【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第十章:星霜の果て、巡り逢う

エピローグ

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薄く差し込む夕暮れの光が、ベッドに横たわるルナを優しく照らしていた。

呼吸は細く、まぶたは重い。
それでも、その視界いっぱいに映る“幸福”は、少しも霞んではいなかった。

そのベッドを囲むように──
もう白髪の混じるユリウス、
穏やかな瞳で微笑むシグ、
手を握りしめて離さないヴィクトル、
涙をこらえきれないフィン。

そして。
ルナと彼らの間に生まれた子どもたち。
健やかに大きく育ち、それぞれの人生を歩む準備が整った子たちが、皆、静かにそばにいた。

(……ああ……なんて綺麗な景色……)

息を吸うたび、胸の奥がゆるやかに、温かく満たされていく。

「……ルナ様」

名前を呼んだのは、ヴィクトルだった。
ずっと昔から変わらない、優しく揺れる声。

ルナはその手を包み込み、ゆっくりと微笑む。

「……そんな顔、しないで。みんな……
私は……とても幸せだったよ」

震える息で言葉を紡ぐと、フィンはもう堪えきれず涙をこぼし、シグは肩を落としながらも、変わらぬ優しさでルナの髪を撫でた。
ユリウスは静かにまばたきをし、目の奥を潤ませる。

「……母様……」

子どもたちの声が、かすかに揺れる。
ルナは力の残る限り、ひとりひとりの頬にそっと触れた。

「……あなたたちがいてくれたから……
私はずっと……ずっと……幸せだったの」

言葉が零れるたび、胸の奥の痛みが、そっと和らいでいく。

「……みんな、お願いね。
この子たちを……私たちの宝物を……守ってあげて」

その願いに、4人は同時に頷いた。
迷いもなく、揺らぎもなく。

「当たり前です。最後まで……あなたの大切なものは、私たちが守ります」

ヴィクトルが手を握りしめる。

「ルナの子で、俺たちの子だ。……任せろ」

シグが静かに誓う。

「絶対に……幸せにするから。ね、ルナ」

フィンの声は震えていたが、まっすぐだった。

「……どうか安心して。君の願いは、すべて……僕たちが叶え続ける」

ユリウスはそっと手をルナの額に置いた。

──ああ。
こんなにも愛されて、私はなんて幸せな人生を生きたんだろう。

「……みんな。ありがとう……また……会おうね……」

まぶたを閉じると、前世で交わしきれなかった“永遠”が、静かに手を伸ばしてくる。

星霜の向こうで出会い、
再び巡り会い、
共に笑い、愛し合い、家族を築き──

そして今世は、ようやく“約束の結末”へ。
最後の呼吸に、ルナはそっと祈った。

(どうか、この幸せが……彼らの未来にも続きますように)

光がゆるやかに広がり、世界が静かにほどけていく。
その温もりの中で──ルナは愛に包まれたまま、静かに微笑んだ。

4人の愛する者と、彼らとの子どもたちに見守られ、ルナの人生は、穏やかに幕を閉じた。

痛みも、涙も、哀しみもない。
ただ温かく、懐かしく、深い愛だけが胸いっぱいに満ちていた。

(……ありがとう。幸せだったよ)



──光がほどける。

長い旅路を終えた一つの魂は、静かな白い余白の中に降り立つ。

そこへ、同じ光を宿した4つの影が、ふわりと近づいてきた。

形は幼く、声は柔らかい。
けれどその奥にある想いだけは、幾度生を重ねても、決して変わらない。

一度離れても、必ず巡り会うように。
手を取り合うたび、世界に淡い輝きが散っていく。


星霜を越え、輪廻を越え、
何度生まれ変わっても必ず結ばれる5つの魂。

新しい世界へ。
新しい物語へ。
永遠に、何度でも。

手を取り合い、笑いながら。

ー完ー
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