれていないと思っていた。
それなのに――どうして。
「……ルナ様のお顔に、全部書いてありましたよ」
ヴィクトルが穏やかに微笑む。
「ぼくもわかったよ! あんなに見つめてたんだもん!」
フィンが元気よく笑えば、ユリウスは肩をすく
める。
「隠していたつもりでも、僕らの目はごまかせないさ」
驚きと嬉しさとで胸がいっぱいになり、ルナフィエラの頬に涙が伝った。
「……気づいてくれてたなんて……思わなかった……」
シグが小さく息をつき、彼女の頭に大きな手を乗せる。
「欲しいなら欲しいって、ちゃんと言え」
けれど声音は優しく、彼なりの愛情が滲んでいた。
「……うん…ありがとう……みんな……」
声を震わせながらぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
思った通りふわふわで、胸が温かく満たされていく。
ぬいぐるみを抱きしめて涙を拭ったルナフィエラに、ヴィクトルがそっと小さな布包みを差し出した。
開いてみれば、ぬいぐるみとお揃いの色合いのリボン。
「……これも一緒に、と思いまして」
ルナフィエラがきょとんと目を瞬かせると、ヴィクトルは優しく微笑んだ。
「明日はこのリボンで、ルナ様の髪を結わせていただけませんか?」
その声音はいつもと変わらず静かで礼儀正しい。
けれど瞳に宿る想いは深く、胸がじんわり温かくなるのを感じた。
「……うん。お願い」
リボンを胸に抱きしめて頷くと、ヴィクトルは安堵するように小さく息を吐いた。
その光景を見ていたフィンが「やっぱり似合うと思ったんだよ!」と元気よく声を上げ、ユリウスは「明日は楽しみだな」と囁く。
シグも静かに頷きながら、頭を大きな手でぽんと撫でてくれた。
ルナフィエラは幸せで胸がいっぱいになり、涙がまた滲んでしまうのだった。
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