【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

文字の大きさ
183 / 184
第十章:星霜の果て、巡り逢う

エピローグ

しおりを挟む
薄く差し込む夕暮れの光が、ベッドに横たわるルナを優しく照らしていた。

呼吸は細く、まぶたは重い。
それでも、その視界いっぱいに映る“幸福”は、少しも霞んではいなかった。

そのベッドを囲むように──
もう白髪の混じるユリウス、
穏やかな瞳で微笑むシグ、
手を握りしめて離さないヴィクトル、
涙をこらえきれないフィン。

そして。
ルナと彼らの間に生まれた子どもたち。
健やかに大きく育ち、それぞれの人生を歩む準備が整った子たちが、皆、静かにそばにいた。

(……ああ……なんて綺麗な景色……)

息を吸うたび、胸の奥がゆるやかに、温かく満たされていく。

「……ルナ様」

名前を呼んだのは、ヴィクトルだった。
ずっと昔から変わらない、優しく揺れる声。

ルナはその手を包み込み、ゆっくりと微笑む。

「……そんな顔、しないで。みんな……
私は……とても幸せだったよ」

震える息で言葉を紡ぐと、フィンはもう堪えきれず涙をこぼし、シグは肩を落としながらも、変わらぬ優しさでルナの髪を撫でた。
ユリウスは静かにまばたきをし、目の奥を潤ませる。

「……母様……」

子どもたちの声が、かすかに揺れる。
ルナは力の残る限り、ひとりひとりの頬にそっと触れた。

「……あなたたちがいてくれたから……
私はずっと……ずっと……幸せだったの」

言葉が零れるたび、胸の奥の痛みが、そっと和らいでいく。

「……みんな、お願いね。
この子たちを……私たちの宝物を……守ってあげて」

その願いに、4人は同時に頷いた。
迷いもなく、揺らぎもなく。

「当たり前です。最後まで……あなたの大切なものは、私たちが守ります」

ヴィクトルが手を握りしめる。

「ルナの子で、俺たちの子だ。……任せろ」

シグが静かに誓う。

「絶対に……幸せにするから。ね、ルナ」

フィンの声は震えていたが、まっすぐだった。

「……どうか安心して。君の願いは、すべて……僕たちが叶え続ける」

ユリウスはそっと手をルナの額に置いた。

──ああ。
こんなにも愛されて、私はなんて幸せな人生を生きたんだろう。

「……みんな。ありがとう……また……会おうね……」

まぶたを閉じると、前世で交わしきれなかった“永遠”が、静かに手を伸ばしてくる。

星霜の向こうで出会い、
再び巡り会い、
共に笑い、愛し合い、家族を築き──

そして今世は、ようやく“約束の結末”へ。
最後の呼吸に、ルナはそっと祈った。

(どうか、この幸せが……彼らの未来にも続きますように)

光がゆるやかに広がり、世界が静かにほどけていく。
その温もりの中で──ルナは愛に包まれたまま、静かに微笑んだ。

4人の愛する者と、彼らとの子どもたちに見守られ、ルナの人生は、穏やかに幕を閉じた。

痛みも、涙も、哀しみもない。
ただ温かく、懐かしく、深い愛だけが胸いっぱいに満ちていた。

(……ありがとう。幸せだったよ)



──光がほどける。

長い旅路を終えた一つの魂は、静かな白い余白の中に降り立つ。

そこへ、同じ光を宿した4つの影が、ふわりと近づいてきた。

形は幼く、声は柔らかい。
けれどその奥にある想いだけは、幾度生を重ねても、決して変わらない。

一度離れても、必ず巡り会うように。
手を取り合うたび、世界に淡い輝きが散っていく。


星霜を越え、輪廻を越え、
何度生まれ変わっても必ず結ばれる5つの魂。

新しい世界へ。
新しい物語へ。
永遠に、何度でも。

手を取り合い、笑いながら。

ー完ー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...