純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第五章:みんなと歩く日常

閑話・吸血の順番

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「……今度は、ちゃんとお願いするから」

ルナフィエラの小さな決意の言葉が部屋に響いたとたん、空気が一気に変わった。

「――よし!」

「じゃあ、誰から吸うんだ?」

「順番、大事だよね⁉︎」

フィンが勢いよく手を挙げ、ユリウスとシグがほぼ同時に立ち上がる。

「まずは俺だろう。魔力の相性を考慮すれば――」

「いや、年功序列で考えれば僕が先だ」

「えっ、でも僕が最初に“吸ってもいいよ”って言ったよ⁉︎ね⁉︎ ルナ、覚えてるよね⁉︎」

「記憶を利用するのは卑怯だ」

「うわ、ずるい!!」

「……な、なにこの空気……」

ルナフィエラはおろおろと三人を交互に見つめ、明らかに困惑の色を浮かべていた。

三人はそれぞれ一歩も譲らず、
まさかの“吸血されたい争奪戦”が始まりそうな雰囲気。

(ど、どうしよう……!)

と、その時――

「3人とも落ち着いて。ルナ様が困っていらっしゃる」

静かな声が割って入った。
ヴィクトルだった。

三人はぴたりと動きを止める。

「吸血の順番に悩むのはわかりますが――
公平に、そしてルナ様の心身への負担を減らすには、一定の規則を設けるのが最も効率的かと」

「規則……?」

「はい。たとえば、“添い寝の順番”と同じにするのはどうでしょう」

「――ああ、それなら順番、決まってるな」

シグが腕を組み直し、すぐに納得の様子。

「ヴィクトルが最初で、その次は俺、ユリウス、フィン……の順だったな」

「なにその流れ⁉︎僕、最後じゃん!!」

「実際そうだったから仕方ないだろ」

「ふ、不公平~~~!!」

「フィンは、そもそも毎回おやつもあげてるだろう」

と、シグがぼそり。

「おやつと血は別腹だよ!!」

やり取りを聞いていたルナは、ぽつりと呟いた。

「……みんな、優しい」

すると、全員の動きが止まる。

「……当然だ」
「当然だよ」
「ルナ様ですから」
「当たり前だね」

こうして、吸血の順番は“添い寝の順”で決まり――
次に血を捧げるのは、シグということになった。

(……頑張らないと)

ルナフィエラは胸の奥でそっと、決意を固めるのだった。
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