【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第十章:星霜の果て、巡り逢う

第180話・失われた未来の、その続きを

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魔獣が咆哮し、前へ飛び出した瞬間──

ドンッ

地面が抉れた。
だがすでに、ヴィクトルが懐へ入り込んでいる。

「ルナ様に、近づくな」

低く告げると同時に、鋭い斬撃。
続いて、シグの大剣が唸りを上げ、魔獣の動きを力任せに封じ込めた。

後衛では、ユリウスが一切の迷いなく詠唱を終える。

「拘束・氷鎖」

氷の鎖が魔獣を絡め取り──

「終わりだよ」

フィンの声と同時に、純白の光弾が放たれ、拘束された魔獣にまっすぐ命中した。

数秒で、1体目が崩れ落ちる。
先生たちは、言葉を失ったまま立ち尽くしていた。


息をつく間もなく、森がさらに低く唸る。
木々の奥から、ひときわ大きな影が姿を現した。

親玉だ。

本来なら、討伐隊を複数編成して臨むべき強敵。
だが4人は、魔獣ではなく──ルナのほうを見たまま、落ち着き払っていた。

「ルナ、準備を」

ユリウスの声に、ルナは小さく頷き、魔法陣を展開する。

「……《範囲治癒》《全体強化》」

柔らかな光が彼らの身体を包む。

筋力、敏捷、魔力操作、それぞれに最適化された強化が施されれる。

フィンが目を輝かせた。

「やっぱりルナの魔法、気持ちいい~!」

シグは肩を回し、短く笑う。

「よし」

ヴィクトルは剣を構え、静かに頷いた。

「では、終わらせましょう」

そこから先は、もはや戦闘というより“制圧”だった。

シグの一撃で親玉が大きく体勢を崩し、
ヴィクトルの急所突きで均衡が崩れる。

ユリウスの氷魔法が足を封じ、
フィンの光矢が、容赦なく連続で突き刺さる。

そして──数分後。

親玉は大地に倒れ伏し、完全に動きを止めていた。
先生たちの顔色は、青を通り越して白い。


「……これが……Aランクの討伐……?」

だが4人は、倒れた魔獣よりも──
ルナだけを見ていた。

「ルナ様、怪我はありませんか?」
「疲れてない? 魔力、大丈夫?」
「どこも痛くないよな」
「少しでも違和感があったら教えてくれ。すぐ診る」

4方向から囲まれ、あまりの迫力に先生たちも一歩距離を取るほどだった。

ルナは慌てて両手を振る。

「だ、大丈夫! 平気だよ!」

ユリウスが、真剣な眼差しでルナを見る。

「……本当だな?」

その表情があまりにも切なくて、胸がちくりと痛んだ。

「う、うん。ほんとに……大丈夫」

その言葉を聞いて、4人は同時にゆっくり息を吐いて安堵した。


先生たちへ報告を終え、帰りの馬車。

今度は──
ヴィクトルが迷いなくルナを抱き上げ、自分の膝に座らせた。

「ルナ様は……こちらで」

肩にそっと手を添え、揺れないよう大きな手で腰を支える。

フィンはその隣でルナの手を握り、「ねぇねぇ、帰ったらおやつ食べよ?」と嬉しそう。

ユリウスとシグも、ようやく肩の力を抜いたように、ルナを見守っている。

ルナの胸は、温かく満たされていた。

(……みんなと一緒なら……なんだってできる気がする)

馬車はゆっくりと揺れながら、学園へと戻っていった。


そして夜。
広い皇族寮の寝室で、大きなベッドの真ん中にルナが寝かされる。

右側にはシグが静かに身体を寄せ、
大きな手でルナの髪を撫で、温度ごと包み込む。

「……安心して眠れ。ここにいる」

その声だけで、胸の奥がゆるやかにほどけていく。
左側にはユリウスが横になり、淡い光の中でルナを見つめていた。

「眠る前に……少しだけ触れていいかな?」

ルナが小さく頷くと、ユリウスは額に、そっと口づけを落とす。

触れたのはほんの一瞬なのに、“何年も言えなかった愛” が溢れるような深さだった。

「……今度こそ置いていかないよ。君を一人にする未来は、もうない」

小さく囁く声は震えていて、その言葉だけで胸があたたかくなる。

生まれ変わって、また会えた。
触れて、声を聞いて、名前を呼び合える。

一度失ったと思った日々の続きが、今こうして手のひらに帰ってきている。

眠りに落ちる直前、ルナはそっと呟いた。

「……みんな……だいすき……」

その一言に、
ヴィクトルは息を呑み、
フィンは涙ぐみ、
シグは目を細め、
ユリウスはそっと目を伏せた。

「……ルナ様……」
「……ルナ……」
「……もう離れねぇよ」
「……おやすみ。僕たちの光」

その声が重なり、室内は静かに甘く満たされる。

4人の手がそっと伸び、その温度が重なって、優しくルナを包み込んだ。

──星霜を越えた愛は、もう二度と離れない。

こうして5人は、失われたはずの未来を取り戻し、あの日の続きを、今度こそ永遠へと繋げていくのだった。
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